暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2019年秋アニメ感想③【BEASTARS】

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 現在、週刊少年チャンピオンにて連載中の漫画が原作。原作者は板垣巴留先生。名字から分かるとおり、この方は同じくチャンピオンの看板漫画、「刃牙」シリーズの産みの親、板垣恵介先生の娘さんだそう。父親は「人類最強」なほぼ人外格闘漫画を描いているわけですが、娘さんの方はまるで違う、ヒューマン(アニマル?)ドラマを世に送り出してきました。私は原作読んでいて(といっても8巻くらいまでだけど)、制作が「宝石の国」のオレンジということで視聴を決めました。

 

 本作を見てまず目を引くのが3DCGで描かれたセルルックのキャラクターです。オレンジは「宝石の国」でも宝石のキャラクターを質感まで完璧に表現して描いていました。本作でもその力は遺憾なく発揮されていて、「動物のキャラクター」を違和感無く画面に落とし込んでいます。「宝石の国」では宝石の質感が表現されましたが、本作では毛並みの表現がよかったです。本作のように「動物」の中における種族が極めて重要な作品では、その「動物感」をどのように描くかは中々大切な要素だと思います。そして人間にあって動物に特徴的なものが毛並み。手描きではかなりの労力を要するであろうこの毛並みを、オレンジはお得意の3DCGによってクリアしています。

 

TVアニメ『宝石の国』オリジナルサウンドトラック

TVアニメ『宝石の国』オリジナルサウンドトラック

  • 発売日: 2018/01/17
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 「動物が人のように生きている」という設定から真っ先に思い出されるのは、2016年に公開された傑作映画『ズートピア』です。あの作品は動物から連想されるイメージを人間社会における偏見や差別の問題と結びつけ、多様な動物が暮らす国、ズートピアを「人種のサラダボウル」アメリカになぞらえ、多様性の大切さをを訴えた作品でした。

 

 本作で描かれていることも、基本的には『ズートピア』と同じです(念のため書いておくと、原作の連載開始は『ズートピア』と同じ時期なのでパクりではないと思います)。ただ、『ズートピア』よりは本作はTVアニメということで尺があるため、そこに暮らす動物の苦悩をより具体的に描いています。「食殺」が起これば肉食は白い目で見られるし、「肉食獣」は「強者」であるが故に偏見にさらされ、生きにくさを感じています。本作の主人公であるレゴシはハイイロオオカミに生まれたばかりに優しい性格であるにも関わらず避けられており、それに諦めがついています。そしてレゴシと対比されるアカシカのルイは圧倒的な才能で学園内で輝く存在でありながら、「被捕食者」という存在であることに強烈なコンプレックスを抱いています。また、ヒロインであるハルも「ウサギ」という「被捕食者」であり、そのイメージから来る面倒事を抱えています。彼らのこうした「違い」が人間社会における人種的、外見的な偏見や差別と直結しているメタファーであるという点は誰もが分かると思います。

 

 

 そしてこの点が『ズートピア』と違う点なのですが、本作の場合、話の軸に「恋愛」があるため、上述のような動物的な偏見、差別の問題がそのまま男女関係の話にまで繋がってくるのです。それが最も象徴的に表れているのがレゴシとハルの関係で、男性であるレゴシが「捕食者」であり、女性であるハルが「被捕食者」なのです。つまり、「男はオオカミなのよ」を地で行く内容なわけであり、非常に印象深いです。ただ、本作はここから2人の関係を発展させ、「草食と肉食が互いに互いのことを理解し合う(=男性と女性が理解し合う)」ことまで描き出しており、2人の関係という非常にミニマムな世界でですが、『ズートピア』と同じようなことを、恋愛を使ってやってのけているのです。この点は1話で提示した問題を最終話で回収したりしていて、まとまりも良かったと思います。

 

 以上のように本作は、動物の世界を用い、『ズートピア』よろしく多様性世界における苦悩や葛藤をあまり隠すことなく描き出した作品であり、3DCGを用いた映像も相まって、とても見応えのある作品でした。2期もあるそうなので、見ようと思います。

 

 

1話だけですが、同じオレンジ制作作品です。

inosuken.hatenablog.com

 

 3DCGの劇場版作品。制作はグラフィニカ

inosuken.hatenablog.com