暇人の感想日記

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ハーレイ・クイーン「らしい」自由奔放な痛快映画【ハーレイ・クイーンの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY】感想

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77点

 

 

 2016年に公開され、内容的にはアレだったけれども、興行的には大成功を収めた『スーサイド・スクワッド』。基本的にボロカスに言われた作品でしたが、1つだけ誰もが好意的に見たキャラがいました。それが本作の主役、ハーレイ・クイーンです。ジョーカーの恋人として1992年のTVアニメ版「バットマン」にて初登場し、その後本家アメコミに逆輸入される形で登場。基本的にジョーカーの恋人として登場します。まぁジョーカーにとっての最愛の人はバットマンなんですけど。

 

 DC映画はそれこそ『スーサイド・スクワッド』を公開した頃はボロボロで、2017年の『ジャスティスリーグ』までで興行的・批評的に成功したのが『ワンダーウーマン』のみという有様でした(まぁこの作品は映画史の中で非常に重要な役割を果たしたのですが・・・)。しかし、2019年に体制を整えてからは一転、『アクアマン』という傑作を送り出し、『シャザム!』、そして同じ年の11月には『ジョーカー』を公開。それまでの不調ぶりがウソのような大復活を遂げました。そんな中で公開されたということで、本作に関しては期待しかなく、前売りまで買って準備していました。新型コロナウイルスの影響もあるし、早めに行っておこうと、公開初週に鑑賞した次第です。

 

 「ジョーカーの恋人である」ことから、これまでいくら暴虐舞人に振舞っても見過ごされてきたハーレイ・クイーン。しかし、ジョーカーと破局し、その後ろ盾が無くなった今、ここぞとばかりに恨みを晴らすべく敵が襲ってくる。どうする、ハーレイ・クイーン!というのが基本的な内容です。

 

スーサイド・スクワッド(字幕版)

スーサイド・スクワッド(字幕版)

  • 発売日: 2016/11/23
  • メディア: Prime Video
 

 

 本作は女性のエンパワメント映画としての側面を強く打ち出しています。ハーレイ・クイーンの境遇は、「周囲からは男の付属品としかみなされていない」もしくはそれしかアイデンティティがない、という女性像(○○の奥さんとか彼女とか)そのものだと思います。ハーレイ・クイーンは大学を出てて博士号もとっているそう(アーカムアサイラムで心理学者として働いてたんだから当然か)。でも服装のせいで馬鹿にされて、「ジョーカーの恋人」としか見なされていません。そのためか、本作においてジョーカーは出てこず、「力を持った男性」として抽象化されています。ジョーカーを吹っ切り、自分の力だけで戦うハーレイ・クイーンに自立した女性像を重ね合わせているのです。だからこそ、ラストはジョーカーとよりを戻すのではなく、事業を立ち上げ、彼女なりに人生を楽しむことを示して終わっているわけです。

 

 ハーレイ・クイーン以外の女性たちも、男社会で苦労している人たちばかりです。ブラックキャナリーは歌姫として雇われてるけど搾取されてるし、レニーは警察内部で手柄を立てても男に取られてます。そんな彼女たちが絆を結び、カサンドラという少女を守るのです。このカサンドラは孤児でスリをやっているわけですが、こういう孤独な少女を女性たちが身を挺して守る、というのも良い点だなと思います。

 

 本作の構成は非常に独特で、時系列がシャッフルされ、『デッドプール』的な第4の壁を破ったモノローグで進みます。これに関して「特に意味がないのでは」という意見を見ましたが、私にはこの構成は、ハーレイ・クイーンというキャラクターの視点の物語として本作を作るうえで非常に重要な役割を果たしていたと思っています。あのどこか破天荒で適当な感じを持ったハーレイ・クイーンには、あれくらいがちょうどいい演出だったと思います。また、これによって、本作そのものが、物語の定型から解放されたような気にもなりました。

 

デッドプール (字幕版)

デッドプール (字幕版)

  • 発売日: 2016/09/07
  • メディア: Prime Video
 

 

 さらに特筆すべきはアクション。『ジョン・ウィック』シリーズや『アトミック・ブロンド』を制作した87イレヴンが関わっているということで、空間や武器などのバリエーションの豊富さはもちろん、やっぱり体術が素晴らしかったです。こういう点をしっかりとやっている点は本当に偉い。

 

 以上のように、本作は女性のエンパワメント映画として、そして1つの痛快娯楽映画として、私は楽しく観ることが出来ました。新型コロナウイルスの影響もあって興行的には振るわなかったそうですが、出来自体は良いので、多くの人に観てほしいです。

 

 

 関係あるのはジャレット・レトの方なんですけどね。

inosuken.hatenablog.com

 

 これもシスターフッド映画。

inosuken.hatenablog.com