暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2020年秋アニメ感想⑥【アサルトリリィ BOUQUET】

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☆☆☆(3.2/5)

 

 アゾンインターナショナルとacusによるメディアミックス企画である、同名タイトルのアニメ化作品。制作は言わずと知れたシャフト。監督はガイナックスでの仕事が印象深い佐伯昭志さん。シャフト作品としては、実に15年振りの監督作です。とりあえずシャフトの作品は見るようにしていますし、通勤の電車の吊り広告でよく見たので存在は知っていたので視聴を決めました。

 

 本作のあらすじはこんな感じです。公式サイトの文章を引用します。

 

近未来の地球。人類は謎の巨大生命体「ヒュージ」の出現で破滅の危機にあった。全世界が対ヒュージという一事に団結し、科学と魔法の力「マギ」を結集した決戦兵器「CHARM(チャーム)」の開発に成功。CHARMは10代の女性に高いシンクロを示すことが多く、CHARMを扱う女性は「リリィ」と呼ばれ英雄視されていく。ヒュージに対抗するため、リリィ養成機関「ガーデン」が世界各地に設立され、拠点として人々を守り、導く存在となっていった。

これはそんなガーデンでの、立派なリリィを目指して儚くも美しく戦う、少女たちの物語である*1

 

 これを読んだだけだと、結構ハードな内容かと思われるかもしれません。実際、「人造リリィ」とか、反リリィ派の存在とか、ハード方向に振れるときもあるし、全力で振れることもできたと思うんです。しかし、本作で描かれていることは徹底して「百合」。リリィ達の百合百合しい関係性を描くことに全力を注いでいます。ヒュージや外的な機関は、彼女らの絆やドラマを構築するためだけに存在しており、物語の主眼は、どこまでも「百合」なのです。

 

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 そして、本作でフォーカスされているのはもちろん、主役である梨璃と夢結。ビジュアル的には完全に「まどマギ」のまどかとほむらです。前半3話で「元カノ」である美鈴とひとまずの区切りをつけさせ、2人の絆が深まっていく過程とか人造リリィの名前を2人の名前からとるとか梨璃の復活とか色々あった後に最終的に夢結の救済になるというものです。物語全てが彼女らのためにあるという、ある意味で超セカイ系作品。しかし、この思い切りやよしで、1話は設定説明ばっかりで辟易していた私でしたが、3話で私は完全に吹っ切れ、「百合アニメ」として見始めてからは非常に楽しく見ることができました。

 

 シャフトという会社は、よくよく考えてみれば、というか考えなくても、「百合アニメ」と言われるものをたくさん作ってきたわけです。しかしそこでは、百合という要素は1つの要素であり、物語の中から偶発的に生まれてくる、あるいはそう読み解ける、若しくはシャフトが意図的にやりまくっている(だいたいこれ)ものでした。

 

 翻って、本作は、まず「百合」が主題なんですよね。「百合」が全てであり、それ以外は百合を構築するためだけにある。世界は百合のために存在するという、ある意味究極の百合アニメであることは上述の通りです。そんな作品を20年代最初にシャフトが作った、という事実はどこか運命めいたものを感じました。

 

 他にも、アクション面はかなり頑張ってて面白かったとか、皆さん仰っている通り5話は出色の出来だったとか他のカップリングも良かったよとか美点はあります。面白かったです(小並)。

 

 

 劇場アニメ。

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 シャフト最新アニメ作品。

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2020年秋アニメ感想⑤【IWGP 池袋ウエストゲートパーク】

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☆☆☆(3.3/5)
 
 
 石田衣良先生原作、文藝春秋より発売された人気シリーズ「池袋ウエストゲートパーク」のTVアニメ化作品。「池袋ウエストゲートパークのメディア化」という意味で、真っ先に思い出すのが、2000年に放送されたTVドラマです。主演に長瀬智也窪塚洋介、脇にも今なら1人で主役をはれる俳優を配した作品で、脚本の宮藤官九郎堤幸彦の演出力もあり、今では伝説となっている作品です。映像化という点ではTVドラマはあまりにも分が悪すぎるので、TVアニメ化というのは非常に妥当なラインでしょう。私はこのTVドラマは高校生の頃に見て、原作も1巻だけ読みました。
 
