暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2021年春アニメ感想①【極主夫道】

極主夫道

 
☆☆☆★(3.6/5)
 
 おおのこうすけ先生原作、ウェブコミックサイト「くらげバンチ」にて連載中のギャグ漫画をアニメ化した作品。「不死身の龍」と呼ばれた元最凶極道が主夫業に全力で取り組む姿を描きます。原作は高く評価されている作品で、国内外で多数の賞を獲得しています。私は原作は1巻を読んだだけの人間なのですが、話題の作品がアニメ化されるということで、とりあえず視聴した次第です。一応、ドラマ版も1話だけ見ました。切ったけど。
 
 本作は少し変わったアニメです。アニメーションとは、しばしば「動く」ことこそが真髄と言われます。アニメファンとしても、スタッフのレイアウトやアニメーターが生み出す、アニメーションのそういった「動き」や芝居に感動を求めています。それはしばしば「作画が良い」と言われます。逆に、あまり動かず、基本口パクで進むアニメは「紙芝居」と呼ばれ、低品質アニメ扱いされます。具体的に言うとちょっと前の「ONEPIECE」。

 

極主夫道 1巻: バンチコミックス

極主夫道 1巻: バンチコミックス

 

 

 本作はこの基準で言えば、「紙芝居」です。しかし、これは誰でも分かることとは思いますが意図的なものであり、「紙芝居」であることが原作の持つ「笑い」を再現することに十分な役割を果たしているのです。原作は確かに面白さはあるのですが、それはどちらかと言えば一発ネタに近いもので、「カリカチュアライズされた極道のノリで主夫業をやる」ことから生ずるギャップで笑わせるものでした。そして、それがサムいものになっていないのは、原作にあった独自の、何とも言えないテンポ感があってこそでした。原作は龍の「ボケ」に対する周囲の「ツッコミ」のコマとコマの緩急のつけ方、テンポが笑いに繋がっていた面があります。これは基本的に「絵」で表現する漫画ならではのテンポであって、「動く」アニメーションではまた違ったものになってしまいます。TVドラマ版は設定が薄い原作を毎回45分まで引き延ばすために余計な設定を盛り込みまくり、結構違う作品になっていました(※1話見ただけの人間の感想です)。本作はこのテンポ感の再現のために、敢えて「紙芝居」にしてみせているのです。これは同じく今監督の「ゴクドルズ」でも行われた試みであり、それは成功していると思います。
 
 これに加え、原作の魅力を再現することに貢献しているのが、声優さんの演技です。上述の通り、本作に「動き」はありません。アニメーションって、動きを「芝居」って言う傾向があるように、動きでキャラの心情を表現出来ているんですよね。我々はそれを見て、キャラの心情や感情が分かるようになっています。しかし、本作は「動かない」アニメーション。おおよそ「芝居」と呼べるほどのものはありません。そこで声優さんです。津田健次郎さんをはじめとした芸達者な方々の演技や声のトーンによって、キャラの感情が水増しされ、「ボケ」と「ツッコミ」がより上手く再現できています。
 
 以上のように本作は、原作が持つ魅力を、「動かない」アニメーションと声優の力量によって上手く再現してみせた作品だったと思います。これは結構いい「原作再現」だと思います。以上。
 
 

 ヤクザと超能力娘。

inosuken.hatenablog.com