暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

良い所もあるけど、「答え合わせ」しかないストーリーが残念【ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー】感想

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56点

 

はじめに

 『スター・ウォーズ』シリーズのスピン・オフ第2弾。今回の主人公は本編の中でも屈指の人気を誇るハン・ソロ。主要キャラが一切出なかった『ローグワン』の成功を考えれば、今回の成功は半ば約束されたような気がしていましたが、監督の交代劇という制作側のドタバタもあり、蓋を開けてみればアメリカ本国では『スター・ウォーズ』シリーズ中最低の興行収入をあげてしまいました。日本でもその余波が来ているのか、興行収入は微妙で、公開4週目の『万引き家族』とどっこいどっこいの成績を上げています。そんな状況下なので、私もあまり期待値を上げずに鑑賞しました。

 

「答え合わせ」のストーリー

 結論として、その下げた期待値通りの微妙な作品でした。その最大の原因はストーリーです。話の筋があるにはあるのですが、そのどれもがこれまで謎とされてきたハン・ソロの過去(ケッセル・ランの下りとか、チューバッカとの出会いとか、愛銃の入手方法とか、ミレニアム・ファルコン号との出会いとか諸々)を明らかにするためだけに作られている気がしたのです。つまり、ストーリーがあってこれらの謎が解き明かされるのではなくて、まずこれらの「謎」ありきでストーリーが作られ、この「謎」に辻褄が合うように都合よくストーリーが進んでいるのです。しかもそれらはただ「解明」しただけでそれ以上のことが起こらないので、全体的に平板なストーリーな印象を受けます。しかも、これらの外見上の辻褄合わせはやるくせに、内面の描写があまりないので、ソロのキャラがよく分からなくなっています。これは他のキャラクターにも言えます。

 

 そしてこの問題は、『スター・ウォーズ』という作品の性質上、どうなんだと思いました。私はそこまでファンではないのですが、知人や、著名な方、マニアックなファンの方々の話を聞いていると、『スター・ウォーズ』シリーズはこれらの解明されていない謎に想いを馳せることで神聖化していった面もある気がするのです。それにこんな中途半端な答えを出していいのだろうか?などと思ってしまいました。

 

 また、問題点としては、画面全体ですね。とにかく暗く、観にくい。しかも所々閃光が起こったりするので眩しく、目に悪いです。

 

良い面

 このように、悪い面ばかり書きましたが、良いと思ったところもあるのも確か。まずは作品全体の雰囲気です。監督がインタビューで、モチーフとなった作品の1つとして『大脱走』を挙げているように、本作は、抑圧されている者が抗う物語だったと思うのです。抑圧されている者たちが冒頭のソロのように、暗闇の中に自らの力で明かりを灯す話です。これは勝手な解釈ですが、『スター・ウォーズ旧3部作』に繋がる精神だと思います。あれも帝国の圧政からの脱却の話だったし。そしてそれに西部劇の要素を現代的にして付け足しているのも見事だと思いました。そしてこの精神は、一匹狼のアウトローハン・ソロに見事にマッチしています。だから題材は完璧なんだよなぁ。

 

 後、良かったのはチューバッカですね。全体的にマスコット感が増していましたが、やはり操縦席に2人並んだときは気分が上がります。ここだけなら素晴らしかった。

 

おわりに

 このように、良い面もあるにはあるのですが、それらを消してしまうくらいにストーリーが微妙だと思いました。ディズニーはスピン・オフ計画を見直すそうですが、そうした方がいいと思いますよ。だってこの調子だと、どんどん謎を解くだけの話が量産されて、銀河が狭まってしまいそうですからね。

「なりたい自分になる」姿を描いた傑作【アイアン・ジャイアント】感想

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97点

 

はじめに

 8月に最新作『インクレディブル・ファミリー』の公開が控えているブラッド・バード監督。彼が生み出した名作。先日「アニメ秘宝」を購入して読んでみたら、かなりの方がこれを挙げており、興味が湧いたのと、最新作の公開も近いのでちょうどいいと思い鑑賞。

 

