暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2020年春アニメ感想④【かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~】

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☆☆☆★(3.8/5)

 

 

 週刊ヤングジャンプにて好評連載中、赤坂アカ先生原作による同名漫画のアニメ化作品。2019年の4月からはTVアニメの1期が放送され、大好評を得たことから制作された続篇です。私は原作は未読ですが、昨年放送の1期は大変面白く見たので、今作も視聴することにした次第です。

 

 本作は大変な人気を獲得し、ABEMAが行った最終ランキングでは1位を獲得したそう。それもそのはずで、本作は非常にレベルが高いのです。1期のテンションそのままのパワフルな演出や、それとは逆に細かな心情表現の演出も素晴らしかったです。それらは映像作品ならではの表現になっている点もあり、原作既読ならばもっと楽しめたかと思いますね。声優さんたちも熱演されていましたのも印象的です。特にかぐや役の古賀愛さんの貢献度は異常。

 

 全体的なストーリーについても、1話完結型の作品にも関わらず各話の積み重ねが活きてくるものにしていて、よく出来てるなぁ、と思って見ていました。最終話は1つ目、2つ目と3つ目の話がそれぞれ最終話になっていると思っていて、1つ目、2つ目は事実上の最終話。これまで孤独だったかぐやが生徒会メンバーと共に積み上げた想い出の話で、「自分の想い出」が「誰かと共有されている」ということをLINEを使って可視化させていて、本作はもちろん、1期も包括できる素晴らしいものでした。

 

 これだけで最終話にできそうなものなのですけど、ここで終わらないのがまた良い。しんみりしたところでいつも通りの話(これがまた本当に酷い)を挿入し、彼ら彼女らの日常がこれからも続いていくことも含めて終わってくれていました。

 

 

 このように、ストーリー的にも、演出的にも満足度が高い本作ですが、肩透かしな点もありまして。それは、本作は、タイトルにも入っている、「恋愛頭脳戦」をしてくれないのです。たまにやりはしますけど、基本的に本作は体育祭とか生徒会選挙といった普通の学校行事やかぐやの一人相撲が多く、白銀とかぐやの(無駄に手の込んだ)頭脳戦がほとんど行われないのです。この辺は割かし普通のラブコメ作品になってしまったかなぁと思っています。ただ、タイトルに「?」が付いているところを見るに、これは制作側にとっては意図的なものだったのかもしれませんが。

 

 そして、もう1つ気になったのが11話です。SNS上では放送直後から話題沸騰で、絶賛の声が相次ぎました。内容は石上の過去が明かされるもので、ヘビーな内容と石上の意志の強さ、そして彼の救いと成長が描かれていました。この話は石上視点で見ると凄く良い話です。大事に想っている女の子、大友をクズ男である荻野から守るために奔走するも、人気と人望がある荻野の策略で悪者にされ、味方が誰もいなくなり、周りを「敵」と思い込んでしまいます。しかし、白銀に救われ、過去のトラウマである大友を「うるせーバァカ」と言って吹っ切って石上自身が世界への見方を変えます。これを『聲の形』を彷彿とさせる演出でやっていました。

 

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  • 発売日: 2017/05/17
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 石上視点では良い話です。そして石上も最高です。白銀の言う通り、もっとスマートなやり方はあったと思いますが、大友のために行動し、1人で戦った姿は立派ですよ。そしてそれを汲み取った白銀も同じく。ただ、私が気になったのは、大友の処理の仕方です。大友はあの事件の真相を何も知らないのです。それは石上の願いなので仕方がないのですが、最終的に彼女が「何も知らない大衆」の代表みたいな感じになってしまっていて、石上にあからさまな敵意を向けていたとき、彼に「うるせーバァカ」と言われてハッキリと狼狽してるんです。そして、視聴者的にはそこで一種のカタルシスを感じてしまえるように出来ているのです。私はこの点に凄くモヤモヤしました。というのも、彼女には石上を糾弾したという責任はありますが、同時に彼女は(おそらく)被害者1歩手前でもあったわけです。この視点を入れずに、大友を「何も知らない大衆」代表として、悪者のように描いてしまうのはどうなんだと思いました。

 

