暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

見事な着地【ヒックとドラゴン 聖地への冒険】感想

f:id:inosuken:20200224221303j:plain

 

87点

 

 

 2010年に1作目、2014年に2作目が公開され、そのどちらもが高い評価とエンタメ性を持っていた『ヒックとドラゴン』シリーズ。本作はその3作目にして完結篇となります。日本では残念ながら知名度が高くない作品なのですが、映画ファン、アニメファンの間ではその完成度の高さは話題になっており、私も過去2作は大変面白く鑑賞しました。その完結篇ともなれば劇場で観たくなるのが人情というもの。ムビチケを購入し、年始劇場1本目に鑑賞しました。

 

 結論から書くと、「見事!」と言える作品でした。というのも、1本のエンターテイメント作品として完成されているのはもちろんですが、「3部作の完結篇」として申し分ない出来だったからです。キャスリーン・ケネディはこの作品の爪の垢を煎じて飲んだ方がいいと思います。

 

 

 まず、本作は映像クオリティが素晴らしいです。これは3作共通して言えることなのですが、本シリーズは作品ごとに映像的なクオリティアップを施していて、本作ではドラゴンの聖地での、あの大量のドラゴンです。映像的な美しさもそうですが、あの量にとにかく圧倒されてしまいました。

 

 1作目はドラゴンと人間の和解、2作目はヒックが「子供」から「大人」になるまでを描いていました。この2作は素晴らしい作品であることは疑いの余地がありませんが、私は心のどこかにモヤモヤとした気持ちを抱えていました。というのは、「人間とドラゴンが仲良くする」と言っているのは良いのですけど、2作を通して観てみると、その関係性があまり「対等」と言えるものではないと思えたからです。確かに、トゥースとヒックは「友達」になりましたし、バーク島の皆もドラゴンと仲良く暮らしています。しかし、やっていることは何かというと、描かれていることを見る限りでは、結局はドラゴンを人間の都合のいいように使っているだけなのではないか、と思えるのです。

 

 本作はこのモヤモヤに1つの結論を出します。それは「ドラゴンの意志」を真の意味で尊重することです。人間のエゴにドラゴンを付き合わせるのではなく、ドラゴンにとって、何が本当の意味で最も良い事なのかを考えること。それこそが本当の意味で相手を尊重するということだと本作は説きます。だからこそ、ラストでヒック、並びにバーク島の皆とドラゴンは別れたのでしょう。

 

 

 そしてこれは、ヒック自身の成長物語とも密接にリンクします。それはヒックが真の意味で「1人立ち」するということです。ヒックは確かに大きく成長し、父からの1人立ちを果たしました。しかしそれは、トゥースというドラゴンがいたからです。彼と一緒だったからこそ、ヒックは成長できたのです。だから、ヒックがトゥースと別れ、本当の意味で1人立ちすることは、そのままこの3部作の締め括りにふさわしい内容なのです。敵がヒックの写し鏡(というか、ダークサイド)で、それに打ち克つという内容もシリーズ恒例ですね。

 

 ラストも素晴らしかったです。人間とドラゴンが別れ、ドラゴンが「伝承でしか語られていない」存在となるのですが、それによってこの世界が我々の現実世界と地続きになって、この物語が「過去に本当にあったこと」として捉えられる作りになっていると思いました。この着地は素晴らしいと思います。以上の理由から、本作は3部作の最後の作品として素晴らしい作品だったと思いました。

 

 

同じく3部作の完結篇。こっちは残念。

inosuken.hatenablog.com