暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

俺も忘れないよ。ありがとう、銀魂【銀魂THE FINAL】感想

銀魂 THE FINAL

 
95点
 
 
 2003年から連載が始まり、2回の最終回延期の果てにようやく完結した「銀魂」。TVアニメも度重なる終わる終わる詐欺を繰り返し、終いには『完結篇』(大傑作!)が公開されても誰1人完結などとは思っていない始末でした。そして案の定2年くらいで復活した。最終章である「白銀の魂篇」も原作の最終回延長のあおりを受け、2期放送されるもやっぱり完結できず、2期最終話などはそれまでの伏線をぶん投げてそういった経緯全てを説明するという暴挙に出ました。
 
 本作は、こういった経緯の果てに公開できた正真正銘、本当の最終回です。私は「銀魂」は2007年からずっとアニメで見ていて、原作も29巻までは買ってました。数えると14年の付き合いなので、その完結となれば観ないわけにはいかず、鑑賞した次第です。

 

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 本作は正直に言ってしまうと、1本のアニメーション映画としては文句を言いたくなる箇所がいくつもあります。先に気になった点を書いておきます。まず、作画がよろしくない箇所が多々ある。特に乱闘シーンなどは酷く、崩れが目に見えて気になってしまいました。作監が補佐含めて26人いるという事態で、予告の「間に合ってません!」はギャグじゃなかったんだ・・・と思いました。新型コロナウイルスの影響もあるのでしょうけど、もうちょっと頑張ってほしかったかなぁ。
 
 さらに、アクションが単調。動きとかは結構頑張っているし、特に銀さんVS虚のラストバトルはかなり気合が入っていたと思います。しかし、止め絵を繋いでカロリーの消費を抑えていたり、攻撃方法も単調だし(まぁこの辺は原作によるところが大きいけど)、何か色々と物理法則おかしいしで、ちょっとつまらないなと思いました。しかも、アクションの展開も一本調子で、基本「爆発→足場が崩れる→ぶら下がり→味方の助けからの反撃」が何回も続きます。これもつまらなさに拍車をかけています。
 
 演出もちょっと単調じゃないかと思う箇所があって、盛り上げようとするシーンではとにかくDOESとSPY AIRを流す。まぁ観客としては上がるんですけど、これを3回くらい繰り返すので、SPY AIRが流れたときには、「またかよ」と思いながらテンション上げてました。演出に関しては良い箇所もあるんですけど、それは後ほど。
 以上が気になった点です。これらを要約すると、本作は良くも悪くも「TVアニメの劇場版」であり、TVアニメに毛が生えたくらいのクオリティであるということです。だから1アニメーション映画としては辛い評価にならざるを得ません。
 
 しかし、本作は「銀魂」であり、本作は「ファンに向けて作られた」最後のバカ騒ぎなのです。例えアニメーション映画としてクオリティが低くても、この点さえ押さえてくれればオールオッケー。そして本作はこの点を完璧に押さえてくれています。だから高評価。
 
 「銀魂」という作品には、銀さんと高杉という2人の関係が縦軸としてありました。彼らの中心に松陽がいて、高杉は松陽を奪ったこの世界を憎み、「全て壊す」ことを目的とし、銀さんは松陽との約束である「仲間を護る」ためにこの世界を護ろうとします。高杉は自分が原因とはいえ、松陽に直接手をかけた銀さんに対し、非常に複雑な感情を抱いています。それは後悔や同胞意識、様々なものがこちゃまぜになっています。2人はお互いに表裏一体である存在なのです。
 
 本作では2人の因縁に決着がつきます。そしてそれを虚とのラストバトルで重ねているのが非常にスマートだなと思いました。ぶっちゃけ理屈は意味不明なんですけど、これによって、高杉の想いと銀さんの想いを見事に清算させ、尚且つラスボスを倒してしまっているのです。終盤の2人の過去のカットバックからヤバかったんですけど、最後の会話には感極まるものがありました。
 
 そして、「銀さんの物語」も完結を迎えます。銀さんは松陽との別れの後に得た、万事屋や他の皆との絆、そして高杉と共に勝利を収めます。本作は「坂田銀時」という、戦場で松陽に拾われた少年が仲間を得、それらを一旦失いながらも、また新しく仲間を得る物語です。それを松陽に伝えるシーンは、彼の中には、もう仲間がいるんだと、そういう「ザ・ジャンプ」的なものがあったと思います。マジで「友情・努力・勝利」のうち2つは満たしているからね。

 

 

 そして、「ファンへの感謝とメッセージ」も良くて、終盤のたまです。たまを通して「その後の世界」の話になるのですが、序盤は「最終回っぽいモノローグ」大喜利が始まって面白いのですけど、最後は結局、「この同じ空の下に、みんな一緒にいるよ」というメッセージになり、ちょっとしんみりしたところに間違った最終回をちいさなたまに教えたマダオへのツッコミが入り、万事屋3人が出てきます。その時の銀さんの台詞とか完全に我々観客に向けて言ってるんですよね。で、最後に万事屋3人+1匹の姿が冒頭の松下村塾時代の銀さん、高杉、桂と被って、銀さんが得た物、護ったものを示して終わりです。これは、「坂田銀時の物語」としてこれ以上ないものだったと思います。
 
 ここまでなら感慨深いくらいだったのですが、完全にやられたのがED。「轍」の歌詞が完璧に本編と合ってるんですけど、特に「涙していたって/苦しくたって/離れていたって/忘れないで」のところは、「銀魂」から我々へのメッセージですよ。要は「銀魂は不滅」ってことなんですけど、「ファンの中にいるよ」ってことだと思えて、ここで感動しちゃったんですよね。本当に「銀魂」って、アニメ化に恵まれたし、ファンも大事にしてくれたなぁって思うのです。
 
 他にも、冒頭、いきなりの「ドラゴンボール」パロとか最後の「3年Z組 銀八先生」の下りは面白く、爆笑させてもらいました。本当、アニメスタッフの皆様、声優の皆様、ゴリ・・・空知先生、お疲れさまでした。私も忘れないよ、銀魂、ありがとうきびうんこー!