暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2023年5月に見た新作映画の感想①

 皆様。こんにちは。いーちゃんです。5月に見た新作映画の感想です。5月は12本見たので、そのうちの6本の感想です。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME3』『ちひろさん』『ダークグラス』『せかいのおきく』『劇場版PSYCHO-PASS』『アルマゲドン・タイム』の感想です。

 

No.45【ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVOLUME.3】 92点

 

 MCUはフェイズ4に入ってから何とも言えない作品が多くて、本作に関しても全く期待していなかったんだけど、やっぱりジェームズ・ガンですね。3部作としてちゃんと完結させてくれた最高の映画でした。

 1作目からして、「はみ出し者のポンコツ集団が銀河を救う」という、「変な奴らが一矢報いる」映画であったわけだけど、本作に関しては、それがよりジェームズ・ガンの作家性が現れる作品になってたと思う。本作のメインはロケットで、彼の過去が明かされる。これがかなり凄惨なもので、ビジュアル的にもかなりエグい。本作の敵であるハイ・エボリューショナリーは、「完璧な世界」を作ろうとし、歪な存在であるロケットたちを嫌悪する。そんな彼を、ポンコツで歪で馬鹿なガーディアンズ一味が打ち倒す。思えば、『スーサイド・スクワッド ”極”悪党集結』も虐げられてきた存在のネズミが最後に大活躍して一矢報いる話だった。シリーズお得意の疑似ワンカットアクションも健在でカッコいい。しかもその前のワイルドバンチ歩きが1作目を彷彿とさせる感じでいい。

 また、ガーディアンズ・サーガとしては、1人で音楽を聴いていたピーター・クイルが、疑似的な家族を得、音楽を皆と共有するまでの物語だったのだと思う。ラストで1作目冒頭でピーターが聴いていた「COME AND GET YOUR LOVE」を新生ガーディアンズが聴いていたくだりが良かった。シリーズものの最終回で1期のOPが流れる作品は名作の法則。ピーターはガーディアンズ以外に、様々な存在と繋がりを持ち、遂には惑星1つを居場所として手に入れた(しかもそこにいるのはだいたいポンコツ)。そして最後に、本当の家族に会いに行く。彼の物語は、あれで閉じたと思う。また、他のキャラもちゃんと語られる。その上で自分の道を歩んでいく。あれはさながら『シン・エヴァ』のキャラ卒業式みたいだった。ノーウェアは彼ら彼女らの居場所だったけど、そこに留まる必要はない。また帰ってきたければ帰ればいい、そんな場所になったのだと思う。

 ジェームズ・ガン私小説としては、最後に自分の親父出したりしてたけど、ハイ・エボリューショナリーが大企業という点に面白い点があると思う。ハイ・エボリューショナリーの社長、アイツ、①完璧な世界(すべてが正しい世界)を作りたい、②気に入らない存在を速攻で抹消する、③ガーディアンズのメンバーを奪おうとする・・・って、これ、ディ〇ニー?ガン降板騒動なども併せて考えると、これはガン自身の降板騒動の意趣返し的内容とも取れますし、ガーディアンズを自分の手に取り戻したガンが、最後に彼ら彼女らを卒業させた作品とも取れるわけです。これは結構面白いと思う。

 最後に、ありがとう、ガーディアンズ

 

No.46【ちひろさん】 73点

 

 原作は読んでいないけど、今泉力哉監督だから見た。ちひろさんを演じる有村架純の存在感が色んな意味で異質すぎた。日常の中で色んな悩みを抱えている存在に寄り添って、人々をつなぐ役割を担っている。そんな役回りなので、もちろん概念みたいな存在なのだけど、有村架純の演技が今泉作品のキャラにしては妙に芝居がかっていて、異質感が増している。しかし、見ているうちに実在感が出てくる。これは有村架純の凄さだと思う。社会に少しだけ馴染めない人々が互いにつながっていく姿には、こういう安心できる場所って必要だよなぁと思った。

 ただ、見ていて感じたのは、本作の若干のホラー感だったりする。たぶんこれは私だけだと思うんだけど、有村架純の異質な感じがサイコ感あって、周りの人に与える影響がプラスだからいいけど、不幸を振りまくサイコスリラーの主人公としても成立してるんじゃないかと思った。ラストでその場所から消えて別のところにいるところとか特にそう感じた。

 

No47【ダークグラス】 77点

 

 ダリオ・アルジェントの新作を映画館で見られるとは。ちょっと感激(『サスペリア』しか見たことない)。しかもそれが監督のルーツであるジャッロであり、これが中々面白いので、ますます嬉しい。

 脚本は大雑把だけど、各シーンが過剰かつ印象的な演出が施されていて、見ている間はあまり気にならない。「目が見えない」女性という、弱者が猟奇的な殺人者(ミソジニーに染まっている)を返り討ちにする展開は痛快であり、それが他者との信頼によって成り立っているという点もいい。ラスト、盲導犬と抱き合っている彼女がやわらかい光に包まれているショットが大変よく、彼女が真に幸福になれたような気がした。『サスペリア』と比べるとだいぶ優しい話だった。

