暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2020年秋アニメ感想⑤【IWGP 池袋ウエストゲートパーク】

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☆☆☆(3.3/5)
 
 
 石田衣良先生原作、文藝春秋より発売された人気シリーズ「池袋ウエストゲートパーク」のTVアニメ化作品。「池袋ウエストゲートパークのメディア化」という意味で、真っ先に思い出すのが、2000年に放送されたTVドラマです。主演に長瀬智也窪塚洋介、脇にも今なら1人で主役をはれる俳優を配した作品で、脚本の宮藤官九郎堤幸彦の演出力もあり、今では伝説となっている作品です。映像化という点ではTVドラマはあまりにも分が悪すぎるので、TVアニメ化というのは非常に妥当なラインでしょう。私はこのTVドラマは高校生の頃に見て、原作も1巻だけ読みました。
 
 アニメーション制作はまさかの動画工房。これまで日常系の作品を数多く手がけてきた会社ですが、今回は全く毛色の違う「IWGP」に手を出してきました。動画工房は2020年の春アニメでも「イエスタデイをうたって」を手掛けており、これまでとは違う方向へと挑戦しようとしている姿勢が伺えます。個人的には、動画工房が「IWGP」を手掛けたらどうなるのか、非常に気になったため、視聴した次第です。

 

池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX

池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX

  • 発売日: 2000/10/25
  • メディア: DVD
 

 

 本作は、言ってしまえば、「地味」です。1話完結で、社会問題と絡めた事件を主人公であり、池袋のトラブルシューター、マコトが解決する、というもの。基本的に1話完結であるため、話のテンポは良いし、ブラックバイトや自己責任批判、在日外国人へのヘイトスピーチなど、社会性のある問題を扱うこともとても良いと思います。しかし、本作にはアニメ的な味付けがあまりないし、その上、その問題は表面をなぞっただけで終わってしまっています。
 
 本作とよく似た作品に、「デュラララ!」があります。あちらも舞台は池袋で、カラーギャングが蠢き、暗躍する裏社会が舞台となっていました。しかし、あちらは原作がライトノベルであるためか、外連味のある、エキセントリックで魅力的なキャラクターが多く、語り口の上手さも相まって、とても面白い作品になっていました。対して、本作は舞台と設定は似通っているものの、(当然っちゃ当然なんですが)現実に即した設定やキャラが多く、よく言えば落ち着いている。たまに突飛なキャラも出てくるのですけど、やっぱり弱い。それは言ってしまえばリアルなのですが、それによって、特に味気ない作品になってしまっています。エキセントリックという点では、TVドラマの方があったと思います。
 
 その地味さにさらに拍車をかけるのが話です。上述の通り、1話完結で、社会問題を盛り込むのは良いのですが、それが「盛り込んだ」だけで終わってしまっている感じがあり、ストーリーの組み立てがやや事務的な印象を受けます。ただ、ギャングたちの抗争を描いた6、7話と11、12話は面白かった。

 

デュラララ!! (電撃文庫)

デュラララ!! (電撃文庫)

 

 

 ただ、最後まで見たことから分かる通り、つまらなくはないんです。1話完結だから見やすいし、良いエピソードもありましたし。本作には、全体を通して、「赦す」ことがテーマとして通底していた気がしていて、このテーマが随所に出てきます。特にフィーチャーされているのが4話と10話でした。そしてそれが最終章である「サンシャイン通り内戦」に繋がっていくのです。この章は世界中で起こっている内戦や内紛、戦争の隠喩だと思います。池袋のギャング達の抗争を、裏で糸を引いて対立を煽っている存在を出し、現在の断絶と紛争と被せて描きます。要は深作欣二が『仁義なき戦い 代理戦争』でやったことと同じことをやってるわけです。そしてこの抗争を止めることは、互いを赦し、話し合いをすることでしかできない、と言うわけです。この辺は良かったです。
 
 以上のように、本作は通底するテーマ性や、アニメ作品があまり盛り込まない社会問題を盛り込もうという心意気は買うのですが、如何せん地味な作品でした。これがもう少しアニメファンにとっつきやすい作品なら良かったのかなぁと思います。
 

 

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