暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2022年冬アニメ視聴予定作品一覧

 皆様。こんにちは。いーちゃんです。2022年冬アニメの視聴予定作品の一覧です。毎期恒例ですが、秋アニメを完走出来ていません。しかも感想も書けてないし。そんな中、冬アニメの視聴予定作品を発表いたします。ちなみに、2021年のTV/配信アニメのベスト10は、秋アニメを全て見終えた段階で出します。

 

 毎期通り、◎=期待大、〇=楽しみ、△=とりあえず見る、で行きます。

 

2021年秋アニメ(視聴継続)

ルパン三世 PART6」

鬼滅の刃 遊郭編」

 

2022年冬アニメ視聴予定作品

「明日ちゃんのセーラー服」 ◎

「あたしゃ川尻こだまだよ」 △

「怪人開発部の黒井津さん」 △

からかい上手の高木さん3」 ◎

「賢者の弟子を名乗る賢者」 △

最遊記RELOAD ZEROIN」 〇

「錆喰いビスコ」 △

「時光代理人-LINK CLICK- 日本語吹き替え版」 △

「スローループ」 △

「その着せ替え人形は恋をする」 〇

「地球外少年少女」 ◎

「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」 △

平家物語」 ◎

「リーマンズクラブ」 〇

 

 冬アニメは14本からスタート。中でも特に楽しみなのは、そりゃもちろん「平家物語」ですよ!山田尚子の新作ということだけでも期待値が天井突破なのに、制作が湯浅政明さんが起こしたサイエンスSARUとかもうありがとうございますとしか言えない。

 他には、Clover Worksのガチ感が漂う「明日ちゃんのセーラー服」、「その着せ替え人形は恋をする」、3期の「からかい上手の高木さん3」、磯光雄さんの最新作「地球外少年少女」、TVアニメは何故か全て見ている「最遊記RELOAD ZEROIN」あたりが楽しみです。しかし、毎期思うんだけど、ライデンフィルム仕事しすぎだろ・・・。

2021年新作映画全ランキング

 皆様。あけましておめでとうございます。いーちゃんです。昨年はブログ上で大変お世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。さて、毎年恒例、新作映画の全ランキングを発表したいと思います。では、行ってみよう。
 

新作映画全ランキング

1位 シン・エヴァンゲリオン劇場版
2位 ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党集結
3位 ドライブ・マイ・カー
4位 プロミシング・ヤング・ウーマン
5位 街の上で
6位 この茫漠たる荒野で
7位 DUNE/デューン 砂の惑星
8位 最後の決闘裁判
9位 17歳の瞳に映る世界
10位 劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト
 

ベスト10に関してはこちらの記事もどうぞ。

inosuken.hatenablog.com

 

11位以下は以下の通りです。
 
11位 アメリカン・ユートピア
12位 ファーザー
13位 あのこは貴族
14位 花束みたいな恋をした
15位 すばらしき世界
16位 CALAMITY カラミティ
17位 偶然と想像
18位 KCIA 南山の部長たち
19位 マリグナント 凶暴な悪夢
20位 キャッシュトラック
 
21位 すべてが変わった日
22位 藁にもすがる獣たち
23位 猿楽町で会いましょう
24位 銀魂 THE FINAL
25位 漁港の肉子ちゃん
27位 騙し絵の牙
28位 サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~
29位 孤狼の血 LEVEL2
30位 モンタナの目撃者
 
31位 フリー・ガイ
32位 ラストナイト・イン・ソーホー
33位 エターナルズ
34位 キャンディマン
35位 劇場版 呪術廻戦0
36位 サイダーのように言葉が沸き上がる
37位 逃げた女
38位 AWAKE
39位 彼女はひとり
40位 チャンシルさんには福が多いね
 
41位 ノマドランド
42位 マトリックス レザレクションズ
43位 映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園
45位 竜とそばかすの姫
46位 るろうに剣心 最終章/The Final
47位 映画大好きポンポさん
48位 ミッチェル家とマシンの叛乱
49位 サマーフィルムにのって
 
