暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2020年春アニメ感想③【波よ聞いてくれ】

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☆☆☆☆(4.4/5) 

 

 

 「鼓田ミナレの「波よ聞いてくれ」っへえええーい!」

 

 月刊アフタヌーンで好評連載中、「無限の住人」の沙村広明先生原作の、ラジオを題材とした漫画のアニメ化作品。「無限の住人」は沙村先生の性癖が存分に発揮されている作品で、ぶっちゃけ倫理的にはR18を優に超えてくる作品であったのに対して、本作はかなり「普通」。具体的には何の修正もなく地上波で流せる内容です。アニメーション制作は「機動戦士ガンダム」などでお馴染みのサンライズ。監督は『劇場版FAIRY TAIL DRAGON CRY』で監督を務めた南川達馬さん。TVアニメはこれが初、かな。私は原作は以前から読んでおり、アニメ化は素直に嬉しかったので視聴しました。

 

 本作は、まず第1話が素晴らしかったです。Aパート、いきなり本作最大の売りである「架空実況」から始まるのです。初見の方の中にはこれで面食らった方もいらっしゃったと思うのですが、私はこの構成を支持したいです。というのも、いきなりこの架空実況を放送したことで、我々視聴者に作品内の「架空実況を偶然聞いているリスナー」と同じ気持ちを感じさせることに成功しているからです。作中のリスナーは、「架空実況」の初回(恋人殺したってやつ)を聞いて「何だこれ」と思っていましたが、初見の方は同じ感想を抱いたか、若しくは困惑したはずです。これによって、「波よ聞いてくれ」という作品に対する印象を作中のリスナーと視聴者とで同期させ、作品のトーンそのものを示して見せることが出来ています。これは作品全体のフックにもなっているので、この意味でもこの構成は素晴らしいと思います。

 

 

 その他の構成も上手くて、基本的に4巻までの内容をシャッフルしたものなのですが、ミナレがラジオDJとしてスカウトされ、自覚を持ち、元カレを吹っ切るという本編として上手くまとまっています。しかも1話で「殺す」を宣言した光男を11話で架空実況の中で「葬り去る」という決着のつけ方と、それを放送して、聞いている人がいるという構図。これがまた良くて、ミナレの所信表明をラジオを通してみんなが聞いているという、タイトル通り「波よ聞いてくれ」なんですよね。そしてそれは自らの周りで起こったことをラジオのネタにしていくというミナレがやってきたことの総決算でもあるという。

 

 さらに、この11話と対になっていると感じたのが12話。原作7巻で起こった大地震をここで挿入しているのですが、ここで「ラジオ」というメディアの重要性と素晴らしさを描いているのです。あくまでも「ミナレのこと」中心だった11話と比べると、12話では「ラジオ」全体に話が広がっています。緊急時、人々をつなげ、情報を発信し、元気づけることが出来るのがラジオであり、これもまた「波よ聞いてくれ」なのだと思います。

 

 構成以外で素晴らしいのが、ミナレ役を演じた杉山里穂さん。かなりのセリフ量であり、それが作品のトーンになっているため、ミナレをどう演じるか、あのマシンガン・トークをどう再現するか、はすごく重要。彼女はそれを見事にやってくれました。他の声優さんもベテランから実力派まで幅広く集めており、「声」が重要な本作にとってベストな配役でした。

 

 アニメ化に際して、私は主に構成とキャストについて書きましたが、ストーリーが面白いのはもちろんです。ラジオという題材上、絵的に地味になりそうなところを、架空実況とそのネタ集めを描いてどんどんストーリーを膨らませていく展開はやはり面白く、原作を読んでいても楽しむことが出来ました。総じて良いアニメ化だったと思います。

 

 

 R18+の方の沙村先生。

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 サンライズ制作の2作品。映画だけど。

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