 アニメーション制作はまさかの動画工房。これまで日常系の作品を数多く手がけてきた会社ですが、今回は全く毛色の違う「IWGP」に手を出してきました。動画工房は2020年の春アニメでも「イエスタデイをうたって」を手掛けており、これまでとは違う方向へと挑戦しようとしている姿勢が伺えます。個人的には、動画工房が「IWGP」を手掛けたらどうなるのか、非常に気になったため、視聴した次第です。

 

池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX

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  • 発売日: 2000/10/25
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 本作は、言ってしまえば、「地味」です。1話完結で、社会問題と絡めた事件を主人公であり、池袋のトラブルシューター、マコトが解決する、というもの。基本的に1話完結であるため、話のテンポは良いし、ブラックバイトや自己責任批判、在日外国人へのヘイトスピーチなど、社会性のある問題を扱うこともとても良いと思います。しかし、本作にはアニメ的な味付けがあまりないし、その上、その問題は表面をなぞっただけで終わってしまっています。
 
 本作とよく似た作品に、「デュラララ!」があります。あちらも舞台は池袋で、カラーギャングが蠢き、暗躍する裏社会が舞台となっていました。しかし、あちらは原作がライトノベルであるためか、外連味のある、エキセントリックで魅力的なキャラクターが多く、語り口の上手さも相まって、とても面白い作品になっていました。対して、本作は舞台と設定は似通っているものの、(当然っちゃ当然なんですが)現実に即した設定やキャラが多く、よく言えば落ち着いている。たまに突飛なキャラも出てくるのですけど、やっぱり弱い。それは言ってしまえばリアルなのですが、それによって、特に味気ない作品になってしまっています。エキセントリックという点では、TVドラマの方があったと思います。
 
 その地味さにさらに拍車をかけるのが話です。上述の通り、1話完結で、社会問題を盛り込むのは良いのですが、それが「盛り込んだ」だけで終わってしまっている感じがあり、ストーリーの組み立てがやや事務的な印象を受けます。ただ、ギャングたちの抗争を描いた6、7話と11、12話は面白かった。

 

デュラララ!! (電撃文庫)

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 ただ、最後まで見たことから分かる通り、つまらなくはないんです。1話完結だから見やすいし、良いエピソードもありましたし。本作には、全体を通して、「赦す」ことがテーマとして通底していた気がしていて、このテーマが随所に出てきます。特にフィーチャーされているのが4話と10話でした。そしてそれが最終章である「サンシャイン通り内戦」に繋がっていくのです。この章は世界中で起こっている内戦や内紛、戦争の隠喩だと思います。池袋のギャング達の抗争を、裏で糸を引いて対立を煽っている存在を出し、現在の断絶と紛争と被せて描きます。要は深作欣二が『仁義なき戦い 代理戦争』でやったことと同じことをやってるわけです。そしてこの抗争を止めることは、互いを赦し、話し合いをすることでしかできない、と言うわけです。この辺は良かったです。
 
 以上のように、本作は通底するテーマ性や、アニメ作品があまり盛り込まない社会問題を盛り込もうという心意気は買うのですが、如何せん地味な作品でした。これがもう少しアニメファンにとっつきやすい作品なら良かったのかなぁと思います。
 

 

いつもの動画工房

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ちょっと変わった動画工房

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2020年秋アニメ感想④【魔王城でおやすみ】

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☆☆☆(3.2/5)
 
 
 現在、週刊少年サンデーにて好評連載中の、熊之股鍵次先生原作の漫画を基にしたアニメ化作品。制作は言わずと知れた動画工房で、監督は山崎みつえさんと、「ダンベル何キロ持てる?」を彷彿とさせるスタッフで固められています。私は「ダンベル何キロ持てる?」も、同じく山崎監督の「多田くんは恋をしない」も好きだったので、視聴を決定した次第です。
 
