暇人の感想日記

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2021年春アニメ感想③【オッドタクシー】

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☆☆☆☆★(4.6/5)
 
 
 最初は軽い気持ちでした。「2021年春アニメ視聴予定作品一覧」でも△(一応見る)をつけましたし。キービジュアルが動物だらけだったこと、主人公がタクシー運転手だという情報だけ見て、「アレか、「かいけつゾロリ」的な動物が人間の格好してる設定で、「ミッドナイト」的な1話完結の人情物でもやるのか」と思っていたのです。しかし、見始めて数分でそれは打ち砕かれました。本作は、「練馬の女子高生失踪事件」を軸にし、人間の心の闇と我々視聴者の精神を抉りに来るダーク・ミステリーだったのです。
 
 本作はまず脚本が素晴らしい。脚本を担当するのは「セトウツミ」の此元和津也さん。恥ずかしながら「セトウツミ」は未読です。これから読みます。はい。本作は群像劇の体裁をとっているのですが、小戸川というタクシー運転手を主人公にし、彼のドラレコを何故か手に入れようとする裏社会の人間やバズりたいユーチューバー、スマホに課金しすぎて人生転落寸前の男、小戸川の友人で金なし彼女ナシのダメ人間、地下アイドルの物語が並行して語られます。このバラバラの物語が最後にきれいに収束し、「練馬の女子高生失踪事件」の一応の解決、そして矢野、ドブと決着をつけます。
 
 伏線とその回収の見事さも素晴らしいのですが、物語が進むにつれて、本作そのものの印象も変わってくる点も上手い。私は、見る前は上述の通りだったんですけど、見始めてから作品そのものの印象も変わりましたし、話数を経るごとに変わる登場人物の立ち位置や印象もどんどん変わっていきます。これによって、作品そのものも、謎が明かされているにもかかわらず、話の闇がどんどん深くなっていくという不穏極まりないものになっていきます。最初は人情物だと思っていたのに、人情なんて少ししか無いです。
 そして、最大のどんでん返しが、小戸川自身に隠されていた謎です。謎というよりは病気なんですけど、これが明らかになったとき、心の底から「やられた!」と思いましたよ。「かいけつゾロリ」などに慣れ切っている我々の心理を完璧に利用したトリックでしたし、これはアニメだからこそできる大どんでん返しです。しかも、このどんでん返しが「どんでん返しのためのどんでん返し」になっていない点も素晴らしくて、これがあったことで、本作の謎であった「小戸川自身」の解決にもなってるし、小戸川の救済の話にもなっています。更に言うと、人間を動物化させたことで、視聴者に登場人物を分かりやすくさせるという機能もつけられてる。また、伏線は話の中に張ってあったんですよね。両親とは違う動物の子供がいるとか、動物なのに相手のことを「人間」って言ってるし。これには本当にやられた。
 
 本作の雰囲気を作っている要因に会話のテンポの良さがあると思います。本作には声優だけではなく芸人や俳優、ラッパーなど、実に多彩なキャスティングがなされ、彼ら彼女らの会話のアンサンブルがとても良い。具体的には、ボケとツッコミのテンポの良さが最高で、会話は何てことないのに、あの食い気味のタイミングだけで笑わせられました(イチオシはミスチルの下り)。
 
 正直言って、本作の終わり方には不穏なものがあり、先が非常に気になります。オーディオドラマも全部聴いたんですけど、あれはあれで伏線を本編の補強的に張ってて最高だったんですが、最終話で精神抉られました。もうこれは漫画を読むしかないのかもしれない。ということで、オッドタクシー、素晴らしい作品でした。
 

 

「動物擬人化?」アニメ。

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