暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

『ランボー ラストブラッド』公開記念!『ランボー』シリーズ4作の簡単な感想

はじめに

 ロッキーと並び、シルベスター・スタローンの代表的な役であるランボーベトナムから帰還してから始まった彼の物語が、とうとう完結します。今回の記事では、最新作の公開を記念して、これまでのシリーズの簡単な感想をアップしたいと思います。本当に簡単なので、短いです。

 

 

ランボー】感想

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82点

 

 主に2と3のおかげで大味アクション映画の印象が強くなってしまった本シリーズですが、1作目である本作はベトナム戦争の傷跡を抉り出す社会派作品でした。

 

 ランボーは『コマンドー』のメイトリックスみたいな筋肉モリモリマッチョマンの変態ではなく、心を戦場に置き忘れた傭兵なわけです。戦場で祖国のために戦ったのに、その祖国に帰ってきたら自分は除け者であり、ひどい仕打ちを受けるわけです。それにキレたランボーが暴れまわるのが本作なのです。このランボーの怒りは、『タクシードライバー』のトラヴィスとは全く違うベトナム戦争に対する意見表明で、よりストレートな「怒り」の表明だと思います。要は、「俺がこんなに頑張ったのに、冷たくしやがって!クソが!」ってことです。しかしその暴力は虚しく、何にもなりません。それがランボーの行き場のない怒りそのもののようです。

 

 

ランボー/怒りの脱出】感想

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55点

 

 『ランボー』シリーズ2作目。ベトナム帰還兵に対するアメリカの冷淡さを描いた社会派作品だった前作とは打って変わり、アクションを前面に押し出した作品に仕上がっています。もちろん、前作にもあった「ベトナムに参戦した兵士に対して、国は冷たすぎる」という内容はあるにはありますが、その批判はアメリカという国家に対しては向けられません。

 

 「今度は勝てますか」とランボーは聞きます。「前回」はもちろんベトナム戦争です。これを踏まえて本作を観ると、本作はベトナム戦争の雪辱を晴らす内容に見えなくもなく、ややアメリカ万歳映画に近づいてきたかなと思います。

 

 

ランボー3 怒りのアフガン】感想

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52点

 

 『怒りのアフガン』のサブタイトルの通り、ソ連の進行に怒れるアフガニスタンの人々とランボーの共闘を描いたシリーズ第3弾。前作まであった「ベトナム帰還兵の悲哀」の要素は完全になりを潜め、純度100%の愛国映画となりました。

 

 本作を観ていて目を引くのはその残虐描写。劇中で108人が死ぬとして、「最も残虐な映画」でギネスブックに載っただけあり、血しぶきが舞う、カメラに飛ぶ、首吊り爆死など、当時としては、かなり頑張っていると思います。

 

 もう1つの注目ポイントとしては、トラウトマン大佐が戦っている点です。前2作ではランボーを戦場に戻し、彼の強さと恐ろしさを警告するしか活躍の場が無かった彼ですが、今回はそれをきっちり行いつつ、ランボーと共に戦っています。2人の関係はいつの間にか「友人」にまで上がっているのもポイント。

 

 上述のように、内容はアフガンに進行していたソ連をアフガン兵士と共に倒すという、政治的にかなり「濃いもの。前作『怒りの脱出』よりスタローンの反ソ連愛国心が強まった感じです。ただ、これはアフガニスタンのその後の内戦からの9.11という歴史を考えると、何とも皮肉なものに見えてしまうのも事実。

 

 

ランボー 最後の戦場】感想

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94点

 

 去る9月29日、本当ならば『アド・アストラ』を観ようと思っていたのですが、疲労から来る頭痛に襲われ、観るのを断念。小さな画面ならば問題ないだろうと、本作を鑑賞した次第です。

 

 この作品は、スタローンにとっての『許されざる者』だと思います。イーストウッドはあの作品で自分が出た西部劇をリアルに描き、そこにある暴力性を抉り出してみせました。本作も同じく、過去のシリーズの内容はそのままに、戦場をリアルに描き、過去作(特に2、3)の暴力性を抉り出し、批評的な視点を盛り込んでいます。

 

 その視点の1つが、本作では、ランボーはヒーローではない点。2と3では捕虜の多くを救ってみせた彼ですが、本作で彼が救えるのは、目の前の数人だけなのです。そしてそこに加えて、血みどろのアクションシーンが繰り広げられます。ここでのゴア描写はかなりのもので、本作が持っていた暴力性を浮き彫りにしています。

 

 また、あのボランティア達について。確かに彼らは愚かだったと思います。しかし、本作ではそこをあまり批判的には描いていません。寧ろ、彼らのリーダーが遂に戦ったときは、高揚感などまるでない演出がされています。ここに、彼のような人間でも暴力にてを染めざるを得ない場所こそが戦場なのだという主張があります。

 

 ランボーは、1作目からベトナム帰還兵として苦しみ、同時に帰還兵に対するアメリカの扱いに憤ってもいました。しかし、本作でランボーは、人を必死に助けようとする彼らの姿を目にします。そして、彼らのように本気で人を救おうとする人間がいると知ったからこそ、ラストで祖国に帰る気になったのだと思います。だから邦題は「最後の戦場」にしたのかもしれません。

 

 

終わりに

 以上です。個人的には、このシリーズは1作目と4作目は傑作だと思いますが、2,3作目は微妙という感じです。ただ、4作目は2,3作目があってこそなので、4作目の存在のおかげで2,3作目も必要だったと肯定できます。『ラストブラッド』では、どのような活躍を見せてくれるのか、楽しみです。