51位 由宇子の天秤
52位 ジャスト6.5 闘いの証
53位 Arc/アーク
54位 21ブリッジ
55位 ミナリ
56位 ハロウィン KILLS
57位 イン・ザ・ハイツ
58位 BLUE/ブルー
59位 ラーヤと竜の王国
 
62位 アイの歌声を聴かせて
63位 ある人質 生還までの398日間
64位 空白
65位 シャン・チー テン・リングスの秘密
66位 ベイビーわるきゅーれ
67位 アナザーラウンド
68位 かそけきサンカヨウ
69位 新感染半島 ファイナルステージ
70位 聖なる犯罪者
 
71位 ザ・ホワイトタイガー
72位 クルエラ
73位 ジェントルメン
74位 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
75位 ワイルド・スピード/ジェットブレイク
76位 オールド
77位 ゴジラVSコング
78位 楽園の夜
79位 JUNK HEAD
80位 燃えよ剣
 
81位 ヤクザと家族 The Family
82位 ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
83位 キングスマン ファースト・エージェント
84位 バクラウ 地図から消された村
85位 ミラベルと魔法だらけの家
86位 グリード ファストファッション帝国の真実
87位 SEOBOKU ソボク
88位 ザ・スイッチ
89位 DAU ナターシャ
90位 パーム・スプリングス
 
91位 彼女が好きなものは
92位 夏への扉
93位 トゥルーノース
95位 るろうに剣心 最終章/The Beginning
96位 カポネ
97位 あの頃。
98位 キネマの神様
99位 返校 自由が消えた日
100位 ハッピーオールドイヤー
 
101位 岬のマヨイガ
102位 スペース・スウィーパーズ
103位 時の面影
104位 マルコム&マリー
105位 クー!キン・ザ・ザ
 
 以上が、2021年に観た全ランキングです。ぶっちゃけ、25位くらいまではベストに入れるかどうか悩んだ、「ベスト級」です。昨年は日本映画に良作が多い印象でした。動画配信の映画も、今年は観ていきたいと思います。それでは。今年もまた良い映画に出会えることを願います。

2021年新作映画ベスト10

 2021年ももう終わり。ということで、毎年恒例、新作映画の年間ベスト10を発表したいと思います。今年観た新作映画は105本(映画館&配信)でした。この中から、私が「好きだ」と言える映画10本をランキング形式で発表していきたいと思います。では、行ってみよう。

 

10位『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト

 「再生産」から「始まり」へ。

 「映画館で映画を観る」ことは特別な体験であることは映画ファンならば知っていると思いますが、本作はそのさらに上をいきます。本作は「映画」であることを作品そのものが自覚し、「舞台少女の卒業」というレヴューを「観客が観る」ことで初めて作品が完成されるという、今まで味わったことのない奇妙な、しかし「映画館でしかできない」体験をさせてくれた作品でした。また、日本の劇場アニメ(しかもTVアニメの劇場版)で、あそこまでシネスコ画面を効果的に使ったレイアウトを見ることは中々ないと思います。

 

9位『17歳の瞳に映る世界』

 望まない妊娠をした女子高生と、彼女の友人が、中絶をするためにニューヨークを目指すロードムービー。その旅模様を言葉少なめに、役者の些細な表情と繊細な映像で綴ります。非常に映画的な内容ですが、その中身は女性が世界で受けている抑圧を強烈に画面に映し出しています。主人公のオータムは、常に鬱屈とした表情をしており、それがこの世界で女性が受けている抑圧を表しているような気がしていました。

 

8位『最後の決闘裁判』

 リドリー・スコットが、自身が監督してきたような「男と男の決闘」にメスを入れた傑作。あの手の映画で、如何に女性の意見が無視されてきたかを克明に描き、中世より現代に続く男性社会の中における女性の苦しみを浮かび上がらせます。そしてそれは同時に、『羅生門』を始めとした語り口にもメスを入れ、映画史を振り返る行為にも繋がると思います。

 

