暇人の感想日記

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2020年春アニメ感想②【かくしごと】

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☆☆☆★(3.5/5)

 

 

 久米田康治先生原作、月刊少年マガジンで連載中のギャグマンガのアニメ化作品。声優はもはや久米田作品の主人公専属声優となった感のある神谷浩史さん。アニメーション制作は亜細亜堂で、監督は『ぼくらの七日間戦争』が記憶に新しい村野佑太さん。自分の娘にギャグ漫画家であることを隠している後藤可久士を主人公に、(おそらく)漫画家あるあるを久米田先生らしいブラックかつ自虐的なギャグで描きます。ちなみに、タイトルの「かくしごと」は「隠し事」と「描く仕事」、そして「可久士ごと」のトリプルミーニングです。

 

 私は原作未読でしたが、アニメ化を機にLINEマンガで無料開放されていた2巻分を読むことが出来ました。そしたら相変わらずの久米田先生だったので、視聴を決めました。また、シャフト以外がこれを制作したらどうなるのかという興味もありました。

 

 1話を見て感じたことは、「大人しい」ということでした。これは比較対象をシャフトの新房監督と比べているので当然と言えば当然なのですが、「久米田作品のアニメ化」となると「さよなら絶望先生」を想像する私にとっては少し肩透かしでした。しかし、これは比較対象が悪いのであり、視聴を続ければ続けるほど、新房作品の方がエッジが立ちすぎてておかしいのであり、本作は非常に丁寧にアニメ化されていると感じられました。

 

 久米田作品は「さよなら絶望先生」や「じょしらく」などのように、1つの事例から話がどんどん広がっていって、いくつものブラックなネタや時事ネタを扱い、最終的に全方位的に爆撃をしまくるというものです。本作はこのような久米田ギャグを、漫画のテンポをそのままアニメ化したように感じられました。少なくとも2巻分読んだ限りでは。

 

 

 本作ではギャグのネタは「漫画家ネタ」に限定されていて、久米田先生が受けたであろう扱いや経験したことが、彼らしい自虐的な笑いに昇華されています。特に面白かったのが「ギャグ漫画家が世間でどう見られているのか」への久米田先生なりの視点。「現実にシリアスなことになったらギャグが受け入れられなくなる」という点は特に。「下ネタ漫画を描いてたら娘がいじめられる」はよく分かりますが、漫画作品にとっては、作者のイメージまでひっくるめて作品になっているのだなぁと思った次第です。

 

 本作のストーリーは「娘10歳編」と「娘18歳編」の2つの時間を交互に描きます。「娘10歳編」では上述の久米田ギャグが炸裂しますが、「娘18歳編」では一転して、鎌倉を舞台に非常にしんみりとした雰囲気のもと、可久士に身に何かがあったことが断片的に語られていきます。本作のフックとなっているのはこのストーリーで、視聴者は何が起こったのかを推察しつつ楽しむことが出来るというわけです。

 

 最終話では、張られていた伏線がすべて回収され、謎が明かされ、「隠しごと」は無くなります。この辺は伏線回収という点ではきれいでしたが、若干「答え合わせ感」があったのも事実です。しかし、ここで重要なのは姫には「秘め事」ができる点。ここに私は、姫は「秘め事」ができるようになるほど大人になったのだと思えました。隠し事はあれど、それでも互いを想い合って、この2人の家族は生きていくのだろうと、そう思える最終回でした。

 

 

 同じく春アニメ。

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