暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2022年に読んでよかった漫画10選

 皆様。こんにちは。いーちゃんです。2023年ももう1週間が経ちましたね。今回は、2022年に読んだ漫画10選を発表します。ベスト10というわけではなくて、10選で、ランキングではありません。縛りとしては、「2022年に新刊が出たシリーズ」になります。では、行ってみよう!

 

「あかね噺」

 週刊少年ジャンプ連載中の落語を題材とした漫画。まず、落語の表現が上手すぎる。噺家の噺に客が見入っていく描写、噺家が「場」を掌握する描写が上手くて、「落語」を完全に絵で表現できている。「声」が無いのに、「落語を聴いている」気持ちにさせられる素晴らしさに圧倒された。

 また、それとは別に、落語を題材としながらも、縦軸は「父親を破門した権威に対する挑戦」という、めちゃくちゃ王道のジャンプ漫画というのが素晴らしい。しかも若手集めて大会とか開いちゃってるし。今後が楽しみすぎる。

 

「うみべのストーブ」

 大白小蟹先生の短編集。タイトルにもなっている「うみべのストーブ」を始め、どの話も素晴らしい、珠玉の作品。どの話も、日常の中にあるちょっとした不安に対して、ほんの少しだけ救いを与えてくれるような、そんな内容でした。私は読み終わって、少し、心が温かくなったような、少し前向きな気持ちになれました。

 

「百木田家の古書暮らし」

 冬目先生の最新作。神保町で祖父の古本屋を継いだ次女と、一緒に暮らす長女、三女の暮らしを描いた恋愛漫画恋愛漫画と言いながら、実際にやってることは古本屋業界のあれやこれやだったりして、肝心の恋愛は一方通行だったりする。そこはやっぱり冬目先生で、恋愛よりも今のところは百木田家の暮らしぶりをスケッチ風?に描くのがメイン。これが何とも心地よくて、読んでいて落ち着く漫画。

 

ゴールデンカムイ

 言わずと知れた大ヒット作。2022年完結したので入れた。連載時は終わり方に賛否ありましたけど、単行本化の際に大幅に加筆され、見事に大団円を迎えた印象。アクション、グルメ、ギャグ、ウェスタン・・・ありとあらゆるジャンルを網羅した、エンタメの極致のような素晴らしい漫画でした。

 

「金色のガッシュ!!2」

 「また会おう、ガッシュ!!」

 この台詞で完結した「金色のガッシュ!!」から14年。遂に我々は再会した。リアルタイムで前作を読み、完結まで付き合った身としては、清麿とガッシュの再会はあまりにも感動的だった。「前作を読んでいたときの自分に対し、恥ずかしくない大人になれているか?」と自問しながら読み進めていた。

 

「タコピーの原罪」

 2021年から年を跨ぎ完結した、ジャンプ+発の衝撃作。虐め、毒親など、この世界にあるあらゆる悪意を容赦なく描き出した。最初こそ単純なタイム・リープものかと思っていたが、タコピーの身勝手な「善意」が事態を二転三転四転させ、どんどん最悪にしていく展開に、絶望とともに早く先を読みたいという欲が抑えられなかった。つまりは不謹慎だけど、超面白い。

 

「チ。-地球の運動について-」

 地動説を扱った漫画だけど、あくまで地動説は題材の1つでしかなく、メインは「人間の知性」についての話だと思った。人間の知の歴史は、誤りと訂正の繰り返しで、その時代の人々が「知りたい」と思い、研究したことが受け継がれて、現代の世界に至る。そしてそこには、大量の「血」も流れる。8巻ながら、壮大な歴史物語だったと思う。

 

「ブランクスペース」

 今年完結した、「空白」を巡る物語。2人の少女の友情物語として素晴らしかったけど、何より終わり方が神過ぎた。読み終わって、しばし茫然としていた自分がいた。全3巻というタイトさもあり、大変満足した。

 