7位『DUNE/デューン 砂の惑星

 「映画館で映画を観る」ことがこれほど素晴らしい体験になるのか、ということを再認識させてくれた作品。IMAXで観ることで、本作のSF世界に没入することは、至福の体験でした。「映像」を撮るドゥニ・ヴィルヌーヴの本領発揮といったところです。

 

6位『この茫漠たる荒野で』

inosuken.hatenablog.com

 可能ならば、これは映画館で観たかった。現代の分断と南北戦争の分断を重ね、その中でもニュースという真実で以て世界を繋ぎとめようとする主人公の姿勢に胸をうたれた。西部劇としても面白いし、異文化との相互理解の話としても面白い作品でした。ラストの〆方も品が良くて好き。

 

5位『街の上で』

 今泉力哉監督作。全ての時間が至福であり、「もっとこの時間に浸っていたい」と感じた1作。出てくる登場人物全てが愛おしく、「観ている間の幸福度」という点では今年1かも。

 

4位『プロミシング・ヤング・ウーマン』

 この世界全てを告発する、挑発の映画。画面はポップで、エンタメとして描いてはいるけれども、それすらも罠。観終わった後、全ての意味が分かり、我々(特に男性)は呆然とするよりかはないと思います。「世界観を変える」という点では、今年1。

 

3位『ドライブ・マイ・カー』

 濱口竜介監督作品。『街の上で』とは違った意味合いで、映画の時間に浸っていたいと思う作品。原作に加え、「ワーニャ伯父さん」「ゴドーを待ちながら」の要素を増幅させ、濱口監督らしい、「コミュニケーション」の映画にしていました。これも観ている間の幸福度が高い1作。

 

2位『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党集結』

inosuken.hatenablog.com

 「映画に浸っていたい」という幸福度ではなく、こちらはエンタメとして最高の1本。登場人物全てが少し馬鹿で最高としか言えない。ジェームズ・ガンのトロマ魂が炸裂した悪趣味極まりない画面や演出もノリにのっていて、「最高」としか言えない作品でした。

 

1位『シン・エヴァンゲリオン劇場版』

inosuken.hatenablog.com

 「今年の1位は?」と聞かれたら、間違いなく本作を挙げる。庵野秀明という監督の新たなる旅立ちを謳った作品。「エヴァ」という呪縛から、庵野監督自身はもちろん、我々ファンすらも解き放った傑作です。私の旅も、1つ終わりを迎えたのです。

 

 他に、ベスト10に最後まで入れるかどうか悩んだのは、『アメリカン・ユートピア』、『ファーザー』、『あのこは貴族』、『花束みたいな恋をした』、『すばらしき世界』、『CALAMITY』は入れるかどうか迷いました。

 

最後に。

 こうして見てみると、今年は「映画館で映画を観る」ことの重要性を実感した年だったのかなと思いました。選出した作品は、本当に「映画館で観て良かった」と思えた作品ばっかりなので。ただ、今年は配信の映画は全く観られなかったので、2022年はもっと配信も観たいと思っています。感想書けてない作品は早く書きます。それでは。

2021年新作映画感想集③

【ある人質 生還までの398日間】

ある人質 生還までの398日

83点

 2013年5月から2014年6月までの398日間、ISに人質となって囚われていたデンマークの写真家、ダニエル・リューの実話を映画化した作品。相当ヘビーな内容であることは承知の上で、鑑賞しました。

 

 本作は、ダニエル・リューが拘束中に感じたであろう、絶望と屈辱、恐怖を鮮明に描き出します。それはエスベン・スメドさんの演技力も貢献しているのですが、撮影の力も相当あるのではないかと思いました。本作の撮影はエリック・クレスという方なのですが、ダニエルがコペンハーゲンで暮らしていた日常では、優しい感じの光を使った画面、そして拘束されてからは冷たい感じで、光が一切差さない冷徹な印象を与える画面を作っています。また、ダニエルが疾走したりするシーンではステディカムを使った荒々しい映像を用いています。これで観客には一発でダニエルの心情変化が分かるわけですが、それ以外にも、サスペンス演出も大変素晴らしい。まぁだからこそ凄く辛いんですけど。

 