 本作は今流行りの「RPGの世界観を借りて、既存のジャンルものをやる」作品の1つで、本作で題材になっているのが「睡眠」。囚われの姫が、魔王軍顔負けのバイタリティとアイディアで次々とオリジナルの寝具を作り出し、安眠を獲得していく内容です。ストーリーは無く、1話ごとに安眠のためのお題が設定され、それを解決するのがメインです。終盤で「魔族と人間は憎しみ合っている」とか、若干のシリアス要素が入ってきますが、そこまで深掘りされず、この手の作品によくある「最終回に盛り上げどころを作るために入れた」以上の意図はないと思います。つーか、魔王軍が良い奴ら過ぎで、「憎しみ合っている」とか言われても全然実感ないんですよね。しかも人間側の魔王軍憎し描写も、かなりギャグっぽく描かれているのもそれに拍車をかけている。

 

 

 本作で面白い点は、姫の独創性に溢れた寝具作りと、犠牲になる魔王軍の哀れっぷり。体を切り刻まれるのは序の口、体毛を抜かれる、体をバラバラにされる、ちぎられるなど、基本的に魔王軍の奴らは悲惨な目に遭い、それをコミカルに描いています。この掛け合いというか、姫の一方的な蹂躙が本作のコミカルな要素です。さらに、RPGで言うところのレアアイテムとか強大な力まで姫は寝具にしてしまいます。「え?そんな重要なものを寝具に・・・」という驚きがありますし、「そういう風に寝具にするんだ」というアイディアに感心させられます。
 
 序盤こそ、上述のような驚きと、一方的な蹂躙を笑って見ていましたが、中盤以降、この手の作品が陥りやすい展開になります。そう、マンネリです。この手の作品は、最初こそ面白いのですが、基本的にネタが1つなのですぐに息切れを起こします。本作も例外ではなく、途中からは話の内容にバリエーションが増え、姫の影武者指南とか、安眠グッスを買いに人間界へ降りるとか、睡魔と睡眠の特訓をするとか、脇にそれた話を何とか睡眠と繋げている印象があり、平凡なコメディになってしまったかなと思いました。
 
 本作は平和な世界であり、魔王軍も良い奴らだらけで、勇者の道案内もちゃんとしてるし、ぶっちゃけ何がしたかったんだろうとか思わないでもないのですが、まぁアイディアは面白かったし、気持ちよく見ることはできました。
 

2020年秋アニメ感想③【神様になった日】

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☆(1.4/5)
 
「気持ち悪い・・・」
                                     劇終
 
 
 Keyの名物脚本家、麻枝准。「Kanon」、「AIR」、「CLANNAD」などの名作を生み出し、時代の寵児にまでなり、TVアニメの脚本にまで手を出した人物です。彼の生み出した「AIR」は今でも「泣きゲー」として語り継がれる作品ですし、「CLANNAD」に至っては、「人生」とまで言われており、私のような現在20代後半のオタクにとっては、最重要の人物の1人と言っても良いと思います。
 
 そんな彼ですが、2010年からはTVアニメにも進出。「Angel Beats!」を発表します。ここからP.A.WORKSとの関係が始まっていき、続いて「Charlotte」も制作しています。ただ、世間的には高い評価を獲得しましたが、私はどうも麻枝さんが脚本を書いた上記2作は好きにはなれません。それは主に、ストーリーの構成の面です。上記2作品とも、キャラの描き込みは浅くて感情移入が難しいわ、ストーリー上の転換点が数回あるたびに作品そのものの方向性がブレてしまうわ散々で(要は俺の感想みたいな感じ)、全く乗れなかったのです。正直、ゲームのシナリオライターしてた方が良いんじゃねと思うのですけど、どうやら麻枝さんは、本作を「原点回帰」とし、Keyブランドをかけるそう。そんなら見てみるかと思い、視聴した次第です。
 
Angel Beats! PERFECT VOCAL COLLECTION

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  • アーティスト:ヴァリアス
  • 発売日: 2017/06/28
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 最終話まで視聴して、「なるほど」と思いました。やりたいことは分かったと。そしてそれは、まぁ良いと。しかし、根本的な問題が未解決だぞと、声を大にして言いたい作品でした。
 