『E.T』と『スーパーマン

 めちゃくちゃいい映画でした。内容はまだ何者でもない少年が謎の巨大ロボと出会い、交流を深めていくという、ぶっちゃけロボット版『E.T』。しかし、本作はこの要素に加え、「なりたい自分になれよ」という監督のメッセージが存分に込められています。本作のメインはジャイアント。彼はどこかの星で作られた殺戮マシンです。しかし、記憶を無くし、自分を見失っていたときに少年と出会い、彼との交流の中でいつしか「あるべき自分(=殺戮マシン)」とは真逆の存在「スーパーマン」に憧れるのです。

 

 ただ、『スーパーマン』を知っている方ならピンとくると思いますが、このジャイアント、そもそも「スーパーマン」そのものなんですよね。スーパーマンもクリプトン星からやってきた宇宙人で、地球人とは比べ物にならないスーパーパワーを持っています。そんな彼が何故「ヒーロー」として尊敬を集めているのかと言えば、その力を人々を助けるために使っているからです。だから、これら『スーパーマン』の姿は、ほぼそのままジャイアントに重ね合わせることができます。つまり本作は、『E.T版スーパーマンと言える内容なのだと思います。中盤でスーパーマンのように飛翔し、ラストで憧れである「スーパーマン」となった彼を観て、涙が止まりませんでしたよ。

 

冷戦とジャイアン

 この相似だけでも素晴らしいのですが、本作ではそれにさらに要素が付加されて、より奥深い作品となっています。それが1950年代という時代です。ご存知の通り、この時代、アメリカとソ連は冷戦状態に入り、核兵器の開発に明け暮れ、「どちらが先に核兵器を打ち込めるか」ということに疑心暗鬼になっていました。本作はこの冷戦構造を、ジャイアントを核兵器に見立てることで寓話的に描いているのです。記憶を失っているため、攻撃さえしなければ無害な存在である彼を、「空から降ってくるものは全てソ連の兵器だ」という妄想に憑りつかれた人間が危機を煽って軍隊にわざわざ攻撃させ、実際反撃されたら「やっぱり危険だ」といってさらに攻撃させるという様は、現代に生きている我々から観ても非常に既視感があります。しかもそれを煽っているのが国の諜報機関の人間ってのがまた何とも。ただ、これらは単体で見れば深刻ですが、かなりコミカルに演出しているため、子どもでも十分楽しめる作品となっています。

 

アニメ的素晴らしさ

 また、アニメーション的にもセンスの塊で、カットの繋ぎ方、必要な情報を映像で見せる手腕、そして見事なカメラワーク。さらにジャイアントですね。最初こそ無機質な表情をしていた彼ですが、観ていくうちに、だんだん感情がある気がしてきて、ラストの「表情」ですよ。本当に素晴らしい。しかも、本作は時間が86分と短い。短くて深くて面白い。文句の付け所が無い。

 

おわりに

 このように、本作は「なりたい自分になれよ」というテーマを『E.T』『スーパーマン』の要素を用いて完璧に描くだけではなく、冷戦も巧みに盛り込むことで極めて多重的な内容を表現することに成功した傑作だと思います。

 

 

 

 ジャイアントが出てきた映画。「なりたい自分になろうとした」彼が「なりたい自分になれる」本作に出てきたことは中々興味深かったです。

inosuken.hatenablog.com

 

  ブラット・バード監督の興行的な出世作。こちらも面白かったです。

inosuken.hatenablog.com

 

 

スタッフが「いい!カッコいい!」と思っているものだけでできた快作【ニンジャバットマン】感想

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79点

 

・はじめに

 「スーパーマン」と並んでアメコミの代名詞的な存在であるバットマン。本作はそのアニメ化作品になります。注目すべきは本作はアメリカが制作したものではなく、ほぼ100%日本が制作した、日本産バットマンだということです。制作は『ジョジョの奇妙な冒険』のOPで一躍名を馳せ、近年では自称クソアニメ『ポプテピピック』のヒットも記憶に新しい神風動画。しかも物語の舞台は日本の戦国時代。どう考えても出オチ感漂う作品でしたが、集まったスタッフがスタッフだったこと、Youtubeで見た予告編が大変面白そうな雰囲気を出していたので、鑑賞しました。

 

・娯楽要素てんこ盛り

 結論として、非常に清々しい作品で、観ていて大変面白かったです。というのも、この映画、集結したスタッフたちの「これいい!カッコいい!面白い!」という要素のみで構成されているためです。従来のバットマンの装備はもちろんですが、城が変形したりヴィランが戦国武将と入れ替わっていたり、最後は巨大化するし絵柄が途中でガラッと変わるしで、気を抜くとこちらが置いてかれます。

