暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2023年8月に見た新作映画①

 2023年8月に見た新作映画の感想です。『トランスフォーマー/ビースト覚醒』、『特別篇 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト』、『カールじいさんのデート』、『マイ・エレメント』、『バービー』、『しん次元!クレヨンしんちゃん とべとべ手巻き寿司』の感想です。

No.72【トランスフォーマー ビースト覚醒】 70点

 「トランスフォーマー」にはそんなに思入れはないけど「ビーストウォーズ」は直撃世代な私です(とはいえ見てたのは幼児の頃なのでそんな覚えてないけど)。本作で遂にビースト戦士が合流!『バンブルビー』も好きだったし、鑑賞しました。

 基本的に楽しんで見られたので及第点な作品ではあります。特に最終決戦でプライマルが「変形せよ!」と言ったシーンはめっちゃ上がった。アクションもベイじゃないからまだ見やすいし(でもなかなかの残虐ファイトをする)、いい意味でバカバカしさがある。

 しかし、不満点もとても多い。まず、人間ドラマが薄すぎ。主人公たちがプライムたちに着いていく動機が希薄。特に主人公は、難病の弟を放置してまで着いていく理由が今一つ分からない。もう人間要らないのでは?と思うレベルだった。プライムの謎の上から目線も相変わらず。人の星に来てドンパチやってるくせに何なんだよと思うよね。また、ビースト戦士があんまり活躍しないのも気になった。製作上の問題もあるのだと思うけど、もう少し出しても良かったんじゃないの。

 

No.73【特別篇 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト】 80点

 『誓いのフィナーレ』以来、実に4年ぶりの続編。劇場上映してるけど、本作は特別編ということで、別に映画というわけではない。それでも、シリーズを1期からリアルタイムで追ってる人間なので見ないという選択はありません(原作は読んでない)。

 本作のメインは「アンサンブル・コンテスト」。これを通し、現在の吹奏楽部のメンバーの掘り下げや部そのものの状況、各先輩キャラのその後を描き、3期につなげるのがメイン。部長になって苦労している久美子の姿も見られる。57分に過不足なくこれらを描く脚本に脱帽する。終盤のある部員の「成長」の演出には「流石京アニ!」と唸ったし、キャラの見せ方も完璧。久美子と麗奈の距離感が近くてとても良かった。

 次は3期だけど、最後の映像見るに、これ、絶対、あそこで出てきたキャラが久美子よりユーフォが上手くて揉めて麗奈と不仲になる展開じゃん・・・。

 

No.74【カールじいさんのデート】 65点

 カールじいさんがデートをすることになり、その準備に四苦八苦する姿を描くショートアニメ。カールじいさんが前向きに生きてるのを見て、いいなと思った。最後、デートに向かうところで終わってたからよりそう思う。

 また、日本語吹き替えが飯塚昭三さんのままで感動した。声はだいぶおじいちゃんになってたけど、ちゃんと演技をしていたし、本当に亡くなるまで現役だったんだな。

 

No.75【マイ・エレメント】 82点

 ピクサー最新作。監督は『アーロと少年』のピーター・ソーン。コロナ禍以降、興行的に不振だったピクサー作品としては久しぶりのヒット作となっている。いや良かった。

 「エレメント」の世界観がとてもいい。ディズニー、ピクサーは非人間の社会を構築するのがとても上手いけど、本作はエレメントシティの設定がかなり凝ってて、各エレメントの特徴に合わせた街並みの設計に説得力がある。いちばん連想したのは『ズートピア』。また、各エレメントの特徴の表現も流石のアニメーションで描いている。

 『ズートピア』が動物がモチーフでありながら、多文化社会アメリカを描いていたように、本作は移民2世で、差別されているマイノリティの話になってる。しかもそれがエレメントの特徴に起因している、というのも良くできてる。こういう感じで社会問題を自然に入れてくる手腕はやっぱり流石だと思う。

 とはいえ、本作のジャンルは、実はロマコメだったりする。移民2世の女性と、マジョリティの「水」の青年が出会い、恋に落ちる話。そこに女性のキャリア選択の話が入る。だから本作は、ビジュアルとは違い、かなりリアルな内容で、大人こそより楽しめる映画だと思った。

 

No.76【バービー】 80点

 日本と韓国以外で大ヒット中の作品。監督はグレタ・ガーウィグ、脚本はノア・バームバックの夫婦共同作業映画。主演及びプロデューサーはマーゴット・ロビーで、共演はライアン・ゴズリング。この現代ハリウッド最強の布陣の映画を見ないという選択肢は存在しないと思う。また、ハーレイ・クイーン以前は、ステレオタイプなブロンド美女役ばかりをやらされてきたマーゴット・ロビーがバービーを演じる、というのも大きな意味がある。

