暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

「原作の映画化」としては上手く行ってるんじゃないですか?【夏への扉-キミのいる未来へ-】感想

夏への扉 ―キミのいる未来へ―

 
57点
 
 
 ロバート・A・ハインライン原作のSF小説の古典「夏への扉」の映画化作品。監督は三木孝浩さん。ハインラインの古典を日本でリメイクする。これだけ聞くと完全に地雷案件なんですけど、監督は三木孝浩さん。一応、彼の実力は承知しているつもりだったので、どのようなリメイクになるのか、怖いもの見たさもあり鑑賞しました。
 
 まず言っておくと、「夏への扉」の実写化としては、意外と上手く出来ている、ということです。物語の骨子はそのままに、ラストを三木監督が数多く手がけている恋愛映画的な内容に落とし込んでおり、なるほどなと思いました。また、舞台を日本に移しているのですが、その変換も上手くいっています。感心したのが冒頭で、いきなりTV画面が映り、「三億円事件の犯人が捕まった」という架空のニュースが入る点。ここから、本作の世界が我々が今いる世界とは別の世界線の話なのだということが分かり、話の内容が一気に呑み込みやすくなりました。話も原作をそのままなぞっており、違和感はありません。
 
 原作との大きな違いは、藤木直人演じるPEETです。劇中、彼は主人公についてまわり、バディものの様相を呈していきます。このPEETの存在は結構よく、未来の世界の説明もしてくれますし、ストーリーの中にコミカルな要素を加えてくれます。更に、原作にはなかった力技も駆使してくれるため、映画的な見せ場もある程度作ってくれます。
 また、本作は原作からの現代的なアップデートもある程度行っていて、最大の問題である主人公ロリコン問題に関しては、作品全体を恋愛映画に振り、清原果耶という、現代最高の若手女優の1人をキャスティング。年齢を高校生に設定し、その上で最後は彼女の自由意思に任せています。これで大分問題が中和されていたと思います(まぁ、「高校生・清原果耶がオタク男性を甲斐甲斐しく世話してくれる」というシチュエーションが結構親仁の妄想感あるけど)。
 
 とまぁ、ここまでは一応褒めたつもりなんですけど、問題が多い映画でもあるんです。原作を読んでいれば、私のように「原作からの映画化」という点で楽しむこともできたと思いますが、未読の方からすれば、内容は「ドラえもん」とは「シュタインズ・ゲート」みたいなもんだし、しかも時間軸は結構単純なので、物足りないかと思います。また、原作が持っていた問題点について、特に女性観がヤバいんですけど、そこがあまり改善されてない。つまりは奈緒周りですね。何ていうか、今時こんな「ザ・悪女」なキャラ、描いても仕方ないだろうという。何だよ、冒頭の「セックスの後です」みたいなあのダサいショットは。悪女描写もテンプレ通り越してて笑っちまったぞ。原作が勧善懲悪の世界なので仕方ないのかもしれませんが、ロリコン問題を改善しているんだから、この辺も改善しようよって言う。ここがすごく気になった。
 

 

タイムトラベルもの。

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これもタイムトラベル。

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老いの恐怖【オールド】感想

オールド

 
70点
 
 
 『シックス・センス』で広く知られる、M・ナイト・シャマラン監督の最新作。前作『ミスター・ガラス』で見事、自身の物語を世界に拡散させた彼が次に放ったのは、やっぱりスリラー。しかも、「とあるビーチに来た人たちが急速に老いていく」という、やっぱり「トワイライト・ゾーン」的な、ワンアイディア1点突破型映画。とりあえず、シャマランの大ファンというわけではないけども、公開されたら一応観る程度の人間なので、今回も鑑賞しました。
 