 本作のHPにおいて、麻枝さんは以下のように述べています。
 
自分は『Angel Beats!』や『Charlotte』で、戦闘やバンドや異能力といったエンターテインメントとして放り込める要素はすべて放り込む、というゲーム制作の時とは違うシナリオを書いていました。その「原点回帰」の意味について特に深く話し合ったわけではないのですが、自分なりに『Kanon』や『AIR』の頃のような、ただ純粋に感動できるお話を求められているのだな、と解釈し、脚本を書き上げました。*1
 
 この発言を読むと、本作の内容にもなるほどと思える点があります。それは、本作の構成はが過去2作とは違うという点。主に2つに分けられていて、ひなが陽太と共に夏を過ごす1部と、真相が明らかになり、陽太がひなを取り戻しに行く2部です。1部では自称オーディン娘のひなが「神の能力」を使って問題を解決、または陽太と周囲の人間関係を描きます。そして「世界が終わる日」とひなという謎をフックとして引っ張り、真相が明らかになってからは一転、極めてささやかな「奇跡」しか起こらないラストが待っています。
 
 これは以前までのTVアニメとは異質な作品です。というのも、「Angel Beats!」にしろ「Charlotte」にしろ、作中で物語のツイストが何回も起こるからです。「Angel Beats!」は3話、「Charlotte」では6話です。しかし、本作はツイストは1回しか起こらず、それ故に作品そのものの方向性も一貫していますし、物語のスケールも身の丈に合ったものになります。だから過去2作と比べると設定的な破綻が少ない。この点は「AIR」を彷彿とさせ、なるほど原点回帰的だと思います。
 
 ただ、面白い点があって、それは、本作では順番が逆な点です。というのも、麻枝さんの作品は、どれも形を変えて「世界の終わり」を描いてきたと思っていて、だいたいその犠牲になるのはヒロインなのですけど、その犠牲を、ちょっとした「奇跡」で以て救済する作品でした。そしてその「世界の終わり」はイコールで「死」でもあり、「病」という要素も深く関わってきます。
 
 本作はこの点が逆転していると思っていて、まず「奇跡」という救済があって、それを奪われてしまうという展開なのです。そして、この点とHPのコメントを合わせて考えると、興味深いことを考察できます。それは、本作が彼にとって、一種私小説的な内容なのでは?ということ。「神様になった日」とはまさか、「自分が脚本家になった日」であり、ラストのひなは、「才能が枯渇した自分」なのかと思えてきます。まぁ考えすぎかもしれませんが。ただ、そう考えると、3話の「情熱大陸」パロディも違う見方ができます。
 
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 ここまでが興味深いというか、面白いなと思った点です。さて、ここからが本番。以上のような考察は出来ても、根本的な点が直ってないんですよ。そして、「原点回帰」をしてしまったが故、彼が元々持っていた気持ち悪さみたいな点も浮き彫りになってしまったなと思います。
 
 まず、本作の構成について、先ほど、1部と2部に分かれているけど、話の筋は通ってると書きましたが、それはあくまで過去2作と比較してです。本作も全然直ってないです。1部はまぁギャグも「中学生が考えたのか?」と思う感じで笑えないし、「いつもの麻枝さんだなぁ」と思って見ていましたが、1つ1つのエピソードはまぁ面白かったです。しかし、ひなの奇跡が奪われてからは、「陽太の話」になり、それまでとは全く違う話になります。この接続をもっとスムーズにやろうよ。
 
 それは、麻枝作品によく出てくる、「理不尽な社会への抵抗」です。麻枝さんの作品の中では、「理不尽な社会」が出てきて、主人公たちはそれに抗うため、「楽園」を作って「抵抗」します。本作もその構図は健在なのですけど、過去2作と比べて、「敵」が明確に示されたのは良いのですが、陽太たちの主張も身勝手極まりないので、過去2作以上に感情移入できません。しかも、「戦うところ、そこかよ!」とも思います。
 
