暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2020年春アニメ視聴予定作品一覧

 皆様。こんばんは。コロナウイルスの猛威はやむ気配が全く見えず、オリンピックの延期が決まった途端感染爆発が起こるという何とも空気を読んでくれているウイルスなわけですけど、28.29の週末は外出自粛の要請が出るなど、いよいよ日本でも本格的にパンデミックの様相を呈してきました。こんな状況で果たしてTVアニメはきちんと放送されるのか、非常に心配なのですけど、こんな状況だからこそエンタメが必要なのも事実なので、放送されることを願います。というわけで、視聴予定一覧、行ってみよう。例によって、現在視聴中作品を発表し、その後に春アニメを発表します。

 

2019年秋アニメ視聴中作品

Fate/Grand Order-絶対魔獣戦線バビロニア-」

無限の住人-IMMORTAL-」

「バビロン」

 

2020年冬アニメ視聴中作品

「映像研には手を出すな!」

「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」

「恋する小惑星

ドロヘドロ

「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」

「虚構推理」

空挺ドラゴンズ

「へやキャン△」

「魔術師オーフェンはぐれ旅」

「OBSOLETE」

「薄明の翼」

 

 以上が現在も視聴している作品です。では、2020年の春アニメに移ります。

 

2020年春アニメ視聴予定作品

かくしごと

「LISTENERS リスナーズ」

波よ聞いてくれ

「もっと!まじめにふまじめ かいけつゾロリ

イエスタデイをうたって

かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」

「BNA」

富豪刑事

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」

攻殻機動隊2045」

「放課後ていぼう日誌」

「天晴爛漫」

 

 春アニメで視聴予定の作品は合計12本です。中でも最も楽しみなのは「イエスタデイをうたって」です。今作るなら動画工房だろと思っていましたので、制作会社的にもスタッフ的にも申し分ない布陣で期待しています。そしてTRIGGER最新作の「BNA」は今年最も楽しみにしていた作品の1つなので、当然視聴。他には気になっているのは「攻殻機動隊2045」です。ぶっちゃけ、予告で公開されたCGのクオリティを見ると不安しかないのですけど、スタッフがあの「S.A.C」なのでとりあえず期待しておきます。

 

 後は1期が好きだった「かぐや様は告らせたい?」、原作、アニメ共にファンである「俺ガイル」は完結となれば絶対に見るし、「ゾロリ」も小学生のころ見てたので見ます。後はMAPPA制作で、佐藤大さん原作の「LISTENERS」、原作既読の「波よ聞いてくれ」も楽しみです。

 

 以上が春アニメ視聴予定作品になります。後は例によって、評判によってみる作品を増やしていきたいと思います。それでは。

2020年冬アニメ感想①【映像研には手を出すな!】

f:id:inosuken:20200329131617j:plain

 

 

 現在、月刊スピリッツにて連載中の、大童澄瞳先生原作の漫画「映像研には手を出すな」のアニメ化作品。監督は「四畳半神話大系」や「DEVILMAN cry baby」の湯浅政明。私は原作に関してはラジオなどで評判を聞いて読んではいました。そしてその頃から「これをアニメ化するとしたら、監督は湯浅政明しかいない!」と思っていたため、それが叶った本作には期待しかなく、今期どころか2020年最も楽しみにしていた作品でした。

 

 本作の主題は「アニメーション制作」です。同じような題材のTVアニメだと思いだされるのが2014年にTVアニメが放送され、現在劇場版が公開中の「SHIROBAKO」です。しかし、あちらが「社会の中の仕事としてのアニメーション制作」を描いていたのに対し、本作で描かれているのはより純粋な、「アニメーションを作りたい」というプリミティブな衝動です。つまり本作は現在公開中の作品である、『音楽』に近いものがあると言えます。

 

 

 映像研3人中、この衝動を持っているのは2人いて、1人は設定厨の浅草氏、もう1人はアニメーター志望の水崎氏です。浅草氏は空想力豊かな人間で、「最強の世界を作る」という想いの下、日常のあらゆるものからイマジネーションを得てアニメーションに落とし込んでいきます。その姿はさながら国民的アニメーション監督である宮崎駿のようです。そして水崎氏は自身の理想とする動きを追求したいという人物です。動きを研究し、それをアニメーションに昇華する。その動機と想いの丈を描いた7話は素晴らしいものでした。そして本作の凄い点は、このような純粋な衝動だけではなく、収益や広報などのマネジメント方面にも力を入れて描いている点。それを担うのが最後の1人、金森氏です。

 

 そして舞台も、彼女たちの衝動を叶えるために設定されています。アニメーション業界と言えばブラックな業界であることは周知の事実ですけど、本作の舞台は社会ではなく、生徒会が絶大な権力を持っている、警備部という名の治安部隊がある、ヘンテコな部活が多い、など、独自のルールがあるかなり奇抜な高校の中です。しかも時代は2050年。映像研は最初こそ自分たちだけでアニメーションを作っていましたが、実績を出し、それによって信頼を得て、次作からは校内の多くの部活と提携して制作依頼をかけ、相手に意図を説明し、協力してアニメーションを制作していきます。社会人なら身に染みて分かると思いますけど、「部活」を「協力会社」に置き換えれば、これはそのまま「仕事」を描いているということができると思います。つまり、この高校という舞台によって、彼女たちをモラトリアムという箱庭の中で守ったまま、「アニメーション制作」をさせることが出来ているのです。

 

