暇人の感想日記

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洗練されたロマコメ【ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから】感想

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから

 

89点

 

 

 NETFLIXオリジナル映画。緊急事態宣言発令時に鑑賞。理由は単純で、「話題になってたから」。監督はアリス・ウー。何とデビュー作『素顔の私を見つめて・・・』から15年振りの監督作のよう。てっきり新人監督だと思ってました。

 

 本作のジャンルはロマンティック・コメディに該当すると思います。ストーリーは非常にオーソドックス。とある女の子に片想いしている子がいて、その子が別のアメフト男子に協力してラブレターを代筆するというもの。ベタですらあります。どうやら大元となった古典的な劇があるそうです。しかし、本作はそれでも素晴らしく面白い作品でした。

 

 まず、本作はオーソドックスなストーリーを基にしつつ、現代的に内容を変化させています。主人公のエリーが片想いしているのは学年のアイドル的存在の美少女アスター、つまりエリーはレズビアンなわけです。昔だったら主人公と代筆を頼む人間は同性だったと思うし、代筆していた側が好きになって三角関係がこじれるとかあると思うのですけど、本作はLGBTQの要素を入れて、その上で古典的な代筆モノをやっているのです。

 

 

 そして、本作における関係性も「恋人」とか1つに決めつけず、もっと大きな意味合いの関係性として描いていました。それは冒頭の「愛とは自分の片割れを見つけるもの」という考えから、関係性を「愛」という言葉ではなく、名前が付けられない大きな関係性として描いている点が良いなと思いました。また、ポールに良いところが見つかっても、エリーは別に(恋愛的な意味で)好きになるでもなく、ずっと対等な関係として接していたのも現代的だなぁと思います。

 

 さらに、本作は撮影が面白くて、冒頭の「片割れを探す」という台詞からか、前半は左右対称な、シンメトリックな構図が多かった印象です。また、編集も良くて、中盤の3人が教会にいるシーンでの、エリートアスターの視線が合ったと思わせておいて実は違っていたという編集は、エリーが感じている切なさを感じさせる素晴らしいシーンでした。

 

 他にも、本作の中にある膨大な引用、そしてクスッと笑えるコメディセンスなど、全てが行き届いている作品で、非常に品の良い作品だったと思います。

 

 

ロマコメ。

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 大人のマリッジストーリー。

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