暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2021年春アニメ感想⑦【Vivy-Fuorite Eye’s Song-】

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☆☆☆★(3.6/5)
 
 
 歌姫AI、ヴィヴィが、未来に起こる人類とAIの戦争を食い止めるために相棒のAIのマツモトと共に100年の旅に出るオリジナルアニメ。制作は「進撃の巨人」などで名を馳せたWIT STUDIO。監督は「はねバド!」などのエザキシンペイさん。シリーズ構成には「Re;ゼロから始める異世界生活」の原作者である長月達平さん、キャラデザには高橋裕一さんを揃えています。
 
 本作は、ヴィヴィをはじめとしたAIと人間に、作画で明確な線引きをしています。まず目を引くのは、ヴィヴィをはじめとする、AI達の動きです。「人間ではないものの動き」をちゃんとやってるのです。顕著なのがアクションで、走るシーンが凄くて、背を伸ばして手を振るという、基本的なランニングフォームを全くブレなくやっています。この「ブレなさ」が凄く「機械っぽい」。また、アクションをするときでも、人間のそれとは違い、非常に動きが「きれい」なのです。背筋を伸ばし、どこか機械的に見える動きをしています。さらにそこに、時折入る、ヴィヴィの超美麗なカット(AIスペシャルカット)も、「AIらしさ」を強調します。私見ですけど、このカットが入るとき、ヴィヴィは少なからず人間らしいというか、重要な決断をするようなシーンが多かった気がします。
 
 このように、本作は「人間とAI」を意識的に区別して描いており、その境界線が1つのテーマになっています。これに加えて、本作は13話という話数のなかに「AIと人間の共存」や「ヴィヴィの「歌でみんなを幸せにする」という使命達成の自己実現」という複数のテーマが混在しています。
 
 1つ目のテーマに関しては、ヴィヴィが「心を込める」ことに拘っている点からも見られますし、感情に乏しいヴィヴィと感情豊かと見せかけて実は冷徹なマツモトという対比にも出ていたと思います。しかし、このテーマが話を通して十分に語られたか、は正直微妙な点です。一応、ヴィヴィが作曲をする、という点で一応の達成は見てはいます。作曲というのは、人間にしかできない、創造的な行為とされています。では、ヴィヴィは何故出来たのかというと、100年の旅で、出会った人やAIから「想い」を感じ取ってきたからだと思います。「想い」という感情を受け取るという行為は人間にしかできないことで、それを成しえたヴィヴィは、確かにAIとして、最も人間に近い存在になったのだと思います。
 
 また、「歌で皆を幸せにする」という点は、「初めて曲を作った(人間に近づいた)AIのヴィヴィが、自らの歌で世界を救う」ということで何とかストーリー的、テーマ的に終わらせることができています。そしてそれが「AIと人間」の架け橋となります。ただ、本作が惜しい点は、これらのテーマが上手く合致せず、語り尽くせていなかったなという印象です。
 
 また、「歌」がテーマになっているだけあって、本作は劇中で歌われる歌のクオリティがとても高い。これは現在公開中の『竜とそばかすの姫』にも言えることなのですが、歌のクオリティが高いと、劇中の真実味が増し、物語に没入しやすくなります。この辺の手を抜かなった点は素晴らしいなと。
 
 本作は基本的に2話完結のオムニバスで、この各エピソード自体は面白かった。AIと人間の結婚やAIの人権がテーマになっていて、人間とAIの多様な関係が描かれていますし、AIに宿る「心」についても触れられています。このまとまりはとても良い。ヴィヴィとマツモトが徐々に相棒になっていく過程も、バディものとしての面白さがありました。マツモトが徐々に情が出てくるのも良い。ただ、この話がそこまで有機的に繋がらず、最終的には自分で提示したものを纏めきれなかったなという印象です。テーマは魅力的だっただけに、とても惜しい。
 

 

歌が重要な要素となっている作品。

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長月達平先生原作のタイムリープもの。

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