 また、大友には本当にこれでよかったのかな?という思いもあります。確かに、彼女は秀知院には良い思い出しかないと言っています。つまり、彼女は荻野のことをまだ「良い人」だと思っていて、石上のことを「自分のストーカー」だと思っていて、「石上にストーキングされた」という記憶があるわけです。いくら「楽しい思い出しかない」と言っていても、1人の人間を未だに恨んでいたわけですよ。しかも恨みの対象がまだ自分が好きな学校にいるという。正直言って、真相を話しても最悪、恨みの対象が荻野になるだけだし、そして荻野は本当にクズなんだし、別に問題無くないですか?真相を話せば大友も石上に謝罪すればいいだけですし。というか、荻野の他の被害者はどうなってんだっていう話もあります。リベンジポルノ問題もかぐや様なら解決できると思うんだけどなぁ。ここまで考えてしまうと、石上の想いも若干独りよがりに感じられてしまいます。

 

 このように、若干気になる点はあれど、全体的なレベルの高さは素晴らしく、毎週楽しませてもらいました。3期もあったら見ますよ。

 

 

 1期です。

inosuken.hatenablog.com

 

 同じくギャグアニメ。

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ハーレイ・クイーン「らしい」自由奔放な痛快映画【ハーレイ・クイーンの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY】感想

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77点

 

 

 2016年に公開され、内容的にはアレだったけれども、興行的には大成功を収めた『スーサイド・スクワッド』。基本的にボロカスに言われた作品でしたが、1つだけ誰もが好意的に見たキャラがいました。それが本作の主役、ハーレイ・クイーンです。ジョーカーの恋人として1992年のTVアニメ版「バットマン」にて初登場し、その後本家アメコミに逆輸入される形で登場。基本的にジョーカーの恋人として登場します。まぁジョーカーにとっての最愛の人はバットマンなんですけど。

 

 DC映画はそれこそ『スーサイド・スクワッド』を公開した頃はボロボロで、2017年の『ジャスティスリーグ』までで興行的・批評的に成功したのが『ワンダーウーマン』のみという有様でした(まぁこの作品は映画史の中で非常に重要な役割を果たしたのですが・・・)。しかし、2019年に体制を整えてからは一転、『アクアマン』という傑作を送り出し、『シャザム!』、そして同じ年の11月には『ジョーカー』を公開。それまでの不調ぶりがウソのような大復活を遂げました。そんな中で公開されたということで、本作に関しては期待しかなく、前売りまで買って準備していました。新型コロナウイルスの影響もあるし、早めに行っておこうと、公開初週に鑑賞した次第です。

 

 「ジョーカーの恋人である」ことから、これまでいくら暴虐舞人に振舞っても見過ごされてきたハーレイ・クイーン。しかし、ジョーカーと破局し、その後ろ盾が無くなった今、ここぞとばかりに恨みを晴らすべく敵が襲ってくる。どうする、ハーレイ・クイーン!というのが基本的な内容です。

 

スーサイド・スクワッド(字幕版)

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  • 発売日: 2016/11/23
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 本作は女性のエンパワメント映画としての側面を強く打ち出しています。ハーレイ・クイーンの境遇は、「周囲からは男の付属品としかみなされていない」もしくはそれしかアイデンティティがない、という女性像(○○の奥さんとか彼女とか)そのものだと思います。ハーレイ・クイーンは大学を出てて博士号もとっているそう(アーカムアサイラムで心理学者として働いてたんだから当然か)。でも服装のせいで馬鹿にされて、「ジョーカーの恋人」としか見なされていません。そのためか、本作においてジョーカーは出てこず、「力を持った男性」として抽象化されています。ジョーカーを吹っ切り、自分の力だけで戦うハーレイ・クイーンに自立した女性像を重ね合わせているのです。だからこそ、ラストはジョーカーとよりを戻すのではなく、事業を立ち上げ、彼女なりに人生を楽しむことを示して終わっているわけです。

 

 ハーレイ・クイーン以外の女性たちも、男社会で苦労している人たちばかりです。ブラックキャナリーは歌姫として雇われてるけど搾取されてるし、レニーは警察内部で手柄を立てても男に取られてます。そんな彼女たちが絆を結び、カサンドラという少女を守るのです。このカサンドラは孤児でスリをやっているわけですが、こういう孤独な少女を女性たちが身を挺して守る、というのも良い点だなと思います。

 