 

 さらに、尺が90分ですから、これらの要素が怒涛の勢いで展開されていきます。次から次へと展開が変わり、その展開の速さはまるでジェットコースターです。しかもそこで起きる出来事が一々荒唐無稽です。よくよく考えれば、笑ってしまうか呆れるくらいに荒唐無稽です。しかし、そんな展開が矢継ぎ早に起こるので、観ているうちに感覚が麻痺してきて、終盤の五城合体VS巨大バットマンの下りは素直に燃えました。

 

 何故荒唐無稽なのに燃えるのか。それはスタッフがこういうツボを押さえていることと、自分が「カッコいい」と思って作ってるからなのではないかと思います。誰かが「カッコいい!」と本気で思って作ったものは観ていて楽しいものです。

 

・原作への真面目なリスペクト

 これだけだと、本作がイロモノ要素だけで終わっているように思えますが、実はそれだけではないのです。パンフレットや、各雑誌のインタビューを読んでみると、スタッフの原作アメコミ、派生作品へのリスペクトが随所にあることに気付きます。巨大化バットマンアダム・ウェスト版のTVドラマのバットマンですし、各種キャラデザも往年の作品をモチーフにして作り上げたそうです。また、日本のヴィランもただ無作為に戦国武将と入れ替わらせているわけではなく、それぞれ意味があるそうです*1

 

 これらの中で、一番リスペクトを感じたのは、バットマンジョーカーの関係性。『レゴバットマン ザ・ムービー』でも描かれていたジョーカーのバットマンへの片思いぶりが非常に良く出ていましたね。ジョーカーが事件を起こし、バットマンと遊ぶ、といった図式がここでも出ていました。

 

・CG

 また、神風動画のCGも圧巻です。セル画と見分けがつかないクオリティで、日本のCGも独自に進歩しているなぁと、偉そうなことを思いました。やはり、バトルシーンで存分にポテンシャルが発揮され、大迫力のバトルが楽しめます。

 

・おわりに

 このように本作は、スタッフが「いい!カッコいい!」と思っているものを、ハイクオリティなCGを駆使して制作した快作だと思います。

*1:明智光秀は裏切るからトゥーフェイスとか、謙信は女性説があるからポイズン・アイビー、ゴリラ・グロッドは秀吉で、明智光秀との陰謀論を絡めている等

人間が恐竜に襲われるさまを面白可笑しく描いたブラックコメディ【ジュラシック・ワールド】感想

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78点

 

 2015年に公開され、世界的に大ヒットした『ジュラシック・パーク』シリーズの第4弾。実は私はジュラシック・パーク』を観たことがなく、今回がシリーズ初鑑賞です。名作の誉れ高い第1弾を観ても良かったのですが、新作に備えて直近の作品を観ておこうと思ったことと、「第1弾を観ずに本作を観る」というのはあまりできる経験ではないなと思ったので、過去3作をすっ飛ばして鑑賞しました。

 

 過去作については、CGによる恐竜の実在感が革新的だったこと、そして「人間が生命を操ることの傲慢さ」を描いたらしい、くらいしか知りません。なので、鑑賞前は制御が効かなくなった恐竜たちが客を襲うという一大パニック・ムービーだと思ってました。実際に観てみると、それは半分当たっていましたが、半分外れていました。まさか本作が「人間が恐竜に襲われるさまを面白可笑しく描いたブラックコメディ」だったとは。完全に予想外でした。まぁ、本作は1,2作目がスピルバーグだということを考えれば、これは正当な継承の形だと思いますが。

 

 本作に突っ込みだすとキリがないのですが、とにかく言いたいことは、「出てくる奴ら、みーんなバカ」だということ。やることなすこと全てが裏目に出ています。冒頭のインドミナス・レックスに逃げられるくだりも、体内にGPS仕込んでたならまずそれで確認してから中に入れよと思うし、あのCEOはヘリに乗って自爆したけど何がしたかったんだよと思うし(しかもちゃっかり被害を拡大させている)、部隊の統率はとれてないし、やることが行き当たりばったりだし、対応がグダグダすぎる。こんな奴らが運営する恐竜パークとか絶対行きたくねぇ・・・。