 とてもよくできた映画です。現実の男女関係を逆転させたバービーランドにケンが現実世界から「有害な男性性」を学んでまい、バービーランドを男性優位社会にしてしまう。それをバービー達が修復する話。バービーとケンを通すことで、コミカルではあるけど、現実のグロテスクな男性社会を描き出し(ウィル・フェレル率いる経営陣は、神奈川県のあれを思い出した)、バービーランドにおけるケンを現実の女性と同じ立場にすることで男性に女性の立場を理解させる構成がよくできてる。ラストも、バービーとケン達が、ようやく互いの苦しみを理解するところで終わるのも、解決されていない問題に対する誠実な態度だと思った。 

 本作はフェミニズム映画であると同時に、グレタ・ガーウィグ作品らしい、アイデンティティについての映画でもあります。劇中でバービーとケンはアイデンティティ・クライシスに陥り、ケンは有害な男性性を学んでしまい、それを正され、バービーは自己を確立し、人間としてこの世界で生きることを決める。そこにバービー人形ネタとフェミニズム的要素を入れ込むのが巧妙。

 上記のように、全体的にとても上手い映画ではあるんだけど、その上手さが少し鼻についたところもある。また、問題は台詞量の多さ。ノア・バームバックはいつもそうだし、「女性が声をあげる」という映画の趣旨的にあっているとは思うけど、何というか、教材を見せられた感が凄いというか。映画で台詞で全て説明されても、少し冷めてしまうので・・・。よくできてはいるけど、ここは気になった。

 

No.77【しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司~】 30点

 これは酷かった。映画の出来云々よりも、作り手のメッセージに絶望した。以下、感想を書く。

 本作はシリーズ初の3DCGということで、これまでの作品とは違った味わいがあるのは事実。しかし、これは逆効果な点も結構あって、まずはシリーズお得意のギャグ。いつも通りしんちゃんがゲストの女性にセクハラをするんですけど、2Dだとギャグでギリ見逃せていた点が、3DCGにしたことで生々しさが強調され、見過ごせなくなってしまっています。後、劇中では結構シリアスな現代社会の問題を扱っているのだけど、なまじCGなので、生々しさが勝ってしまい、中盤の立て籠もりとか、冷静に見れなかった。

 話そのものは、所謂社会に絶望した「無敵の人」の話だけど、落としどころが最悪だった。「頑張りなさい」という、自己責任論を強化する結論であり、それをひろしに名言ぽく言わせている。本作のゲストの非理谷は、30歳で派遣で、幼いころからネグレクトをされていたことで現代社会に絶望し、世界を破滅へと追い込もうとしてしまう。これを題材とするのは別にいい。しかし、その結論が「君が頑張りなさい」はあんまりだと思う。さらに言うと、言ってる側のひろし、今35歳なんだよね。つまり、非理谷とそんなに変わらない。でも、彼は連載当時の設定を引き継いでいるので、「35歳で一軒家をもち、商社で係長になっていて、妻と2人の子どもがいる」という、現代では超がつく「勝ち組」になってしまっている(しかも、時期的に就活時はリーマン直撃のはず)。そんな奴から「頑張れ」とか言われても困るだろ。だから、笑顔で「頑張れ」というシーンがホラーにしか見えなかった。というか、非理谷は別に頑張っていないわけじゃない。冒頭ではちゃんと働いているし、推し活できるくらいには収入を得ていた。彼に必要なのは公的な福祉であり、自己責任論ではない。

 以上の点は結構問題だと思う。劇中で何度も「この国はお先真っ暗」と言ってるわけで、つまりは作り手もこの国の行き詰まりを感じていて、それを打開するメッセージを子どもに届けたい、という思いがあるのだと思う。しかし、だからこそ、結論がこれではだめだろう。もはや個人が「頑張る」だけではどうにもならないフェーズにまで進んでいるわけで、本作で糾弾されるべきはこの状況にまでこの国を追いやった存在、国だろう。しかし、本作では個人の問題へと矮小化させる。非常に不誠実。

 良かった点は、後半のしんちゃんと非理谷がいじめっ子に立ち向かうシーン。あそこは「クレヨンしんちゃん」というアニメ作品と共に生きてきた我々世代のこと。「しんちゃん」が人生に寄り添っていたことを示すシーンで、これは上手いな、と思った。しかし、あのシーンも問題でさ、「いじめっ子に立ち向かう」ことが何かの問題の解決になっているかのように描いてて、これも本当の原因から話を逸らす1つになっている。いじめっ子に立ち向かえただけで人生前向きになれたらこんなになってねーっつの。つーか、大人も一緒になって「頑張れ」とか言ってないで、何とか介入してくれよ。状況的に無理なのは分かるけど、あのいじめは親介入した方がいいだろ。ヤバい、全然褒めてないけど、褒めるところがそんなにないので別にいいか。