「ルリドラゴン」

 週刊少年ジャンプで休載中。人間とドラゴンのハーフであるルリが、ある日突然「ドラゴン化」してしまう漫画。と言っても、「他者と違う」ことから来る差別などは本作では発生しない。ルリのドラゴン化は自然と「個性」として受け入れられる。3話で、ルリがクラスの中に「溶け込んだ」ページが秀逸だった。いくらでもファンタジーに寄れるのにそうせず、あくまでも「ドラゴン化した女子高生の日常」に徹していたのが素晴らしかった。眞藤先生には、無理せずに連載を続けていただければと思っています。

 

ONE PIECE

 出た。2022年、『FILM RED』効果、そして最終章突入効果で何度目かのブーム到来中の本作。実際、ここ数巻は新世界編に入ってから一番面白いし、何より、ワノ国の宴シーンが昔みたいに本当に楽しそうに読めた。申し訳ないけど、新世界に入ってから尾田っちだけが楽しそうで疎外感を覚えていたんだけど、久しぶりに尾田っちと一緒に「ONE PIECE」を楽しむことができた。最終章も駆け抜けてほしい。

 

 

 以上が2022年読んでよかった漫画10選です。選出作品が偏ってるのは勘弁してください。過去作で良かったのは「A子さんの恋人」でした。薦めてくれた友人に感謝。辛い事ばっかなので、2023年も、たくさん漫画を読むと思います。良い漫画に出会えますように。

2022年新作映画部門別ベスト10

 皆様。あけましておめでとうございます。いーちゃんです。先日、新作映画のベスト10を発表しました。今回は、全体ではなく、部門別のベストを発表したいと思います。全体のランキングと被っているものもあります。では、行ってみよう。

 

【海外映画部門ベスト10】

1位『カモン カモン』

2位『トップガン マーヴェリック』

3位『NOPE』

4位『リコリス・ピザ』

5位『RRR』

6位『ウエスト・サイド・ストーリー』

7位『ブラック・フォン』

8位『THE BATMANザ・バットマン-』

9位『13人の命』

10位『グレイマン

 

 1位~8位までは全体のランキングと被っています。だから面白味はないかと思いますが、9位、10位は最後まで悩んだ映画のうちの2本でした。泣く泣く外しましたが、特に『13人の命』は入れといても良かったよなぁ、と思ってます。『グレイマン』は午後ローでやってる感じの観た後に内容を覚えていない系の映画ではありますが、観ている間はとても楽しかった記憶があるので、入れました。

 

【日本映画ベスト10】

1位『ケイコ、目を澄ませて』

2位『THE FIRST SLAM DUNK

3位『ある男』

4位『窓辺にて』

5位『劇場版Re;cycle of PENGUINDRUM[前後篇]』

6位『愛なのに』

7位『さがす』

8位『線は、僕を描く』

9位『すずめの戸締まり』

10位『ONE PIECE FILM RED』

 

 1位と10位は全体のランキングと被ってます。『ONE PIECE FILM RED』が10位なのは、本作が「10位の映画」だからです。というより、「ランキングを作ったとき、必ず一番下に入れる」映画だからです。必ず入れたい映画とも言えます。それ以外では、9位の『すずめの戸締まり』は、新海誠が新たなステージに立った記念碑的作品だと思います。8位は、確かにあっさりしているけど、青春映画の新たな秀作。7位は、日本映画でこのようなノワールができたことに感謝&佐藤二郎が良かったから。6位は会話のテンポから何から、とにかく観てて面白かった。何回か爆笑したし。5位は、11年前の作品を、今の時代に「リメイク」し、図らずも時代とリンクしてしまったことへの畏敬の念。4位は、中盤の稲垣吾郎中村ゆりの会話に戦慄した。3位は、日本にある諸問題を描きつつ、アイデンティティの物語へと帰着させる素晴らしさにやられた。2位は、井上雄彦先生の執念が完成させた一世一代の大傑作。日本アニメ史に確実に残る1作だと思う。1位は、全体のランキングに書きました。

