暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

新作映画(2019年)

映画の歴史と活動弁士への賛歌【カツベン!】感想

70点 周防正行監督作。無声映画時代、まだ日本映画界に「活動弁士」なる存在がいた時代の物語。私は周防監督の作品はそんなに観ているわけではなくて、鑑賞したのは『それでもボクはやってない』と『Shall we ダンス?』のみ。しかもDVD。日本を代表するベ…

崩壊しかけた家族の再生【ひとよ】感想

80点 白石和彌監督作品。私は白石監督の作品は基本的には追っていこうと思っているので、鑑賞しました。11月に観たのに感想を書くのがこんなに遅くなってしまいました。これもひとえに私の怠慢が原因です。なので、感想はあっさり目になります。 本作は…

主張は大いに買うけど、ちょっと苦手な映画【わたしは光をにぎっている】感想

75点 中川龍太郎監督に関しては、以前より名前だけは知っていました。というのも、監督の前作、『四月の永い夢』が公開されたとき、公式Twitterにフォローされたから。広報活動の一環だということは認識しつつも、フォローされたら妙に嬉しくなったので、…

ラブ・ストーリーは突然に【アイネクライネナハトムジーク】感想

80点 伊坂幸太郎先生原作、今泉力哉監督による恋愛映画。私は伊坂幸太郎先生の作品に関しては、学生時代に少しだけハマったのですけど、今はあまり読んでいません。一番最近読んだのは「死神の浮力」です。そんなわけで本作の原作に関しては未読。本作を観…

失くし続けた男の再生の物語【失くした体】感想

85点 2019年度のアヌシー国際アニメーション映画祭において、最優秀クリスタル賞を受賞した作品。制作国はフランス。ここ数年、私にも世界には実に多様なアニメーションが存在しているということが分かってきて、動画配信のおかげでそれをタイムロスが…

あの時代に生きていた、さらにいくつもの「片隅」の物語【この世界の(さらにいくつもの)片隅に】

点数なし(作品的につけるの難しい。前作は100点の映画です) 2016年に公開され、作品としての完成度の高さ、素晴らしさから各方面で絶賛され、熱狂的なファンの力で驚異的な興行を維持、同じ年に公開された『君の名は。』とはまた違った現象を生んだ…

『シャイニング』を事実上作り直した作品【ドクター・スリープ】感想

80点 1980年、スタンリー・キューブリック監督によって映画化された、スティーブン・キング原作の『シャイニング』。本作は、現在ではホラー映画の古典的名作として知られている『シャイニング』の約40年振りとなる続篇。原作はもちろん、スティーブ…

「楽園」を作れるかは、私たち次第だ【楽園】感想

80点 「悪人」「怒り」などで知られるベストセラー作家、吉田修一先生の短編集「犯罪小説集」を、『64 ロクヨン』『菊とギロチン』で知られる瀬々敬久監督が映画化した作品。当時は『ジョーカー』が大旋風を巻き起こしていたこともあり、宣伝ではしきり…

バカらしさパワーアップ!な続篇【ゾンビランド:ダブルタップ】感想

77点 2009年に公開された『ゾンビランド』の続篇。予告から漂う圧倒的B級映画感から、「よくもまぁこんな映画にこの豪華キャスト(全員アカデミー賞ノミネート&受賞経験有り)とスタッフを呼んだなぁ」と思った方がいらっしゃるかもしれません。しか…

「大人」になってしまった全ての元「井の中の蛙」へ【空の青さを知る人よ】感想

86点 「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」『心が叫びたがっているんだ』を生み出した、長井龍雪×岡田磨里×田中将賀のチーム「超平和バスターズ」最新作。制作はA-1picturesの子会社のClover Works。私は『あの花』はリアルタイムで視聴していま…

ジョン・ドゥの告発【ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-】感想

80点 『オーシャンズ』シリーズ、『チェ・ゲバラ』2部作のスティーヴン・ソダーバーグ監督による、NETFLIX映画。私はソダーバーグ監督の作品は考えてみればそんなに観たことはなかったので、NETFLIXならば気軽に観られるということで鑑賞した次第です。 …

愛は制度ではなく、互いを想う合う心【マリッジ・ストーリー】感想

95点 初ノア・バームバック。そしてスカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーのW主演作。存在を知ったのは、例によって町山智浩さん経由。劇場でも公開された作品ですが、タイミング的に合わず、私はNETFLIXで鑑賞しました。 鑑賞してみて、これは参…

時代に取り残された者が見たアメリカ【ザ・テキサスレンジャーズ】感想

75点 NETFLIX制作の映画。鑑賞したのは昨年の11月。色々と後回しにしていたらこんなにも書くのが遅くなってしまいました。鑑賞したのは本作の監督が『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』のジョン・リー・ハンコックが監督してたから。また、キャス…

困ったことがあったら、風に向かって寅さんを呼べばいい【男はつらいよ 50 お帰り、寅さん】感想

75点 1969年に第1作目が公開され、1995年まで制作、公開された誇張無しの国民的映画シリーズ、『男はつらいよ』。本作は、その幻に終わった50作目の作品です。私は実は学生時代にこのシリーズにハマったことがありまして、これまでの49作全て…

この社会から、彼らを失わせたものは何か【家族を想うとき】感想

95点 イギリスの名監督、ケン・ローチが、前作の『私は、ダニエル・ブレイク』での引退宣言を撤回して作り上げた作品。私はケン・ローチ作品を観たことがないので、本作の上映はとてもいい機会だなと思って鑑賞した次第です。 鑑賞後に分かったのですが、…