 そして本作は、「アニメーション制作」の一連の流れもしっかりと描いてくれます。それは「制作して、観客に届け、見た観客がどう感じるのか」という点です。本作の制作パートはアニメーション制作における演出の蘊蓄とか、それを阻もうとする権力側の横暴などの障壁(この点もお仕事アニメっぽい)をしっかりと描きつつ、アニメーションを見た観客が感じ取ったことまで描いているのです。例えば、4話で思わず出た「すげぇ」って声や、最終話で観た人間全員の頭の中で浅草氏が想像した世界が出来上がっていく様子などです。これは7話で水崎氏が言っていた「分かる人に届ける」ということが実現したということであり、これが入っているからこそ、本作は感動的になったのだと思います。

 

 

 本作が素晴らしい作品になったのは、原作が持つ上述の要素と、アニメーション監督である湯浅政明監督の強みが完璧にマッチしたからだと思います。原作は上述のようなアニメーションを作るという衝動をそのまま漫画にした画期的な作品でした。対する湯浅政明さんはどうかと言えば、これまで自由自在なアニメーションを作り続け、作品全体から「アニメーションの楽しさ」が感じられるものを作ってきた方です。本アニメではこの自由さは浅草氏の空想で発揮されています。「アニメーションの楽しさ」を追求した来た監督が「アニメーション制作の楽しさ」を描いた作品を作る。本作がこのような素晴らしい出来になるのは必然だったと言えます。

 

 以上のように、本作は「SHIROBAKO」とは違った意味で「アニメーション制作」をしっかりと描いた作品でした。そしてまた、本作は高校に入学してすぐに出会った3人が信頼を深め、「仲間」になったり、浅草氏がアニメーション制作を通して相互理解を学んだりといった青春アニメ的な子どもの成長物語的な側面も十分に持っている作品で、全方位的に隙のない作品でした。今年ベストです。

 

 

湯浅監督作品その1.

inosuken.hatenablog.com

 

 湯浅政明作品その2

inosuken.hatenablog.com

 

 湯浅政明作品その3.

inosuken.hatenablog.com

 

「経験」は差別を乗り越える【ジョジョ・ラビット】感想

f:id:inosuken:20200328123924j:plain

 

93点

 

 

 「すべてを経験せよ 美も恐怖も 生き続けよ 絶望が最後ではない」

 

 本作のラストに引用されるオーストリアの詩人、R・M・リルケの詩です。本作で語られていることは、この詩に集約されています。本作は、ジョジョという、「戦争も、人間も、社会も、まだ何も知らない少年」が実際に戦争や人間を自分の目で見て、感じ、成長していく様を追った一風変わった戦争映画だからです。だから本作の目線は常に「子供目線」であり、非常に低く設定されています。だから大人は足しか映らないことが多いのです。

 

リルケ詩集 (岩波文庫)

リルケ詩集 (岩波文庫)

  • 作者:リルケ
  • 発売日: 2010/02/17
  • メディア: 文庫
 

 

 「子供目線」であるため、本作で描かれている第2次大戦末期のドイツは、どこか平和で、楽しげな雰囲気すらあります。作中で使われているポップミュージックが効果的に機能し、作品全体からどこか楽しげで、ポップな雰囲気が出ています。しかし、そこで描かれていることは非常にえげつない。レベル・ウィルソン演じるヒトラー・ユーゲントの教官、ミス・ラームの「私は子供をたくさん産んだのよ!」発言とか、ヒトラー・ユーゲントの訓練とかは、よくよく考えればかなり恐ろしいこと。要は特定の国や民族を敵視させる教育をし、文化すら否定しているのですから。ジョジョはこのような環境にどっぷりと浸かり、何も疑わず、ヒトラーを最高の男性と崇め、ユダヤ人に笑ってしまいそうな妄想を抱き、敵意を持っています。本作はこのような考えを持っているジョジョ少年が成長し、「脱却」していく姿を描きます。

 

 この脱却には大きく2つの側面があります。1つは「マチズモからの脱却」、2つ目は「ナチス敵視思想からの脱却」です。そしてこれら2つの脱却は、現代にも十分通用するメッセージに繋がっていきます。

 

 ジョジョ少年は、自らを鼓舞する存在として、なんとあのアドルフ・ヒトラーをイマジナリー・フレンドに持っています。最初にこの設定を聞いたときには冗談なのではと思いましたが、鑑賞してみると非常に重要な意味を持っているのです。それは父親がいないジョジョ少年にとっての父親代わりの存在として、そしてジョジョ少年にとっての「理想の男性」としての意味です。つまり、ヒトラーのアドバイスは、ジョジョ少年自身が抱いている「男はこうあるべき」というマチズモ的な思想そのままなわけです。

 

 そんなナチス的思想に凝り固まっているジョジョ少年の脱却のきっかけとなるのが、母親がかくまっていたユダヤ人の少女、エルサです。彼女と実際に話して、ジョジョ少年はユダヤ人に対する偏見や無知を乗り越えていくのです。そして同時に、終盤で自分が住んでいる街が戦場になり、「戦争」も経験します。それまで空想の中でしか知らなかった戦争を経験し、その凄惨さと大人の無責任さを痛感するのです。この点では、『この世界の片隅に』と極めて近い内容と言えます。

 

この世界の片隅に

この世界の片隅に

  • 発売日: 2017/04/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 ここで思い返されるのが冒頭で書いたリルケの詩です。ジョジョ少年は空想の中で「何となく」抱いていた妄想や偏見を、「実際に経験」することで克服し、ラストで「くたばれヒトラー!」と言って脱却するのです。これはナチス的な偏見、差別からの脱却と同時に、マチズモ的思想からの脱却でもあります。だからこそ、ラストで「同じ目線で」ダンスを踊り出すラストは感動的なのです。つまり本作は、ナチス映画であると同時に、1人の少年が1人前の大人になる話としてもよく出来ているのです。