 それ以外にもリアルだなと感じたのは、ダニエルを救うための資金を国が出し渋ること。「テロリストとは交渉しない」とは、アメリカを始め、日本や、各国が宣言していることで、「身代金を払うことは間接的なテロ支援であり、それによって、また被害が出る可能性がある」という弁は、実は理解できなくもない。しかし、身代金を支払わなければ国民が1人死ぬ可能性があるのは事実だし、家族を救いたい、という気持ちは当然。更に、ジャーナリストが現場に行かなければ実態なんて分からないし、実態が分からなければ、我々国民も判断などできない。そこを無視して、捕まったら「謝罪しろ!」だの「自決しろ!」とか言うのは全然違うと思うが。この葛藤を含め、善悪に簡単に断じたりせずに描いている点も良かったな。

 

 

【DAU ナターシャ】

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60点

 15年という歳月をかけてソ連全体主義時代を完全に再現した狂気のプロジェクト、それがDAUプロジェクトであります。「狂気」である所以は、本プロジェクトは当時の街並みを実際に作り上げ、そこに400人近い役者を実際に住まわせるという、比喩ではなく「当時を再現」してみせた点にあります。出演している役者の中には、本物の元KGB所属の人間もいたり、もはや「役」ではなく、「映画の中の人物」と役者がイコールになってしまっているのです。これはもはや、「映画」ではなく、1つの「世界」であって、我々はスクリーンを通して、この「世界」のほんの一部を覗き見ているのです。

 

 映画は、その歴史を紐解くと、撮影に巨大なセットを作成した作品は多々あります。グリフィスの『イントレランス』は最たる例だと思いますし、ハリウッドも、昔はスタジオの中で撮影をしていました。そこには、完全にコントロールされた「世界」があり、役者はそこで住人となって演技をし、我々はそれをスクリーンで観ていました。しかし、その世界の創造は、製作費などの兼ね合いで失敗を繰り返した歴史でもあります。本作はその「世界の創造」の究極形とも言える作品であり、それを今、観た私は、その途方もない「世界」に驚嘆するしかありませんでした。

 

 

【ラーヤと竜の王国】

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86点

 信頼が失われ、分断されてしまった世界を繋げる少女の物語。非常に今日的なテーマであり、シスター・フッド、人種の多様性など、圧倒的な「正しさ」を持つ映画。ストーリー的にも、5つの国へ行って石のかけらを集める、という目的を軸に、絶え間なく起こるアクション、テンポの良すぎる脚本で、観ていて飽きないし、何より楽しい。テーマ的な正しさと多様性を確保しつつ、エンタメとして圧倒的な強度を誇る作品を作ってしまえるディズニーの力量と志に感服した(ディズニーはあんま好きじゃないけど)。

 

 素晴らしかったのはシス―。声優を務めるオークワフィナ本人か?と言えるくらいのハマり役(いやほぼ当て書きといってもいいかも)で、彼女が隣にいるだけで安心感がある。さらに日本語版吹替の高乃麗さんのハマり具合も半端なく、「もうオークワフィナの専属でいいのでは?」と思えるくらい。年齢的に厳しいとは思うけど。

 

【ミナリ】

ミナリ

77点

 主要な人物は韓国の移民だけれども、描いているのは由緒正しいアメリカの開拓者魂だと思いました。往年の名作だと、それを行っているのは白人だったんだけど、本作では韓国の移民であり、そのために本作には、移民という「異国」の受容や、世代間のアイデンティティを巡る物語の側面も加わって、「現代の開拓者魂の映画」となっているのではないかと思いました。

 

 また、アカデミー賞助演女優賞を受賞したユン・ヨジョンさんの存在感が圧倒的。英語を話せず、良かれと思ってしていることが若干裏目に出ているあの感じと、息子のデビットとのコミュニケーションのすれ違いっぷりとか、「あるある」な感じが凄い。コミカルな面も全て背負ってくれており、彼女がいると少しイラっとするやら笑えるやらで楽しい。

 

 ただ、少し気になったのが女性で、奥さんは旦那の我儘に振り回されてばっかりだし、娘も、基本的にほったらかしにされてて、名前もほとんど呼ばれない。お金の話でも、「デビットには残しといてね」って言うだけだし。当時の時代背景を考えれば分からないでもない描写ではあるけど、今観るとやっぱり気になるな。

2021年夏アニメ感想④【かげきしょうじょ!!】

かげきしょうじょ!!
 
