暇人の感想日記

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人類への希望に満ちた作品【インターステラー】感想 ※ネタバレあり

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94点

 

 

 クリストファー・ノーラン監督が2014年に放った、SF超大作。公開されてからというもの多くの観客の心を鷲掴みにし、オールタイムベストに入れている人も少なくない作品です。そんな作品なのですが、私は全く観たことがなく、ここまで来てしまいました。上映時間も180分なので観るのも面倒くさいし、別にこのままでもよかったのですが、周りに本作を激推しする人間が多々いて、その人たちの熱に負けて今回鑑賞しました。

 

 さすが多くの人がオールタイムベストに選んでいる作品だけあって、とても楽しむことができました。確かにこれを映画館で観れば衝撃を受けるのも分かります。ストーリー的にも捻りが効いていて最後は騙されましたし、映画そのものも名作『2001年 宇宙の旅』の明らかなオマージュみたいな作品でした。

 

 

 本作には、『2001年 宇宙の旅』を彷彿とさせる要素が多々あります。核は行きて帰りし物語オデュッセイア」ですし、話の大まかな内容も、「何者か」に導かれ、人類が旅立つというものですし、TARSは完全にHAL9000がモデルだろうし、最後の展開も『2001年』のそれと酷似しています。また、おそらく撮影も可能な限りCGを使わずに行っており、それも『2001年』っぽさを強調していると思います。

 

 ただ、本作には『2001年』と決定的に違う点があります。それは、人類に対する視点です。『2001年』は人類の進歩を非常に愚かしいものとして捉え、それが人類そのものを滅ぼすとしていました。その象徴だったのが核兵器なわけで、ラストではモノリスによってスター・チャイルドとなったボーマン船長が、地球に戻ってくるところで終わっていました。

 

 しかし、本作では、その逆で、人類の進歩が自らを救う「希望」として捉えられています。ラストの五次元空間は(おそらく)人類が進化の果てに得た物でしょうし、その力によってクーパーは帰還し、人類は救われます。思えば、本作の主人公であるクーパー一家は、科学の進歩の歴史に真摯に向き合っており、それとは対極的に荒廃した世界では人類の歴史を学校で教えていません。そんな進歩の歴史を信じ続けたクーパーが、最後に地球を救うという点にも、ノーランの想いが入っている気がします。これは『2001年』とは対極のものです。また、方程式を解くための量子論を届ける方法として、「本」が使われている点も、ノーランの想いを感じ取ることができます。彼はインタビューで「本」という人類の叡智が詰まったものへ賛辞を送っていて、この点が反映されたのだと思います。

 

インターステラー (竹書房文庫)

インターステラー (竹書房文庫)

 

 

 この五次元空間によって、時間の流れが幾層にも重なっているという構造、そして、最後には円環構造になるというオチにも感服しました。私は最初の方は「ご都合主義すぎるだろ」と思っていたので、完全にしてやられましたね。さらにこれによって、ノーラン作品の中にあった、「いない人に囚われる人間」という要素が「時空を超えた愛」という点に変わっているのも本作の注目点だと思います。

 

 このような『2001年 宇宙の旅』の現代版、というか、ノーラン版アップデート作品と言える本作ですが、時間の概念の使い方、そして「科学と人類の叡智こそが可能性を切り開き、人類を進歩させる」というノーランの想いを感じさせる作品で、多少の粗はあれど、私は楽しめました。

 

※2020年9月5日追記

 9月18日公開の『TENET』に向けての「ノーラン祭り」として、満を持して公開された本作。IMAXで早速観てきました。やはり本作は、『2001年宇宙の旅』オマージュの作品で、それは「観客に体験を共有させる」という点まで同じです。IMAXで観るとそれがより際立ちます。さらに、露骨なオマージュシーンもありました。

 

 ノーラン作品としては、以前この記事で書いた点の他に、「脱出」と「帰還」の話でもあります。ノーラン作品ではしばしばこの2つの要素がありますが、本作でも「地球から脱出」し、そして地球に「帰還」しています。こういう点でも、彼は一貫しているなと思った次第です。

 

 

 おそらく元ネタ。IMAXで観たら感動しました。

inosuken.hatenablog.com

 

 こちらは「月に行こうとした男」の話。

inosuken.hatenablog.com