 本作の主な舞台となるビーチですが、これにはいくつかの重層的な意味合いがあると思いました。1つは、これが「人生」のメタファーとなっていること。登場人物達は急速に老いていくわけですが、そこで多くのことを体験します。劇中で描かれたことは、実人生でも起こることであり、老いていく中でそれを急激に経験していく登場人物(というより、主人公一家)の姿は、人生の縮図として見ることができると思います。そして、これは映画という、媒体にも繋がってくることです。映画は、人生を2時間に圧縮してみせることも可能な芸術です。劇中では1日半くらい経っているのですが、それを私たちはさらに約2時間に圧縮して観ているのです。それはさながらリアルタイム進行劇のようですし、一家の人生を覗き見ています。こう考えると、彼ら彼女らを案内したのが、シャマラン自身だったことにも大きな意味があるのだろうと思います。
 
 第2に、ビーチは、「世界の縮図」だということ。本作では多様な人種がビーチに集められるのですが、これによって、ビーチが世界の縮図として機能していると思いました。分かりやすい点では、黒人のラッパーに絡む白人はB.L.M運動の反映だろうと思いましたし、疑心暗鬼になってお互いを攻撃し合うこともそうだと思います。この「世界の縮図」の要素によって、上述の「人生」のメタファーとしての機能もよりはっきりと浮かび上がります。
 こうした舞台の中で、「老い」という絶対回避不可な「終わり」が襲ってくるスリラーを仕立て上げています。『ヴィジット』では、「老い」を不気味なものとして捉えていましたが、本作では、シャマラン自身が老いたためか、『ヴィジット』は傍から見た「老い」の不気味さを描いていたのに対し、本作では、「自身が老いていく」恐怖を描きます。「老い」による身体能力の変化がそのまま恐怖演出に繋がる作りはとても良かったです。中でも素晴らしかったのは、終盤の、視力が落ちて、視界がぼやけている中で、襲撃者が迫りくる恐怖演出でした。しかし、この「老い」への恐怖が、最終的に受け入れるものとして認識が変わっていったという点がとても面白い。これは、シャマラン自身の考えの変遷なのかもしれないと思いました。つまり本作は、シャマラン自身の人生観の側面もあると思います。
 
 後、面白かったのが、シャマラン映画にいつもある、「世界の真実を知った人間」が、最初からいて、その子どもが主人公を助ける点。本作は、いつものシャマラン映画とは違って、どんでん返し的な展開が完全にとってつけたような感じなのです。上述の人生観の変化らしきものとも合わせると、彼も、作家として、人としてネクストステージに立ったのかな、と思いました。
 
 まぁいくら何でも細部が緩すぎるとか言いたいことはありますけど、私は楽しみましたよ。
 

 

シャマラン永遠の代表作。

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「老い」を別方向から捉えた映画。

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ジェームズ・ボンドの物語の完結【007 ノー・タイム・トゥ・ダイ】感想

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

 
77点
 
 
 2006年の『カジノ・ロワイヤル』から15年。結果的にボンド就任期間としては歴代最長となったダニエル・クレイグの、最後の『007』です。おそらく、新型コロナウイルスの影響をモロにくらってしまった作品で、本当なら昨年の2月14日に全世界公開されるはずだったのに、延期に延期を重ね、ようやく公開されました。この期間、実に1年8カ月。その間映画館には本作の予告が流れまくっており、もう何か、映画泥棒クラスに馴染みが深い作品になってしまいました。私はクレイグ・ボンド世代なので、彼の最終作は見逃す手はない、ということで鑑賞しました。
 
