暇人の感想日記

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ゴジラが出てるシーンは100点【ゴジラ‐1.0】感想

 

78点

 

 『シン・ゴジラ』以来、日本製作としては実に7年ぶりとなる実写版ゴジラ。監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』や『アルキメデスの海戦』を手掛け、『シン・ゴジラ』公開時コメントを出していた山崎貴VFXは彼も所属する白組。『ゴジラ』の新作ということならば見ない理由はないため、鑑賞。

 

 今、日本で『ゴジラ』を作る、ということはとても難しい問題です。もちろん、『シン・ゴジラ』の存在が大きすぎるということもありますが、ジャンル映画的な怪獣プロレス映画ということだと、ハリウッドが「モンスターバース」をやってしまっている。しかも、やるからにはヒットさせなければならない。つまり、怪獣プロレスはハリウッドがやっていて、そこを外したエポックなゴジラは『シン・ゴジラ』がやっており、日本製作の『ゴジラ』は進退窮まった状態だったわけです。

 

 結論から述べると、山崎貴監督は、この超無理難題を見事にやってのけました。『シン・ゴジラ』と上手く差別化し、その上で、「モンスターバース」でもできなかったことをやってのけた。何点か疑問符が付く箇所もありますが、この点で、本作は大成功作だと思う。

 

 本作は、『シン・ゴジラ』を明確に意識し、「如何に差別化を図るか」に腐心した映画です。『シン・ゴジラ』が「日本VSゴジラ」だったのに対し、本作では「人間VSゴジラ」であり、意図的に個々のドラマが削ぎ落されていた『シン・ゴジラ』に対して、本作では神木隆之介演じる敷島のドラマがメインとなっている。また、『シン・ゴジラ』では無かった海上戦がメインになっている点もポイントだし、「市井の人々の犠牲」を克明に描いてもいます。以上の点で上手くいっている箇所もあるし、疑問符が付いた個所もありますが、それは後述。

 

 本作の白眉は、ゴジラ。造形はもちろん、出演しているシーンは全て100点なのです。白組のVFXが誇張ではなく、ハリウッドと肩を並べられるレベルなのもありますが、見せ方が凝っていて、ゴジラと相対していることを体感できるのです。例えば、敷島達が新生丸に乗っているときに遭遇したシーン。モロ『ジョーズ』ですが、視線の高さが観客と同じくらいになるように画面の設計がなされていて、本当に追われている感覚を味わえます。また、ゴジラの初上陸シーンでも、ゴジラをあおりで捉えたショット、浜辺美波が電車の中で襲われるショットなど、徹底して観客に体感をさせます。故に、本作は前よりの席で見た方がいいと思います。

 

 また、VFXとは別に音響も素晴らしかった。私はIMAXで鑑賞しましたが、ゴジラの咆哮や、お馴染みのBGMがかかったとき、前進に音が響き渡るあの感じは最高でした。以上2点で、本作は体感型の映画で、「映画館で見る」前提です。山崎監督は「ゴジラ・ザ・ライド」も手掛けているらしく、本作では、この経験が活きたのかな、などと考えます。余談ですが、ゴジラ初上陸のシーンは、「全身」が初めて映るシーンであり、それまでのタメもあり、「ゴジラの猛威」と共に出てきたときは全身の血が沸騰したかというレベルで興奮しました。

 

 怪獣映画だけではなく、ディザスター映画になると、実際に起こっている事態の規模が大きすぎて、人間のドラマがどうでもよくなってしまう、という問題点があります。ハリウッドの「モンスターバース」もそうで、『ゴジラVSコング』では開き直っていました。『シン・ゴジラ』は意図的にドラマを排除することでこの問題点をクリアしていましたが、本作は真逆をいき、直球のドラマ(=敷島の物語)を展開します。

 

 敷島は特攻に行けず、大戸島でゴジラザウルスに襲われた際(ここはまんま『ジュラシック・パーク』)、機関銃を撃てなかった。これがトラウマとなり、この克服がメインのドラマとなります。そしてそれが敗戦直後の日本と繋がり、復員してきた「戦争の生き残り」達が「彼らの戦争」を終わらせるべくゴジラに立ち向かいます。ここには明確なアジア・太平洋戦争に対する反省があり、吉岡秀隆演じる博士の口からも語られます。彼らは戦後の価値観のもと、「誰1人死なない」ことを絶対にして戦いに挑むのです。この接続の仕方は非常にスマートで、違和感がない。更に、敷島とゴジラの一騎打ちにもちゃんとつながる。また、核にも一応の言及はあり、ゴジラが放射熱戦を放った後、焼け野原になった銀座に黒い雨が降るシーンは、神木隆之介の絶叫も相まって、本作の名シーンです。

 

 しかし、この「反省」というのは、少々一面的ではないか、とも思います。先の戦争で、上層部が人命軽視の非人道的な作戦をとったことはその通りですが、アジア諸国への加害行為への言及がまるでなく(『GMK』はその辺にも言及していた)、言葉尻をとるならば、「もっと上手くやってればあの戦争も勝てた」ということになってしまうのではないでしょうか。

 

 また、そこに加え、ゴジラに勝つ、ということが「戦争の決着」になってしまうと、ゴジラの存在意義にも疑問符が付きます。上述の通りなので、本作におけるゴジラとの闘いは、アジア・太平洋戦争のやり直しともとれます。つまり、本作のゴジラは、「敗戦によって不能化した日本」を再び奮い立たせるためにいると捉えることもでき、「ゴジラ」という理不尽の象徴を人間のドラマを描くためのツールにしてしまっているとも思うのです。『シン・ゴジラ』では「政治が変わる」ことで3.11の逆境を乗り越える姿をやや誇張して描き、それがこの国の未来への希望となったわけですが、本作では、「戦争で本当は勝てた」ことの証明にゴジラが使われている気がするのです。

 

 他にも問題点としては、山崎貴映画全体に共通する点で、役者の芝居がクサくて大仰、更に台詞で全てを説明してしまう悪癖は今回も健在。佐々木蔵之介は本当にご愁傷様としか言えない。吉岡秀隆も『ALWAYS』の茶川先生だしなぁ・・・。後、脚本的に明らかにおかしい点も多いし(皆言及してる、敷島が新生丸でゴジラに遭遇した後、のんきに戻ってきて特に何もしない下りとか)。

 

 以上のように、疑問符が付く点もありますが、同時に、ゴジラのCGはハリウッドに負けない(見せ方という点では勝ってるかも)レベルです。映画館で見ることが大前提の映画でもあり、本作からまた次につながるといいなと思います。

 

 

ブログ内にある『ゴジラ』映画の感想達。

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