暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

奪還と救済の物語【タイラー・レイクー命の奪還ー】感想

タイラー・レイク -命の奪還-

 

82点

 

 

 NETFLIXオリジナルのアクション映画。配信開始時は日本では緊急事態宣言が発令され、映画館が軒並み閉館していました。そんな中配信された本作は映画ファンの間では「久々の新作映画」という扱いになり、配信時はその内容で盛り上がっていた記憶があります。私としても映画秘宝でその存在は知っていましたし、映画館で観る映画もない状況だったので、本作を鑑賞した次第です。

 

 本作のあらすじは単純明快。バングラディシュのダッカ麻薬王に誘拐されたインドの麻薬王の息子を救出し、麻薬組織の包囲網を抜けてバングラディシュから脱出する。これだけです。このシンプルな筋立てに、ドラマと新鮮なアクションを盛り込み、しっかりとした娯楽作品に仕上げていました。

 

 本作の目玉は、何と言ってもアクションです。圧倒的なフィジカルを持つクリス・ヘムズワースがその力を遺憾なく発揮しています。そしてそれに加えて、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のルッソ兄弟作品でスタントを担当している、監督のサム・ハーグレイブのアクション演出の凄まじさが、本作を見応えのあるアクション映画に仕上げています。

 

 圧巻なのは中盤の12分間の疑似ワンシーン・ワンショットです。『1917』のような登場人物たちをずっとカメラが追っているものなのですが、本作ではアクションということもあり、状況が目まぐるしく変わります。カーアクションを寄ったカメラで撮っていたかと思ったら、手持ちのまま登場人物を追って集合住宅に入って肉弾戦、そしてそこからさらに移動してカーアクション、という感じです。これを疑似的ながらもワンシーン・ワンショットでやっているため、緊張感と臨場感が半端ではない。何でも、監督のサム・ハーグレイブさんは『アトミック・ブロンド』のあの階段のシーンを撮った人だそうです。本作はあらゆる意味であのシーンの拡張版と言えると思います。

 

 

 アクションは、ここ以外でも見所はたくさんあります。その凄まじさたるや、別次元の『ジョン・ウィック』です。ただし、向かってくるのは殺し屋だけではなく、麻薬カルテルと警察と昔の友人です。それらの人が四方八方からタイラーを殺しに来るわけです。そしてそれらを多彩なアクションでなぎ倒す姿は痛快です。

 

 また、ドラマ面でも良くて、タイラーの過去と現在がリンクして、タイラーの遺志が、1人の少年に生きる希望を与える物語だったと思います。

 

 「溺れるのは川に落ちるからじゃない。沈み続けるからだ」本作の象徴的な台詞です。この台詞と呼応するかのように、映画の冒頭とラストで「落下と浮上」が繰り返されます。しかし、その意味は違っています。最初のタイラーの落下は、人生を虚無的に生きている彼の姿を描いていましたが、ラストのオヴィのそれは、諦めから「落下する」のではなく、そこから自分の意志で「浮上」します。これはタイラーが示した姿に、オヴィ自身が感化され多結果でしょうし、タイラーの過去を考えれば、彼は本当の意味で救われたのだと思います。故に本作は、「親子の物語」とも言えるのです。

 

 

 サム・ハーグレイブ監督がアクション監督をした作品。

inosuken.hatenablog.com

 

 ルッソ兄弟作品。

inosuken.hatenablog.com