 ダニエル・クレイグの『007』は、『007』という作品を脱構築してきた異色のシリーズでした。それまで映画化権を取得できていなかった「カジノ・ロワイヤル」の原作映画化権を取得できたことで、「全てを最初から作り直す」ことができたため、『カジノ・ロワイヤル』ではこれまでのボンド像とはかけ離れた、荒々しい姿を披露。『ボーン』シリーズを彷彿とさせるようなアクションで、ジェームズ・ボンドのオリジンを描いてみせました。直後のストーリーである『慰めの報酬』を挟み、シリーズ最大の衝撃作、『スカイフォール』を発表。「007」を『007』で語ってみせた本作により、見事にボンドの再定義を行いました。続く『スペクター』では、権利関係で出演させることができなかった敵、スペクターを出し、『スカイフォール』とは違った、従来の『007』に近い内容の作品を生み出しました。
 『スペクター』から本作までの6年間で、時代は大きく変わりました。映画界では、ハーヴェイ・ワインシュタインの性的暴行の告発に端を発した「#MeToo」運動の盛り上がりと、それに伴う女性の地位向上。『007』は時代との戦いの歴史だったとは言っても、作品のコンセプト的には真逆だと思うのです。そんな中公開されるという本作は、どんな内容を見せてくれるのか、と、結構期待して観たんです。私は。
 
 「ダニエル・クレイグボンドの集大成」としてどうだったのかというと、色々な側面があるとは思うのですが、まずはボンド像です。これは、『慰めの報酬』までの荒々しい雰囲気と、『スカイフォール』以降のスマートな感じを上手く融合できていたと思っていて、特に素晴らしいなと感じたのは、クレイグ・ボンドに圧倒的に欠けていたユーモアを発したりとかした点ですね。基本クレイグ・ボンドは真面目一辺倒で、いつも相対化されていた印象なので。また、画面のルックに関してはサム・メンデスのものを継承し、特に冒頭のイタリアを広角レンズで捉えたショットは全てが素晴らしかったです。さらに、アクションは前半の『ボーン』シリーズのような肉体を駆使したものと、後半の秘密兵器を使い分け、上手く同居を図っています。やはり白眉は冒頭のイタリアになるのですけど、バイクアクションと、アストン・マーティンに乗ってからの機銃掃射の素晴らしさたるや、です。また、中盤のキューバでのアクションや、後半のワンシーン・ワンショットなど、非常に目を見張るアクションが多かった印象です。
 
 また、話そのものも、従来の、他の『007』シリーズでは行われてこなかった、「ジェームズ・ボンド」個人を掘り下げた内容になっていました。先述の通り、クレイグ・ボンドは、「007」というアイコンの塊みたいな存在を再定義し、代わりに「ジェームズ・ボンド」という個人を掘り下げたシリーズでした。その最終作として、本作のボンドは、「国」のためではなく、「ジェームズ・ボンド個人」として行動します。「007」という殺しの許可証は「ただの数字」とされ、女性が大活躍します。余談ですが、アナ・デ・アルマス演じるパロマは最高でした。10分しか登場してないのに完璧に魅了されました。その結末は、彼の死となるのですが、「個人の人生を全うする」という、クレイグ・ボンドの結末に沿っているといえばいるのかもしれません。
 以上のように、良い点もあるし(特にOPまでは100点)、狙いは分かります。しかし、不満点も多いのです。まずは何と言っても脚本ですよ。本作は上映時間が164分という、シリーズでも最長のもの。製作側は「ボンドの活躍を濃密に描く」と言っている記事を見ましたけど、要はこれ、「必要な段取りを踏んだから」以上の理由は無いんですよね。クレイグ・ボンドのシリーズに出てきたキャラを一通り登場させ、その上で、「シリーズの総括」としてこれまでの「伏線」らしきものを回収していく、という段取りを踏んでいただけなんですよ。だからあんなに長くなったし、作品のテンションを後半になると維持できていない。
 
 それで面白くなればまだ良いし、本当の意味でクレイグ・ボンドの総決算になるならそれはそれで良かったんです。しかし、本作の内容は、結局は『スカイフォール』であり、その先の『スペクター』なんですよね。敵であるサフィンは何度観たか分からない「鏡像関係」で(能面をつけているという点でも、それは意識的だと思う)、それ以上でも以下でもない薄い悪役。何がしたいのかよく分からないし、やりたいことも台詞で説明するだけというね(製作上の問題もあったのかもしれませんが)。まぁ一応、今回の敵は「こうなるかもしれなかったジェームズ・ボンド」であり、『スカイフォール』は「こうなるかもしれなかった007」であったことを考えれば納得はできるんですけど、にしても、もうちょっと何がしたいとのかとか描こうよって言う。しかも、「ジェームズ・ボンドとして生きる」って言う点では、『スペクター』でその結末に達しているため、蛇足感は否めません。後、ラストのウエットさはちょっと引いた。
 
