暇人の感想日記

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全てを受け止め、「解放」されるヒーロー【キャプテン・マーベル】感想

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80点

 

 

 サノスの野望が成就し、宇宙の全生命体の半数が消滅した『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のラスト。誰もが絶望に包まれる中、ニック・フューリーは端末で何者かにメッセージを送っていました。この状況を打破できるとは一体どんなヒーローなのか?と当初から大きな期待を寄せられていたキャプテン・マーベル。小休止的な『アントマン&ワスプ』を挟み、いよいよ本作でデビューを飾りました。

 

 鑑賞してみると、MCU初の単独女性ヒーロー映画という点を十分に活かしつつ、キャプテン・マーベルというヒーローのオリジンを描いた作品で、非常に楽しめました。

 

 

 本作は、「アベンジャーズ」誕生のきっかけが描かれる点や、上述の端末、そして過去のMCU作品との繋がりを見せるという点で、「過去の答え合わせ」な展開がやや多めです。実際、感想をいくつか読んでみるとそこが気になった方も多いようでした。私もその点はちょっと感じましたが、その提示の仕方がこれ見よがしではないし、何より本筋の話が面白かったので、気になりませんでした。『ハン・ソロスター・ウォーズストーリー』のように、答え合わせの要素「だけ」で成立していた作品に比べれば、これ1本でも楽しめるという点で、本作はとちも良い作品だと思います。

 

 さて、本作の内容は、ヒーローもの第1作の定番「オリジン」です。本作はそこを「女性である」点を存分に活かして描いています。

 

 本作の主人公はクリー人であるヴァース(ブリー・ラーソン)。彼女はスクラルと戦う戦士として、ヨン・ロッグ(ジュード・ロウ)育てられてきました。ただ、彼女には「失われた記憶」があり、本作はその記憶の謎を明らかにしていくことがメインになっていきます。彼女はスクラルを追い、1980年代の地球に降り立ちます。そこからは、スクラル人の能力をフルに使った、サスペンス・アクションが繰り広げられます。ここら辺のアクションはさすがMCUといえる安定のものでした。

 

 また、本作はこの過程で出会った我らがニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)と彼女とのバディものとしての面白さも見せてくれます。彼らが互いに協力しあい、謎を明らかにしていく過程はとても良いです。

 

キャプテン・マーベル (ShoPro Books)

キャプテン・マーベル (ShoPro Books)

 

 

 そしてヴァースの記憶が全て戻った時、これまでの価値観が一気に覆され、ヴァースの本名はキャロルで、自分は地球人だと知るのです。そして、自分の味方だと思っていたクリー人こそが悪である事が分かるのです。

 

 ここから、男女関係のメタファーを読み解くことができます。キャロルはヨンに育てられましたが、その実はヨンが自分の良いようにキャロルをコントロールしようとしていただけでした。これは現実の男女関係である、「男が女をコントロールしようとする」という構図と同じであると言えます。そして、このコントロール下から「キャロル」として解き放たれた彼女は、自らの内にある強大な力を以て敵を次から次へと倒していきます(その時にかかっている音楽がNo Doubtの「Just A Girl」ってのがまた何とも)。

 

 男のコントロール下にあった女性が、そこから解き放たれ、自分でなすべき事を見定め、戦う。本作は、ヒーローのオリジンであると同時に、女性の自立の話でもあるのです。

 

 また、キャロルが「ヒーロー」である由縁も素晴らしいと感じました。彼女はアイアンマンやキャプテン・アメリカスパイダーマンと同じく、突然超人になった「普通の人」です。では何が彼女をヒーローたらしめているのか。本作はそこを明快に示します。何度倒れても、倒れても、何度だって立ち上がる強い意志。それが、彼女がヒーローである由縁なのです。これは同じく3月に公開された『スパイダーマン スパイダーバース』と同じですね。

 

スパイダーマン:スパイダーバース オリジナル・サウンドトラック

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 キャプテン・アメリカは、『アベンジャーズ』の前に公開されました。そして、本作はアベンジャーズ最終章の『アベンジャーズ/エンドゲーム』の前に公開されました。名前に同じく「キャプテン」が付いていること、そして公開のタイミングから、これからは彼女がリーダーになるのかもしれません。そうしたら、それは「男の時代の終わり」ともとれるはずです。「アベンジャーズ」の終わりと共に、もう1つの時代が終わり、始まる。そういうターニングポイントとしても、本作は機能しているのかもしれないと思いました。

 

 最後に。本作で1番泣いたのはオープニング。観た人ならこれが分かると思います。ありがとう、スタン・リー。

 

 

ほぼ同じヒーロー像を提示した作品。こっちは傑作です。

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 観客全員を絶望のどん底に落とした作品。『エンドゲーム』待ってます。

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