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 問題なのは、そこでの陽太の主張がめちゃくちゃ独りよがりで、作品全体がそれを肯定してしまう点。自分の意志を表明できないひなを「自分といた方が良いんだ」と、自分勝手な意見を述べるばかりで、全く感情移入できませんでした。確かに、ひなは陽太たちと幸せな時間を過ごしたと思います。しかし、ひなの状態を考えれば、親族でもない彼に預けるよりもあの施設にいた方が絶対良いだろ。しかも、「ヒナへの献身」を表現するのが「徹夜でゲームをする」って、何じゃそりゃ!って感じですよ。いや、理屈としては分かるんですけど、「献身」表現でそれかよっていう。
 
 さらに、陽太がひなに固執する理由がまた浅くて、「夏を一緒に過ごしたから」とかならまだいいんです。しかし、いきなり「ひなが(異性として)好きだ!」と言うわけです。ちょ、待てよ。お前、つい最近まで「イザナミさん、イザナミさん」って言ってたじゃないか。いつ心変わりしたんだよ。で、ひなもいつの間にか陽太のことを好きとか言ってるし・・・。いや、展開としては分かるんだけど、でも、もっと説得力を持って描こうよ。台詞でポロッと言われただけで、ストーリー的な説得力がまるで無いんだよ。こう言うところだぞ、本当。全然直ってねぇ。
 
 で、最終話ですよ。ひなを無事に「楽園」に連れて帰ってきた陽太ですけど、そこでの描写が本当に酷いんだな。アニメ史に残る気持ち悪さ。無事に帰ってきたひなと共に中断していた映画撮影を再開するのですが、あのときの光景が物凄く嫌。冷静に考えてみると、あれは自分で意志を表明できず、体も上手く動かない女の子を、わざわざ設備が整っている施設から引き戻して、着せ替えたり映画撮影に参加させたりして喜んでいる人間たちなんですよ。で、「ひなちゃんすごい」とか言って喜んでる。私には、彼らがまるで人形で遊んでいるようにしか見えませんでした。で、肝心の「ひなの気持ち」も陽太たちが勝手に自分たちに都合のいいように推測しているだけ。一応、ビデオメッセージはあったけど。何なの?この集団。サイコパス?これは一種の虐待なのではないかと、真剣に考えてしまいました。これをさも感動げに演出しているのも気持ち悪さに拍車をかけています。
 
 以上のように、本作は設定を盛っていないという点では過去2作よりかは破綻が少ないと思います。しかし、肝心のストーリーの詰めの甘さは健在で、しかも本作では身勝手さや気持ち悪さまで前面に出てしまった作品でした。ちょっとこれは評価できない。
 

2020年新作TV/配信アニメベスト10

はじめに

 皆さま、こんばんは。いーちゃんです。2021年はいかがお過ごしでしょうか。私は今年最も楽しみ&怖かった『シン・エヴァ』が延期になり、ちょっと意気消沈しています。2020年は新型コロナウイルスの蔓延により、新作アニメの放送も延期になったりして、本当に大変でした。そんな中でも作ってくださるスタッフの皆様には感謝です。

 

 そして、もう2020年も遥か彼方という感じですが、2020年の新作TV/配信アニメのベスト10を決めたいと思います。私が視聴した作品は全部で33本。この中から、ベスト10を決めたいと思います。例によって、対象作品は2020年に放送された新作アニメと、2020年に放送終了した新作アニメです。なので、2020年3月に放送が終了した「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」も対象になります。では、行ってみましょう。

 

2021年に持ち越し。

「呪術廻戦」

ひぐらしのなく頃に業」

おそ松さん(3期)」

 

2018年春アニメ

ゲゲゲの鬼太郎(6期)」

 

2019年持ち越しアニメ

Fate/Grand Orderー絶対魔獣戦線バビロニア―」 

無限の住人 IMMORTAL」

 

2020年新作TVアニメ

冬アニメ

「恋する小惑星

「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」

「映像研には手を出すな!」

id:INVADED イド:インヴェイデッド」

「へやキャン△」

「魔術師オーフェンはぐれ旅」

空挺ドラゴンズ

「虚構推理」

ドロヘドロ

 