 

 そしてこの点は、現代にも十分通じるメッセージです。現代でも他国のことを一方的なイメージで以て偏見を抱き、差別をしている人間がいます。そしてそういう奴らはたいてい本物に会ったこともなく、日々のニュースなどで得た知識のみで相手を知った気になっているのです。そしてそれがまた差別を増長させる。日本語で言えば「百聞は一見に如かず」です。本作はそんな世の中に対する警鐘の意味も持っています。我々1人1人がしっかりと物事を見て、判断することこそ、差別をなくす一番の方法であると本作は教えてくれるのです。

 

 

ジョジョ少年より少し下の世代の物語。

inosuken.hatenablog.com

 

 ナチス時代の贖罪と復讐を描いた作品。

inosuken.hatenablog.com

 

2010年代TVアニメ各年のベスト作品&ベスト10

 2010年代は終わりました。現在は2020年、『AKIRA』と同じく東京オリンピックが開催されるかと思いきや、まさかのコロナウイルスによる延期になってしまいました。しかも連日状況は悪くなる(というか、オリンピックが延期になった途端に悪くなりましたよねー)一方で、この週末は外出自粛要請まで出てしまいました。2020年はオリンピックイヤーで(一部の人間にとっては)華々しい年になるはずだったのに、とんだ災難です。

 

 まぁ、とにもかくにも、2010年代という1つの年代が終わったわけです。そうなると人間という奴は何らかの「まとめ」をしたくなる生き物。映画ならば平成のベストとかそれこそ2010年代のベストとかを決めている人もいると思います。今回、私はそれのアニメ版をやろうというわけです。映画もやろうとしたのですけどその年代のベストを選べるほど観ていないなと思ったので断念した次第です。でも、アニメならできるのではないかと思いました。とりあえず2010年代の初め頃からアニメ見始めたので。とりあえず2019年度内には間に合いました。・・・そういうことにしておいて。

 

 今回は各年のベスト作品を発表し、その後にどうせなのでその年のベスト10を発表したいと思います。ちなみに、作品の選定においてはWikipediaの年代別アニメ作品一覧を参考にしました。ただ、全てのアニメを見ているわけではないので、ひょっとしたら抑えておかねばならない名作が入ってないかもしれません。まぁそこはご愛敬ということで。では、行ってみましょう。

 

2010年ベスト作品:「四畳半神話大系


f:id:inosuken:20200211223551j:image

 アニメを見ていると、それまで見たこともない映像を見せられ、度肝を抜かされることがあります。というわけで、2010年のベスト作品は湯浅政明監督作品のこちら。私にとってのファースト・湯浅です。森見登美彦先生の原作が持つ軽快な語りをそのまま映像にして見せた作品で、浅沼晋太郎さんの演技が最高でした。ストーリーも拗らせまくった恋愛下手が最後に自分の殻を破る話で、ちょうど受験を控えた高校生であった私にはドはまりする内容であったのもベスト選出理由です。ここから私の湯浅歴が始まったのでした・・・。

 

2010年のTVアニメベスト7

①「四畳半神話大系

②「けいおん!!

③「STAR DRIVER 輝きのタクト

④「デュラララ!!

⑤「刀語

⑥「Angel Beats!

⑦「ルパン三世 the Last Job」

 

 2010年に見たTVアニメは合計7本でした。見始めということもあり、少ないです。1位以下に関しては、日常モノの火付け役でありながら、同時に絶対に訪れる「別れ」も描こうとしてる点に感動した②、榎戸洋司さんの脚本が光る独特かつ何か爽快なロボット青春学園アニメな③、「ブギーポップ」的な群像劇、多様な視点と「池袋ウェストゲートパーク」的なワイワイ感が楽しかった④、アクションというよりは、やっぱり屁理屈で戦う⑤までは良かった。でも、中盤までは良かったけどラストが詰めすぎな⑥と超残念な「Last Job」である⑦はやや否定的な意見を持っています。

 

 

2011年ベスト作品:「魔法少女まどか☆マギカ

f:id:inosuken:20200214183317j:image

 2011年は激戦の年です。その中で本作を選ぶということがベタってのは分かってます。でも、2010年代を代表するアニメですし、何より見た時の衝撃が凄まじかった。話が進むごとにどんどん先が読めなくなる展開、そして膨らみ切った話を綺麗にまとめ上げた脚本、そして素人の私でも理解できた本作が持つ魔法少女ものに対する革新性で、「見たことがあるのに見たことがないアニメ」を見ている気持ちにさせられ、本作の全てに圧倒されていました。後、多分初めてネットで見たアニメだと思う。

 

2011年TVアニメベスト10

①「魔法少女まどか☆マギカ

②「STEINS;GATE

③「放浪息子

④「輪るピングドラム

⑤「UN-GO

⑥「うさぎドロップ

⑦「銀魂’

⑧「Fate/Zero」

⑨「C」

「日常」

 

 2011年に見たTVアニメは17本でした。2010年と比べるとやや増えました。1位以下は、前半の不穏な伏線張りと、後半の非常にエモーショナルな展開と怒涛の伏線回収が素晴らしすぎた②、「すべてにおいて完璧」だと思っている③、私にとっての初イクニである④、同時に開始した「ギルティクラウン」のオマケだと思っていたらこちらが大本命だった⑤、少女と独身男が「家族」になるまでを丁寧に描いた⑥、やりたい放題が加速した⑦、ufotableの凄さを初めて認識した⑧、経済と金をバトルもので描いた隠れた良作⑨、シュールで中身が全く無い下らなすぎるギャグが最高だった⑩です。ノイタミナが4本も入っています。さすがは全盛期。

