暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2020年秋アニメ感想⑩【呪術廻戦】

呪術廻戦

 
☆☆☆☆★(4.5/5)
 
 
 週刊少年ジャンプにて連載中、芥見下々先生原作のダークファンタジー・バトル漫画を原作としたTVアニメ作品。TVアニメ化以前より漫画ファンの間では話題の作品で、私も交流会編あたりから読んでいました。この時点でかなり面白い漫画だなと思っていて、TVアニメ化を聞いたときは超嬉しかったです。
 
 しかし、放送の直前に「鬼滅の刃」が空前絶後の大ヒットを記録。当時は「とんでもないことになっちまったな。絶対比べられて不利じゃん」と思ったのですが、そこはさすが集英社。本作を「ネクスト鬼滅」などど言い出し、積極的にアピール。アニメスタッフにはアクションに定評のある朴性厚さん、キャラクターデザインには平松禎史さん、シリーズ構成には瀬古浩司さん、アニメーション制作会社にはMAPPAと、鉄壁の布陣を用意。それが功を奏し、放送開始時から話題が沸騰し、現在は既刊15巻で累計4000万部を突破という、「ネクスト鬼滅」にふさわしい結果を残しました(記録的には「ONEPIECE」越え)。オリコンランキングを見ると、未だに売れてます。まぁそのおかげで、本当に一部では「鬼滅の便乗したおかげでヒットしたのでは?」とか思われているし、事実その面はあるんですけど、いやいやそもそも作品そのものが面白いんですよという話をしたいなと思います。

 

鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

 本作は様々な人が指摘している通り、過去のジャンプ作品のいいとこ取りです。「主人公の中に最強の存在が封印されている」「呪術高専」「五条悟」といった設定は「NARUTO」、漫画のコマ割りとかテンポ感は冨樫義博先生、能力の感じは「BLEACH」、能力の設定は「HUNTER×HUNTER」を彷彿とさせます。これは芥見先生も言及されている点です。本作には、その他にも様々な映画や漫画からの印象があります。面白いなと思ったのは、芥見先生のお話の中では、「ONEPIECE」への言及があまり無いこと。現在のジャンプを代表する存在でありながら、空前のヒットを記録した「鬼滅の刃」といい、本作といい、そこまで影響が見られないのは時代の変化を感じさせます。「ヒロアカ」は影響ありまくりですけど。
 
 これらを「パクリ」と言い、オリジナリティのなさとして批判する人もいるのですけど、私は寧ろこれは音楽で言うところのサンプリングに近いものなんじゃないかと思っております。つまり、既存の設定や演出方法を抜き出して、自身の漫画として昇華していく、という。そして事実それは成功していて、目新しさは無いのですけど、読んでいてめちゃくちゃ面白い、「ツボ」を抑えた作品になっているんですよね。そこに加え、台詞の韻の踏み方(真人戦の「二度は無い」とか)、アクションの見せ方とかも普通に上手い。要は「ヒロアカ」と共に、「ONEPIECE」世代の次の「新時代のジャンプ作品」として素晴らしい作品なのです。
 
 また、これに加え、従来のジャンプ漫画から更なる意識的なアップデートも施されています。これは「鬼滅の刃」でも見られた点なのですけど、大きくは女性の描き方ですよね。バトル漫画では、女性キャラって脇に追いやられたりすることが多かったり、強い人は「強い理由」があったのですけど(普通に強い人ももちろんいます)、本作にしろ「鬼滅」にしろ「ヒロアカ」にしろ、女性キャラがフラットに強い。特に理由付けとかは無いです。従来の「ヒロイン」的な存在はいないのです。後は小沢さんのエピソードですよね。
 
 更に、ストーリーの進め方も、かなりのスピード感で進めています。本来ならば1話くらいかけてしかるべき点を、「いや、もうこれはこういうもんだから。そういうお約束は最速ですっ飛ばす」とばかりに。具体的にはTVアニメ2話の伏黒の葛藤とか、虎杖の「戦う理由」の下りとかです。これは全キャラに徹底されていて、各キャラを最速で立たせ(ナナミンの登場から魅力的に映るまでの流れの素晴らしさ!)、そして退場させます。「従来の漫画をサンプリングしアップデートさせる」という点では、やはり本作がDNAを色濃く継いでいるのは、冨樫義博先生なんだなと思います。

 

 

 で、アニメはどうだったのかというと、素晴らしかったです。脚本も原作を補完するような箇所が幾つかあったりして好印象だったのですが、やはりアクションですよね。アクションと言えば「鬼滅の刃」が凄かったのですが、本作はそれとは別ベクトルの凄さを描いています。「鬼滅の刃」は原作は一枚絵は素晴らしいのですけど、アクション描写がたまに分かりにくいところがあったりしました。しかし、そこはさすがのufotable。その隙間を上手く膨らませ、充実したものを見せてくれました。そこでは、お得意のエフェクトをバリバリに使った大迫力アクションが展開されました。
 
 翻って、「呪術廻戦」のアクションは「鬼滅の刃」とはまた少し違います。「呪術廻戦」は芥見先生が『ザ・レイド』を参考にしているというくらい、近接の肉弾戦で、手数が多い武術アクションなのです。それに加え、術式によるダイナミックな演出も必要になるというものもあります。本作では、朴監督お得意のカメラを大きく動かしてアクションのダイナミックさを描き、そこにしっかりと手数の多い武術アクションをカットを極力割らないで連続性を以て描いてみせました。また、原作の持つスピード感の再現も素晴らしかったです。一部の話ではちょっともっさりしてるかなと思ったのですけど、1,2話とか13話とか18話とかでは完璧に再現されていたと思います。特に13話とかに代表されるように、カットを極力割らないで描かれるアクションの気持ちよさは、漫画にあったスピード感と共に、アニメならではの連続した動きによる気持ちよさがあったなぁと思いました。
 
 つまり何が言いたのかというと、本作は過去のジャンプ作品(私世代が親しんだ作品群)をサンプリングし、アップデートしてみせた新時代のジャンプ漫画であり、そのアニメ化作品である本作は、その魅力をしっかりと描いていみせた良質な作品だったということです。
 

 

直前に空前の大ヒットを記録した作品。

inosuken.hatenablog.com

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 ジャンプ代表漫画。

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