☆☆☆☆★(4.6/5)
 
 斉木久美子先生原作、白泉社の「MELODY」にて絶賛連載中の同名タイトルをアニメ化した作品。タイトルに「!」が2つ付いていますが、これは本作の前進となる「かげきしょうじょ!!」が連載されていたジャンプ改が休刊になってしまい、今のMELODYで連載が再スタートしたためです。原作は未読です。とりあえず、最初に情報を見た時は「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」的な作品なのかなという印象を持ち、見てみるか、という軽い気持ちで視聴しました。そしたら「レヴュースタァライト」とは全く違う「ガラスの仮面」的な作品で、今期No.1作品になってしまったのですから驚きですよ。
 
 本作のメインキャラ(100期生)は7人。入学式から始まり、そこから各キャラ回をやってキャラを深掘りしていきます。そして最後に「ロミオとジュリエット」のオーディンションを経て、最終話になります。この構成がとても上手い。視聴者に各キャラがどのような思いで紅華音楽学校に入学してきたのかを分からせ(同時に「推し」を作り出す)、その上で初めて「役を得る」オーディンションという試練を受けさせる。これでまず、視聴者には「推しに合格してもらいたい」と思わせることができているわけです。で、結果発表に対する各々の感情(成功や挫折)もより一層感じ取れるわけです。この「感情移入のさせ方」が凄く上手かった。
 また、本作でよかった点は、努力している彼女らを、突き放したりしない点。彼女らの努力は実らない時もあるし、苦しむときもあるのですが、そんなとき、常に誰かが寄り添ってくれるのです。そして、彼女らの努力を絶対に否定しない。寧ろ、「あなたの努力は、ちゃんと誰かが見ているよ」と、さりげなく言ってくれるのです。この優しい視点が素晴らしかったですし、何より安心して見れた。どのエピソードも良くて、だいたい泣いてた。
 
 本作は愛の視点で見ると、一本筋がくっきり見えてくるかな、と思っている作品で、愛は過去の経験から男性恐怖症で、紅華音楽学校に入っても孤独に、目標もなく生きていこうとしていました。マイナスな言い方をすれば、「避難」の場所だったわけで。そんな彼女が、さらさと出会い、目標を見つけ、終盤のオーディションに挑みます。結果発表は入学式の時と対になるように感情が描写されていて、愛の心境の変化がよく分かるようになっています。彼女にとって、さらさは親友であると同時に、スーパーダーリンだと思っていて、ここでも、「理解者がいる」ことの尊さが描かれています。後、別件なんですけど、キモヲタ君が出てきたときの、我々の偏見を上手く利用した演出にはやられたなと思った。彼の「好き」も、ステレオタイプ的なところに落とし込まない点も、現代の漫画だなと思った。
 
 作り的にも、宝塚を模した「音楽学校」という設定に誠実に向き合って作り込んでいて、声優さんの歌唱力をフルに使ったED、池田理代子先生の許諾をとって「ベルばら」を思いっきり出したり、「演技の演技」のレベルの高さとか、とにかくアニメで音と動きがある、という点を存分に活かしているなと思いました。原作の購入を真剣に検討中。
 

 

設定的に似てるなと思った作品。内容は全然違うけど。

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2021年新作映画感想集②

 新作映画の感想を短く書いてまとめた感想集②です。では、行ってみよう。

 

『聖なる犯罪者』

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77点

 とにかく映画に出てくる登場人物全てが矛盾している。主人公は第2級殺人を犯した犯罪者だけど、何も知らない村で神父をしている。村人は過去の事故でエヴァという女性を村八分にしており、悪人ではないけど、決して善人ではない。主人公がエヴァへ送られた手紙を出したシーンは、聖書にある、イエスが「あなた方の中で、罪のない者が石を投げなさい」といった話を連想しました。そう、皆が潔白というわけではなく、何かしらの罪を抱えているのです。人間は清濁併せ持ち、生きているだけで罪を重ね、「神からどれだけ離れたか」を実感していく。神はそれをただ見ているだけであり、決して逃れることはできないという、強烈な映画でした。