 本作の構成は非常に独特で、時系列がシャッフルされ、『デッドプール』的な第4の壁を破ったモノローグで進みます。これに関して「特に意味がないのでは」という意見を見ましたが、私にはこの構成は、ハーレイ・クイーンというキャラクターの視点の物語として本作を作るうえで非常に重要な役割を果たしていたと思っています。あのどこか破天荒で適当な感じを持ったハーレイ・クイーンには、あれくらいがちょうどいい演出だったと思います。また、これによって、本作そのものが、物語の定型から解放されたような気にもなりました。

 

デッドプール (字幕版)

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  • 発売日: 2016/09/07
  • メディア: Prime Video
 

 

 さらに特筆すべきはアクション。『ジョン・ウィック』シリーズや『アトミック・ブロンド』を制作した87イレヴンが関わっているということで、空間や武器などのバリエーションの豊富さはもちろん、やっぱり体術が素晴らしかったです。こういう点をしっかりとやっている点は本当に偉い。

 

 以上のように、本作は女性のエンパワメント映画として、そして1つの痛快娯楽映画として、私は楽しく観ることが出来ました。新型コロナウイルスの影響もあって興行的には振るわなかったそうですが、出来自体は良いので、多くの人に観てほしいです。

 

 

 関係あるのはジャレット・レトの方なんですけどね。

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 これもシスターフッド映画。

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2020年春アニメ感想③【波よ聞いてくれ】

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☆☆☆☆(4.4/5) 

 

 

 「鼓田ミナレの「波よ聞いてくれ」っへえええーい!」

 

 月刊アフタヌーンで好評連載中、「無限の住人」の沙村広明先生原作の、ラジオを題材とした漫画のアニメ化作品。「無限の住人」は沙村先生の性癖が存分に発揮されている作品で、ぶっちゃけ倫理的にはR18を優に超えてくる作品であったのに対して、本作はかなり「普通」。具体的には何の修正もなく地上波で流せる内容です。アニメーション制作は「機動戦士ガンダム」などでお馴染みのサンライズ。監督は『劇場版FAIRY TAIL DRAGON CRY』で監督を務めた南川達馬さん。TVアニメはこれが初、かな。私は原作は以前から読んでおり、アニメ化は素直に嬉しかったので視聴しました。

 

 本作は、まず第1話が素晴らしかったです。Aパート、いきなり本作最大の売りである「架空実況」から始まるのです。初見の方の中にはこれで面食らった方もいらっしゃったと思うのですが、私はこの構成を支持したいです。というのも、いきなりこの架空実況を放送したことで、我々視聴者に作品内の「架空実況を偶然聞いているリスナー」と同じ気持ちを感じさせることに成功しているからです。作中のリスナーは、「架空実況」の初回(恋人殺したってやつ)を聞いて「何だこれ」と思っていましたが、初見の方は同じ感想を抱いたか、若しくは困惑したはずです。これによって、「波よ聞いてくれ」という作品に対する印象を作中のリスナーと視聴者とで同期させ、作品のトーンそのものを示して見せることが出来ています。これは作品全体のフックにもなっているので、この意味でもこの構成は素晴らしいと思います。

 

 

 その他の構成も上手くて、基本的に4巻までの内容をシャッフルしたものなのですが、ミナレがラジオDJとしてスカウトされ、自覚を持ち、元カレを吹っ切るという本編として上手くまとまっています。しかも1話で「殺す」を宣言した光男を11話で架空実況の中で「葬り去る」という決着のつけ方と、それを放送して、聞いている人がいるという構図。これがまた良くて、ミナレの所信表明をラジオを通してみんなが聞いているという、タイトル通り「波よ聞いてくれ」なんですよね。そしてそれは自らの周りで起こったことをラジオのネタにしていくというミナレがやってきたことの総決算でもあるという。

 

 さらに、この11話と対になっていると感じたのが12話。原作7巻で起こった大地震をここで挿入しているのですが、ここで「ラジオ」というメディアの重要性と素晴らしさを描いているのです。あくまでも「ミナレのこと」中心だった11話と比べると、12話では「ラジオ」全体に話が広がっています。緊急時、人々をつなげ、情報を発信し、元気づけることが出来るのがラジオであり、これもまた「波よ聞いてくれ」なのだと思います。

 

