暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

「ゲームの実写化」としては良いんだろうけど・・・【返校 言葉が消えた日】感想

返校 言葉が消えた日

 
42点
 
 
 『牯嶺街少年殺人事件』と同じく、白色テロ時代を題材とした作品。台湾映画はあまり観たことがなかったのですが(この辺は不勉強で申し訳ない)、最近、『1秒先の彼女』とか、本作とか、台湾映画がちょっと盛り上がっている気がしなくもないので、それならちょっと見てみるかと思い鑑賞した次第です。
 
 白色テロ時代とは、1947年に起きた二・二八事件に端を発し、国民党による戒厳令下の時代を指します。超簡単に言うとこんな感じです。最近、韓国映画では『1987』とか、『タクシー運転手』とかみたいに、過去の独裁政権下を舞台にした力作が多く、その流れの作品かと思って観始めました。しかし、本作に関しては、それとはまた違った側面を持つ作品で、私はこれに面食らってしまいました。
 
 本作は、ゲームが原作と言うだけあって、非常に「ゲーム的」な作品です。語り口は「序盤でヒントを提示して、最後に答え合わせ的に全貌が把握できる」という、ミステリーゲーム的なものですし、画面のルックも、扉を開けたら全く違う場所にいるとか、後は主観的なカメラワークとか、ゲーム画面を彷彿とさせるものです。私はまずこれにのることができなかった。まず、語り口は、レイが目覚めたらいきなり誰もいない学校にいて、後輩であるウェイと2人で校内を探索するという展開から始まるのですが、ここから置いてけぼりを喰らいました。「何をしているのか」がさっぱり分からないのです。私は本作を、上述の通り『1987』的な作品だと思っていたので、いきなり超常的なホラーが出てきて、しかもそこを彷徨っているだけという展開には、物語の進む先が分からなかったのです。しかも、ホラー演出も音でビックリさせる系なので大して怖くない。一応、監督のインタビューを読むと、これは原作ゲームの作りをそのまま持ってきているそうですが。
 後半で「解答編」とも言える現実パートが始まるのですが、これも画面のルックがゲーム的なんですよね。何というか、アドベンチャーゲームの画面を観ているような感じが凄くて、映画を観ているはずなのに、何で私はゲーム画面を観ているんだ・・・?と思ってしまいました。しかも、前半で提示された「謎」の解答も、レイの後悔の物語が映されているだけで、「謎」が解き明かされるという快感も特に無いんですよね。全てがわかったときの私の感想は、「うん、何かそんな気がしてた」でした。
 
 こんな感じで、私は本作には全く乗れなかったのですけど、良いなと思った点もあります。それは、本作が持つ「忘れない」という思いです。ウェイは拷問に屈し、自白をしてしまいますし、レイは密告者です。本作には、このような人たちに対する赦しの物語であり、同時に、「生き残り、忘れない」ことこそが死んでいった者たちへの供養になるという内容の作品でした。それを象徴しているのがラストシーンで、惨劇の舞台となった学校は既に取り壊しが決まっていて廃墟になっています。つまりは記憶の風化を視覚的にしているわけで、そこでウェイがレイと「再会」します。「忘れない」ことで記憶を語り継ぐという、良いシーンだったなぁと思いました。あそこはちょっと感動した。こういう点は、「一般市民の目覚め」を熱血に描いている韓国映画とはまた違った角度から弾圧の時代を描いていて、良いなと思いました。
 
 

 白色テロ時代を描いた歴史的傑作映画。

inosuken.hatenablog.com

 

 こんな感じの映画かと思っていました。

inosuken.hatenablog.com

inosuken.hatenablog.com