 

【アニメ映画ベスト10】

1位『THE FIRST SLAM DUNK

2位『ギレルモ・デル・トロピノッキオ』

3位『劇場版Re;cycle of PENGUDRUM』

4位『FLEE』

5位『犬王』

6位『すずめの戸締まり』

7位『私ときどきレッサーパンダ

8位『ONE PIECE FILM RED』

9位『四畳半タイムマシンブルース』

10位『劇場版 名探偵コナン ハロウィンの花嫁』

次点『劇場版 からかい上手の高木さん
 
 次点から。観終わってメチャクチャ優しい気持ちになれた作品。10位は、キャラクター映画として完璧な作品。9位は、昨今稀に見る「ちょうどいい」映画。8位は割愛。客観的に入れるとこんなもん。7位は、「女の子」をここまで日本のアニメ的な美少女とは別の「可愛さ」で描けるとは、何か、完全に負けたよ・・・って感じ。6位は、新海誠の新たな傑作。5位は、湯浅監督のライブアニメとして最高だった。4位は、あまりにも過酷な生い立ちをアニメーションと実写で突き付けてくる渾身の作品。3位は、11年前、「何者にもなれない」存在だった私のような存在に、「きっと何者かになれる」と言い切ってくれるノー天気さに感動。2位は、新たなファシズムが台頭する今、そこに抗い、自分の人生を生き切った御伽噺として号泣。1位は説明不要の傑作。何回か泣いた。
 
 以上が、部門別のベスト10です。今年も、良い映画に出会えることを祈って。今年もよろしくお願いいたします。それでは。
 ※『犬王』を入れ忘れるという痛恨のミスを犯してしまったので、修正しました。恥ずかしい(23/1/29)
 

2022年新作映画ベスト10

 皆様。お久しぶりです。いーちゃんです。ブログの更新が最近ずっと滞っていて本当に申し訳ありません。もう映画の記事とか全く上げられていないんですけど、せめて年間のベスト記事くらいは出さなければならんなと思っていますので、発表させていただきますよ。

 

10位『ONE PIECE FILM RED』

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 10位はこちら。ハッキリ言うと、本作はダメな映画です。『鬼滅の刃』『呪術廻戦0』『THE FIRST SLAM DUNK』と比べるのも失礼なレベルの作品ですし、『FILM Z』の方が出来が良いです。その理由は記事に書きました。しかし、それでも、というか、だからこそ、本作をベスト10に入れたい。理由は、本作が出来は悪くとも、「映画館で観る」ことを前提にして作られている映画だということ、そして、「ONE PIECE」という作品を本作で一段階上のレベルに押し上げようという、尾田っち、そしてスタッフの気概を感じたからです。「原作順守のアニメ映画」が多くなっている昨今、これを褒めなくてどうするのか、と思ったので、入れました。

 

9位『THE BATMANザ・バットマンー』

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 9位は最新版のバットマン。まずは映画全体のルックが素晴らしかった。バットマンの心の闇を象徴するような「黒」が画面全体を覆い、彼の苦悩をじっくりと描き出す。そして、最後に、ヒーローとなった彼が希望の明かりを灯すというラストに感動しました。

 

8位『ブラック・フォン』

 8位はジュブナイルとホラーが見事に融合したこちら。小規模ながら、ホラー演出、脚本の妙など、単純に出来が良い作品でした。ジャンプ・スケア演出には本当に驚かされました。キングの『IT』もそうだったけど、やっぱり少年が恐怖の象徴と対峙し、他者の想いを継いで立ち向かうって話は泣けるよね。

 

7位『ウエスト・サイド・ストーリー』

 7位はこちら。アンセル・エルゴートの件で色々とあったけど、やっぱり映画として凄すぎ。スピルバーグはやっぱすげぇや、となりました。全ショットに映画的な快楽とも呼べるパワーが漲っていて、単純な比較はできませんが、旧作よりエネルギッシュな傑作だったと思います。

 