 

No48【せかいのおきく】 73点

 

 事前情報として、「池松壮亮寛一郎黒木華が出てて、時代劇で、モノクロ」程度しか知らないで見に行ったのですが、めちゃくちゃ驚いた。こんな糞まみれの映画だったとは。

 本作の時代は幕末になると思うのですが、その激動ぶりは描かれない。言葉の中で少し出てくるだけ。代わりに描かれるのは、市井の人々、中でも、人々から蔑まれている糞尿を運搬する人や、武家を追い出された?人で、およそ身分が高いとは言えない。

 彼ら彼女らの生活と恋愛が、モノクロ、スタンダードサイズの画面で描かれる。美術も凝っている。糞尿がカラーでないのは非常に助かったし、往年の日本映画を見ているようで、とても良い。

 タイトルの「せかい」に反して、非常にミニマムな話。でも、その「せかい」の中で確かに存在していた人を丁寧に描いていた佳作でした。

 

No.49【劇場版PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE】 77点

 

 「PSYCHO-PASS」シリーズは熱心なファンというわけではなく、TVシリーズは1期からリアルタイム(もう10年前か・・・)で追っていますが、劇場版は1作目しか見ておらず、最近やった3期の続編と番外編は見ていません。そんな緩めなファンですが、一応、狡嚙と朱の話っぽいので見ました。だから3期と番外編を繋ぐ内容だと全く知らず、ラストでビックリしました(てっきり3期の劇場版とかで釈放されたのかと思ってた)。

 まず見て面食らったのが、内容からビジュアルまで、「押井守」感が満載だったこと。脚本は『パト2』もしくは「SAC」の1エピソードみたいだし、ところどころの画面は完全に『イノセンス』、もしくは『GHOST IN THE SHELL』。元々、TV1期の頃から『攻殻機動隊』との比較はされていたシリーズでしたが、ここにきてここまで寄せるか・・・と思いました。

 OPはやっぱりカッコいい。シリーズ恒例のアクションも動きが細かくて面白いんだけど、ちょっと長くやりすぎて冗長になっている感じがあった。リアル方面に突き進んでいるけれど、リアルがゆえにアニメ的な外連が無くて長く見るとそこまで面白くないというか。

 シリーズを通してシビュラシステムというシステムと人間の関係を描いてきましたが、本作では「法」とシステムの話になっている。法の廃止を訴える政府側が描かれるのだが、ちょっと待ってほしい。刑法ならばまだ分かる。だが、話の内容的に、本作で議論の俎上に乗っているのは「法全体」である。法が無くなったら、各省庁の法的立ち位置とか政治とかどうすんねん・・・。まぁ、AIの民主化が起こったといわれる現代では、図らずもタイムリーな感じはあるけれど、いくら何でもこの雑さは看過できないよなぁと思う。もとからガバガバなシリーズだったけどさ。

 ただ、本作を見ていると、好ましい点もあるのも事実。昨今、「リコリス・リコイル」とかそうだったんだけど、権力側とか、システムに対して無批判に享受しすぎな作品が多くなっている上、オタクも権力側に媚び媚びな中、本作のようにシステムそのものに抗おうとする人間の話というのは意義があると思う。そして、本作の結論に関しても、現実の社会や政治で法を軽視する向きがある中、「なぜ法が必要なのか」を、現実の諸問題と絡めて問うていて、政治性が乏しいアニメ界隈の中では貴重だと思った。とりあえず、見てない作品でも少しずつ見ていこうかな、とは思った。

 

No.50【アルマゲドン・タイム ある日々の肖像】 80点

 

 ジェームズ・グレイの自伝的作品。周囲に馴染めない少年が黒人の少年と交流を結ぶも、人種や貧富の差という社会的なしがらみによって別れる話。この社会には自分ではどうにもできない仕組みやしがらみがあり、本作の主人公はそれをほんの少しだけ知る。そして、少しだけ「大人」になる。しかし、それはただ現実をそのまま容認しろというわけではない。本作は80年代アメリカのニューヨークを舞台にしており、当時のレーガン大統領の当選、トランプ一族の影響が色濃く出てくる。主人公が転校した学校は嫌な奴らが多い。そんな中でも、主人公は祖父の言葉(そんな奴らに屈するな)を胸に人生を歩んでいく。ノスタルジーではなくて、少年が大人になる物語として、とても良かった。

 監督の作品は『アド・アストラ』しか見たことがなかったけど、「今いる場所からの脱出」という点で、本作も『アド・アストラ』と似た点が多い作品だったな。後これは余談だけど、ジェレミー・ストロングが普通の父親やってて、「サクセッション」のケンダル好きな身としてはなんか新鮮だった。