暇人の感想日記

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トラウマを克服する人の物語【IT/イット THE END "それ”が見えたら終わり】感想

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80点

 

 

 2017年に公開され、ホラー映画歴代最大のヒットを飛ばした前作『IT "それ”それ”が見えたら終わり』の続篇にして完結篇。監督はアンディ・ムスキエティが続投し、成長した「ルーザーズクラブ」にはジェームズ・マカヴォイジェシカ・チャステインらが配されています。前作はホラーというよりは『スタンド・バイ・ミー』のようなジュブナイル映画として楽しみましたので、前作でつかなかった決着をどのようにつけてくれるのか、気になったので鑑賞しました。

 

 鑑賞して思ったことは、この『IT』という作品は、やはりジュブナイルなのだということです。本作では前作では真の意味で克服できなかった「恐怖」に打ち克ち、彼ら「ルーザーズクラブ」が真の意味で「大人」になるまでを描いています。

 

 

 前作でペニーワイズを退け、大人になったルーザーズのメンバー。しかし、冒頭で映される彼ら彼女らの現在を観ていると、大人になった今でも、彼ら彼女らは子ども時代のトラウマを背負っている点に気付きます。ビルは脚本家として売れ、吃音も克服したのに子供がおらず、ベバリーは自分の父親と同じようなDV男と結婚してしまっているし、エディは母親のトラウマを、ベンはイケメンになったけど太ってた頃に受けたトラウマを引きずっています。彼らは、社会的に一応は成功を収めているものの、少年時代のトラウマを引きずったままなのです。これはそのまま現実の問題に当てはめることができます。現実でも小さい頃に何かしらのトラウマを植え付けられた人がそのトラウマを背負って生きているということは起こっているからです。

 

 本作が描いていることは、ホラーというジャンルの体裁を借りて、恐怖と向き合い、こうしたトラウマを克服する人間の話なのです。そしてペニーワイズはこうしたトラウマのメタファーであって、だから変幻自在に姿を変えられるのです。そしてそれは普遍的な話であり、だからこそラスト、青春時代との決別のシーンでは感動するのだと思います。

 

IT(1) (文春文庫)

IT(1) (文春文庫)

 

 

 ジュブナイル映画としては素晴らしいのですが、ホラーとして正直、微妙。怖がらせ方が完全に「ドッキリ」系で、ビックリはしますけど怖くはないです。ただ、ペニーワイズさんの圧倒的エンターテイナーぶりは目を見張るものがあり、ルーザーズを怖がらせるために作りだした目くるめく幻覚、恐怖シーンはバラエティに富んでおり、本当に楽しませていただきました。

 

 以上のように、やっぱりジュブナイル映画としては本当に素晴らしい作品でした。3時間近く、飽きずに観られたのはペニーワイズさんのおかげですが。

 

 

前作の感想です。

inosuken.hatenablog.com

 

 こっちはガチホラー。超怖い。

inosuken.hatenablog.com