あの超人気シリーズ「Fate」のスピン・オフ作品。主人公は「Fate/Zero」にて、ライダー/イスカンダルと共に戦ったウェイバー・ベルベット。本作は、彼が亡き師、ケイネス・エルメロイが持っていた「ロード」の名を継ぎ、次々に舞い込む難事件に挑むミステリー作品です。原作は未読。私は「Fate」シリーズにはそこまで愛着はないのですが、2つの点で視聴を決めました。1つは監督と制作会社が「やがて君になる」だった事、そして2つ目は本作が「ミステリ作品」という点です。
特に「ミステリ作品」という点は興味深かったです。「Fate」シリーズの世界観上、ミステリーというのは到底成り立たないと思うから。というのも、本作には、「魔術」の存在があるため。ミステリーというのは、犯人があの手この手で作り出した不可能犯罪を、数少ない情報から探偵が突き崩していくからこそ面白いのです。それは普通の人間が作るからこそ面白いのですが、本作には魔術があります。極端な話、時間差トリックだって密室だってアリバイ作りだって、何だってすることができます。つまり本作には、ミステリ作品の重要な要素の1つ、ハウダニットを作りようがなく、従ってサスペンスが生まれないのです。こう考えたからこそ、寧ろどのような作品なのか興味が湧きました。
ロード・エルメロイII世の事件簿 1 「case.剥離城アドラ」 (角川文庫)
- 作者: 三田誠,坂本みねぢ,TYPE-MOON
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/04/24
- メディア: 文庫
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視聴してみると、上述の私の懸念については、作中で「重要なのはホワイダニットだ」と明言され、解消されます。これには納得はしました。ハウダニットができないならば、「動機」から攻めるというのは、至極自然な流れです。この動機を基準として、残された手がかりからウェイバーが事件を解決していきます。問題はこの解決方法で、謎が明かされるときの解説は基本的に魔術用語が多いためさっぱり内容が分からず、「謎が解けた」というカタルシスがありません。寧ろ、用語が多く出てくるために、解説をされればされるほどクエスチョンマークが増えるという、大変奇妙な体験をさせてくれます。最も、このミステリー感の無さというのは最初から予想はついていたのでそこまでノイズにはなりませんでしたが。一番ミステリっぽかったのは魔眼蒐集列車篇かな。
これ以外に私が本作で特に面白いと感じた点は、時計塔の人間の日常を見れたことです。私は「Fate」シリーズはアニメ版の「無印」、「Zero」、「UBW」と「衛宮さんちの今日のご飯」くらいしか見たことがなかったので、聖杯戦争がメインでないこの世界観の話は新鮮でした。また、随所に挿入されるアクションや、端正な演出も中々良かったです。
全体のストーリーも、ウェイバー・ベルベットという、イスカンダルを追い求めた青年が、ケジメをつけるため、ロード・エルメロイⅡ世になるという堅実な内容になっていて、まとまりも良かったです。2期があればみても良いと思えるくらいには楽しめました。
公式同人作品。
監督前作。こちらも素晴らしかった。
FGOのアニメ化作品。こっちは微妙。