 

 

『ザ・ホワイトタイガー』

ザ・ホワイトタイガー

75点

 インド版『パラサイト 半地下の家族』と言われていますが、観てみれば、「格差社会を舞台にした、主人公がクズじゃない『ナイトクローラー』」ではないかと思いました。

 インドのカースト制が厳しいことは有名ですが、主人公はそこを何とか這い上がろうと必死に富裕層に取り入り、成り上がっていきます。そしてそれをスコセッシ作品みたいにモノローグ中心で進めていきます。ただし、格差という壁は絶対に近く、毒親の影響もあり、簡単には乗り越えられない。だからこそ、ラストの行動に出るしかなかった。この絶対的な分断の存在は確かに『パラサイト 半地下の家族』ですけど、その悪事を成り上がるキッカケにしていく面は『ナイトクローラー』みたいだなと思いました。まぁ要は、元から貧しい人間はこうでもしないと成り上がれないよ、という絶望があるわけですが。

 

比較された作品。

inosuken.hatenablog.com

 

 

『ジャスト6.5 闘いの証』

ジャスト 6.5 闘いの証

80点

 本作のショットの中にある、「熱」のようなものには圧倒されました。冒頭、いきなり麻薬捜査官の捜査が入り、犯人との逃走劇が始まるのですが、まずそこから凄い。疾走感あふれるシーンが非常に長く、しかしスリリングに続き、最後には静かに、しかし誰もが「マジか・・・」と呆気にとられる終わりを迎えます。ここで一気に気持ちを掴まれるのですが、その後も主人公刑事が『フレンチ・コネクション』のジーン・ハックマン級の強引な手で捜査を進める姿が描かれます。終始画面がギラギラしており、その熱と密度に圧倒されるのです。

 これだけならば要は『フレンチ・コネクション』イラン版と言えるかと思いますが、それは前半だけ。本作は非常に変な映画で、後半は逮捕した大手麻薬ディーラーに視点が移動します。彼が何を思い、背負って生きているのか、そして、何としてでも牢獄から抜け出そうとする姿を描き出します。彼の家族周りが描かれ、そこには、世界的な問題となっている貧困が見えてきます。この辺は内容が割と別の映画になっているのですが、彼の問題を理解した上でラストに提示されるタイトル『ジャスト6.5』の意味を理解すると、貧困という問題を放置している限り、彼らの「闘い」が如何に虚しいものだったのか、が分かります。脚本こそは歪でしたが、終始画面に出ているギラギラした熱は大変素晴らしく、134分、全く退屈しませんでした。

 

 

『あの頃。』

あの頃。

72点

 人生がどん底でなくても、仕事が辛かったりしたときとかに、何かに救われたことがある人間には、本作はよく分かると思う。本作の主人公は、大学受験に失敗し、金無し、職無し、夢も無しのどん底生活。そんな中、偶然出会った松浦亜弥の「♡桃色片想い♡」のMVを見てハロヲタ街道を驀進する、という映画。まず、冒頭でMVを見た時の松坂桃李が凄く良い。「推し」に出会って、何かが変わった瞬間を完璧に表現しています。予告でも使われていたシーンですが、本作はここだけで観る価値があると思います。私も就活に失敗して、人生に何の楽しみも無かった時期に映画に出会って、今まで生きてこれたので、この気持ちは分かります。

 アイドルでなくとも、好きなものに出会い、同じものが好きな同志と出会うことで人生が色づいてゆく、というのはどの年代でもあるわけで、本作はそんな彼らの青春を切り取った作品としては素晴らしかったです。まぁ、ホモソ的な展開は苦手でしたが・・・。

