暇人の感想日記

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2019年秋アニメ感想⑤【Fate/Grand Order-絶対魔獣戦線バビロニア-】

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☆☆(2.3/5)

 

 

 おそらく、ソシャゲ界の王、ともいえる人気を誇るゲーム、「Fate/Grand Order」。本作はその満を持してのアニメ化作品となります。私は原作ゲームは未プレイなのですが、「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」のCMで流れた予告が素晴らしいクオリティだったため、視聴を決めました。

 

 「絶対魔獣戦線バビロニア」というサブタイトルから何となく察していましたが、本作は「FGO」を最初からアニメ化したわけではなく、内容は第1部のシナリオ「第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア」を元にした内容だそう。なので、TV放送版は初回から「これまでの経過ありき」で物語が進み、用語の説明などは特になされず、初見は完全に置いて行く構成をとっています。

 

 そんな内容なのになぜ私が最後まで視聴できたのかというと、理由は2つあります。まずはNETFLIXで見ていたこともあって、偶然、配信限定の「プロローグ(という名の30分で分かる「FGO」)」を見たことが大きいです。この話のおかげで、比較的スムーズに話には入っていけました。

 

 

 次に、これが一番重要かつ本作の最大の評価ポイントなのですが、作画が素晴らしかったから。特に圧巻なのがアクションの演出。アクションディレクターに河野恵美、林勇雄といった「アイマス」陣に加え、大島塔也を投入、しかも作監は高瀬智幸さんや山口晋さんらで、さらにさらに絵コンテでは重要なところで温泉中也などを呼び、加えてキャラの心情演出では高雄統子を呼ぶという完璧采配ぶり。私でも知っているアニメーター、演出家の方がこれだけ参加されているなんて、CloverWorksというかアニプレックスが総力を結集しているのが分かります。 

 

 こんな方々が作っているので、アクションシーンは本当に眼福もの。空間を自由に飛び回って動いて各所から攻撃するとか、体術の細かな動きとか、キャラクターのスピード感とか、とにかく動きが多彩で素晴らしい。また、「音」の演出も気合が入っていて、マシュが使用している盾に攻撃が当たったときや、宝具を使ったとき、音と実際に見えている光に時間差があったり、かなり細かく調整されています。実はイヤホンをして見ていたので、この点は強く感じることができました。

 

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 以上のように、アクション周りは本当に文句無しなのですけど、本作には致命的にダメだった点があります。脚本です。本作は全体的に非常に表面的で、かつ「ゲーム感」が強く出てしまっている作品になっています。

 

 まず、「ゲーム感」についてですが、本作では主人公の藤丸が何故かあのギルガメッシュにあっさりと気に入られ、ゲームにありがちな「おつかいイベント」を頼まれます。ゲームならばいいのですけど、本作はこのおつかい感をそのままアニメ化していて、悪い意味で「ゲームにあったイベントなんだろうなぁ」と思ってしまう回が何度かありました。また、本作のストーリー全体についても、「条件をいくつかクリアしたらら中ボス戦」というこれまたゲーム的シナリオをそのままアニメにしているような感じでした。特に3女神同盟の下りはそのあたりが顕著です。

 

 そして「表面的」な点について。3女神同盟を攻略する下りも何だか微妙で、「あれ?これ結構簡単じゃね?」と思えてしまうのです。基本的に困難っぽい状況や条件を作り出すのですけど、相手側がやけに友好的だったり(太陽の女神や冥界の女神とか)、敵対していても主人公補正で味方に引き入れられたり、こちら側に相手を倒す切り札的存在がいたり、条件が簡単にクリアできるように環境が整えられていたりしているのです。

 

 ラスボスになるとさすがに絶望要素てんこ盛りでムリゲー感が出て良かったし、ラスボスへの対処法も「なるほど」と思えるものでした。ですが、(これは私の理解不足かもしれませんが)、終盤でいきなりこれまでの味方とかチョイ役で出てきた人物が特にこれと言った理由もなく強キャラになって帰ってきたり、冥界へ落とすための準備もあっさり解決するし、やっぱり都合がいい。つまり何が言いたいかと言うと、とにかく「主人公にとって有利になるような状況がある程度できている」んです。しかもその理由が特に論理立てて理解できないので、イマイチ乗ることができないし、「既に与えられた十分すぎるくらい強力なカードで対処した」くらいにしか思えず、物語的な積み重ねも、「苦労」も表面的に感じられてしまいました。

 

Fate/Grand Order Original Soundtrack IV(初回仕様限定盤)

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 また、何より問題だと感じたのは主人公の藤丸立香です。ゲームだと台詞がほぼないキャラだそうで、本作ではそんなキャラを無理やり肉付けしたせいか、申し訳ないのですが、私の印象は「大したことしてないのにやたら言うことはデカい」イライラするキャラでした。主人公補正が凄まじく、すぐにキャラに信頼され、フラグを立てまくり、その人間的魅力で女神たちを落として(この表現で合ってると思う)いきます。戦いにおいても基本的においしいとこどりで、戦いの後にそれっぽいことを言ってそれっぽい雰囲気を出してしまえます。これは本作を「表面的」と感じてしまう要因の1つです。

 

 でもよくよく考えるとコイツ、言ってるだけで特に何もしていないのです。これはマスターという性質上仕方がない点ではありますけど、本家の方では士郎さんは彼の偽善性を追求されたりして、その上で彼の「理想」を追い求めていましたけど、藤丸には特にそういうの無いんですよね。自分の理想ばっかり言って、それが大体肯定される。追及されてもそんなに否定はされないという甘い仕様。だから余計に腹立つのかな。まぁ、これは「藤丸立香の物語」ではないから致し方ないことではあります。

 

 まとめますと、私にとって本作は、「アクションは素晴らしいけど、主人公に都合のいい展開が続くシナリオに萎えた」作品でした。好きな方すみません。

 

 

 「Fate」スピン・オフ。

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 「Fate」のパロディ作品。こちらは傑作。

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