暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2018年夏アニメ感想⑨【中間管理録トネガワ】

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 福本伸行原作の傑作「賭博黙示録カイジ」に出てくる敵キャラ、利根川幸雄を主人公としたスピン・オフ作品「中間管理録トネガワ」。本作はそのアニメ化作品となります。

 

 原作はスピン・オフというよりも「賭博黙示録カイジ」を題材にしたパロディといった方が適切かもしれません。というのも、原作が元々持っていた要素(独特の台詞回し、珍妙な比喩、「・・・・・」の多様)をそのまま持ってきて、我々が直面しているような会社あるあるを描いているのです。例えば、部下が皆同じ格好をしているため名前が覚えられなかったり、部下の信頼を取り戻すために合宿開いたり、会長のご機嫌を取ったりといったことをあの極悪非道ぶりを見せた利根川がやっているのです。それによってやっていることと場の雰囲気にずれが生じて、笑いへと昇華されています。原作はこの換骨奪胎がとても上手くいっている作品なのです。この巧みさは、「このマンガが凄い!2017」で1位を獲得したことからも評価されていることが分かります。

 

中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)

中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)

 

 

 このように、原作は「カイジ的要素」を前面に押し出すことでギャグ作品として成立させていました。そのため、アニメ化をするためには、可能な限り「カイジ」に寄せる必要があったと思います。ただ、そこの点に関しては心配はしてませんでした。というのも、「賭博黙示録カイジ」は2007年にマッドハウスによってアニメ化されており、原作ファンからも高評価を得ていたからです。なので、マッドハウスが制作すると発表されたときは、心の底から安堵し、期待しました。以前アップした記事「2018年夏アニメ視聴予定作品一覧」に、その安堵を綴りました。これで大丈夫だ。ナレーションが不安だけど、まぁそこまでハズレではないだろ、と。

 

 そう思っていた時期が、俺にもありました。

 

 実際に視聴を始めると、原作の良さをことごとく台無しにする出来になっていて、制作陣の正気を疑う作品になっていました。

 

 まずは多くの方が言及しているナレーション。原作の特徴から、ナレーションのベストは立木文彦さんでしょう。もちろん立木さんはお忙しい方ですから、キャスティングできない場合もあるかもしれません。ただ、他の方でも、ナレーションに「シリアスさ」は必要だったと思います。

 

 しかし、川平さんが行ったナレーションは、完全にバラエティのそれでした。淡々と、しかし力強く読む必要があると思うのに、いちいち妙なアクセントをつけるのです。例えば、原作第2話「注油」のナレーション。「が・・・・・・ 躓くっ・・・・!!」ですが、ここで「躓く」を「躓くぅ~(⤴)」って感じに読んでいるのです。そこで味を占めたのか、「く」で終わると結構な頻度でこのアクセントをつけてきます。また、最初にあるアニメオリジナルナレーションでもNo.2を「ナンバートゥー!」と読んだり、「頑張れっ・・・利根川・・・・!」を「頑張れ!利根川ぁ!」と読んだり、海老谷解雇の時も「海老谷・・アウツ!〈イッパツカイコ」とか、やりたい放題。この時点で、本作は原作とはだいぶ違う作品になってしまっていました。

 

 さらにナレーション以外でも問題なのが、演出。ナレーションと同じように、こちらもバラエティ的なのです。強調するときに文字が出てきたり、キャラたちが台詞、心情に合わせ、変なポーズ、行動をしたり、シーンを強調する演出が続きます。しかし、原作の良さって、こんな「分かりやすい」笑いではなくて、皆が真面目にやっている事が笑いに繋がっていました。それをこんな「はい、ここ笑うところですよ~」と言わんばかりの演出をしてしまっては台無しです。また、それは声優さんの演技にも表れていて、利根川がアイディアを「アイディーア」と言ったり、「かつ澤」のエピソードのときも「教えてやらん・・・」も何かギャグっぽく言ってたりして、「ギャグ的演出」を助長しています。後は「ざわ・・・ざわ・・・」のざわボイスも何なんだアレって思いますね。

 

 このように、色々台無しにしているのですが、人間というのは便利なもので、慣れるんです。最後の方に至ってはウザいと思っていたナレーションにも何だか親しんでしまっていました。これは途中で「1日外出録ハンチョウ」を入れたことも影響しているかもしれません。あれには意外と合っていたので。ただ、「ハンチョウ」も入れる意味はよく分かりませんでしたが。

 

 はい、このように、慣れてはきましたが、色々と台無しな作品なので、感想は辛めです。