 

 

2012年ベスト作品:「氷菓

f:id:inosuken:20200218223133j:plain

 京都アニメーション制作の「日常の謎」を解き明かす青春ミステリー。題材的に地味でつまらない内容になりそうなところを、日常芝居の豊かさ、キャラクターの豊かな演出で素晴らしい作品に仕上げていました。また、本作は謎を解き明かすだけではなく、その先にある「苦さ」も重要で、その「苦さ」を高校生である彼らが知っていき、成長していく姿を描いていました。この点が本作をただのミステリで終わらせない普遍的な青春ストーリーにしていたと思います。「灰色」を望む奉太郎が世界の「色」に気付くという演出も見事でした。現在でも、TVアニメならばマイベスト京アニ作品です。

 

2012年TVアニメベスト10

①「氷菓

②「ジョジョの奇妙な冒険

③「LUPIN THE ⅢRD 峰不二子という女」

④「TARI TARI

⑤「男子高校生の日常

⑥「Fate/Zero(2期)」

⑦「じょしらく

⑧「アクセルワールド

⑨「PSYCHO-PASS サイコパス

⑩「偽物語

 

 2012年に見たTVアニメは23本でした。1位以下は、スタッフの覚悟と愛を感じた②、アニメ化45周年にふさわしい、これまでになかったアダルトなルパン像を作り出した③、青春ものの良作④、高松監督のギャグのキレと、声優の演技で笑わせられた⑤、圧倒的なバトルに興奮させてもらった⑥、雑談だけで見せてしまうという久米田先生と水島監督の力を思い知った⑦、ぶっちゃけ「ソードアートオンライン」より好きな⑧、ディストピアの思考実験として興味深かった⑨、そしてやっぱり1番の思い出は歯磨きプレイの⑩です。

 

 

2013年ベスト作品:「キルラキル

f:id:inosuken:20200226220138j:plain

 GAINAXから独立した『天元突破グレンラガン』の主要スタッフ達が新しく創設したアニメ制作会社、TRIGGER。その第1作目の自社制作作品です。その内容は『天元突破グレンラガン』の変奏のような内容で、ドリルではなくハサミで宇宙を切り裂くと表現できる同じようなアツい展開、二転三転し、総集編すら5分で終わらせる勢いが良すぎるストーリーで、毎週楽しみに見ていました。熱血バトルものでありながら、最終的には1人の少女が「子ども」であるセーラー服から脱却するという、成長物語になった点も素晴らしい着地点だなと思います。

 

2013年TVアニメベスト10

①「キルラキル

②「のんのんびより

③「はたらく魔王さま!

④「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

⑤「翠星のガルガンティア

⑥「有頂天家族

⑦「ヤマノススメ

⑧「京騒戯画

⑨「物語シリーズ セカンドシーズン」

⑩「ラブライブ!

 

 2013年に見たTVアニメはアニメは20本でした。1位以下は、世界でいちばんやさしい空間を見せてくれた②、魔王と勇者が現世にやってきて日本社会で働くという出オチ感ある設定でありながら素晴らしい改変とテンポで見せてくれた③、八幡さんに共感しまくってしまった④、クオリティの高いオリジナルSFアニメの⑤、森見先生原作の、新たな良作アニメの⑥、5分ながらかなり丁寧に作られている作画アニメの⑦、松原理恵監督の才気がほとばしる⑧、シャフト演出と西尾維新の相性は最高だなと再認識した⑨、少女たちのひたむきな姿に心打たれた⑩です。

 

 

2014年ベスト作品:「SHIROBAKO

f:id:inosuken:20200301223624j:plain

 現在劇場版が公開中の作品。「自分たちのアニメを作る」という夢を持った5人の女性を軸に、アニメを作るということ、そして仕事をするということを描いた作品です。取引先や会社側の都合で振り回され、夢に近づくことが出来ないこともある。それでも、自分たちの理想をかなえるため、そして納期のため、奔走する姿は当時学生だった私でも心を打たれました。それが少しだけ形になった23話には大泣きです。そしてそしてその周囲のキャラも「良いものを作る」という一心で必死になって頑張っているその姿にも。だから作品が完成した時は彼ら彼女らと同じカタルシス、達成感を味わうことができました。社会人になって見返すと、また新たな発見もありましたね。

 

2014年TVアニメベスト10

①「SHIROBAKO

②「ピンポン THE ANIMATION」

③「ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース

④「ばらかもん

⑤「ヤマノススメ セカンドシーズン」

⑥「蟲師 続章」

⑦「Fate/stay night Unlimited Blade Works

⑧「残響のテロル

⑨「スペース☆ダンディ

⑩「旦那が何を言っているか分からない件」

 

 2014年に視聴したTVアニメは21本でした。1位以下は、「松本大洋作品のアニメ化」として完璧で、ぶっちゃけ1位と同レベルに好きな作品の②、前作よりもさらにハイクオリティになった③、未熟な天才と島の少女との交流を丁寧に描いたこの年の精神安定剤その1の④、1つの「終わり」と新しい「始まり」を良質なアニメーションで描いた⑤、毎話劇場版レベルのクオリティを見せつけ、1話完結の奇譚を楽しんだ⑥、初めて見た本編ルートの⑦、ガチなナベシン⑧、アニメーションクリエーターの見本市⑨、そしてこの年の精神安定剤⑩です。

 

 

