暇人の感想日記

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トム・クルーズの心意気に痺れろ【トップガン マーヴェリック】感想

92点
 
 1986年に公開され、世界的な大ヒットを記録し、主演のトム・クルーズを一躍大スターにした『トップガン』の続篇。主演はもちろん、トム・クルーズ。監督は逝去したトニー・スコットに代わり、『オンリー・ザ・ブレイブ』やトム・クルーズとは『オブリビオン』でタッグを組んでいるジョセフ・コシンスキー。共演には、『オンリー・ザ・ブレイブ』にも出演しているマイルズ・テラージェニファー・コネリーらや、前作からはヴァル・キルマーが再びアイスマン役で出演しています。ちなみに、私は1986年の『トップガン』(以後、前作)には全く思い入れが無く、寧ろ本作の鑑賞前日に観たくらいです。そんな私ですが、本作は大変楽しめました。
 
 本作は前作の続篇であると同時に、現代版アップデートとも言える作品です。基本的な話の筋は前作を思いっきり踏襲しています。特に驚くのが冒頭で、何と前作と同じなのです。BGMからテロップやらショットやら全て同じ。前作は鑑賞済みでしたので、ここでズッコケました。ただ、ここから本作の「アップデート」は見ることができます。つまり、前作では雰囲気はあるけれど具体的に何をやっているのかよく分からなかった部分をちゃんとクリアにしているのです。この冒頭を始めとして、本作は話の筋は前作を踏襲しつつも、女性のパイロットが登場するなど現代的な価値観を取り入れたり、前作では雰囲気だけだった部分をよりアップグレードしています。
 最もアップグレードされている点としては、やはりドッグ・ファイトでしょう。パンフレットに記載のあったプロダクション・ノートによれば、前作では空中のアクションはスタントを立てたらしいのですが、本作はスタントは立てず、役者が本当に戦闘機を操縦し、そしてそれを極力CGIに頼らずに撮影しているという、頭がおかしいとしか思えないことをやっているのです。主演のトム・クルーズは『M:I』シリーズなどで生身のアクションに拘って映画を作っていますが、この延長と言えます。しかも、それをちゃんと観やすく撮っている。そして更にそれをIMAXカメラで撮影し、大迫力の映像という「映画館でしかできない体験」を我々に提供してくれているのです。これらの点で本作は、前作をより現代的にアップグレードした作品だと言えます。
 
 そしてもう1つ、前作と比べて重要な点は、本作ではトム・クルーズが還暦である、という点です。前作で一躍スターの仲間入りを果たしたトム・クルーズですが、以後、彼はずっとスターでした。一線で活躍を続け、生身の危険なアクションに手を出し、若手の役者や監督を見出したりしてきました。そんな彼の姿は、本作のマーヴェリックに重なります。マーヴェリックも現役で活躍を続け、今回、若手を育てる存在として戻ってきます。時代は変わりました。ドローンが活用され、もう戦闘機は使われなくなる未来がやってくる。そうなれば、自分のようなパイロットは用無し。ここには、トム・クルーズ自身が還暦を迎え、もう自分は「過去の人」なのではないのかという自身への問いかけがあると思います。しかし、それでもトム・クルーズは言います。「だが今じゃない」と。自分は還暦だし、若手も育てる。しかし、マーヴェリックが現役を退かないように、自分も「トム・クルーズであること」を降りるつもりはない。という宣言に聞こえました。
 
 こんなご時世にアメリカの戦闘機が大活躍し、あまつさえ攻撃されるかもしれないという理由だけで先制攻撃しちゃ流石にダメだろとか思うところはありますが、トム・クルーズのスター映画として、そして「映画館でしか味わえない体験」を提供してくれる映画として、最高の作品でした。そしてトム・クルーズの心意気にも痺れます。
 

 

『M:I』シリーズ。

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