 構成以外で素晴らしいのが、ミナレ役を演じた杉山里穂さん。かなりのセリフ量であり、それが作品のトーンになっているため、ミナレをどう演じるか、あのマシンガン・トークをどう再現するか、はすごく重要。彼女はそれを見事にやってくれました。他の声優さんもベテランから実力派まで幅広く集めており、「声」が重要な本作にとってベストな配役でした。

 

 アニメ化に際して、私は主に構成とキャストについて書きましたが、ストーリーが面白いのはもちろんです。ラジオという題材上、絵的に地味になりそうなところを、架空実況とそのネタ集めを描いてどんどんストーリーを膨らませていく展開はやはり面白く、原作を読んでいても楽しむことが出来ました。総じて良いアニメ化だったと思います。

 

 

 R18+の方の沙村先生。

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 サンライズ制作の2作品。映画だけど。

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2020年春アニメ感想②【かくしごと】

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☆☆☆★(3.5/5)

 

 

 久米田康治先生原作、月刊少年マガジンで連載中のギャグマンガのアニメ化作品。声優はもはや久米田作品の主人公専属声優となった感のある神谷浩史さん。アニメーション制作は亜細亜堂で、監督は『ぼくらの七日間戦争』が記憶に新しい村野佑太さん。自分の娘にギャグ漫画家であることを隠している後藤可久士を主人公に、(おそらく)漫画家あるあるを久米田先生らしいブラックかつ自虐的なギャグで描きます。ちなみに、タイトルの「かくしごと」は「隠し事」と「描く仕事」、そして「可久士ごと」のトリプルミーニングです。

 

 私は原作未読でしたが、アニメ化を機にLINEマンガで無料開放されていた2巻分を読むことが出来ました。そしたら相変わらずの久米田先生だったので、視聴を決めました。また、シャフト以外がこれを制作したらどうなるのかという興味もありました。

 

 1話を見て感じたことは、「大人しい」ということでした。これは比較対象をシャフトの新房監督と比べているので当然と言えば当然なのですが、「久米田作品のアニメ化」となると「さよなら絶望先生」を想像する私にとっては少し肩透かしでした。しかし、これは比較対象が悪いのであり、視聴を続ければ続けるほど、新房作品の方がエッジが立ちすぎてておかしいのであり、本作は非常に丁寧にアニメ化されていると感じられました。

 

 久米田作品は「さよなら絶望先生」や「じょしらく」などのように、1つの事例から話がどんどん広がっていって、いくつものブラックなネタや時事ネタを扱い、最終的に全方位的に爆撃をしまくるというものです。本作はこのような久米田ギャグを、漫画のテンポをそのままアニメ化したように感じられました。少なくとも2巻分読んだ限りでは。

 

 

 本作ではギャグのネタは「漫画家ネタ」に限定されていて、久米田先生が受けたであろう扱いや経験したことが、彼らしい自虐的な笑いに昇華されています。特に面白かったのが「ギャグ漫画家が世間でどう見られているのか」への久米田先生なりの視点。「現実にシリアスなことになったらギャグが受け入れられなくなる」という点は特に。「下ネタ漫画を描いてたら娘がいじめられる」はよく分かりますが、漫画作品にとっては、作者のイメージまでひっくるめて作品になっているのだなぁと思った次第です。

 

 本作のストーリーは「娘10歳編」と「娘18歳編」の2つの時間を交互に描きます。「娘10歳編」では上述の久米田ギャグが炸裂しますが、「娘18歳編」では一転して、鎌倉を舞台に非常にしんみりとした雰囲気のもと、可久士に身に何かがあったことが断片的に語られていきます。本作のフックとなっているのはこのストーリーで、視聴者は何が起こったのかを推察しつつ楽しむことが出来るというわけです。

 

 最終話では、張られていた伏線がすべて回収され、謎が明かされ、「隠しごと」は無くなります。この辺は伏線回収という点ではきれいでしたが、若干「答え合わせ感」があったのも事実です。しかし、ここで重要なのは姫には「秘め事」ができる点。ここに私は、姫は「秘め事」ができるようになるほど大人になったのだと思えました。隠し事はあれど、それでも互いを想い合って、この2人の家族は生きていくのだろうと、そう思える最終回でした。

 

 

