暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2018年春アニメ感想⑥【ひそねとまそたん】

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 庵野秀明監督の盟友、樋口真嗣と、『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』の脚本家、岡田麿里が、ボンズと組んで送り出したオリジナル・アニメ。キャラクター原案には青木俊直、モンスターコンセプトデザインにコヤマシゲトメカニックデザイン河森正治。制作発表時、この座組を見ただけで俄然興味が湧き、視聴しました。

 

 見始めてまず驚いたのが作中の絵のタッチ。昨今流行りのデティールに凝りまくり、細かい描き込みによってアニメ的なリアルで表現されたものではなく、どちらかと言えば一昔前のアニメの感じで、線も多くなく、色塗りも全体的にベタッとしていています。でも、手抜きというわけではなく、戦闘機を始めとした細かいところはきちんと描き込まれていて、尚且つキャラクターの動きも非常に現代的で、感情豊かな印象を受けます。シンプルなのにデティールが凝っているという、相反することを同時にやっているんじゃないかと思いました。

 

 ストーリーはシンプルで、自衛隊が秘密にしていたドラゴン(OTF)に乗ることとなった主人公、甘粕ひそねが、他のドラゴンやパイロットと触れ合い、成長していくというもの。中盤まではひそねと周囲のキャラクターに焦点が当てられ、ストーリーは進んでいきます。ここらへんのキャラの掘り下げ方はさすが岡田磨里さん、といった具合で、見ていてとても面白いです。しかし、終盤はやはり岡田磨里さんらしく、若干、無理くりな展開や消化不良もあります。

 

 ここまでで、まさか本作はドラゴンがいる自衛隊の、日常を描いていくのではないか?などどあらぬ疑問を持ってしまいましたが、もちろんそんなことはなく、「マツリゴト」という展開が待っています。これが明らかになった時、本作の方向性みたいなものが見えたかも、と思いました。

 

 作中のヒロインたちは、皆何かが欠けているとして、OTFに依存することを求められています。それは何故かというと、国の命運を左右するマツリゴトを成功させるためです。彼女たちはこれのために恋愛も禁止されます。ここらへんはコミカルに演出してあるのですが、要するに「国のためにその身を捧げよ」ってことなのではないでしょうか。こんな考えが出てくると、作中の設定も神道の要素が入っている気がしてきたり、あれは特攻の隠喩なんじゃないかとか考えたりしました。まぁ、よくここまで際どい設定を入れたなぁと思いましたよ。

 

 また、余談ですが、この「上層部の意志で、自由意思を奪われる」という設定は同時期に放送されていた『ダーリン・イン・ザ・フランキス』を彷彿とさせます。そして、この作品は『新世紀エヴァンゲリオン』に酷似しています。さらに、本作の監督は樋口真嗣です。つまり、本作はひょっとして、樋口版『エヴァ』なのか?だとするとスーツとコクピットが似ているのとかが分かるような・・・。

 

 話が逸れました。このように、「上からの意志で行動していた」ひそねですが、最終的に自らの意志で戻ってきます。そして、しきたりなんて!みたいな感じで自己犠牲を否定したりします。ただ、自分も自己犠牲してるんですけどね。最終的に戻ってきたとはいえ、ここらへんはどうなんだろうなぁ。

 

 ただ、この展開は個人的に、これまで主体性がない、つまり社会的に自由意思があまりなかった女性が自らの意志で行動、つまり、束縛もされず、自らの意思で自由に行動できるようになる、という、女性が個人として自立する話なのではないかと思いました。深読みしすぎかな。結論としては、モヤモヤするところもあるけど、楽しんで見れました。