77点
2014年の『GODZILLA』から始まる、モンスター・ヴァースの総決算的作品。今回は全世界の映画ファンが待ち望んでいた(はず?)、ゴジラとコングの一騎討です。1962年、『キングコング対ゴジラ』にて相まみえたにも拘らず、大人の事情から決着がぼかされた2体の死闘が、遂にハリウッドの巨大資本で観られます。しかも今回は決着がつく。コロナ禍も一段落し、延期の上ようやく公開された本作。私だって楽しみにしてたので鑑賞しましたよ。
観てビックリしたのが、本作には、所謂「中身」がまるで無い作品だったことです。前作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』から人間ドラマの薄さは指摘されていましたが、本作は完全に吹っ切れて、「人間ドラマなんか知るか!」と言わんばかりの内容になっており、代わりに「怪獣のドラマ」を大真面目にやっているという、「怪獣上位映画」の究極形みたいな映画です。まぁ一応ね、「人間の行き過ぎた化学が云々」という話があるんですけど、まぁ添え物ですよ。小栗旬も何かありそうな感じを出していたくせに白目剥いてただけですから。つまり、本作のメインは完全にゴジラとコングであり、人間は2体の戦いを見護るだけに過ぎません。しかも面白いのが人間達はそれぞれ「ゴジラ派」と「コング派」に分かれていて応援しているという、完全にプロレスみたいになってる点ですね。
で、一方、ゴジラとコングにはそれぞれ敬意が払われており、ゴジラもコングもしっかり立てているんですよね。本作では大きく2回両雄激突があって、2回ともコングの敗北で終わるんですけど、それにキッチリと、「負ける理由」があるんですよね。1回目の船上のバトルでは、そもそも海がコングに不利ってのがあるんですが、拘束されていて動きもとれませんでした。で、2回目は何かチートな武器を持っていて、コングのフットワークが存分に活かせるビル群という、超有利な状況にもかかわらず、力及ばず破れます。これによって、ゴジラの強さが際立ちます。しかし、コングに良いところがないというわけではなく、そもそも映画に出ている時間はコングの方が長いんです。ストーリーもコング中心ですし。で、しかも奴には最後の最後でメカゴジラ(クソダサい)にボッコボコにされているゴジラを助け、止めを刺すという超おいしい役割があります。ちなみに、この時のゴジラは、コングとの戦いで疲弊していた、という「負ける理由」があります。こんな感じで、本作は2体を立てる、絶妙な気遣いがあるのです。
さらに、本作には2体をかなり感情豊かに描いています。本作の彼らには、「表情」があり、「感情」があるのです。ゴジラというキャラは、昭和から「キャラクター化」が進んできましたが、ハリウッドでも、7年間で日本のキャラクター化よりも更に先をいく、キャラ付けをされています。例えば、2体のライバル感とか(地底空間にいるコングを呼ぶシーンは胸アツ)、コングが助太刀に入ったときのゴジラの「お前・・・!」って感じの表情とか、ラストのゴジラの「デカい借りできちまったな・・・」に対するコングの表情とか、アレは完全に少年マンガでした。監督のアダム・ウィンガードは、『ゴジラVSデストロイア』が好きみたいで、確かにあのゴジラもめちゃくちゃ感情的だったなと思います。
一応、ストーリー的には怪獣メインではありながら、SF的な展開やビジュアルはあります。ただ、だいぶ大雑把で、しかも科学的な考証も、「とある魔術の禁書目録」の「熱膨張って知ってるか?」級の適当ぶりで、そこに期待しても仕方がないです。ゴジラとコングの一騎討を観ていれば良いと思います。
全編こんな感じなんで、ツッコミは無粋です。しかし、看過できない点があります。メカゴジラです。クソダサい。何だアレは。ターミネーターの成り損ないみたいなビジュアルで、カッコよさが命のメカゴジラでは致命的。とりあえず、デザインした奴は西川伸司さんを始めとした、メカゴジラをデザインした人たちの詰めの垢を煎じて飲みなさい。マジで。後は、小さいんですけど、コングメインなのもさぁ!気になりますよね。