 同じく春アニメ。

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2020年夏アニメ視聴予定作品一覧

 2020年の春アニメは、新型コロナウイルスの影響で数作品が延期になるという未曽有の事態が発生しました。そのため、今年の春アニメはここ数年の中でも視聴した本数がかなり少ないクールとなりました。それでも最終回まで無事放送することができた作品に関しては面白く見ることができ、ただただ感謝です。そして今回の夏アニメです。正直、タイミング的には春アニメよりも影響が大きいのではないかと思っていましたが、視聴作品を選別してみると、モロに出たのかなと思える結果となりました。ここで文章を書くよりも実際にラインナップを書いた方が早いので、行ってみましょう。

 

視聴予定作品

 

2020年春アニメ(延期作)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」

「天晴爛漫」

富豪刑事

「Re;ゼロから始める異世界生活2」

 

2020年夏アニメ

「宇崎ちゃんは遊びたい」

デカダンス

「THE GOD OF HIGH SCHOOL ザ・ゴッド・オブ・ハイスクール」

「GREAT PRETENDER」

日本沈没2020」

 

 以上、合計9作品。いつもは10数本あるのですが、今回はこれだけです。しかも、そのうち2本はNETFLIXで配信されますし、私もそっちで見たいと思っています(「GREAT PRETENDER」は現在5話まで視聴済み)。だから地上波放送で視聴するのはわずか7本。ちょっと異常です。まぁ仕方ないですね。

 

 春アニメに関しては、延期していた3作品を見たいと思います。「放課後ていぼう日誌」は3話まで見ましたが、良くも悪くも動画工房でしかなく、ちょっと退屈に感じてしまったので、見送ります。春アニメで特に楽しみなのは、やはり「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」です。「続」は話数に比して原作の冊数が多すぎたため、詰め込み過ぎて微妙な出来になっていましたが、今回は3冊で1クールというシリーズ史上最も適切なもの。スタッフも「続」から続投なので、期待しています。後、「リゼロ」は1期が面白かったので付き合いで見ます。

 

 夏アニメに関しては、NETFLIXですが、「日本沈没2020」です。湯浅政明小松左京の傑作をアニメ化。これだけで期待が高まりますが、意図せずタイムリーな内容になってしまったので、その意味でも期待。「GREAT PRETENDER」も5話まで見てとても面白かったので視聴します。後は再放送で「ハナヤマタ」かな。以上です。今期も、話題や評価で見るアニメを変えていこうと思います。

アニメーション制作と、人生への讃歌【劇場版 SHIROBAKO】感想

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94点

 

 

 2014年の10月から2015年の3月まで放送されたTVアニメ、「SHIROBAKO」。P.A.WORKSの「働く女の子シリーズ」の第2弾であり、商業的にも内容的にも大成功を収めた作品。私もTVアニメは放送当時見ていて、素晴らしい作品だと思っていましたので、劇場版である本作も大変楽しみにしていました。

 

 本作は「TVアニメの劇場版」としての役割をきちんと果たした作品です。TVアニメ版は業界あるあるとフィクションを混ぜた群像劇で、アニメーション制作を「お仕事もの」として、厳しい面とのバランスを取りつつエンタメとして作り上げていました。だから作品のトーンは全体的に前向きで、彼女たちのその後に希望が持てる内容でした。

 

 

 翻って、劇場版である本作は、TVアニメ版の最後に見せた希望をひっくり返し、より現実的で、ダークな内容になっています。それは冒頭から現れています。本作はTVアニメ版と同じく、道路に並んだ他社の社用車と、武蔵野アニメーション(以降、ムサニ)の社用車が走り出す、というところから始まるのですが、勢いよく走りだしたTVアニメ版とは違い、本作では動きが鈍重。そして社用車が辿り着いたムサニにはかつての面影はなく、かつてのスタッフはいなくなり、宮森を含めた残った数人のみで、すっかり落ちぶれてしまっています。つまり、冒頭の社用車の下りの通り、ムサニには、かつての勢いが全く無くなってしまっているのです。この落ち目っぷりが凄くて、TVアニメ版を見ていた人間ならば愕然とすることでしょう。覇気のない朝礼、寂れた社屋(余談ですが、外見がジブリっぽいし、スタッフが抜け、抜け殻同然という点では、ガイナックスっぽい)など、「もう私たちが知っているムサニはないのだ」と突き付けてきます。しかも仕事で無理難題を押し付けられ、その憂さを晴らすために何件も梯子して飲み歩いているってのが何とも共感してしまうという。

 