春アニメ

かくしごと

波よ聞いてくれ

イエスタデイをうたって

かぐや様は告らせたい?~天才たちの天才頭脳戦~」

「BNA ビー・エヌ・エー」

富豪刑事 BALLANCE UNLIMITED」

「天晴爛漫」

 

夏アニメ

「GREAT PRETENDER」

デカダンス

「Re;ゼロから始まる異世界生活 2nd season」

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」

 

秋アニメ

IWGP 池袋ウエストゲートパーク

「魔女の旅々」

魔王城でおやすみ

「アサルトリリィ Bouquet」

「神様になった日」

憂国のモリアーティ」

「体操ザムライ」

 

配信アニメ

「OBSOLETE」

「薄明の翼」

攻殻機動隊SAC_2045」

日本沈没2020」

 

 以上の中からベスト作品を10本選びたいと思います。では、行ってみよう。

 

10位「デカダンス

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  10位はこちら。オリジナルアニメーション作品。メタ的な構造を複数重ねている物語構成、変則的に進むストーリーから浮かび上がってくる王道のストーリーが素晴らしかった。話の完成度的にはもっと上でも全然いいんですけど、物語的に、もっと幅を広げられそうなのに、1クールしかなかったため、「1クールの限界」を感じてしまったから。でも超面白いよ。

 

9位「波よ聞いてくれ

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  9位はこちら。原作のファンで、上手くアニメ化できていると思ったから入れました。作品の核である「架空実況」の演出とか、「喋り」の素晴らしさなど、原作の良さを損なわない良いアニメ化だったと思います。2期来てほしいアニメ筆頭。

 

8位「恋する小惑星

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  「きらら枠」ってことで見始めたんだけど、「きらら枠」的な日常癒しアニメではなくて、結構しっかりとした青春ものだった。少女たちの「夢」とか目標に真摯に向き合ったストーリーが素晴らしかったです。

 

7位「ドロヘドロ

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  「見ていて楽しいアニメ」ってのは間違いなくあって、本作はまさしくそれ。世界観もとても面白いのですけど、起こっていることはかなり凄惨なのに、作品自体が妙にほのぼのとしていたりして、その独特の雰囲気が心地よく、楽しく見ることができました。

 

6位「薄明の翼」

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  やって来ました、配信アニメ。「ポケモンのいる世界」をリアリティ溢れる美麗な映像と、絶妙なレイアウトで描かれる演出など、映像的にとても見応えのある作品。山下清吾監督がOPなどを手掛けてきたキャリアが活かされた各話のテンポも素晴らしいなと。

 

5位「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」

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  「俺ガイル」完結篇。1期から通して見てきた身としては、完結に感無量です。八幡たちが追い求めたものは、葉山達のような互いに気を遣う関係でも、陽乃のような外面だけの関係ではない、「ほんもの」の関係でした。「青春ラブコメ」の体を借りて「青春ラブコメ批評」をした作品で、この作品でラノベの青春ラブコメは一回終わっていると思う。

 

4位「id:INVADED イド:インヴェイデッド」

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  犯罪者の深層心理に潜って犯罪捜査をするという「マインドハンター」と「インセプション」を足してスタイリッシュな演出でまとめ上げた作品。ミステリを『インセプション』的な映像的な面白さで見せるという各話も素晴らしかったし、スタイリッシュなだけではなくてたまに泣かせにくるのもズルい。

 

3位「ゲゲゲの鬼太郎(第6期)」

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  分かります。「ん?」って思いましたよね。でも、本作は2020年の3月に終了したので、ランキング対象内なんです。「ゲゲゲの鬼太郎」という作品をあらゆる意味で現代的にアップデートしてみせた素晴らしい作品で、リメイクはかくあるべし、という内容でした。

 

2位「イエスタデイをうたって

inosuken.hatenablog.com

  ラブコメというより、ラブストーリー。一昔前のトレンディ・ドラマのような雰囲気を持つ作品。登場人物全員が悩みまくっててなかなか前に進もうとしないので、人によってはイライラすると思うし、それは分かります。しかし、それは逆を言えば分かる人にはよく分かるということ。私は完全に後者で、そもそも原作のファンということもあり、この順位に。各話ともにしっかりとした演出を施していて、それにも感心した次第。