2015年ベスト作品:「ルパン三世 PARTⅣ」

f:id:inosuken:20200309215422j:plain

 いや分かってる(この記事2回目)。2015年は他にも素晴らしい作品がたくさんありました。しかしこの本作は、私にとっては作られてとても嬉しかったもの作品でした。「ルパン三世」といえば近年制作されている作品はほぼ年1回のTVスペシャルと、「LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘」から始まったハードボイルド路線のルパンです。ハードボイルド路線のルパンは素晴らしいものが多いのですけど、世間一般で知られているイメージのルパン作品といえば残念な出来(一番最近のTVSPも酷かった)のものが多いのです。

 そこで出てきたのが本作でした。往年のTVシリーズのような1話完結ものであり、同時に各キャラクターのカッコよさを引き立たせるキャラ回の豊富さ、そして現代のクオリティで作られたスタイリッシュなアニメーションなど、ファンとして大変満足でき、同時に「ルパン三世」というアニメ作品の立て直しをしてくれました。本作は私にとってはそんな作品で、だからこれが1位です。

 

2015年TVアニメベスト10

①「ルパン三世PARTⅣ」

②『響け!ユーフォニアム

③「ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース エジプト篇」

④「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

⑤「おそ松さん

⑥「のんのんびより ばけーしょん」

⑦「Fate/Stay night [Unlimited Blade Works]

⑧「血界戦線

⑨「ワンパンマン

⑩「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」

 

 2015年に見たTVアニメは23本でした。1位以下は青春スポ根ものを京アニクオリティで描いた良作の②、前半からさらにヒートアップしたスタンドバトルの③、少なくとも鉄華団が成り上がっていく前半は素晴らしかった④、赤塚不二夫の正統進化形だと思う⑤、見ていると作品の、キャラの魅力がより深まる見事な続篇の⑥、「UBW」をきちんとやりきった⑦、ボンズの勢いあるアクションが最高だった⑧、圧倒的な迫力のアクションを見せてくれた⑨、日本の「ヒーローもの」を題材にパロディ的に出し、「ヒーローとは?」を描いた⑩です。

 

 

2016年ベスト作品:「響け!ユーフォニアム2」

f:id:inosuken:20200317225310j:image

 京都アニメーション制作、2015年に放送された「響け!ユーフォニアム」の続篇。前作は「久美子と麗奈の物語」であったのに対して、本作は「久美子とあすかの物語」を軸にして、吹奏楽部のその後や、各キャラクターをより深く描いている作品でした。久美子の成長、去る者の物語などがしっかりと描かれ、終わり方がかなり綺麗なアニメだったと記憶しています。

 また、本作は京アニの美意識というか、志の高さがかなり出ているシリーズでもあると思っていて、吹奏楽部のような部活動にありがちな微妙な目的意識と、そこからのスポ根的な展開、そして演奏シーンの音の素晴らしさなどです。なので、京アニ作品の中でも随一のクオリティだと思っています。2015年の前作も素晴らしかったんですけどね。

 

2016年TVアニメベスト10

①「響け!ユーフォニアム2」

②「ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない

③「舟を編む

④「ふらいんぐうぃっち

⑤「昭和元禄落語心中

⑥「DRIFTERS」

⑦「モブサイコ100」

⑧「Re;ゼロから始める異世界生活」

⑨「NEW GAME!

⑩「この素晴らしい世界に祝福を!

 

 2016年に視聴した作品は26本でした。1位以下は詰め込みながらも熱量を保ちつつも3クールでしっかり終わらせた②、辞書作りという地味な題材を丁寧なアニメーションで描いた秀作③、魔法少女×日常モノのほのぼのアニメで、この時期の精神安定剤④、落語を軸に2人の男の数奇な関係を描いた⑤、原作の狂気そのままで感動した⑥、本気のボンズが堪能できる⑦、タイムリープものを用いて主人公の成長をしっかりと描いた内容に感動した⑧、新人の成長をゆるいながらも描いた癒し百合アニメ⑨、多分10年代最高のバカアニメの⑩です。

 

 

2017年ベスト作品:「リトルウィッチアカデミア

f:id:inosuken:20200317225332j:image

 2017年に視聴した作品は25本でした。その中でも本作は抜きんでて好きになった作品でした。その理由は、本作がアニメそのものへの愛に溢れていると感じたから。本作は「魔法が使えない」アッコが「ハリー・ポッター」みたいな魔法学校で魔法を学ぶという話なのですけど、この魔法を「人々に夢を与える」ものとして、アニメと重ねて描かれているのです。アッコは魔法が人々に夢を与えるものを信じて疑わず、その真っ直ぐな心でその夢を追います。そのひたむきな姿に胸をうたれました。昔の人は「アニメは魔法」と言ったそうです。つまり、本作はこの言葉を実際にやっている作品なのです。アニメーション的にも素晴らしく、2017年のベストです。

 

2017年TVアニメベスト10

①「リトルウィッチアカデミア

②「昭和元禄落語心中 助六再び篇」

③「メイドインアビス

「少女終末旅行」

⑤「小林さんちのメイドラゴン

⑥「有頂天家族2」

⑦「宝石の国

「プリンセス・プリンシパル」

「NEW GAME!!」

「キノの旅-the Beautiful World-the Animated Series」

 

