暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

シリーズの悪い点全部盛り【るろうに剣心 最終章 The Beginning】感想

るろうに剣心 最終章 The Beginning

 
42点
 
 
 2012年に第1作が公開され、「実写映画」の常識を覆してきた『るろうに剣心』シリーズの最終章2作目。本作は、原作の人気も高く、映像化という意味では「OVA版」という超がつく大傑作がある「追憶編」。正直に言うと、本作に関しては「OVA版」は越えられないだろうという思いと、前作にあたる『The Final』が微妙な出来だったのでそこまで期待はしておらず、付き合いくらいのつもりで観に行きました。そうしたら、本シリーズの悪い点が全て出ているシリーズの中でも最も微妙な出来の作品だったからビックリしちゃいました。
 
 本シリーズの最大の売りはアクションです。谷垣健治さんらスタッフと、佐藤健というフィジカルモンスターの組み合わせによって実現した、「目で追えないくらい速い」とされる飛天御剣流の見事な実写化は、初めて観た時は衝撃的でした。以後のシリーズでも100人斬りや屋内での乱闘など、従来の日本映画ではあまり見ないスケールのアクションを展開し、大きな見所となってきました。

 

 

 本作においては、前作までにあったスケールの大きいアクションは鳴りを潜め、代わりに「人斬り」として、血しぶきの舞う、陰惨なアクションとなっています。本作のアクション的な見どころは大きく3カ所あって、1つは冒頭の京都での人斬り、2つ目は原作にはなかった、沖田との一騎打ち、3つ目は闇乃武との戦いです。沖田のと一騎討は素晴らしかったですし、闇乃武との、原作にもあったトリッキーな戦い方を実写に落とし込んだアクションも見応えがありました(後述しますが、ダメな点はあります)。後、地味な点として、序盤の奇兵隊の人員募集の下りでの一騎討がとても良かった。褒めすぎかもしれませんが、『七人の侍』における久蔵の一騎討に似た雰囲気がありました。
 
 シリーズ恒例のアクションにはこだわりを感じます。では何が問題なのか?そう、ドラマパートです。以前よりこのシリーズのドラマには問題があって、役者を「じっくりと」叙情的に撮ってしまうため、全体的にテンポが非常にもっさりとしてしまうんですよね。前までのシリーズだと、アクションが結構な頻度で挿入されていたのでドラマがもっさりしていてもなんとか観ていられましたが、この「追憶編」は、ドラマがメインなんです。映画本編の大半はアクションが無い、剣心と巴の心の交流を描いたものです。なので、映画が全体的にもっさりしているんです。
 
 しかも、もう1つの問題点も浮き彫りになってしまっています。それは、「原作の上澄みだけなぞった感」です。この点も以前より言われていたことでしたが、私個人としては、膨大な原作を映画の中にまとめ切っただけでも偉いと思っていたので、あまり気にはなりませんでした。しかし、この「追憶編」は、話数にしてわずか14話、しかも「OVA版」の実写化でもあるという事もあり、脚本がほとんど一緒なんです。しかも、剣心と巴に至っては、演技のトーンまで「OVA版」に寄せている。更には、これは監督の演出の問題なのかもしれないのですが、有村架純さんがちょっと・・・。あれだけお上手な方なのに、何というか、「OVA版の真似」をしているようにしか思えないのです。これに輪をかけているのが事務的過ぎるストーリー運びで、OVA版の脚本を大して考えずに実写にしただろとしか思えない撮り方をしているのです。だから、剣心と巴が惹かれあった理由に説得力がまるで無く、「原作の上澄みだけをなぞった」感が強調されてしまっています。というか、OVA版は24×4=96分で終わらせていたものを、実写とアニメという違いはあるだろうけど137分もかけてんじゃないよ、と思う。
 全体的な撮り方に関しても、OVA版第3幕「宵里山」にあたる農村パート以降は結構酷くて、農村パート自体がコントみたいな出来なのに、それに加え、アクションも若干もっさりしてしまっている。仕掛けは面白かったのですが、酷いのは北村一輝との一騎打ちです。あれだけ「殺し殺される」アクションを描いていたにもかかわらず、あそこだけ北村一輝さんが舐めプをしまくるのです。とにかく止めを刺さない。要はメタ的に言えば巴がくるまで待ってるんですけど、あれはカットバックが下手すぎだと思う。後、地味に北村一輝さんがアクションをしない。だから巴を斬ったシーンはこれまで散々見せられていたこともあり、映ったときには気持ちが冷めてました。おかしい、一番の見せ場なのに・・・。
 
 とにかくまとめると、「OVA版」の存在を意識しすぎた結果、役者の演技、編集、演出の全てが「上澄みをなぞった」感が半端ない作品に仕上がってしまいました。そしてそのために、あの2人が惹かれあった理由を説得力を持って描くことが最後までできておらず、映画に気持ちが乗れませんでした。で、加えてもっさりドラマパートなので、体感時間が長かったこと。
 
 ラストの円環についてもちょっと言いたいことがあります。スタッフ的には、あそこで上手いこと繋げてみせてドヤ顔晒してたと思うのですが、私個人としては、「るろうに剣心」という作品の性質上、アレは良いのか?と考えます。何故なら、「るろうに剣心」とは、「未来へ進む」物語だから。剣心が人斬りの過去と向き合い、過去の贖罪を一生かけて償う「答え」を見つけ、薫と一緒に「大きな一歩」を踏み出す物語です。『The Final』で一応それはやっていましたが、アレの後に円環構造にする必要はあったのかなと思います。確かに、あの円環構造によって、1作目から見返してみるとより深く『るろうに剣心』という作品を味わえるようにはなっていると思います。でも、あれでは剣心は「人斬りの過去」から抜け出せないのではないのでしょうか。そしてそれは、「るろうに剣心」という作品としては、如何なものでしょうか、という疑問です。
 ただ、良い点はあって、「大きな戦いで市井の人が虐げられる」点が強調されていたことです。剣心は「新しい時代のため」に清里を斬ってしまいました。しかし、それによって巴の幸せを奪ってしまいました。これは許されるのか?という問いかけがなされています。これは「るろうに剣心」という作品を貫く重要なテーマであり、「京都編」における剣心の台詞とも一致します。これが出来ていたので、何とか本作を肯定することができるかも、しれないです。にしても否定的な見方ですけど。
 
 他に細かい点では、「追憶編」は心太という少年が剣心となり、人斬り抜刀斎になり、流浪人になる物語なのに心太パートが描かれないのはどういうことだとか(これは福山雅治を呼べなかった説あり)、『The Final』では宗次郎を出したくせに志々雄は出ないんかい、とか、片貝と飯塚の区別がつき辛いとか、剣心と巴の声がボソボソ声すぎとかがあります。私は、本作に関しては微妙派です。
 

 

前作。

inosuken.hatenablog.com

 

 谷垣健治さんの盟友、ドニー・イェン主演作。

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