暇人の感想日記

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人と人を繋ぐ物語【ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 永遠と自動手記人形】感想

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87点

 

 

 2018年に放送され、(京アニ制作の中でも)驚異的な映像クオリティを見せつけた「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の劇場版作品。私はTVアニメは楽しく見ていたので、その劇場版作品ということならば例え外伝だろうと鑑賞するしかないということで映画館まで観に行った次第です。

 

 実際に鑑賞してみると、話の中身はTVシリーズと同じような『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』で、「愛している」についての話でした(TVシリーズならば、第10話が一番近い)。しかし、本作はタイトルに「外伝」と付いているだけあって、そのTVシリーズと同じ内容を別の視点から描いた作品でした。そして、単なるTVアニメのボーナス・トラック的作品ではなく、きちんと「映画」になっていました。

 

 

 本作は2部構成となっています。ヴァイオレットがイザベラと交流を深めていく1部と、その数年後を舞台に、彼女の妹、テイラーがベネディクトと共に郵便配達員について学んでいく2部です。

 

 第1部は、TVシリーズのような、王道の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」です。ヴァイオレットを狂言回しとして、イザベラの「どこにも行けない」という絶望と苦悩を丹念な演出で描き(この辺の演出は本当にさすがだと思う)、最後に彼女の「想い」をヴァイオレットに託すというもの。

 

 第1部を観ていて目を引くのは、その画面クオリティ。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、過去の京アニ作品の中でも群を抜いてプロップが素晴らしかったのですが、本作ではそれがシネスコサイズになる事で、より強調され、画面がTVシリーズより更にリッチになった気がします。

 

 更に、もう1つ目を引くのは、「手を繋ぐ」という演出。本作では、何度かキャラ同士が「手を繋ぐ」シーンが多いです。そこには、「機械なのに暖かい」というヴァイオレットの人間味を意識させる意味もあると思うのですが、それ以上に、人と人の交流、そして、本作の手紙によって人と人を「繋ぐ」ということの隠喩の意味もあるのではないかと思います。

 

 

 その「繋ぐ」点がよりテーマとして前面に出てくるのが、2部。今度は妹のテイラーに話の軸が移ります。ここでスポット・ライトが当たるのが郵便配達員という職業と、ベネディクトです。TVシリーズではヴァイオレットに話の焦点が当たっていたため仕方がないのですが、郵便配達員という職業と、ベネディクトの存在感はほぼ空気でした。しかし、本作では視点をこの郵便配達員に移し、彼ら彼女らが手紙の触媒になって、人と人を繋げているのだということを描きます。ラストで、イザベラの気持ちがテイラーに届き、テイラーの気持ちがイザベラに届いたときの「世界が開けた」演出は素晴らしかった。

 

 彼女たちの絆は永遠であり、それを繋ぐことが、自動手記人形と、郵便配達員の仕事なのだと、しっかりと描いていました。これが最終的にベネディクトの仕事に誇りを持つ話にしているのも良いですね。

 

 最後に。京都アニメーションは現在、歴史的な事件の被害者となってしまいました。これで失ってしまったものは、あまりにも大きすぎます。ここに、被害に遭い、まだ苦しんでいる方々の一刻も早い快復と、亡くなられた方々へのご冥福を祈ります。そして、もし、京都アニメーションが復活するならば、可能な範囲で申し訳ありませんが、支援もしたい。私は待ってます。何年でも。

 

 

1話しかありませんが、TVシリーズの感想です。

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 京アニ作品。

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 傑作映画。

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