 また、これは本作というよりも『クレイグ・ボンド』全体に言えることなのですけど、このシリーズは特段意味付けがされていない、フラットな『007』を描かなかったよな、という点も不満です。どの作品でも相対化とか内省的な話はするのですが、それを経て、ベテランとなった彼の活躍を描くことがありませんでした。一番惜しかったのは『スペクター』だと思うのですが、これは非常に惜しいことに、クリストフ・ヴァルツに「鏡像関係」の意味を持たせてしまったため、やっぱり話の方向性が内省的な方へ触れてしまいました。意欲的な試みが多く、面白いシリーズではありましたが、内省的な話を多くやりすぎてしまい、真の意味で「今の時代の『007』」を作れなかったなという印象です。
 まとめますと、私は本作に関しては、「ジェームズ・ボンド版『スカイフォール』がやりたかったのかな」という狙いは汲むのですけど、そのために脚本が段取り臭いのが気になるのと、それなら『スペクター』で終わりでよかったんじゃね、と思います。ただし、アクションは見応えがあり、冒頭は100点ですし、劇中でも何度か印象的なアクションがありました。また、ボンド像に関しても、前半と後半の融合が上手くなされていたと思います。さらに、シリーズ全体の不満として、「全盛期のボンドを描いてくれなかった」という点があります。ただ、この点については本作は惜しいところまではいっていて、上述の良い点もあるため、「最終作」という触れ込みでなければ、ひょっとしたらこの望みを叶えてくれたかもしれないです。
 

2021年夏アニメ感想①【小林さんちのメイドラゴンS】

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☆☆☆☆(4.2/5)
 
 
 2017年に放送された「小林さんちのメイドラゴン」の続篇。制作はもちろん、京都アニメーション。前作の監督である武本さんは、「シリーズ監督」としてクレジットされています。前作は好きだったので、続篇である本作も視聴した次第です。
 
 本作では、作品全体のテーマである「異種間コミュニケーション」をより掘り下げていました。小林さんとトール、カンナと才川、滝谷とファフニール、ルコアと翔太君という、組み合わせの関係性をより深く描き、少しずつ両者の距離を縮めていく様子を描きます。本作では新キャラであるイルルが出てくるのですが、彼女も小林さんに諭され心を開き、タケトや駄菓子屋での勤務を経て、異種間コミュニケーションを深めていきます。前作で構築した関係性をさらに深化させようという作りは、続篇として正統派なものです。原作のクール教信者さんは「旦那が何を言っているか分からない件」でも、夫婦と、友人たちのコミュニケーションを描いてきたので、この辺に同じ精神を感じます。
 
 本作を見ていて面白かったのは、前作以上に、トール達の世界についての描写が増えたことです。前作では半ばギャグ的に珍妙な植物やアイテムが出てきたり、混沌勢や調和勢などの派閥も、障り程度にしか触れられませんでした。前作に関しては、原作未読な身としては「ドラゴンが人間界に毒される日常系」と捉えていたために、数々の設定は話の背景でしかなかったのかなと思っていました。そしてこれによって、「心地よい異種間コミュニケーション」がとれていたな、と思っておりました。ですが、本作ではこの辺の事情が明らかにされ、トール達混沌勢が如何にして人間と接してきたかが感情と共に語られていきます。これによって、前作から描かれてきたトール達と小林さんら人間との関わりにより深みが出て、テーマがハッキリとした印象です。基本的に、テーマの深化というのは良いんですけど、ただ、これによって、全編通してシリアスな内容になってしまっていて、前作にあったような、「基本コミカルな日常回」が少なくなっちゃったのが少しだけ残念。前作は3話と11話がめちゃくちゃ好きだったので、ああいうトーンの話をもっと見たかったなと。
 また、「異種間コミュニケーション」として面白かったのは、エルマの存在です。エルマは、もともと人間に友好的な調和勢なためか、トールという、他の派閥のドラゴンとのコミュニケーションが描かれています。派閥が違うということは殺し合いに発展しかねないドラゴンたち側の交流をも描いていました。ちなみに、このトールとのガチバトルは凄まじく、このご時世なのにドラゴンをCGではなく手描きで描いていて、それでいて躍動感とスピード感のアクションを展開しており、京アニの底力を見せつけられた気持ちになりました。
 