 本作はこの落ち目のムサニが、捨て企画であるクソ案件を引き受け、それを一念発起して成功させる復活劇なのです。前半の落ち目描写があるから、ここで再起し、かつての仲間をもう一度集め、在りし日のムサニを取り戻していく展開は素直に燃えます。そして最後の「カチコミ」描写は24話の木下監督のカチコミと同じくアニメ的に誇張した演出で見せ、アニメーション作りの情熱を炸裂させます。

 

 「何故アニメーションを作るのか」という問いも、本作の重要なテーマです。奇しくも同時期に放送されていた「映像研には手を出すな!」でも同じテーマが語られていましたが、そこには共通する想いがあります。それは「きっと分かってくれる誰かに届けたい」というもの。しかし、「映像研」はアニメーションへの初期衝動を語っていたのに対し、本作は「お仕事もの」として語っています。情熱と現実というのは中々折り合わないものだけれど、その情熱を持たなければ仕事なんてできないのです。

 

 

 そして、そういう思い描いた本作を観ている我々は、本作を、そしてアニメが好きなのです。つまり、本作そのものが、彼女たちの想い、そして、アニメーションの作り手たちの想いを伝える作品になっているのです。だからエンディングで、完成作品が上映されたシーンが流され、それが我々とシンクロしたときは感動ものでした。「届いた」瞬間だから。この点も「映像研」と同じです。

 

 また、本作は日本のアニメーション業界の「現在」と向き合い、描いています。それが一番出ているのがラストの劇中劇で、沈みゆく船から脱出するというもの。この沈みゆく船をアニメ業界、脱出し、新天地を求めて、絶体絶命の中でも諦めずに抗い続けるのが業界の人々と見ると、納得できます。近年、TVアニメは毎クール50本近くが制作され、飽和状態。そして人材の奪い合いが起こっているそうです。しかし賃金は低く、未だに業界全体が超ブラックな環境だそうで、「情熱」を盾にしたやりがい搾取が横行しているそうです(つい最近でも、studio4℃の件がありましたね)。こんな状況では、確実にアニメーション業界は潰れる。それを暗に示したのがラストの劇中劇だったと思います。

 

 でも、それでも、やるしかないのだ。とまで本作は言い切ります。泥船であっても、抗うしかない、人生は続くのだから、と。ここで、本作は「人生」の讃歌になります。本作で描かれたことは1つの案件でしかなく、この先も人生は続いていく。辛いことも、悲しいこともたくさんあるけれど、それでも「戦いはこれから」なのだ、と、本作は謳います。この点で、本作はアニメーション制作だけではなく、より普遍的な要素を持った作品だったと言えます。

 

 以上のように、本作はアニメーション制作をエンタメとして描き、そしてTVアニメの劇場版として、きちんと「その後」を、さらに業界の未来をも描き出してみせました。それだけでも素晴らしいのですが、本作はさらに人生讃歌を盛り込み、普遍的な内容に仕上げてみせるという内容で、素晴らしい作品でした。

 

 

 同じテーマを扱った作品。

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 水島監督の作品。

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『ランボー ラストブラッド』公開記念!『ランボー』シリーズ4作の簡単な感想

はじめに

 ロッキーと並び、シルベスター・スタローンの代表的な役であるランボーベトナムから帰還してから始まった彼の物語が、とうとう完結します。今回の記事では、最新作の公開を記念して、これまでのシリーズの簡単な感想をアップしたいと思います。本当に簡単なので、短いです。

 

 

ランボー】感想

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82点

 

 主に2と3のおかげで大味アクション映画の印象が強くなってしまった本シリーズですが、1作目である本作はベトナム戦争の傷跡を抉り出す社会派作品でした。

 

 ランボーは『コマンドー』のメイトリックスみたいな筋肉モリモリマッチョマンの変態ではなく、心を戦場に置き忘れた傭兵なわけです。戦場で祖国のために戦ったのに、その祖国に帰ってきたら自分は除け者であり、ひどい仕打ちを受けるわけです。それにキレたランボーが暴れまわるのが本作なのです。このランボーの怒りは、『タクシードライバー』のトラヴィスとは全く違うベトナム戦争に対する意見表明で、よりストレートな「怒り」の表明だと思います。要は、「俺がこんなに頑張ったのに、冷たくしやがって!クソが!」ってことです。しかしその暴力は虚しく、何にもなりません。それがランボーの行き場のない怒りそのもののようです。

