暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

ベスト・オブ・飯テロアニメ【衛宮さんちの今日のごはん】感想

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 今やオタクの中で知らない人はいないと断言できる超人気シリーズ『Fate』。そのスピン・オフグルメ漫画が原作。原作は現在、3巻まで刊行されていて、そのアニメ化作品となります。ただ、放送形態が特殊で、連続TVアニメの形式ではなく、毎月1日にネットで期間限定で放送するという形態をとっていました。

 

 本編はシリアスながらも完成度の高いストーリー、魅力的なキャラクターで人気を博していますが、本作はそのシリアスな本編とはうって変わり、主人公、衛宮士郎の「料理が得意」という設定を活かしたスピン・オフ・・・というより、公式の同人といった方がしっくりくる作品です。私は『Fate』シリーズは原作ゲームはやっていないのですが(すいませんね、何か)、アニメ作品は一応見ているので、視聴した次第です。

 

 

 感想として、これまで私が見てきた中で、最強の飯テロアニメでした。そして、公式の同人作品の利点を最大限に活かした作品になっていたと思います。こう考える理由は大きく2つです。

 

 まず、「飯テロアニメ」としての側面。「飯テロ」というからには、まず大切なのは料理が美味しそうに見えるか否かだと思います。『食戟のソーマ』や『美味しんぼ』、『ミスター味っ子』などは同じく料理を扱ったアニメ作品ですが、あちらは料理バトルに焦点が当てられているため、そのバトルのノリでいくらかは料理が美味しそうに見えなくても問題はないと思うのですが、本作のように料理そのものに焦点を当てた作品だと、この点は非常に重要になってきます。このジャンルの成功作品としては、同じく漫画では『孤独のグルメ』とか『深夜食堂』が該当するかと思いますが、あちらも登場する料理が本当においしそうで、実写でも大成功を収めています。

 

孤独のグルメ 【新装版】

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深夜食堂(1) (ビッグコミックススペシャル)

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 ただ、この「料理を美味しそうに見せる」ことは実写でも漫画でも非常に難しいことです。非常に個人的にな見解で申し訳ないのですが、これが上手くいってない作品もそこそこ見てきました。さらに、本作はアニメーションです。手描きで料理を再現しなければならないため、尋常ではない作画力が必要になってきます。しかし、そこはさすがのufotable。これまでの作品で見せた驚異的な作画力を、本作では料理や日常芝居に全振りしています。中でも際立つのが、士郎が料理をするときの芝居。『深夜食堂』でもやっていたことですが、料理を作る過程が丁寧に描かれていると、その料理がとても美味しそうに見えてきます。本作ではそれを完全に再現しています。例えば、材料を包丁で切るときの音や、種類による抵抗の違い、そして鍋が煮立っている時の感じなどが丁寧に描かれます。この時点でたいそう美味しそうなのですが、出来上がった料理も一目で「美味しそう」と思えるもので、食べるときの芝居やリアクションも完璧。この時点で、本作は私の中ではベスト・オブ・飯テロアニメ決定です。

 

 更にもう1つ。「スピン・オフ」として上手いなと思った点。本作はどちらかと言えば本家の設定を基にした公式同人作品だと思うのですが、これが飯テロアニメと最高の相性だったと思います。というのも、飯テロアニメは、あくまでも飯がメインです。ただ、普通の独立した作品だと、それだけでは成立しづらいから、何らかのストーリーを売る必要があります。『深夜食堂』などは人情噺がそうでしょうし、『異世界食堂』でもストーリーがありました。ただ、それだと『深夜食堂』のように上手くいく作品もあれば、ちょっと微妙になってしまう作品もあります。この点を、本作はスピン・オフという特性を活かし、完全にクリアしています。というのも、本作はまず「本家ありき」で作られているため、語るべきストーリーや各キャラの関係性は既に構築済みなのです。なので、内容を料理に集中させられます。

 

 本作にはストーリーらしきものはあまりなく、オムニバス形式で進んでいきます。そこでは主に主要キャラに焦点を当てたキャラ回が並びます。それは本家をプレイしたり、アニメ版を見ている人ならニヤリとする小ネタ、キャラクターの可愛さを全面的に出す内容です。本家の内容が内容だけに、この幸せな世界が本当に愛おしく、素晴らしいものに思えてきます。見ている間は、作画的にも、そして雰囲気的にも幸せな気分になれる作品でした。