暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

凄い作品だとは思うけど【ダークナイト(IMAXリバイバル上映)】感想

ダークナイト

 
78点
 
 
 クリストファー・ノーランの大出世作。公開時には全世界から大絶賛が相次ぎ、その頃から「歴史的な傑作」とまで言われていた作品です。影響は絶大で、ノーランは本作で「『メメント』の一発屋」から、一気に「巨匠」の領域まで行った感がありますし、本作以後、「アメコミ映画」の在り方まで変えました。私の世代的には、本作からノーランに入った人間が多いと思います。私も高校生の時にBlu-rayで観て、その時は「凄い映画だなぁ」と思った記憶があります。今回、新型コロナウイルスの影響で新作映画の公開が滞ってしまいスクリーンに空きがでたこと、そして9月18日に公開される『TENET』に合わせて、まさかのIMAXでのリバイバル上映が決定。初めて映画館で鑑賞しました。
 
 鑑賞してみると、実のところ、そこまで最高な気分にはなりませんでした。寧ろ、「あれ?こんなに粗がある作品だったけ?」と思ってしまったくらいで、少し驚きです。また、ノーランの他の作品も鑑賞してみると、本作はかなり奇跡的なマジックが重なり合ってできた作品であるということも分かりました。もちろん素晴らしい点はあるのですけど、気になる点もあったということで、その辺を書いていきたいと思います。

 

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  • メディア: Blu-ray
 

 

 まず素晴らしかったのは、ヒース・レジャー演じるジョーカーです。基本的に本作は彼で持ってる作品で、彼が出ているシーンは全てが良く、一挙手一投足が素晴らしい。彼の役割も「人間の善悪を揺さぶる」というもので、これはアラン・ムーア著の「キリングジョーク」のようだと思いました。彼はバットマンやデントとは違い、ルール無用の存在で、抽象的で、正体不明。「善悪を揺さぶる」概念のような存在で、だからこそ最強なのです。そしてこのようなテーマを扱っているが故に、「ダークナイト・トリロジー」の特徴である「リアル化」にも意味が生まれてきます。「映画内のこと」が「リアル化」によって、「現実」にいる我々とも共有され、我々の倫理観をも揺さぶってくるからです。これをさらに突き詰めたのが『ジョーカー』だと思うんですよね。
 
 そしてもう1つは「ゴッサムシティを主役にした」ことです。上述のように、本作のメインは「ジョーカーのゲームに、ゴッサムの市民はどう反応するのか」です。つまり、主役はバットマンでも、ジョーカーでもなく、市民なのですよね。これを最大限に活かすのに貢献しているのが、IMAXカメラです。ここぞというときにIMAXになるのですけど、空撮とかはバシッと街全体を見せます。これで「ゴッサム」という街が印象付けられ、本作に「特別な感じ」を抱かせます。
 
 更に素晴らしい点は、「バットマン」という作品を、『ヒート』のようなクライム・アクションにした点です。ノーラン自身が「参考にした」と言っているように、本作はバットマンとジョーカーの一騎討の話であり、実際に取調室でのシーンは『ヒート』でのアル・パチーノロバート・デ・ニーロみたいでした。というか、ノーランって、デビュー作の『フォロウィング』とか、『インソムニア』、『プレステージ』で、こういう「男と男の一騎討」みたいな作品を作ってるんですよね。本作はノーランがこれまで作ってきたこの手の作品の自己アップデート版なのだと思います。

 

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 ただ、本作には気になる点もあって、まずは脚本ですよ。上映時間です。150分は長すぎ。後、ジョーカーのゲームがあまりにも上手くいきすぎだってことと、話の筋が回りくどいと感じました。更に、デントが悪墜ちする下りも唐突だったし、全体的に、「やりたいことをブチ込むための話作り」をしてんなぁってのが見えてしまいました。
 
 でも、これ、ノーラン作品の中ではどれも抱えている問題なんですよね。少なくとも本作以前は。それでも本作が素晴らしいと思えるのは、やはりテーマ的なものと、IMAXカメラという撮影、そしてヒース・レジャーが上手くはまったからなのかなと思います。この辺がマジックで、次の『ライジング』ではこれがかかっていなかった感があります(私は擁護したい派なんだけど)。以上ですかね。
 
 

 ノーラン作品たち。

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