 2017年に見たTVアニメは25本でした。1位以下は「落語」を軸として昭和から平成へ、八雲から助六への世代交代を見事に描いた大河アニメの②、「探求心」を追い求めることの純粋さと危うさを、素晴らしいクオリティで描いた傑作の③、終末世界の日常という逆転の発想が素晴らしかった④、異種間の相互理解を描き、私のこの時期の心の癒しである⑤、「阿呆」の祭り再びな⑥、「宝石の擬人化」として素晴らしく、同時にフォスの「成長」を丁寧に描いた⑦、好物の掛け合わせで楽しめた⑧、「目標」だった人に「並びたい」と思うまでを描いた⑨、そしていくら不満があろうとも思い入れには勝てないのでこの順位の⑩です。

 

 

2018年ベスト作品:「DEVILMAN cry baby」

f:id:inosuken:20181129200922j:plain

 2018年は物凄い年で、本作以外にも「宇宙よりも遠い場所」という傑作が生まれたのですけど、どれか1つ選べと言われたら本作です。湯浅監督なりの現代的なアップデートが施された傑作です。詳しくは感想を書きましたのでどうぞ。

 

inosuken.hatenablog.com

 

2018年TVアニメベスト10

①「DEVILMAN cry baby」

①「宇宙よりも遠い場所

③「風が強く吹いている」

④「SSSS.GRIDMAN」

⑤「恋は雨上がりのように

⑥「ルパン三世PARTⅤ」

⑦「ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風

⑧「ゆるキャン△

⑨「ゲゲゲの鬼太郎(第6期)」

⑩「あそびあそばせ

 

 2018年に見たTVアニメは何と43本。2010年代最高本数です。別に記事にしましたけど、とりあえず順位だけ発表しました。超簡単にコメントだけ書きます。なお、リンク記事とは対象としている時期が違うため、ここにあげたものとは少し違うランキングになっています。1位以下は、青春グラフィティの新たな傑作で、同着1位の①、陸上を見事にアニメ化した③、特撮とアニメの見事な融合の④、原作の見事な再構築に唸った⑤、ルパンの再定義をした画期的な作品の⑥、スタッフの練度が出た⑦、キャンプを通して少女たちの交流を描いた⑧、オーソドックスながらも意欲的な試みが素晴らしい⑨、2018年で一番笑った⑩です。

 また、2018年は豊作の年で、10位以下から、「やがて君になる」「ヤマノススメ サードシーズン」「からかい上手の高木さん」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「ダーリン・イン・ザ・フランキス」「ヒナまつり」「BANANA FISH」「ゾンビランドサガ」「ツルネ-風舞高校弓道部-」を入れてベスト20としても良いです。ランキングは別に書きましたのでよろしければどうぞ。

 

inosuken.hatenablog.com

 

 

2019年ベスト作品:「どろろ

f:id:inosuken:20190709223659j:plain

 2010年代最後のベストは、約50年前の傑作漫画の再アニメ化作品です。原作が持つ内容をより現代的にアップデートした作品で、「過去の名作のアニメ化」の1つの理想的な形でした。感想も書きましたのでどうぞ。

 

inosuken.hatenablog.com

 

2019年TVアニメベスト10

①「どろろ

②「ヴィンランド・サガ

③「鬼滅の刃

④「モブサイコ100Ⅱ」

⑤「revisions リヴィジョンズ」

⑥「ダンベル何キロ持てる?」

⑦「からかい上手の高木さん2」

⑧「ケムリクサ」

⑨「BEASTARS

⑩「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」

 

 2019年に見たTVアニメは28本でした。まだ「FGO」と「無限の住人 IMMORTAL」、「バビロン」は最後まで見ていませんけど、とりあえず発表します。なお、2018年版と同じく、対象作品に違いがあるため、既存の記事とは微妙にランキングが違います。こちらも簡単にコメント書きます。1位以下は、名作をきちんと傑作にしてくれた②、多分アニメの理想形の③、ボンズの本気が見れた④、谷口監督らしい捻くれたヒーロー成長譚の⑤、筋トレをしてるだけなのに面白いという謎のアニメ⑥、2人の距離が「ゼロセンチメートル」のなるまでを描いた⑦、たつき監督の才能爆発な⑧、「動物の青春」でありながら、やってることは濃密な人間ドラマの⑨、思春期のめんどくさい恋愛の駆け引きをコミカルにテンポよく描いた⑩です。ランキングはこの記事を参照に。

 

inosuken.hatenablog.com

 

 

おわりに

 以上のように、2010年代のTVアニメを私が視聴した範囲で振り返ってみました。振り返ってみると、ベスト作品は湯浅政明作品が2作、TRIGGERが2作、京アニが2作、そして後の3作品は「ルパン三世」、「デビルマン」、「どろろ」と、過去の名作です。こう眺めていると、2010年代は新しい作品から、過去のリメイク作品へと移っていったことが印象的です。思えば、この10年は最初は空気系が流行ってその延長戦で京アニが本格的に出てきて、他にもufotableやTRIGGERなど、個性的かつレベルの高い作品を送り出す制作会社が出てきました。映画にまで目を向ければ、2010年には考えられないくらい劇場アニメが増え、海外の作品でも日本のアニメを意識していると思われるものが増えました。

 おそらく次の10年では日本のアニメを取り巻く環境は様変わりしていると思います。その変化を見守りつつ、これからもアニメを見続けていきたいと思います。以上です。

サンタクロース伝説の見事な換骨奪胎【クロース】感想

f:id:inosuken:20200321121131j:plain

 

80点

 

 

 2019年のアニー賞を総なめにし、アカデミー賞にもノミネートされたNetflix作品。昨年は実写では『アイリッシュマン』や『マリッジ・ストーリー』が製作、公開されて非常に高い評価を獲得し、いよいよNetflixの存在感が大きくなってきたことを感じさせる年でした。とはいえ、私は本作については配信当初はそこまで観るつもりはなく、しばらく経って、観た人が絶賛しているということで興味を持ち、鑑賞した次第です。