 アニメーション的には、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」とはまた違った、ポップで可愛らしい作画はそのまま。また、上述のバトルを始め、2話におけるトールとイルルのガチバトルとか、ド派手なアクションから、日常の芝居まで、非常に丁寧な動きを見せてくれます。ここには京アニの健在ぶりを見ることができて心底ホッとしました。演出については、監督の変更もあり、より感情が前面に出るようになった気がします。抽象的ですけど。
 
 結論として、京アニの健在ぶりを確認できた作品でした。3期待ってます。
 

 

京アニ作品を2つ貼っときます。

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2021年秋アニメ視聴予定作品一覧

 皆様。こんにちは。夏アニメの消化が滞っており、「小林さんちのメイドラゴンS」以外は2~5話遅れで視聴しているいーちゃんです。なので秋アニメが始まるという実感がありません。気付いたらもう9月の後半でした。月日が流れるのは早いものですね(遠い目)。

 

 夏アニメは始まる前は不作だなんだと騒ぎましたが、終わり近くになってみると何やかんやで面白い作品が多く、充実したアニメ視聴をすることができました。現状、完走しそうなのは7作品になります。ただ、視聴が滞っているので、感想書くのは大分先になりそう。映画の感想もたまってるのに・・・。

 

 ともあれ、秋アニメに向けて、視聴予定の作品と期待などを書いていきたいと思います。では、行ってみよう。

 

 期待値は、◎=期待大、〇=楽しみ、△=とりあえず見る、です。

 

春アニメ視聴継続作品

「SHAMAN KING」

 

夏アニメ視聴継続予定

「白い砂のアクアトープ」

 

秋アニメ視聴予定作品一覧

「86ーエイティシックスー(第2クール)」 〇

「吸血鬼すぐ死ぬ」 △

「王様ランキング」 〇

「海賊王女」 〇

「境界戦記」 △

「逆転世界ノ電池少女」 △

古見さんは、コミュ障です」 〇

「極主夫道(2期)」 〇

「サクガン!!」 △

「先輩がうざい後輩の話」 〇

「tact.op.Destiny」 △

「でーじミーツガール」 △

「ブルーピリオド」 〇

「見える子ちゃん」 〇

無職転生異世界行ったら本気出す~(第2クール)」 〇

ルパン三世 PART6」 ◎

鬼滅の刃 遊郭編」 〇

スター・ウォーズ:ビジョンズ」 ◎

「スーパー・クルックス」 〇

「かぎなど」 △

 

 配信のみの作品を含め、全20作品。中でも私的最注目作品は、やっぱり「ルパン三世PART6」ですよ!今回はミステリがメイン、ということでシャーロック・ホームズが絡んでくるうえに、脚本家もミステリ界の大御所から、まさかの押井守まで揃えている充実ぶり。小林清志さんのラスト次元、そして大塚明夫さんの新・次元へというバトンの受け渡しも見逃せません。

 

