暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

居場所を巡る物語【サウンド・オブ・メタルー聞こえるということー】感想

サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ

 
82点
 
 
 Amazon Prime Videoにて配信中の本作。聴力をほぼ失ったドラマーが、同じような聴覚障害を持つ人々との交流を通して生きる希望を見つけていくヒューマン・ドラマ。アカデミー賞にて6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞を受賞。アカデミー賞受賞作ということで、鑑賞しました。
 
 本作を観て、一番印象に残るのは、何といっても「耳が聞こえない」ことを疑似体験させる演出でしょう。主人公・ルーベンの視点から世界を見た時、世界そのものが静寂とは違う異質な感じに包まれたことを観客にも体験させる音響がなされているのです。おそらく、この点が音響賞を獲得した理由でしょう。この点で、本作は映画館で上映すべき作品だったのですが、それだけに配信となってしまったことは残念です。だから観るときはヘッドホン推奨。時折、ルーベン以外の視点に転換し、「外部から見た主人公」という客観的な視点を入れている点も上手い。
 
 本作は、「再生」の物語ですが、同時に、「居場所を巡る物語」でもあります。この「聴こえない」ことを疑似体験させるという演出は、本作の持つこのテーマ性とも合致しています。ルーベンは最初は根無し草としてパートナーの女性・ルーとトラック生活を送り、自由な日々を過ごしていました。しかし、聴覚に異常をきたしたことでルーといったんは離れ、同じような人々と交流を深めていきます。ここで重要なのが、ルーベンのいる世界は、もうルーがいる世界とは違うという点です。それを際立たせているのがルーベンを取り巻く「音」です。彼はルーの元に戻りたいと思っているものの、彼女は「聴こえる世界」の住人であり、「聴こえない世界」の住人である彼は、もう彼女とは音楽では交われないのです。それが痛々しい形で出てくるのが、後半に補聴器をつけたとき。周囲の音は雑音が入り、それまで「聴こえない世界」を描いていたことも相まって、とても騒々しい。それでも我慢してルーの家に行くと、ルーは何か成功してて、彼女の歌声さえも雑音が入ってしまう。このときのルーベンの表情が切ない。これで、2人は「自分の居場所」が全く違う場所にあったことに気付くのです。だからこそ、ラスト、ルーベンは補聴器を外し、「自分がいるべき世界」に帰還します。つまり本作は、聴覚障害をテーマにしてはいますが、その実は2人の男女の別れと自立の物語なのだと思います。
 

 

リズ・アーメッド出演映画。

inosuken.hatenablog.com

 

 音楽繋がり?

inosuken.hatenablog.com