6位『RRR』

 6位はこちら。2人の男の流転する数奇な運命を描いた超大作。全ショットに象徴的な意味があり、画面から滲み出まくっている映画アクションアドレナリン(何だそれ・・・)で感情を揺さぶられまくる3時間。「観る快楽」をここまで追求した作品は中々ない。2022年の映画の中では、『トップガン マーヴェリック』と並んだ快楽作品です。ナートゥは今年のベスト・ダンスシーン。

 

5位『リコリス・ピザ』

 5位はPTA最新作。脈絡とか複雑な構造とかメタファーとか特に無い。ただ2人の男女がくっついたり離れたりを描くだけ。しかし、観ている間、ずっと多幸感に包まれていたし、2人が「走る」シーンには感動していた。2019年で言うところの『ワンハリ』枠。

 

4位『NOPE』

 4位はジョーダン・ピール最新作。いつものジョーダン・ピール作品だと思っていたら、何と『ゴジラ』みたいな怪獣映画だった。しかも、正体が判明してから西部劇的なあがる展開も完備してあるという、エンタメ作品にもなる。そこで活躍する人間達が、それまでの歴史だと脇に追いやられている人間達だという点も楽しんだポイント。

 

3位『トップガン マーヴェリック』

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 3位は還暦を迎えたトム・クルーズの最新映画。恥ずかしながら、本作で初めてトム・クルーズのファンになりました。こんなに純粋に面白いアメリカ映画を映画館で観たのは久しぶりでした。何より、「映画を観る喜び」を追求してくれるトム・クルーズの心意気に痺れました。

 

2位『カモン カモン』

 2位はホアキン・フェニックス主演、マイク・ミルズ監督の最新作。思えば、本作は、観てからずっと頭の中に残り続けていた作品だった。私も今や大人になり、次の世代のための世界を作る立場になったわけだが、子ども達のためにマシな社会にしていなかければならないよなぁ、等と殊勝なことを考えてしまう。それもこれも、本作のインタビューの影響だと思う。本作は、子どもが考えていることを大人が受け止める映画だと思う。思いを受け止めることで、対話が始まる。そうしないと、世の中を良くしていくことはできない。そう思わせてくれる映画だった。

 

1位『ケイコ、目を澄ませて』

 1位はこれ。何というか、観終わって、今年一番の心地よい余韻、というやつに浸れた作品。それは映画自体の出来がいいということでもあるけど、それ以上に、本作を観て、「頑張って生きないとな」と思えたからだと思う。本作の登場人物は、皆逆境にいる。しかし、その逆境を受け入れ、三浦友和のように、岸井ゆきののように、「よし」と言って重々しく、また歩き出す。俺もこんな感じに生きていなかければ、と思えた作品で、こんな気持ちにさせてくれる映画は傑作だと思うので、1位です。映画の出来自体も完璧です。

 

 以上がベスト10です。他に、最後まで入れるかどうか迷ったのは、『THE FIRST SLAM DUNK』、『グレイマン』、『劇場版 Re;cycle of PENGUINDRUM[前後篇]』、『セイント・フランシス』、『ギレルモ・デル・トロピノッキオ』、『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』、『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』、『13人の命』です。アニメ部門、日本映画、外国映画部門は後日発表したいと思います。それでは!

麦わら帽子に受け継がれる意志【ONE PIECE FILM RED】感想

77点
 
 1997年より週刊少年ジャンプにて連載が開始され、今や国民的な漫画となった「ONEPIECE」。原作は今年で連載25周年を迎え、ジャンプ本誌の34号より「最終章」が始まり、売り上げは5億部を突破と、何度目かの盛り上がりを見せています。映画も好調であり、尾田っちが製作総指揮としてかかわるようになった『STRONG WORLD』以降、単独公開作としてはコンスタントに興収50億円を突破するメガヒットシリーズになりました。このように、ただでさえ大ヒットの兆しがある本作ですが、2020年の『鬼滅の刃』以降顕著となったアニメ映画の興収ブーストの機運、そしてちょっと引くくらいの大規模プロモーションも行った結果、公開2日で興行収入22億5423万7030円とかいうバカみたいな記録を叩き出しました。この勢いはお盆期間ということもあったのかウィークデイに入っても衰えず、公開10日で歴代最高成績を誇っていた『FILM Z』を抜く可能性が濃厚となっています。私も「ONEPIECE」に付き合ってもう20数年の男なので、当然鑑賞してきました。
 