 で、後は日本のアニメーションクリエーターが総出で作った感のある「スターウォーズ:ビジョンズ」、ネトフリオリジナルアニメの「スーパー・クルックス」、漫画が話題なので1巻だけ読んだことがあるのと、会社がWIT STUDIOな「王様ランキング」、侍に海賊と色々盛りまくりな「海賊王女」、第1クールが良かった「86-エイティシックスー」、漫画が話題な「古見さんは、コミュ障です」、原作2巻だけ既読な「ブルー・ピリオド」などが楽しみなあたり。「鬼滅の刃 遊郭編」も楽しみっちゃ楽しみなんですが、他の人の「好き」感が凄いのと、放映権を獲得したフジテレビを始め、各商品とのプロモーションをやりすぎで若干熱が冷め始めている感じです。

 

 変わったところだと、「先輩がうざい後輩の話」と「吸血鬼すぐ死ぬ」は要注目かなと。前者は「幼なじみが絶対負けないラブコメ」で評判を一気に落とした動画工房の新作という点で、後者は制作会社がマッドハウスなのですが、「当たりの方」か「外れな方」か気になるところです。原作は話題なんだけどね。

 

 以上が秋アニメの期待です。例によって、皆さんの評判によって、見る作品を増やしていこうと思います。それでは。

「完全」と「不完全」の話【ミッチェル家とマシンの叛乱】感想

ミッチェル家とマシンの反乱

 
82点
 
 
 フィル・ロードクリストファー・ミラーの天才コンビのプロデュースによるオリジナルアニメーション映画。このコンビには裏切られた事が無いので、鑑賞しました。
 
 本作は「完璧」と「不完全」の映画だと思います。本作の主人公一家は、「完璧」を目指そうとしているのですが、どこかチグハグ。キャラデザとか着ている服もチグハグ。比較対象として「完璧」なお隣さんがいるのですが、あちらが意図的に「完璧」であるため、よりチグハグさが際立ちます。「不完全」という点で興味深いのは、ケイティが映画作家を目指し、自身の動画をせっせと作っている点。そして、映画自体が物凄く「動画っぽい」んですよね。編集の仕方とか、意図的にYoutubeとかで公開されている動画に寄せているシーンも多く、作品全体が「ちゃんとした」映画ではなく、そのへんにあるミーム動画っぽさを備えているのです。そこにテンポの良いギャグも入ってくるので、より「下らなさ」が強調されます。
 
 「完全」と「不完全」のテーマは本作の構図にも表れています。チグハグ一家が向き合うのが、「完全」であるAI、PALという点です。動機も「自分を蔑ろにした」というもので、要は嫉妬なんですけど、このPALが目指す世界は、「完全」なものです。しかし、それをチグハグなミッチェル家が、打ち砕く。まぁミッチェル家はビジュアル的にチグハグなだけで、最後にはチグハグだった心も一致し、ある意味「完全な」家族になるわけですが。私はこの辺に、「個人があるがまま、そこにいて良いのだ」的な多様性のテーマを見た気がしました。
 
 ただ、親父はダメだろと思います。いくら娘を想っているとはいえ、PCとかスマホを壊すのはやりすぎ(これが結果的に家族を救うきっかけになるとはいえ)。しかも大して反省してないし。ケイティがいくら許しても、これは看過できなかったな。

3.11と絆の物語【岬のマヨイガ】感想

岬のマヨイガ

 
52点
 
 
 「のんのんびより」シリーズの川面真也監督と脚本家の吉田玲子さんのコンビが贈り出した、アニメーション作品。原作は柏葉幸子さんによる同名タイトルの児童文学。とりあえず、「のんのんびより」コンビの作品ならば観といた方が良いかなと思って鑑賞しました。
 