 

 

ランボー/怒りの脱出】感想

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55点

 

 『ランボー』シリーズ2作目。ベトナム帰還兵に対するアメリカの冷淡さを描いた社会派作品だった前作とは打って変わり、アクションを前面に押し出した作品に仕上がっています。もちろん、前作にもあった「ベトナムに参戦した兵士に対して、国は冷たすぎる」という内容はあるにはありますが、その批判はアメリカという国家に対しては向けられません。

 

 「今度は勝てますか」とランボーは聞きます。「前回」はもちろんベトナム戦争です。これを踏まえて本作を観ると、本作はベトナム戦争の雪辱を晴らす内容に見えなくもなく、ややアメリカ万歳映画に近づいてきたかなと思います。

 

 

ランボー3 怒りのアフガン】感想

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52点

 

 『怒りのアフガン』のサブタイトルの通り、ソ連の進行に怒れるアフガニスタンの人々とランボーの共闘を描いたシリーズ第3弾。前作まであった「ベトナム帰還兵の悲哀」の要素は完全になりを潜め、純度100%の愛国映画となりました。

 

 本作を観ていて目を引くのはその残虐描写。劇中で108人が死ぬとして、「最も残虐な映画」でギネスブックに載っただけあり、血しぶきが舞う、カメラに飛ぶ、首吊り爆死など、当時としては、かなり頑張っていると思います。

 

 もう1つの注目ポイントとしては、トラウトマン大佐が戦っている点です。前2作ではランボーを戦場に戻し、彼の強さと恐ろしさを警告するしか活躍の場が無かった彼ですが、今回はそれをきっちり行いつつ、ランボーと共に戦っています。2人の関係はいつの間にか「友人」にまで上がっているのもポイント。

 

 上述のように、内容はアフガンに進行していたソ連をアフガン兵士と共に倒すという、政治的にかなり「濃いもの。前作『怒りの脱出』よりスタローンの反ソ連愛国心が強まった感じです。ただ、これはアフガニスタンのその後の内戦からの9.11という歴史を考えると、何とも皮肉なものに見えてしまうのも事実。

 

 

ランボー 最後の戦場】感想

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94点

 

 去る9月29日、本当ならば『アド・アストラ』を観ようと思っていたのですが、疲労から来る頭痛に襲われ、観るのを断念。小さな画面ならば問題ないだろうと、本作を鑑賞した次第です。

 

 この作品は、スタローンにとっての『許されざる者』だと思います。イーストウッドはあの作品で自分が出た西部劇をリアルに描き、そこにある暴力性を抉り出してみせました。本作も同じく、過去のシリーズの内容はそのままに、戦場をリアルに描き、過去作(特に2、3)の暴力性を抉り出し、批評的な視点を盛り込んでいます。

 

 その視点の1つが、本作では、ランボーはヒーローではない点。2と3では捕虜の多くを救ってみせた彼ですが、本作で彼が救えるのは、目の前の数人だけなのです。そしてそこに加えて、血みどろのアクションシーンが繰り広げられます。ここでのゴア描写はかなりのもので、本作が持っていた暴力性を浮き彫りにしています。

 

 また、あのボランティア達について。確かに彼らは愚かだったと思います。しかし、本作ではそこをあまり批判的には描いていません。寧ろ、彼らのリーダーが遂に戦ったときは、高揚感などまるでない演出がされています。ここに、彼のような人間でも暴力にてを染めざるを得ない場所こそが戦場なのだという主張があります。

 

 ランボーは、1作目からベトナム帰還兵として苦しみ、同時に帰還兵に対するアメリカの扱いに憤ってもいました。しかし、本作でランボーは、人を必死に助けようとする彼らの姿を目にします。そして、彼らのように本気で人を救おうとする人間がいると知ったからこそ、ラストで祖国に帰る気になったのだと思います。だから邦題は「最後の戦場」にしたのかもしれません。

 

 

終わりに

 以上です。個人的には、このシリーズは1作目と4作目は傑作だと思いますが、2,3作目は微妙という感じです。ただ、4作目は2,3作目があってこそなので、4作目の存在のおかげで2,3作目も必要だったと肯定できます。『ラストブラッド』では、どのような活躍を見せてくれるのか、楽しみです。