あらすじ

 音楽の島「エレジア」。この島で、一人の歌手のライブが開催されようとしていた。その歌手の名前はウタ。彼女はこれまで素性を隠したまま歌を発信していたが、その類まれなる歌声は「別次元」と称され、世界中の人々を魅了していた。そのウタが初めて公の場に姿を見せてライブを行うということで、エレジアのライブ会場にはウタのファンの大観衆が集結し、ルフィ達麦わらの一味も来ていた。そして、遂にウタがステージに姿を現し、ライブが開幕する。

 1曲目の終了後、突如クラゲ海賊団がステージに降り立ち、ウタを誘拐しようとする。だが、その直後にルフィがステージに降り立ち、ウタに駆け寄り親しげに声をかけた。ウタはルフィに気付き、二人は再会を喜ぶ。ルフィとウタは、幼少期にフーシャ村で共に過ごした幼馴染みだったのだ。さらに、ウタがシャンクスの娘であることをルフィが話したことで、会場中が騒然となる。クラゲ海賊団はウタを誘拐しようとするが、ウタは2曲目を歌いながら不思議な能力を操り、瞬く間に海賊を拘束してしまう。その後、ウタはルフィと仲間達を歓迎し、その不思議な能力でもてなす。

 この時、世界中の人を幸せにするためのウタの大きな「計画」が既に始まっていた。そして同じ頃、世界政府や海軍がウタの能力を危険視し、彼女の討伐に動き始めていた・・・。

 
 
 本作は、ハッキリ言って、「ダメな映画」だと思います。エレジアで行われているウタのライブが舞台で、ウタのライブと同時進行で物語が進みます。にもかかわらず、事ある毎に回想や、テーマを盛り込もうとするための乱入があり、その度に説明台詞をまくしたてたりしてストーリーの進行を妨げています。つまりテンポが死ぬほど悪い。アクションはやたら派手だけどそれだけで、全く整理されておらずぐっちゃぐちゃで、他の静的なシーンはキャラが突っ立って状況説明をしているだけという力抜けた作画の連続。キャラも大量に登場する割には整理されずグチャグチャで、麦わら一味が若干埋もれてしまっている。だから純粋なクオリティとしては、『鬼滅の刃 無限列車編』、『呪術廻戦0』に遠く及ばず(まぁこの辺はufotableMAPPA東映アニメーションを比べるのが酷、という点があるかと思いますが・・・)、先日公開された『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の方が、トータルとしてはまだ出来が良いです。
 
 そんな本作ですが、特筆すべき点が3つあります。1つは「ライブ映画」である点です。前述のように、本作はウタのライブと並走して物語が進みますが、観客である我々にも「ライブに参加している感覚」を与える作品になっています。歌を担当しているAdoさんの歌唱力は流石ですが、映画そのものがライブの映像をそのまま流したり、ウタのパフォーマンスをじっくり映すシーンも多いのです。序盤は話が全く動かずに歌ばっかり歌っているので(一応、ノルマ的に麦わら一味の活躍を見せるためのシーンがある。テンポが断絶される点その1)、これにのれるかどうかが本作の評価ポイントの1つだと思います。更に、この作りは、「ライブに参加している感覚」以上にウタワールドに誘い込む、という「ウタウタの実」の能力とも深く連動しており、「観客」である我々もウタワールドに入り込んでいる、という構造を作り出そうとしています。つまり、本作は映画的では全くありませんが、「映画館」という特性をそれなりに活かした作りをしている作品だと言えます。
 
