93点
非常にエネルギッシュで、めちゃくちゃ面白い群像劇。大金に群がる獣たちが繰り広げる血みどろ(文字通り)の争奪戦を描く。原作は何と日本の曽根圭介さんの同名小説。Twitterにて加藤るみさんが絶賛されていたので鑑賞しました。
話自体はオーソドックスなノワールなのですが、編集がタランティーノの『パルプ・フィクション』みたいな感じで、時系列がバラバラなのです。そしてその編集方法自体がストーリー運びにおけるミステリ的なフックになっていて、物語が進んで、時系列がハッキリするにつれて映画の全貌が明らかになっていく、という構成をとっています。なので、観るには少々集中力が必要ですが、このパズルのピースがハマっていくような展開は面白く、そしてその度に登場人物の評価や印象が変わっていくため、これが物凄く面白いし、見応えがあります。
役者陣も韓国オールスターと銘打っているだけあって、「濃い」人ばかり。物語の中心となるテヨンは汚職をやっている悪徳野郎なのですが、必死に金策をし、借金取りのドゥマンの調子をとろうとしている姿はどこか滑稽で、愛着が湧いてきてしまいます。そして本作のキーパーソンであるヨンヒの存在感は圧倒的であり、前半は不在の中心として君臨し、後半に出てきてからは、彼女の暴走が本作を搔き乱していきます。他にも、第3の主人公と言えるジュンマンのミドルエイジ・クライシスと言いますか、冴えない旦那演技も最高でしたし、何よりユン・ヨジョンさんのお祖母ちゃん演技も凄かったな。
ラストも、あれだけメチャクチャやっておきながら、最終的にはあの血みどろの抗争からは全く無縁だった人物が冒頭のように大金を手に入れる下りも、「悪人は何も掴めない」というオチとして完璧でした。ヨンヒもテヨンも、あの場から逃げ出そうとしていましたけど、結局他人を陥れたりしていた、悪人だったんです。だから因果応報で死んじゃったし、逃げ出せなかった。だからその外にいる、貧しい人間にその金を行き渡らせろ、とでも言うようなあのオチは非常に痛快に感じたのです。まぁ、あの金を持って帰って、何をするかは彼女次第ですが・・・。