 

 本作で目を見張るのは、その映像技術です。映像自体は手描きの2Dなのですが、新しい技術により、影の付け方で立体的、つまり3Dに見えるようになっているのです。初めて鑑賞したときは事前知識ゼロで観たので、本気で3Dだと思っていました。そのくらい良くできているのです。3DCG全盛期に敢えて手描きを選択するという姿勢だけでも本作を評価したくなります。

 

 タイトルの「クロース」から何となく分かるように、本作はサンタクロース伝説を元にした話です。このサンタ伝説の換骨奪胎が非常に上手い作品だなと思いました。例えば、サンタがプレゼントを渡す基準が「良い子」である点。本作では2つの村が特にこれといった理由もなくいがみ合っているのですが、このルールを適用させることで、子ども達に「良いこと」をさせるように促すのです。これだけだと利己的な行動ですが、本作の素晴らしい点はこの子どもの「良いこと」が次第に大人にも伝播し、村全体がお互いに助け合うようになることまで描いている点です。本作で繰り返し言われる「本当に欲のない行動は人を動かす」を地で行く内容で、ちょっとしたことから負の連鎖が起こりがちな世の中全体に対し、「こうすれば世の中は良くなる」というとてもシンプルな回答を示しています。

 

 後、ここで最初に行動を起こすのが「子ども」である点も素晴らしいと感じています。何故なら、大人のいがみ合いというのは、子どもには関係がないから。本作ではこうした純粋な子どもの姿が印象的に描かれています。

 

 本作は1人のダメ人間が1人前の人間になるまでの成長譚としてもオーソドックスで、よく出来ています。「早く帰りたい」という一心で、つまり己の欲のために行動していた人間が、初めて心からの「欲のない行い」をし、その結果として2つの村を仲直りさせるという話なのです。

 

 本作ではこの主人公を通し、我々「大人」が本当に必要なものは何か、を教えてくれる作品だと思います。主人公は何か特別な力を持っているわけではありません。最初は『ラマになった王様』の主人公みたいな、本当にただのぐーたらな人間でした。だからこそ、人とのふれあいで成長し、その果てに己の良心に従ったラストの行動は、我々「大人」にとっても大切なものは何かを思い起こさせます。そしてそれ故に、我々の胸をうつのだと思います。

 

 「本当に欲のない行いは、人の心を動かす」この言葉が意味するところを、本作は教えてくれます。とりあえず、私はこれからはサンタクロースの存在を信じて生きることにしました。

 

 

アカデミー賞を争った仲。

inosuken.hatenablog.com

 

 アカデミー賞を争った仲その2。

inosuken.hatenablog.com

 

組織の中で、自身の信念を貫いた男たちの物語【フォードVSフェラーリ】感想

f:id:inosuken:20200321115437j:plain

 

91点

 

 

 鑑賞したのは1月なのに後回しにしまくってしまってこの時期になってしまいました。まだこの時期に観て感想書いてない映画が多いので、早めに何とかしたいなと思います。

 

 さて、本作は『LOGAN』を監督したジェームズ・マンゴールド監督の最新作になります。私は実は彼の作品は鑑賞したことがありませんし、何なら車にも全く興味がありません。それでも鑑賞しようと思ったのは予告が面白そうだったのと、マンゴールド監督の作品は評価が高い作品が多かったためです。アカデミー賞にもノミネートされてるしいい機会なので鑑賞した次第です。

 

 本作は素晴らしい「マン映画」です。「フェラーリに勝つ」という目的の下共に仕事をする2人の一匹狼が組織委員会と対立し、その過程で絆を深め、偉業を成し遂げていく話です。本作の大筋は「フェラーリに勝つ」ことよりもこの2人が絆を深めることに焦点が置かれていて、それはほとんど少年マンガです。それもジャンプとかマガジンとかの。この2人、一匹狼なので最初は我を通そうとしていて対立してばっかりなんですけど、そんな2人が対立して、喧嘩して、仲直りして絆を深め合う姿は本当に観ていて胸アツなんです。しかもこの2人は、彼らだけが到達し、彼らだけが知っている世界を共有していて、だから絶対的な絆を結べるのです。そしてシェルビーはマイルズに自身の夢を託しているというのも胸アツ。

 

 

 そしてそんな2人の前に立ちはだかるのはフェラーリ・・・ではなく、フォードの組織委員会という組織です。要するに池井戸潤の作品と同じです。彼らは組織の論理の下、様々な思惑を巡らせ、2人のレースにかける純粋な思いに横やりを入れてきます。彼らの多くは組織運営しか頭になく、「何も見えていない」のです。そんな組織の人間達に対してマイルズとシェルビーの2人とその周りの人間は反発し、自分たちのために仕事をしていくのです。このVS組織員会という構造で、より2人の特別な関係感が強調されていると思います。

 

 ただ、本作は「組織=悪」のように単純化しては描いておらず、組織の中にも彼らに理解を示してくれる人間がいることもきちんと描いています。リー・アイアコッカなんてその代表的な存在ですし、白眉はヘンリー・フォード2世を車に乗せたときのシーンです。あそこは凄く笑えるシーンなのですけど、同時に彼の思いもしっかりと理解できるように描かれていて、社長の人間としての奥行きが見える名シーンでした。

 