 また、このウタワールドという能力の考察もできます。冒頭のナレーションで言及されるとおり、「ONEPIECE」の世界は弱者には生きにくい世界です。基本的に描かれているのが「海賊」、「海軍」、「世界政府」であるためにこぼれがちですが、「一般庶民」は略奪や暴力に晒される存在だと言えます(一応、ちょいちょい描かれてはいるが)。ウタはこのような世界からの脱却を目指し、世界中の人を「ウタワールド」に引き入れ、暴力も差別も、醜いことがない世界へ行こうとしました。これは中々カルト的な思想です。しかし、最終的には観客自らが現実世界へ戻ることを決意し、ウタワールドから脱出します。我々はエンタメを楽しみますが、それはしばしば現実からの逃避として行うことがあります。しかし、現実に向き合わなければならないのが人生です。そこにどっぷり浸かるわけにはいかない。「夢」はいつか終わるのです。このメタファーと言えなくもないのかもしれない。まぁ、その割には最終的にウタ個人の話になるわけですが。正直、予告を観た段階では「私の歌が皆を幸せにする」という台詞から、カルト感を抱いており、某『二十世紀少年』みたいになったら嫌だな、と思っていたのですが、本作は寧ろそこを批評的に描いていたと思います。
 2つ目は、本作が麦わら帽子と「海賊王に、俺はなる!!」の台詞に新たな意味合いを付与した映画だという点です。劇中、麦わら帽子は一度、ウタによって破壊されます。それをもう一度ウタから託されたとき、麦わら帽子はシャンクスとの約束と意志の継承の証であると同時に、上述のような世界を目指す、ウタの意志継承と約束の証となりました。だからこそ、最後の「海賊王に、俺はなる!!」に新たな重みが付与されています。ちなみに私はこの辺少し泣きました。この点で、本作は原作においても重要な位置づけの作品と言えると思います。
 
 この点は、監督をした谷口吾朗さんの影響もあるかと思います。谷口監督は、個人的には「邪道で王道をやる」みたいな人だと思っていて、王道のプロットを持つ作品でも、一捻り加えてくるのです。そんな彼に監督を依頼したのは尾田っち本人とのこと。「ONEPIECE」の初アニメ化の監督だからという意味もあるとのことですが、彼が監督し、「既存の作品に一捻り加えた」ことで、作品を象徴する物と台詞に新たな意味を付与し、本作を「最終章」へ向けたスタート的な意味合いのある作品に仕上げてみせました。ルフィは10年周期でオリジンが追加されていく主人公ですが、本作でも追加がなされました。
 
 3つ目は、ルフィとシャンクスですね。25年連載している割に全く戦闘シーンが無かった彼ですが、本作では25年分以上のアクションを見せてくれます。赤髪海賊団もここにきてフルで大活躍します。しかも上手いのが、ウタワールドを上手く使い、「シャンクスとルフィは直接会わない」をちゃんとやっている点。トットムジカの下りはわけわかんなかったけど、物量でぶん殴ってきて、最後には割かし訳分からんのがどうでも良くなってました。ルフィもむやみに泣かなかったのは良かった。
 以上のように、本作は「ダメな映画」ではありますが、「麦わら帽子とあの台詞に新たな意味合いを付与してみせた」最終章へのスタート的な内容の作品にはなっています。また、「映画館」という空間を利用した構造にはなっており、「映画館で観る意味」はある作品です。私は楽しみましたよ。でも、初めて「ONEPIECE」を観る人には薦めません。『STRONG WORLD』観ればいいと思います。
 

 

前作。

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記録的大ヒットを成し遂げたジャンプアニメ映画。

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2022年夏アニメ視聴予定作品一覧

 もう7月の後半になってしまいましたが、毎期恒例ということで、「視聴予定作品一覧」を発表します。既に視聴を止めている作品もありますが、一応、発表したいと思います。

 

