暇人の感想日記

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2020年春アニメ感想④【かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~】

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☆☆☆★(3.8/5)

 

 

 週刊ヤングジャンプにて好評連載中、赤坂アカ先生原作による同名漫画のアニメ化作品。2019年の4月からはTVアニメの1期が放送され、大好評を得たことから制作された続篇です。私は原作は未読ですが、昨年放送の1期は大変面白く見たので、今作も視聴することにした次第です。

 

 本作は大変な人気を獲得し、ABEMAが行った最終ランキングでは1位を獲得したそう。それもそのはずで、本作は非常にレベルが高いのです。1期のテンションそのままのパワフルな演出や、それとは逆に細かな心情表現の演出も素晴らしかったです。それらは映像作品ならではの表現になっている点もあり、原作既読ならばもっと楽しめたかと思いますね。声優さんたちも熱演されていましたのも印象的です。特にかぐや役の古賀愛さんの貢献度は異常。

 

 全体的なストーリーについても、1話完結型の作品にも関わらず各話の積み重ねが活きてくるものにしていて、よく出来てるなぁ、と思って見ていました。最終話は1つ目、2つ目と3つ目の話がそれぞれ最終話になっていると思っていて、1つ目、2つ目は事実上の最終話。これまで孤独だったかぐやが生徒会メンバーと共に積み上げた想い出の話で、「自分の想い出」が「誰かと共有されている」ということをLINEを使って可視化させていて、本作はもちろん、1期も包括できる素晴らしいものでした。

 

 これだけで最終話にできそうなものなのですけど、ここで終わらないのがまた良い。しんみりしたところでいつも通りの話(これがまた本当に酷い)を挿入し、彼ら彼女らの日常がこれからも続いていくことも含めて終わってくれていました。

 

 

 このように、ストーリー的にも、演出的にも満足度が高い本作ですが、肩透かしな点もありまして。それは、本作は、タイトルにも入っている、「恋愛頭脳戦」をしてくれないのです。たまにやりはしますけど、基本的に本作は体育祭とか生徒会選挙といった普通の学校行事やかぐやの一人相撲が多く、白銀とかぐやの(無駄に手の込んだ)頭脳戦がほとんど行われないのです。この辺は割かし普通のラブコメ作品になってしまったかなぁと思っています。ただ、タイトルに「?」が付いているところを見るに、これは制作側にとっては意図的なものだったのかもしれませんが。

 

 そして、もう1つ気になったのが11話です。SNS上では放送直後から話題沸騰で、絶賛の声が相次ぎました。内容は石上の過去が明かされるもので、ヘビーな内容と石上の意志の強さ、そして彼の救いと成長が描かれていました。この話は石上視点で見ると凄く良い話です。大事に想っている女の子、大友をクズ男である荻野から守るために奔走するも、人気と人望がある荻野の策略で悪者にされ、味方が誰もいなくなり、周りを「敵」と思い込んでしまいます。しかし、白銀に救われ、過去のトラウマである大友を「うるせーバァカ」と言って吹っ切って石上自身が世界への見方を変えます。これを『聲の形』を彷彿とさせる演出でやっていました。

 

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 石上視点では良い話です。そして石上も最高です。白銀の言う通り、もっとスマートなやり方はあったと思いますが、大友のために行動し、1人で戦った姿は立派ですよ。そしてそれを汲み取った白銀も同じく。ただ、私が気になったのは、大友の処理の仕方です。大友はあの事件の真相を何も知らないのです。それは石上の願いなので仕方がないのですが、最終的に彼女が「何も知らない大衆」の代表みたいな感じになってしまっていて、石上にあからさまな敵意を向けていたとき、彼に「うるせーバァカ」と言われてハッキリと狼狽してるんです。そして、視聴者的にはそこで一種のカタルシスを感じてしまえるように出来ているのです。私はこの点に凄くモヤモヤしました。というのも、彼女には石上を糾弾したという責任はありますが、同時に彼女は(おそらく)被害者1歩手前でもあったわけです。この視点を入れずに、大友を「何も知らない大衆」代表として、悪者のように描いてしまうのはどうなんだと思いました。

 

 また、大友には本当にこれでよかったのかな?という思いもあります。確かに、彼女は秀知院には良い思い出しかないと言っています。つまり、彼女は荻野のことをまだ「良い人」だと思っていて、石上のことを「自分のストーカー」だと思っていて、「石上にストーキングされた」という記憶があるわけです。いくら「楽しい思い出しかない」と言っていても、1人の人間を未だに恨んでいたわけですよ。しかも恨みの対象がまだ自分が好きな学校にいるという。正直言って、真相を話しても最悪、恨みの対象が荻野になるだけだし、そして荻野は本当にクズなんだし、別に問題無くないですか?真相を話せば大友も石上に謝罪すればいいだけですし。というか、荻野の他の被害者はどうなってんだっていう話もあります。リベンジポルノ問題もかぐや様なら解決できると思うんだけどなぁ。ここまで考えてしまうと、石上の想いも若干独りよがりに感じられてしまいます。

 

 このように、若干気になる点はあれど、全体的なレベルの高さは素晴らしく、毎週楽しませてもらいました。3期もあったら見ますよ。

 

 

 1期です。

inosuken.hatenablog.com

 

 同じくギャグアニメ。

inosuken.hatenablog.com