☆☆☆(3.4/5)
原作は3巻くらいまでしか読んでいないのですけど、描いていることはとても面白いなと思っていました。動物の擬人化ものでありながら、そこで描かれていることは動物をメタファーとした人間ドラマであり、そこには男女関係や「男らしさ」や「女らしさ」といったジェンダーとか、捕食者/被捕食者の対比を人間関係の強弱に当てはめていたからです。そこでレゴシは草食獣であるハルと付き合うために特訓を重ね、この壁を越えていこうと努力していました。私はこの物語がどこに向かうのか、非常に興味がありました。
しかし、上記のようなテーマは最後の方で割かし脇に追いやられてしまい、代わりにどことなく「食う/食われる」関係をBL感漂う内容にした帰結に持って行かれ、うやむやのまま終わってしまった感がありました。一応、1話からフックとして存在していた食殺犯との決着は着くには着きますし、それを打ち倒すことがレゴシが自分の中の肉食獣としての本能に打ち克つことのメタファーになっているのかなとは思いましたが、本作では複雑な人間ドラマを描いてみせていた点を考えれば、若干安易というか、無理やりまとめた感が強い結末だったかなぁと思いました。
オレンジの3DCG技術は本作でも健在。前作でも見せた「動物の毛並みや動き」の見事な映像化、毎回密度の濃い画面作りは素晴らしかったです。また、アクションになっても、「動物ごとの動き」はしっかりと差別化がされていて、そこも面白かったなと思いました。
本作では、「階段」が何度か出てくるんですけど、これは多分、モラトリアムから大人への成長過程のメタファーなんじゃないかと思うのですけど、最終話ではレゴシは退学し、自分の道を歩み始めました。彼はまだ階段の途中にいるのかもしれませんが、確実に上ってはいるわけです。でも、それはまだ途上という事で、モラトリアムから脱却したわけでもないので、やっぱり中途半端な感じは否めないなと思いました。