2022年春アニメ視聴完了作品

「阿波連さんははかれない」

「かぎなど シーズン2」

SPY×FAMILY」

TIGER&BUNNY2」

パリピ孔明

古見さんは、コミュ症です(第2期)」

 

視聴中作品

攻殻機動隊SAC 2045」

サマータイムレンダ」

「コタローは1人暮らし」

 

◎=期待大、〇=楽しみ、△=とりあえず見る

 

2022年夏アニメ視聴予定作品一覧

異世界おじさん」 〇

「Engage Kiss」 △

「KJファイル」 △

「最近雇ったメイドが怪しい」 △

「それでも歩は寄せてくる」 〇

「ちみも」 △

「てっぺん!!!!!!!!!!!!!!」 △

はたらく魔王さま!!」 〇

「風都探偵」 ◎

惑星のさみだれ」 △

メイドインアビス 烈日の黄金郷」 〇

「ユーレイデコ」 △

「よふかしのうた」 △

リコリス・リコイル」 〇

「咲うアルスノトリア すんっ!」 △

RWBY 氷雪帝国」 △

 

 夏アニメは16本ですが、見ればわかる通り、そこまで期待している作品はありません。楽しみと言えば、久方ぶりの続篇である「はたらく魔王さま!!」、足立慎吾監督のオリジナルアニメ「リコリス・リコイル」、原作が話題の「異世界おじさん」、湯浅政明が原作を務める「ユーレイデコ」あたりです。特に期待している作品としては、「メイドインアビス」と「風都探偵」ぐらいですかね。

 実はほとんど1話は視聴しており、「惑星のさみだれ」はあんまりな感じだったので、視聴を断念してしまいました。秋アニメがヤバいので、そこまで小休止かな。それでは。

トム・クルーズの心意気に痺れろ【トップガン マーヴェリック】感想

92点
 
 1986年に公開され、世界的な大ヒットを記録し、主演のトム・クルーズを一躍大スターにした『トップガン』の続篇。主演はもちろん、トム・クルーズ。監督は逝去したトニー・スコットに代わり、『オンリー・ザ・ブレイブ』やトム・クルーズとは『オブリビオン』でタッグを組んでいるジョセフ・コシンスキー。共演には、『オンリー・ザ・ブレイブ』にも出演しているマイルズ・テラージェニファー・コネリーらや、前作からはヴァル・キルマーが再びアイスマン役で出演しています。ちなみに、私は1986年の『トップガン』(以後、前作)には全く思い入れが無く、寧ろ本作の鑑賞前日に観たくらいです。そんな私ですが、本作は大変楽しめました。
 
 本作は前作の続篇であると同時に、現代版アップデートとも言える作品です。基本的な話の筋は前作を思いっきり踏襲しています。特に驚くのが冒頭で、何と前作と同じなのです。BGMからテロップやらショットやら全て同じ。前作は鑑賞済みでしたので、ここでズッコケました。ただ、ここから本作の「アップデート」は見ることができます。つまり、前作では雰囲気はあるけれど具体的に何をやっているのかよく分からなかった部分をちゃんとクリアにしているのです。この冒頭を始めとして、本作は話の筋は前作を踏襲しつつも、女性のパイロットが登場するなど現代的な価値観を取り入れたり、前作では雰囲気だけだった部分をよりアップグレードしています。
 最もアップグレードされている点としては、やはりドッグ・ファイトでしょう。パンフレットに記載のあったプロダクション・ノートによれば、前作では空中のアクションはスタントを立てたらしいのですが、本作はスタントは立てず、役者が本当に戦闘機を操縦し、そしてそれを極力CGIに頼らずに撮影しているという、頭がおかしいとしか思えないことをやっているのです。主演のトム・クルーズは『M:I』シリーズなどで生身のアクションに拘って映画を作っていますが、この延長と言えます。しかも、それをちゃんと観やすく撮っている。そして更にそれをIMAXカメラで撮影し、大迫力の映像という「映画館でしかできない体験」を我々に提供してくれているのです。これらの点で本作は、前作をより現代的にアップグレードした作品だと言えます。
 