 また、本作はもちろん映画として出来も凄く良くて、シーン毎の人物配置とか画面の切り取り方とかマイルズとシェルビーの喧嘩や、レースのコース説明とかに表れてる演出の丁寧さとかもそうなのですが、とにかく素晴らしいと思ったのは「ほとんど本物を使っている」という点です。本作のレースシーンにおけるレース場や車は全て本物らしいのです。だから迫力がけた違いに凄い。CG全盛期なこのご時世に本物を使って撮影をすることで、CGでは出せない迫力を出しているのも素晴らしいなと思います。しかも「運転手目線」のシーンもあったりして、マイルズが見た世界を観客と共有できる作りなのもいい。

 

 以上のように、実際の本物を使った撮影、男2人の友情と、およそ現代的な映画ではなく、古臭い内容の映画ですが、しっかりした演出と演技の素晴らしさで本当に一級品の作品になっていたと思います。こういう映画は定期的に観たい。

 

 

 クリスチャン・ベール無双映画。

inosuken.hatenablog.com

 

 こっちもある意味「マン映画」。

inosuken.hatenablog.com

 

問題もあるけど、パニック映画として普通に面白い【AI崩壊】感想

f:id:inosuken:20200320154901j:plain

 

65点

 

 

 『22年目の告白』『ビジランテ』を監督した、入江悠監督のオリジナル作品。近年の入江悠監督の作品は私が鑑賞した範囲ではどれも素晴らしい作品で、監督の作品は必ず観る、というほどではないのですが、時間の余裕があれば観ようかなと思ってはいます。本作も、予告から漂う何とも言えない「大作日本映画」な感じに危険な匂いを感じていたのですけど、思えば『22年目の告白』も大作でしたし、入江監督のインタビューも読んだりすると結構力を入れて作ってるみたいなので、ひょっとしたらひょっとするかもしれないと思い、鑑賞しました。

 

 結論から書くと、何といいますか、良くも悪くも映画秘宝のインタビューで監督が好きだと言っていた80年代パニック映画みたいな雰囲気の作品で、頑張っている点もあるのですけど純粋な出来そのものに関しては「微妙」な作品でした。酷評するほどではないですけどね。言うならば「鑑賞しても別に損はしないけど得もしない」な作品です。

 

22年目の告白-私が殺人犯です-

22年目の告白-私が殺人犯です-

  • 発売日: 2017/09/06
  • メディア: Prime Video
 

 

 まずビックリしたのは、予告で散々強調されていた、「AIが人の命を選別する時代」というもの。これ別に社会システムとして最初からそうなっているのではなく、AIが暴走してそうなった、というだけの話でした。私は本作はこういうシステムの社会を描いたディストピアSFだと勘違いしていたので、知ったときは「違うんだ」とやや拍子抜けしました。

 

 拍子抜けはしたのですけど、主人公が犯罪者として特定され、逃げていくという状況が組み立てられていく最初の1時間はとても楽しく観れました。医療AI「のぞみ」の誤作動によって次々にシステムが壊れ、パニック状態が作られていくくだりは正直言ってかなりワクワクしましたし、そこからの逃亡劇も(警察官が皆ポンコツというのは置いても)、中々しっくりくる理由で監視の目をかいくぐって逃げていました。こういう大規模なパニック映画というのは日本映画では中々作られず、作られても理屈とかがアレな出来の作品が多いので、この点がしっくりくるのは好印象です。また、カークラッシュの車とか「のぞみ」のセットは本物を使っており、頑張りが随所に観られるのもポイント高いです。

 

 さらに、最先端のAIに対するアナログというテンプレもしっかりやってくれます。これに関しても警察官が無能である点は置いときます(ただ、この点に関してはAIに頼り切りだと肝心なことを見逃すという描写ともとれますが)。その代表格が三浦友和演じる老刑事で、前時代的な足を使う捜査と若干のセクハラ発言で広瀬アリスと捜査をします。この点も良かったです。

 

 

 そして本作には、現在の日本の社会問題を反映させた内容も盛り込まれているのもポイント。入江監督は自身の監督作では社会問題を盛り込むことが多いため、それが今回も発揮されています。真犯人の目的は思想的な意味で今のマイナンバー利用をさらに凶悪にした完全な監視社会のそれですし、副総理が進めている政策は露骨な選民政策です。現在の日本では制度上ではこんな露骨なことにはなっていませんが、ネット上の発言とか現内閣が進めている政策(社会保障の部分的な削減とか)を見るとこういうことをしたいんだろうなと思ってしまうことが何回もあり、世の中の空気的にも「自己責任」の空気が蔓延しているので、この映画で描かれていることが現代社会の隠喩に思えてしまいました。

 

 このように、社会問題をしっかりと描き、パニック映画としても中々の面白さもある本作ですが、後半から展開がもたつき気味になり、一気に失速していきます。松嶋菜々子のシーンの使いまわしはくどいですし(3回目はちょっと笑った)、真犯人の特定の下りは犯人が証拠もないから黙ってりゃいいのにべらべらと動機を話しだし、しかもそれが中継されて犯行がバレるっていう「お前本当にAIのスペシャリスト!?」って思ってしまう昭和展開だし、そもそもその目的達成のために今回の事件は起こす必要が無いのではとか、最後は台詞の応酬で演説合戦になるし、特殊部隊は銃撃ち過ぎだしと、突っ込みどころも満載です。ラストのアレも冗長だなと思いました。

 

 以上のように、頑張ってはいるけど作りが甘いなと感じた映画でした。もう1度書きますが酷評するほどではなく、値段分には楽しめます。

 

 

入江監督の作品。こっちは本当に傑作です。

inosuken.hatenablog.com

 

 AIが暴走するとこうなる?な世界。

inosuken.hatenablog.com