暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

オタクの「夢」が詰まった超ド級エンターテイメント【レディ・プレイヤー1】感想

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 80点

 

 観ている間、そのあまりにも独創的な世界観に頭がクラクラすること必至な本作。私も公開当初から観たかったのですが、どうにも時間が取れず、結局観るのが1カ月遅れてしまいました。

 

 結論から言うと、「モヤモヤが残るけど、めっちゃ楽しかった」です。序盤のカーチェイスを始めとし、怒涛の勢いで繰り広げられるアクション、そしてアクションとドラマが緩急をつけ展開される粗はあれどテンポがいいストーリー、そして何よりスピルバーグのブランド力でかき集めたポップカルチャーで埋め尽くされたオアシスの世界観は観ていてクラクラしてきますが、とにかく楽しいの一言。そしてそこに「今」の世界へ向けたスピルバーグのメッセージが込められていいて、エンタメ作品としては申し分ない出来なんじゃないかと思いました。

 

 そのメッセージとは、「自分たちの居場所を護るためには、時には自らが立ち上がる必要がある」ということだと思います。これはスピルバーグが同時期に制作し、公開された『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』にも通じるメッセージだと思います。さらに、特別な才能を持たない「一般人」(オタクですけど)が立ち上がり、皆を動かす物語であることも、非常に今日日的なテーマです。それはタイトルからも明白かなぁと思っています。「プレイヤー1」ですからね。

 

 そんな主人公の名前はウェイド。彼はパーシヴァルというアバターを使ってオアシスで遊びまくる17歳。基本的に人と組まず、1人で行動しています。本作は彼の成長物語です。

 

 そして、本作の裏主人公とも言える存在がオアシスの創造主ハリデー。劇中ではもう死んでいる(と思われている)人物です。*1

 

 本作は、彼の過去にしでかした後悔の話でもあります。この後悔を主人公に「試練」として追体験させることで、ウェイドが正反対に成長していくようになっています。ウェイドは最初こそハリデーと同じく1匹狼でしたが、最終的には仲間を得、彼女もできてリア充になりました。

 

 ところでこのハリデー、現実のある人物を彷彿とさせます。そう、スピルバーグ本人です。シャイで、恋人もいなくて、でも天才で。そのまんま。彼が世界の神なのは原作がスピルバーグが生み出したもので満ちているためだと思われますが、本作を観ていると、それだけではなく、スピルバーグ自身の過去の清算でもあるのかなぁなんて思ったりしてます。以上の様な要素も過不足無く組み込んでくる手腕はさすがだなぁと。

 

 ここまで褒めました。けど、最初に書いたとおり、モヤモヤも残るんです。それはいくつかあって、まずはストーリー。観ている間は怒涛のアクションと展開でそこまで気になりませんが、よくよく考えると、粗が多い。例えば、リアルで皆が集合するシーン。オアシスは世界中でプレイされているはずなのに、何故あそこに全員集合できたんだでしょうか。また、試練について、こういう「誰も解いてない難題を解決する」ものにありがちな「何故これまで誰も解けなかったんだ?こんな簡単なのに」という疑問も抱いてしまいます。まぁこれは客観的に観ているからこう思うのかもしれませんが。後はこういう仮想空間を扱った作品で欠かせない「仮想空間ではカッコいいor可愛いけど、リアルだと・・・」が無いってのも問題ですね。主人公とヒロインがイケメンで可愛いとかどういうことだマジで。しかも簡単にくっつくしよぉ。・・・もう止めよ。

 

 また、最後の「メッセージ」も掘り下げが浅い気がします。そんな事、この手の作品ではさんざん言われてるんだよなぁ。でも、さすがはスピルバーグ。そこはそこそこ補強して、どちらにもとれるようにしている気がします。構造的には「現実的な資本家を仮想空間の住人が打ち倒す」というものですし。

 

 最後に、スピルバーグの「日本のポップカルチャーへの愛」について。観ている限りでは、言われているほどの愛は感じなかったような。確かに終盤のメカゴジラ登場、「俺はガンダムで行く!」発言からのガンダムVSメカゴジラにはめちゃくちゃ燃えましたし、何なら少し泣いてました。ただ、ガンダムを愛してたら活躍をあれで終わらせるとは思えません。他のアニメキャラも「ちょい見せ」程度の扱いで、そこまでの愛を感じません。メカゴジラは愛していたと思います。ちゃんとテーマも使ってるし、事実上のラスボスですし。私はそれ以上にスピルバーグの「映画愛」を感じました。『シャイニング』の下りはBGMもそのままに完コピしてましたし、アイアン・ジャイアントの活躍も素晴しかった。*2

 

 このように、愚痴もありますが、全体的に非常に楽しみました。

*1:「彼が隠した宝を見つけることで、莫大な資産と世界を与える」って、『ONE PIECE』のゴールド・D・ロジャーっぽい

*2:「なりたい自分になれる」世界に「なりたい自分になろうとした」このキャラがいるのは非常に意味深