 ちょっと評価が難しい作品かなと思いました。本作が目指そうとしたのは、おそらくは原恵一だとか、片渕須直的と言いますか、「日常芝居で見せる」という、ある意味でアニメーションの本命であるところの「動き」を重視した作りの作品だったのだと思います。その証拠と言いますか、本作は全体的にかなり抑制のきいた演出がなされ、淡々と進みます。ここは作り手の覚悟と言いますか、気合が伝わってくる点です。そもそも、川面監督の代表作である「のんのんびより」もれんちょん達の周囲のみで話が進む「何気ない日常」を淡々と描いてみせていた作品で、本作と性質が似ています。映画館はTVと違って、スクリーンに集中できる環境が整っているので、「動き」を堪能させるというには絶好の空間です。上手くいっていれば、「動き」そのものを観ているだけで楽しめるような、非常に映画的な?作品になっていたと思います。
 
 本作のこの狙いは、一部は成功してはいます。例えば、冒頭でマヨイガにやってきたひよりのリアクションとか(そもそも、ひよりは声が出せないから、動きで表現するしかない)、中盤に出てくる河童達がご飯食べてるシーンのワチャワチャ感とか。そして、最も素晴らしかったのが何度か挿入される昔話のアニメーション。現代アートチックな超絶作画が楽しめます。湯浅作品でお馴染みの大平晋也さん率いるサークルが参加したからだそうで、ここだけ別次元のクオリティで、観ていて楽しめました。
 
 ただし、上映時間中、ずっと映画館に堪えうるような画面作り、アニメーションだったかと言えば微妙で、抽象的な言い方で申し訳ないのですけど、画面がTVアニメの領域を出ていないなと思いました。なので、観ている間、ずっと「これ、TVアニメでいいのになぁ」と思いながら観てしまっていました。
 脚本的にもちょっとなぁと思う点があって、前半と後半で結構違う内容になっているし、チグハグな点もあるんですよね。前半は上述のような淡々とした日常を描いていて、ユイとひより、そしてキワさんという、それぞれ1人きりな存在がマヨイガに集まり共同生活を営む姿を描いています。しかし、後半は河童を始めとした妖怪たちが全国から集まってきて、『妖怪大戦争』的な話になっていきます。ここで本当に『妖怪大戦争』になったら面白かったのですけど、妖怪たちはあくまで一要素でしかなくて、結局はメインの3人が力を合わせて敵を対峙してしまいます。この過程で3人は「家族」となるので必要な展開だったのだとは思いますけど、妖怪たちは消火活動とかしかやってないので、せっかく出したのにもったいないなと思いました。
 
 メイン3人についても、少し掘り下げた方が良いのでは、と思う点はあって、居場所がない存在だった3人が家族として根をはって岩手に住む、という展開は、震災という、何もかもを壊してしまったものから生まれた新しいものとして見れました。ただ、あの3人が「家族なんだから!」と言い出す下りが若干唐突に感じましたし、キワさんの正体が判明していく下りはもう少し何というか、淡々と日常を描いてしまったツケが来てしまった気がします。
 本作は、東日本大震災という、10年経った今でも非常にセンシティブな要素を扱っているのですけど、その題材との距離の取り方が非常に誠実だなと思いました。本作では震災直後の風景が映し出され、それは今観てもショッキングというか、胸にくるものがあります。この日常の暮らしも含め、それらを悲壮的にでも、まして楽観的に描くのでもなく、あくまで淡々と描くことで、誠実な距離を保てているなぁと思いました。どこぞの『Fukushima50』とは全然違う。
 
 そして本作の「敵」は、人々の不安を吸い取り、巨大になっていく存在で、震災直後で先も見えないながらも頑張っている方々が感じていることを具現化したような存在です。しかも敵の狙いが、人々を土地から追い出す、というのも、震災後にそこに住んでいた方々が離れたというエピソードを彷彿とさせます。その不安の塊を打ち払うのが、新しく集まった「家族」であるというのも、震災直後で、乗り越えるために盛んに叫ばれた「絆」を彷彿とさせます。つまり本作は、震災という、何もかもバラバラになった中で、それでも新しくつながった人たちが、先の見えない不安を生きていこうとする姿を描いた作品で、その距離の取り方は素晴らしいと思いました。それでも、日常芝居で勝負、というコンセプトは微妙だったなぁと思います。