リアル路線のダーク・ファンタジー【ボーダー 二つの世界】感想

80点 初めてのスウェーデン映画。監督は本作が長篇2作目の監督作となるアリ・アッバシ。公開前から随所で話題だったので気になり、公開初日に有楽町で鑑賞してきました。ちなみに、劇場はかなり埋まっていました。 本作に関する情報はなるべく入れずに観…

「普通」に囚われるな【メランコリック】感想

85点 田中征璽、皆川暢二、磯崎義知の3人が結成した製作チーム、OneGooseにより製作されたインディーズ映画。昨年の『カメ止め』と同じく監督、俳優共に知名度0の方々が集まって製作されたものの、東京国際映画祭では絶賛され、スプラッシュ部門監督賞を…

トラウマを克服する人の物語【IT/イット THE END "それ”が見えたら終わり】感想

80点 2017年に公開され、ホラー映画歴代最大のヒットを飛ばした前作『IT "それ”それ”が見えたら終わり』の続篇にして完結篇。監督はアンディ・ムスキエティが続投し、成長した「ルーザーズクラブ」にはジェームズ・マカヴォイやジェシカ・チャステイン…

本当に「終わらせる」だけの、へっぴり腰映画【スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け】感想

55点 1977年に『新たなる希望』が公開されてから42年。旧三部作、プリクエル・トリロジー、そして2015年の『フォースの覚醒』より始まった今回のシークエル・トリロジーを経て、『スター・ウォーズ』という映画史における「神話」が遂に完結しま…

完璧と言う他ない実写化【シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション】感想

82点 北条司先生原作で、80年代の週刊少年ジャンプを代表する漫画、「シティーハンター」。まさかの実写化作品。遥か昔にジャッキー・チェンが後藤久美子と共に出演した作品がありましたが、それとは全く関係がない作品です。制作国はフランスで、監督・…

モンキー・パンチ先生の悲願が達成されただけでも価値がある【ルパン三世 THE FIRST】感想

47点 今年の4月に逝去された、モンキー・パンチ先生原作による説明不要の国民的アニメ「ルパン三世」。本作は『ルパン三世』単独作としては1996年の『DEAD OR ALIVE』以来、実に23年振りとなる劇場版作品です。本作のトピックについてはそれだけで…

これは現代の『ロッキー』だ【宮本から君へ】感想

95点 新井英樹先生原作の漫画、「宮本から君へ」の映画化作品。監督は『ディストラクション・ベイビーズ』の真利子哲也。2018年には同監督でTVドラマ化もされており、本作はTVドラマの続篇になります。だからこそ、最初は観るのを躊躇しました。鑑賞前…

全体的に緩いけど、語られていることはとても大事【記憶にございません!】感想

53点 三谷幸喜監督最新作。私は三谷監督の作品は映画を本格的に好きになる前からよく観ていて、おかげで評判が最悪だった『ギャラクシー街道』以外は観ています。脚本を担当したTVドラマも新作をやれば必ず見るくらいにはファンです。ただ、映画をよく観る…

超絶アクションシーンの連続。中国アニメもここまで来た!【羅小黒戦記】感想

96点 中国産アクションアニメ。MTJJ木頭先生が原作で、同時に本作の監督も務めています。公開してしばらくは私は存在すら知らず、初めて知ったのは例によって名アニメーター、井上俊之さんの絶賛ツイートでした。そこから高評価の声が続々と聞こえてきてが…

誰かに手を差しのべ、寄り添うことの大切さ【映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ】感想

80点 11月8日。映画ファン的には、今年の注目作の1つ『ターミネーター/ニューフェイト』が公開されました。楽しみにしていたのは映画ファンだけではなかったようで、普段あまり映画を観ない層の観客も動員し、その週の興行収入ランキングで見事1位を…

女優への畏敬の念【真実】感想

79点 昨年、『万引き家族』で日本人としては21年振りにカンヌ国際映画祭最高賞、パルム・ドールを受賞した是枝裕和監督。映画も大ヒットを記録し、質的、興行的にも大成功を収めた彼が次に放った作品は、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、…

ギャング達の栄光と落日、そして懺悔の物語【アイリッシュマン】感想

96点 巨匠、マーティン・スコセッシが、共にハリウッドをのし上がったロバート・デ・ニーロと『カジノ』以来、24年振りにタッグを組んだギャング映画。本作のトピックはそれだけではなく、共演にはデ・ニーロと同じくスコセッシ組のジョー・ペシ、ハーヴ…

ラストで台無し【スペシャルアクターズ】感想 ※ネタバレあり

53点 昨年、『カメラを止めるな!』の大ヒットにより、一躍時の人となった上田慎一郎監督。おそらく、今映画界で最も次の作品が待ち望まれている彼の最新作です。私も突如として現れたこの監督の作品は、同じ時代を生きている者として出来るだけ追っていこ…

真実を伝える姿を描き出す【プライベート・ウォー】感想

78点 実在した戦場ジャーナリスト、メリー・コルヴィンの生涯を映画化した本作。監督は『カルテル・ランド』『ラッカは静かに虐殺されている』などのドキュメンタリーで知られるマシュー・ハイネマン。町山智浩さんがたまむすびで紹介していたので興味が湧…

完全なる「焼き直し」で、シリーズの限界が露呈した作品【ターミネーター:ニューフェイト】感想

65点 権利関係の問題で、『ターミネーター2(以降、『T2』)』以降、制作からは離れていたジェームズ・キャメロンが復帰し、あの傑作『T2』の「正当な続篇」として公開された本作。『T2』が公開されたのは今から28年前ということと、『T2』で上手く物語…