暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

映画の歴史と活動弁士への賛歌【カツベン!】感想

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70点

 

 

 周防正行監督作。無声映画時代、まだ日本映画界に「活動弁士」なる存在がいた時代の物語。私は周防監督の作品はそんなに観ているわけではなくて、鑑賞したのは『それでもボクはやってない』と『Shall we ダンス?』のみ。しかもDVD。日本を代表するベテラン監督であることは間違いなく、一度映画館で観てみたいなと思っていたところに本作が公開されたので、鑑賞しました。鑑賞したのは12月なのですが、感想書くのが延びまくってここまで来てしまいました。なので、あっさり目な感想になります。

 

 本作は主人公である染谷が弁士として成長する姿を描いた喜劇です。話の作りはこれまで「偽物」としてしか活躍してこなかった染谷が幾多の経験を経て本物の弁士になるまでを描いたものです。これまで「代理」で「真似」しかできなかった彼が、ラストで正に己の「弁士」としての実力のみでお客さんを沸かしたシーンにはそれはグッときましたよ。

 

 また、「弁士」という存在についても、永瀬正敏演じる山岡の疑問を入れることで、少し批評的に見ています。ここで一旦「弁士っていらなくね?」と思わせることで、ラストで染谷が弁ずるシーンの素晴らしさが映え、同時に「活動弁士」という存在そのものの肯定にも繋がります。

 

活動弁士の映画史 映画伝来からデジタルまで

活動弁士の映画史 映画伝来からデジタルまで

  • 作者:高槻真樹
  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 本作は喜劇なのですが、その内容が良い意味で古臭い。本当に一昔前の「喜劇」をやっているのです。笑いにはスラップスティックなものが多く、それをやるのが竹中直人さんや渡辺えりさんなどのベテラン勢なので安定の面白さを見せてくれます。しかもラストもドタバタ劇だし、あのオチもよくあるものです。これは舞台が大正時代ということで、周防監督が意図的にやっている事だと思っていて、本当に一昔前の映画を観ている気分にさせられます。

 

 そして本作は映画館で観るべき作品でもあります。というのも、劇中で上映されている無声映画を画面いっぱいに移し、それに弁士が声を当てるという、要は昔ながらの活動写真そのままを体験できる演出が施されているから。映画の歴史を、映画館で活写する。この演出だけで、本作の粋な点が出ています。

 

 以上の点で良いなと思った点もあるのですけど、問題点があるのも事実。それは全体的に冗長だという点。1つ1つのエピソードが長く、緩慢で、そのゆったりさが気になりました。でもこれも「昔の映画の再現」という点で、監督の意図なのかもしれませんが。

 

 

 往年の名作ということで。

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