 そしてもう1つ、前作と比べて重要な点は、本作ではトム・クルーズが還暦である、という点です。前作で一躍スターの仲間入りを果たしたトム・クルーズですが、以後、彼はずっとスターでした。一線で活躍を続け、生身の危険なアクションに手を出し、若手の役者や監督を見出したりしてきました。そんな彼の姿は、本作のマーヴェリックに重なります。マーヴェリックも現役で活躍を続け、今回、若手を育てる存在として戻ってきます。時代は変わりました。ドローンが活用され、もう戦闘機は使われなくなる未来がやってくる。そうなれば、自分のようなパイロットは用無し。ここには、トム・クルーズ自身が還暦を迎え、もう自分は「過去の人」なのではないのかという自身への問いかけがあると思います。しかし、それでもトム・クルーズは言います。「だが今じゃない」と。自分は還暦だし、若手も育てる。しかし、マーヴェリックが現役を退かないように、自分も「トム・クルーズであること」を降りるつもりはない。という宣言に聞こえました。
 
 こんなご時世にアメリカの戦闘機が大活躍し、あまつさえ攻撃されるかもしれないという理由だけで先制攻撃しちゃ流石にダメだろとか思うところはありますが、トム・クルーズのスター映画として、そして「映画館でしか味わえない体験」を提供してくれる映画として、最高の作品でした。そしてトム・クルーズの心意気にも痺れます。
 

 

『M:I』シリーズ。

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2022年冬アニメ感想④【マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 Final SEASONー浅き夢の晩ー】

☆☆★(2.7/5)
 
 2020年の冬アニメとして放送を開始した「マギレコ」のアニメ化作品。2021年の夏に放送された「覚醒前夜」を経て、ようやく完結へこぎつけた本作。監督は「覚醒前夜」から続投して宮本幸裕。シリーズ構成には高山カツヒコ。キャラクターデザインは谷口淳一郎が本家から続いて担当します。制作はもちろんシャフト。1期からの付き合いなので視聴しました。
 
 「魔法少女まどか☆マギカ」とは、「願いの代償」として、「魔法少女」としてその人生と希望を搾取され続ける少女たちの救済の物語でした。本編はまどか達に寄ってはいましたが、本編以外でも、絶望のうちに魔女になってしまった少女は多かったはずです。しかも「まどマギ」の構造上、「失敗した」ルートも多くあります。そしてそれらの物語は我々には見えていなかった、「語られなかった」物語です。「マギアレコード」とは、こうした「語られなかった」魔法少女達の物語を描くものでした。
 
 本作は、ハッキリ言って言いたい点はとても多い。そもそも「Final SEASON」とか言っているけど、絶対に製作期間間に合わなかっただけだろとか、ゲームの内容を無理に詰めたからか知りませんけど何かよく分からないまま終わってしまったとか、アニメーションの力が入ってる時と手を抜いてるときの差が激しすぎて逆に萎えるとか、ダメな点を挙げるとキリ無いんです。それでも本作を評価するとすると、正しく上述の「語られなかった」魔法少女たちの物語をやった点だと思います。
 
 「まどマギ」という作品では、「語られなかった」だけで、魔法少女の物語の数だけ絶望が生まれていたことは明白。それら全てを救うためにまどかは最後に「円環の理」となるわけですが、この「マギレコ」という作品は、「まどマギ」の作品の構造を活かし、尚且つ作品世界を拡張、その上で、本編で「語られなかった物語」を我々視聴者自身が目撃するという構造の作品になっていて、それはアルティメットまどかのように救済にはならないにしても、忘れられるはずだった少女たちの希望と絶望の物語を視聴者が知るという点で、「まどマギ」の補完になっていると思いました。つまりは、「忘れられた世界線」を記録した我々は、目撃者であり、彼女らのことを覚えている。この1点だけは面白かったです。
 

 

1期。

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シャフト作品。

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