 

 また、パークの管理者以外でも、子供2人も問題でしたね。特に兄貴。中盤で「俺と一緒にいれば大丈夫だよ」とか言って弟にカッコつけてましたけど、お前が余計なことしたから弟が危険な目にあってるんだぞと。これを考えれば弟は聖人のような人間ですね。将来が楽しみだ。

 

 内容的にも言いたいことはあって、中盤のプテラノドン脱走からの大パニックシーンですが、あれは素晴らしかったのですが、尻すぼみで終わってたことが残念。また、移動が瞬時にできているため、島のスケールが分からなかったのも痛い。

 

 で、そんな中で一応ストーリーは展開していくのですが、人間側のドラマが希薄で、よく分からないんですね。しかし、描こうとしているテーマは伝わってきて、「人間が生命を弄ぶことの傲慢さ」なのかなぁと。オーウェンは最初からラプトルをリスペクトをしていますが、人間側で、成長することでこのテーマを体現していたのがクレアさん。最初こそ恐竜を道具としてしか見ていなかったのが、中盤の体験から恐竜の命を感じ取り、生き物として敬意を持って恐竜と接するようになります。最初は「ザ・キャリアウーマン」な格好だったのに、後半になるにつれて恰好がワイルドになるのがとてもいい。タンクトップ尊い。まぁ、彼女もアホな人間の一員で、オーウェンに「そんな恰好じゃ2分と持たない」と言われてやおら服を破き始めるも、最大の原因であるハイヒールを代えなかったのには爆笑させてもらいました。

 

 「人間側のドラマが希薄」と書きましたが、観ていくにつれて、だんだんと制作陣の意気込みが分かってきます。作ってる奴らは全員ボンクラですね、きっと。彼らは、人間を描きたいのではなく、恐竜を描きたいのですね。思えば、インドミナ・レックスの捕食シーンとか、残虐な個所をかなり工夫して描写していたり、ちょいちょい挟まれる古典的な恐怖演出とか、ラストの恐竜バトルとか、とにかく恐竜を描くときの力の入りっぷりが素晴らしい。ここで私は、大きな誤解をしていたことに気付きました。人間のドラマが希薄で当然なんだ、これは恐竜を愛でればいい映画なんだ、と。最後に管理室に残ったのが『ジュラシック・パーク』のTシャツを着ていたボンクラであることも制作陣の想いだったのかもね。

 

 ただ、上手い箇所も結構あって、1つ挙げると、冒頭「ジュラシック・ワールド」に入る下りを子ども視点でやることで、観客に「アトラクションに来た」と感じさせる演出とかですね。

 

 そして、次回作をぜひ劇場で観てみたいと思いました。というのも、本シリーズは、この世界に入り込まないと真に楽しめないと思ったからです。「現実では決して入れない世界に没入できる」この点で本作は、映画にしかできないことやっている映画です。それだけで存在価値があります。何だかんだ楽しめたし。

 

 

 

五エ門らしいストイックすぎる作品【LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五エ門】感想

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85点

 

 『峰不二子という女』から始まった『LUPIN THE ⅢRD』シリーズ。その3作目(劇場版としては2作目)。よく知られている『ルパン三世』のイメージに囚われず、原作漫画が持つハードでアダルトな作風、そして『ルパン』シリーズ屈指のハイクオリティなアニメーションで人気を博しています。本シリーズはそれぞれ各キャラクターに焦点が当てられ、今作では十三代石川五エ門に焦点が当てられています。私はもちろんシリーズは観ていて、今作も観なきゃなぁとずっと思っていたのですが、ズルズルと引き延ばし、最近、ようやっとNetflixで鑑賞しました。

 

 結果、めちゃくちゃ面白かったです。前作とはスタッフは同じなのですが、作品へのアプローチが異なっているなぁと思っています。というのも、前作『次元大介の墓標』は次元大介がルパンの相棒となるまでを軸にし、「次元大介」というカッコよさの塊のようなキャラの魅力を余すことなく見せつけた作品でした。

 

