暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

「コントロールする」女性たち【ハスラーズ】感想

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83点

 

 

 最初はノーマークだったのですけど、アトロクで特集されてて興味が湧き、調べてみたら一番近い映画館でやっていることが判明したので鑑賞してきました。感想として、想像以上に面白くて本当にびっくりしました。

 

 本作は題材とキャッチコピーを見れば『オーシャンズ8』などに代表され、昨今量産されている「女性が男性をとっちめる」系の女性のエンパワメント映画に見えます。もちろんその面もあります。本作の主人公は低賃金で働く女性たち。その女性たちがカモにするのは「男社会」であり、経済の根幹である「金融」をコントロールする人間。最初はストリッパーとして貢がせていた彼女たちですが、絶頂期は過ぎ、金融危機が起こってしまいます。この金融危機とは、もちろんこの金融界の男どもが引き起こしたリーマン・ショック。そして主人公たちはそれを受け、職を失くしてしまいます。しかしそれを起こした連中はのうのうと生きている。これは許せない。ということで違法な手を使ってこの危機を起こした男どもから金を毟り取っていくのです。この点は「女性の逆襲」という展開で、素直にこの手のジャンルの映画として楽しめます。

 

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 しかし、問題はここからです。本作は「男どもに逆襲してスカッとして終了!」ではなくて、その後の「報い」を受けさせ、「現実」の話にしているのです。彼女たちが行ったことは理由はどうあれ犯罪であり、裁かれるべきものです。しかし、あの手段以外に彼女たちが現在の生活から抜け出す方法があったのでしょうかという話なんです。自分たちが全く関知していない金融危機のせいで職を失い、就職難で職を得ようとも前歴の問題で雇ってくれない。これを「自己責任」で片づけるのは乱暴だと思いますよ。だから彼女たちは違法な手段に手を染めるしかなかった、とも言えるのです。この辺が凄くモヤモヤするけど、彼女たちを結局は「犯罪者」として描いていて、それ故に誠実な作り方だと思います。

 

 この「社会の底辺で、持たざる者」という点では、本作は『ジョーカー』と非常に近い内容の作品と言えます。しかもなす術もなく逮捕される。結局、彼女たちはどうあがいても「持たざる者」でしかないのです。つまり彼女たちは、自分たちが抗おうとしていた「社会」の掌の上で踊っていただけだったと言えるのです。最初のポール・ダンスのようにね。舞台の上でポールダンスを踊っている彼女たちを見ている観客という劇中の構図は、本作を観ている私たちそのものだと言えなくもないと思います。

 

 ただ、彼女たちが『ジョーカー』のアーサーと違うのは、彼女たちには絆があったということ。ラスト、ディスティニーがラモーナとの想い出を思い出すシーンは、彼女たちには仲間がいたということを示した名シーンで、あそこで少しだけ救いがありました。

 

 

同じような映画。こっちはエンタメ寄り。

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 金融危機映画。

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