暇人の感想日記

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ジョン・ドゥの告発【ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-】感想

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80点

 

 

 『オーシャンズ』シリーズ、『チェ・ゲバラ』2部作のスティーヴン・ソダーバーグ監督による、NETFLIX映画。私はソダーバーグ監督の作品は考えてみればそんなに観たことはなかったので、NETFLIXならば気軽に観られるということで鑑賞した次第です。

 

 本作で扱われているのは2016年に世界を震撼させたパナマ文書流出事件です。本作はこの事件を2016年に日本で公開されたアダム・マッケイ監督作品『マネー・ショート』を彷彿とさせるというか、ほぼそのまんまの手法で描き出します。まぁ『マネー・ショート』も言ってしまえば『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の応用版のような作品なのですけど。

 

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 話が逸れましたが、本作は基本的に『マネー・ショート』で、違う点があるとすれば、本作は「一般市民視点」がある点。メリル・ストリープ演じるエレン・マーティンが夫の死亡事故を機に詐欺取引を調べ始め、それが世界の中ではほんの一部であることを描きます。この視点があることで、『マネー・ショート』では断片的にしか描かれなかったこの詐欺取引による「市井の人々への影響」がはっきりと可視化されます。そしてそれらは一部の資本家の資産運用のために行われていたことであり、富の一極集中がもたらす、資本主義の限界と問題が浮かび上がります。さらにこれによって、アントニオ・バンデラスゲイリー・オールドマンの2人のにやけ面が本当にムカついてくるという効果もあります。

 

 驚いたのはラストシーンで、語り手2人が去り、メリル・ストリープの演説が始まる長回しです(本作は長回しが多い)。あそこの彼女の演技は圧巻で、ワンカットの中で役がどんどん変わっていき、それをシームレスに見せています。そこで「映画の登場人物」であったエレンがある場面でメリル・ストリープ本人になり、露骨にこのシステムの批判を始めます。この点は露骨で少し興ざめだったのですけど、本作の「ジョン・ドゥの告発」がそのまま我々「一般人の告発」と重なり、一般人の怒りを表明していたと思います。

 

 以上のように、私は楽しめました。上映時間も95分と短いし、スイスイ観られます。たまにはこういう気軽な気持ちで観られる映画があってもいいです。

 

 

似た感じの映画。

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 アダム・マッケイ監督作。

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