 

1位「映像研には手を出すな!」

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  まぁ1位はこれですよ。女子高生3人が部活でアニメーションを作るという作品。似たような題材に「SHIROBAKO」があると思うのですが、あちらと違うのは、本作にはプロデューサー視点がある点。そして、こちらは「アニメーションを作る」というプリミティブな情動を形にして見せた点。その点が湯浅政明監督とマッチし、監督が己の才能を爆発させた傑作。全ての回が神回という稀有な作品でもあります。

 

番外「GOTCHA!」


【Official】Pokémon Special Music Video 「GOTCHA!」 | BUMP OF CHICKEN - Acacia

 番外です。PVなのでランキングに入れませんでしたけど、今年見て、最も感動した作品の1つ。泣きとかではなくて、ポケモンの歴史を怒涛のアニメーションで2分チョイに収めたこと、映像の気持ちよさに感動したのです。もう100回くらい見てるぞ。2020年を語る上で欠かせないだろうと思ったので番外で。

 

 

以上が私の2020年のランキングです。以下にまとめます。()は制作会社。

 

①「映像研には手を出すな!」(サイエンスSARU)
④「id:INVADED イド:インヴェイデッド」(NAZ)
⑥「薄明の翼」(スタジオコロリド)
⑦「ドロヘドロ」(MAPPA
⑧「恋する小惑星」(動画工房
⑩「デカダンス」(NUT)
 番外「GOTCHA!」

 

 以上です。他には、「GREAT PRETENDER」、「BNA ビー・エヌ・エー」、「無限の住人 IMMORTAL」、「体操ザムライ」はベスト候補として、最後まで入れるか悩みました。2021年もまた、面白い作品に出会えることを願います。とりあえず、冬アニメが凄いことになっているので、退屈はしなさそうです。それでは。

今も戦っている、全ての人々へ【ザ・ファイブ・ブラッズ】感想

ザ・ファイブ・ブラッズ

 
87点
 
 
 スパイク・リーの最新作。今回はNETFLIXと組んでの作品。私は彼については『ブラック・クランズマン』がとても面白かったのでファンになりました。そんな中制作・公開された本作を見逃す手はないということで鑑賞しました。ちなみに、この作品を鑑賞したのは何と昨年の6月。半年以上たってからの感想です。なので、あっさり目に書いときます。
 
 本作を簡単に言ってしまうと、スパイク・リーなりの「アメリカという国家の断罪」だと思います。本作は計154分あるのですが、その時間のたっぷり使ってアメリカという国が何を犯してきたのかをハイスピードで描きます。それは本作の中心であるベトナム戦争から始まり、歴史を進めていって、現在のBLM運動にまで続いています。本作には過去の実際の映像も使われているのですが、NETFLIXという強みを活かしてかなり過激な映像も多いです。
 本作のメインはベトナム戦争に従軍した高齢の黒人4人+若者1人。彼らが以前の仲間が隠したという金塊を探しにベトナムまで行くというストーリーです。この辺でリーはいつものように映画の中で過去のアメリカ映画への言及を始め、『ランボー2』をディスっています。そして4人のベトナム道中も、『地獄の黙示録』的な側面があり、「ワルキューレの騎行」が皮肉を込めてかかります。その道中で語られるのはアメリカがどのようなことを犯してきたのかという断罪で、ソンミ村の虐殺にも触れ、未だに問題が深く残っていることを描きます。そしてベトナムを引きずって生きている彼らの姿も描きます。
 
 これらと並行してベトナム戦争時代の彼らも描かれ、「何が起こったのか」が次第に明らかになっていきます。このとき、彼らにとっての指導者的存在が出てくるのですが、ここにはキング牧師マルコムXが重ねられているのかなと思いました。
 