 また、本作は今泉力哉監督作として観ても、他の作品と共通している点があります。それは、何かを「好き」になることを肯定する姿勢です。常に「片想い」を描いてきた今泉監督ですが、本作では対象がアイドルという、究極の片想いを描きます。その姿を滑稽に描くわけでもなく、松坂桃李らがアイドルを応援する姿勢を、ただ肯定して映して見せます。面白いなと思ったのは、大学の学園祭か何かで、ハロプロのイベントを主催したとき。ライブの時の応援する姿を映したとき、周囲がドン引きしている中、全くお構いなしにパフォーマンスをしているヲタ達を見た時、本作の姿勢が見えた気がしました。「周りがどう思おうとも、自分たちが好きならそれでいいんだよ」みたいな。

 

今泉監督作品たち。

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2021年夏アニメ感想③【平穏世代の韋駄天達】

 
☆☆★(2.8/5)
 
 元々は天原さんが商業デビューする前にウェブサイト「新都社」にて発表していた作品を、クール教信者さんを作画に迎え、内容を再構成してヤングアニマルで連載している、という、中々複雑な経緯を持つ作品。私が見ようと思ったのは、制作がMAPPAだったから。また、クール教信者といえば、「小林さんちのメイドラゴン」や「旦那が何を言っているか分からない件」など、好きな作品を輩出している方であることも理由の1つです。
 
 クール教信者といえば、「小林さんちのメイドラゴン」のような異世界コミュニケーション、「旦那が何を言っているか分からない件」のような、「他者」とのコミュニケーションによって心地よい空間を作り出す作品が印象的な方ですが、本作は真逆で、魔物と韋駄天の殺し合いがメインで、前半は韋駄天による魔物の駆逐行為、後半は、逆境に立たされた魔物たちの逆転劇が、かなりの悪趣味グロ描写満載で描かれます(1話の性的暴行シーンはドン引きした)。さらに、全体的に倫理観がぶっ壊れている内容で、性交渉を繁殖のため&性処理のためとしたり、韋駄天側も国全土に監視体制を敷いていたりしています。そこには「コミュニケーション」という心地よい空間はなく、キャラデザとは真逆の、殺伐とした空気に満ちています。私は勝手に本作を、「平穏世代(=平和ボケした)韋駄天達のゆるゆるの日常が描かれるのかなぁ」とか適当なことを考えながら見始めたので、いきなりゴリゴリのアクションと、上述のような内容が始まったのには驚きました。
 
 殺伐とした雰囲気自体は悪くは無いのですが、どこか表面的なのが気になった作品でした。これは多分、イースリィとミク以外に主体性のあるキャラが少ないってのがあるのかなと思います。ハヤトは「強くなりたい」という脳筋キャラであるけれども、劇中ではイースリィの計画に乗って戦っただけだし、ポーラはいる意味がよく分からんレベルだったし、プロンティアとかリンは最強ではあるけれども、ハヤトと同じ感じでイースリィの計画に乗ってただけだし。魔族側も、ピサラとミク以外は、韋駄天側と同じ感じで、キャラが薄い。そんな彼らが、ただただ「宿敵だから」という理由で殺し合いをするというだけの話なので、ハッキリ言って面白味が薄い。1話の性的暴行シーンと、韋駄天は別に人間を助けない、的な発言、被害に遭うのがシスターという点から、神は人間を救わない、的な話に行くのかなとも思いました。それなら、この殺伐とした雰囲気にも合っていますし。ただ、そのへんはあまり深掘りされず、まさかの原作ストック枯渇に伴うブツ切りエンド。ちょっとどうなんだろ思いましたよ。アニオリでもいいから落とし前はきっちりつけてくれ。後、性暴力を割とこう、サラッと流しているのもアレな感じがする。
 
 ストーリーには不満が強い作品なのですが、その他の面は結構いい点があり、アクションですよね。あれはさすがMAPPAだなと思った次第です。また、本編以外では、OPとEDがとても良かった。OPは凄くカッコよく、EDはとてもかわいい。OPとEDを1度も飛ばさなかったのは今期では本作だけでした。2期あったら一応見ますけど、いつになるんだろ。