暇人の感想日記

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『ゴジラ』の精神を受け継いだハリウッド版【GODZILLA(2014年)】感想

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77点

 

 

 2014年に公開されたハリウッド版ゴジラ。今年の5月末にハリウッド版『三大怪獣 地球最大の決戦』と言える『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が公開されるので、復習の意味で鑑賞しました。

 

 ハリウッド版『GODZILLA』と言えば、エメリッヒが作ったイグアナもどきがありますが、酷評され、ファンの中には存在そのものを認めていない人もいます。『FINAL WARS』でも「マグロばっかり食ってるダメなやつ」とネタにもされていました。私も酷評組の1人です。アレの何が駄目だったのかと言うと、ゴジラを単なる「モンスター」として描いていたから。本多猪四郎監督が1954年に製作した『ゴジラ』を観れば分かるように、ゴジラは生命体というよりも、「それ以上の何か」であり、それは「戦争そのもの」だったり、「日本軍の英霊」だったり、「東日本大震災」だったり、時代に応じて様々に内包する意味を変えてきました。だからゴジラはミサイルぐらいでは死なないのです。本作のゴジラは、まずこの点をクリアできています。

 

 

 本作には日本の『ゴジラ』シリーズ、そして『ゴジラ(1954年版)』へのオマージュが多々見受けられます。例えば、誰もが感じたであろう「最初の1時間ほど、ゴジラが出てこない」という映画全体の構成を挙げることができます。「ゴジラ(1954年版)」でも、最初はゴジラが出てこず、「存在」が示唆されるのみでした(本多猪四郎監督は、そこら辺をかなり意識的にやっていた模様)。

 

 本作は、ゴジラの「出方」がとても良い。夜中という暗闇の中で、ライトや、ミサイルなどの小さな光でちょっとずつ姿を見せていき、最後に仰ぎ見るようなアングルで全体像が「出現」し、咆哮したその時、最高に興奮しました。闇を最大限に使った、素晴らしいシーンだったと思います。個人的には、名著「本多猪四郎 無冠の巨匠」に載っていた「ヌッと出る」をきちんとやっている気がします。

 

 また、本作の素晴らしい点としては、「視点」も挙げることができます。本作は、基本的にカメラの視点の高さが「人間目線」なのです(ゴジラ目線になっても、それはだいたいヘリの視点だったりする)。これにより、よりゴジラの巨大さを感じ、恐怖感を煽られます。

 

 『ゴジラ(1954年版)』は、香山滋が盛り込んだ「進んだ科学の力が、人間を滅ぼしてしまうのではないのか?」という内容を含んだものだったと思います。本作でもこの点は継承されていて、物語は原子力発電所から始まり、そこから生まれたムートーという怪獣が出てきます。ただ、基本的に、人間に危害を加えるのはムートーなので、本作では、コイツこそ、「科学のしっぺ返し」を体現している存在であり、「ゴジラ(1954年版)」でいうところのゴジラ的なポジションと言えます。

 

ゴジラ

ゴジラ

 

 

 では、ゴジラはどうなのかといえば、本作では自然界の怒りを体現した存在であり、地球の調和を乱そうとする物を排除する存在なのだそう。「モンスターではない」点はまさしくゴジラですが、この設定で我々が最初に思い出してしまうのは『平成ガメラ』のガメラでしょう。

 

 ただ、ここには別の見方をすることができます。「人間の科学が生んだ怪獣VSゴジラ」という構図は、製作にも携わっている坂野義光監督作『ゴジラ対ヘドラ』を彷彿とさせます。しかもムートーもしっかり2体いるし。空も飛ぶし。何か確信犯な感じがしますね。つまり、本作は、ハリウッド版『ゴジラ対ヘドラ』と言えなくもない・・・のか?ちょっと自信がないです。すいません。

 

 このように本作は、ゴジラの芯となる部分もしっかりとやっていると思うし、オマージュもそこかしこに感じる作品でした。確かに、夜のシーンが多くて観にくいとか、人間ドラマが若干弱かったりとか、思うところが無いわけではないですが、全体的には楽しめましたよ。

 

 

こちらも怪獣が出てくる映画。

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 アニメ版。

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