 スパイク・リーは本作を「閉じた物語」にはしません。『ブラック・クランズマン』と同じく、「現実」へと映画は接続します。ここで語られてきた歴史と彼らの過去は、まだ終わってはおらず、その結果として、「現在」があると示されます。過去があるからこそポールはトランプを支持してしまっているし、アメリカの中の問題が積み重なっていった結果、今の問題があるのです。そして本作で見つけた「金塊」は「ブラッズ=同志」のために使われる。その「同志」とは、「今戦っている人々」なのです。それはBLM運動だけではなく、環境問題、地雷除去の運動、全ての戦いに対してです。本作は、アメリカという国の歴史を断罪しつつ、そこから積み重なっている問題と戦っている人々(=同志)へと向けられた、スパイク・リーの檄文なのだと思います。
 

Youtubeオリジナルアニメ【薄明の翼】感想

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☆☆☆☆(4.4/5)
 
 
 Youtubeにて2020年1月15日から1月に1話、全7話構成で配信されたアニメーション作品。監督は「NARUTOーナルトー疾風伝」、最近では「呪術廻戦」のOPでお馴染みの山下清吾さん。制作はこれまでアニポケ全てに関わってきたOLMではなく『ペンギンハイウェイ』などのスタジオコロリドになります。
 
 本作はTVで放映されているアニポケとは違い、より現実の世界に即した世界が舞台となっています。そして1エピソードごとに違うキャラクターにスポットを当て、彼ら彼女らの悩みや葛藤、夢へ向かう姿が描かれます。アニメーションが非常に繊細な演出をしているため、各々のドラマが非常に等身大といいますか、リアルに感じられる作品です。
 
 まず本作は、世界観が素晴らしい。上述の通り、「ポケモンがいる世界」を徹底して作り上げており、美しい背景やプロップのおかげで、画面の密度が毎回物凄い。この世界にポケモンがいるという説得力があります。そして本作は世界配信を見越してということで、各キャラクターのデザインも、フィクションの中のデザインを現実の人種に可能な限り寄せている感じでデザインしているなと思っていて、そこも凄く良いなと思いました。つまり本作の世界では、「多様な人種やポケモンが一緒に暮らしている」というリアリティがあるのです。

 

ポケットモンスター ソード -Switch

ポケットモンスター ソード -Switch

  • 発売日: 2019/11/15
  • メディア: Video Game
 

 

 こんな世界で描かれるのは、各キャラクターの等身大のドラマ。1エピソードごとに1キャラクターにスポットが当たり、バトンのようにドラマがつながっていきます。ジムリーダーの精神的成長やモデルとジムリーダーの両立の葛藤、ポケモントレーナーに憧れる少年たちの友情など、多岐にわたります。1話1話が破格のクオリティで、毎回絶妙なレイアウトで、非常に豊かな表現で描かれており、キャラたちの感情の流れが気持ちよいリズムで感じられます。それはさながらPVのようで、山下監督のキャリアが反映された結果なのかなと思います。このため、6分とはいえ、毎回かなり濃密な時間を体験できます。これだけでも素晴らしい。
 
 また、本作で特に素晴らしいと感じるのは、様々な立場のドラマを展開しつつも、最終的には「子どもに向けた話」になっていること。エピソード7「空」です。主人公はエピソード1「手紙」の少年ジョンと、チャンピオンのダンテ。ジョンがダンテと共にポケモンバトルの会場に行くという話です。感動したのが終盤、ジョンがダンテの試合を間近で見ているシーン。視点がジョンのものになり、ダンテの台詞が、視聴者に向けられたものになるのです。そこでダンテは「見てるだけで夢はかなったのか?ポケモントレーナーになりたいんだろ」と言います。それは、視聴している子どもや、何なら我々のような人間に向けられた言葉で、私はここにグッと来てしまいました。そしてこれによって、全てのエピソードがつながった感があります。そしてその後の大迫力のバトルも素晴らしい。
 
 以上のように、本作はポケモンと言う題材を限りなくリアルに、繊細に描いたアニメーション作品で、「ポケモンのアニメ化」の新しい形であり、傑作だと思います。
 

 

ポケモン映画。何とハリウッド。

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 コロリド作品。

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