暇人の感想日記

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いつまでも変わらない、奴らが帰ってきた【劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ】感想

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65点

 

 

 1985年より週刊少年ジャンプで連載が始まり、80年代のジャンプを代表する作品である「シティーハンター」。本作は実に20年振りの新作アニメ作品になります。私は平成生まれなので、もちろんリアルタイム世代ではありません。しかし、CSでやっていた過去のアニメ作品を見て大いに気に入り、近くの図書館にあった原作漫画を全巻読破するくらいにはファンになりました(『エンジェルハート』は脱落)。なので、完全新作の劇場版が公開されると知ったときは大変嬉しく、正直に書くと、2019年公開作品の中でも、特に楽しみにしていた1本でした。

 

 鑑賞してみると、良くも悪くも往年の『シティーハンター』そのままであり、新規の観客には目もくれず、ファンのために作った純度100%のファンムービーでした。この点は、同時期に公開された『コードギアス 復活のルルーシュ』と同じですね。狙ってんのかな。

 

 

 正直、本作を「2019年の映画」として観ると言いたいことはたくさんあります。「シティーハンター」名物ともいえる、「敵の弾は当たらないのにリョウや主要人物の弾は一発で当たる」はそれに対して特に理由付けもなく頻出するし、敵の理論が謎過ぎるし、敵の兵器が無駄に強大すぎて逆にシラケるし、新宿のど真ん中でドッカンバッカンやってるのに政府が動かないとかおかしいし、キャッツ・アイの出し方も強引だし、歴代のOP、EDの入れ方は無理矢理な感じしかありません。

 

 また、ギャグもエロネタで100tハンマー制裁という80年代にTVアニメでやってたものをそのままやっているため、時代錯誤な感じが半端じゃないし、繰り返し起こるので若干胃もたれしてきます。さらに、アニメーション的にも、深夜アニメの劇場版ですら「劇場アニメ向け」に演出をする作品もあるこのご時世にTVSPと同レベルのクオリティのものを出してきます。止めはラストの香の「本当に強い人」発言。MCUのように多様な「力」を使うヒーロー映画がかかっているこのご時世にしては、随分前時代的なものじゃないかと感じました。いや、1つの真理だけどさ。

 

 ただ、これらの要素は、ファンには全てプラスに働きます。何故なら、これこそがファンが望んでいた「シティーハンター」そのものなのですから。それはスタッフも意識しているようで、劇中では、キャラクターが何度も「変わらない」点を強調してきます。香は「変わってしまった」御国との会話でこの点に言及しますし、ラストのリョウも言及します。なので、本作が「いつも通り」なのは当然のことなのです。「シティハンターは変わらない」これが作品のテーマなのですから。

 

 また、過去のセルフオマージュも連発していて、冒頭のシークエンスは「シティーハンター2」のOPのラストを彷彿とさせます(実際、かかっていたのは「Angel Night~天使のいる場所~」でした)し、本編ラストの決め手は原作でもやったアレですし。探せばもっとありますよ。きっと。

 

 

 とはいえ、作品の出来は上述のような感じなので、少々の不満は残ります。しかし、その点についてはさすがスタッフです。ファンのツボを完全に抑えている。本編が終わり、流れ出すイントロ、リョウのモノローグ、そして、止めて、引く。「Get Wild」ですよ、「Get Wild」!アスファルトタイヤを切りつけながら暗闇走り抜けられたら、そりゃ許すしかないですよ。しかもEDで流れたアニメーションが何故かクオリティが高く、ここだけ眼福でした。また、やっぱりツボを押さえているのですよ、スタッフは。EDが途中で「STILL LOVE HER」に変わって、新宿の実際の風景が映されているのです。「彼らはここにいる」そう感じることができる演出で、とても粋だと思いますよ。ただ、見過ごすことの出来ない唯一の欠点は、リョウのもっこりを見せなかったことですね。劇場版なんだから別にいいだろ。

 

 以上のように、本作は純度100%のファンムービーです。新規の方は思い切って切り離しています。そこに不満のある方もいるかもしれませんが、私はこれで良いと思います。本作で『シティーハンター』は復活したのですから。劇場で公開され、現在ヒットを飛ばし、まだまだ現役のコンテンツであることを知らしめました。復活の第1歩として、これ以上のものはないでしょう。これから、時代に合わせて徐々に変わっていけばいいのです。『ルパン三世』だって『ドラゴンボール』だってそうでした。リョウ役の神谷明さんは、本作を「ルパン化」したいと語っていたそうです。つまり、定期的に帰ってくる作品ですね。私もそれを望みます。何なら、北条司先生の監修のもと、新作TVアニメを作ってもいいです。本作が、次につながることを、私は切に願っています。

 

 

同じくジャンプの代表的作品。こちらは技術的な方を現代に寄せていました。
inosuken.hatenablog.com

 

 

 ラストの伝言掲示板にいたので。

inosuken.hatenablog.com

 

 

同じサンライズ制作で、ファン向けの作品。こちらも面白かったです。

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