 替わって本作で描かれるのは、五エ門の剣客としての覚醒です。自信過剰の象徴だった「豪華な斬鉄剣」が我々が知る斬鉄剣になるまでの話です。本作は他の要素を極力排し、ストイックにこれを描くことに注力しています。なので、本作の敵も、背後関係は匂わせる程度でとどまり、キャラはほとんど掘り下げられません。純粋にルパンたちを追うターミネーターとして活躍します。故にストーリーは前作よりも薄くなってしまったかもしれませんが、これはこれでストイックに「強さ」を追い求める五エ門の作品らしいと思います。

 

 また、今作はやはりアニメーションが素晴らしすぎます。グリグリ動くキャラや、背景、車や銃といった小物のディティール、そして決まりに決まりきったカットの連続等、見ているだけで至福の時を過ごせます。

 

 これだけなら前作にもあった要素です。しかし、今作では、前作ではあまり描かれなかった「武器を用いた戦い」を前面に押し出しています。斬鉄剣の殺陣はもちろん、金棒だ分銅鎖だ斧だと、銃とは違い、動きがよく出る武器ばかり使っています。それを上述のようなグリグリ動くアニメーションでやっているのです。だから戦いにバリエーションが出て、それを見ているだけで楽しい。でも少し痛い。肝心の殺陣はもちろん最高で、覚醒後に起こる50人斬りは圧巻の一言。豆腐みたいにサクサク切れますから。

 

 後、それ以外のアクションでは、カーチェイスのシークエンスが最高でした。もちろんガンアクションもあり、個人的には銭形がすれ違いざまに連射するシーンが好き。このように、今作は全体的にアクション寄りになっていると思います。

 

 以上のように、確かにストーリーは薄くなったかもしれませんが、アクションは本当に素晴らしいです。そして、このストイックさも強さを追い求める「石川五エ門」というキャラに非常に合っていて、「五エ門のスピン・オフ」としては最高だと思います。これでもし、銭形編をやって人気が出たら、このスタッフでスピン・オフでない『ルパン三世』を作ってもらいたいと心から思っています。

 

 

 BDですね。

 

 サウンドトラックだそうで。

LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門 オリジナルサウンドトラック

LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門 オリジナルサウンドトラック

 

 

2018年春アニメ感想⑤【多田くんは恋をしない】

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 ・はじめに

 動画工房のオリジナルアニメ。感情表現が乏しい多田くんと留学中の王女、テレサとの恋模様を描く。私にとって面白かったのは、回を重ねるごとに本作に対する印象が変わっていったことです。具体的に書けば、序盤は「軽い気持ちで見られるラブコメ」でしたが、後半に行くにつれ、「良作」へと評価が変わりました。だからどうせなので、印象の変化を時系列で追いながら感想を書いていきたいと思います。

 

・序盤

 まず第1話。上述のように切ない系の作品だと思っていたのですが、見始めると、そこで展開されるのは結構ライトなラブコメ。カメラワークとかキャラの繊細な動きとかおっと思うところがあるにはあったのですが、やや肩透かしな印象を受けました。続く2話も軽いノリで進む展開で、そこまでと突出した面白さはなかったのです。3話はニャンコビッグ視点の話という変化球で面白かったのですが、この作品がどこへ向かっているのか分からなくなりました。この印象は4,5話でも変わることなく、この時点では、本作は私の中では軽い気持ちで見られるラブコメでした。

 

・中盤

 そんな中、最初に印象が変わったのが第6話。多田くんのテレサに対する印象が変わった回でもあります。ここで1話のリフレインが多数行われ、第1話と同じくカメラのフレームを使うことで、テレサに対する印象が変わったことを端的に示していて、素直に感心しました。

 

 そして第7話を置いて第8話。本作はここからの畳みかけが半端じゃなかったです。それまでは多田とテレサには焦点を当てた回はあまりなかったと思うのですが、それを挽回するかのように群を抜いたコンテとレイアウト、演出でもって2人の心情の揺れ動きと近づいていく距離感を表現していました。そして同時に、ここから、ここまで積み重ねてきた話の意味がつながっていくところも見ていて心地よかったです

 

・後半

 その2人の心情描写の積み重ねが極に達した思うのが10話と11話。10話ではテレサの一緒にいたいけどいられないという、埋めがたい距離感を見事に表現していたと思います。

 

 そしてテレサが消えた後の11話。多田視点でテレサの喪失を実感させる演出と、多田が自分の気持ちに気付いたときに、写真という記録媒体、OP、EDの歌詞、多田の過去の後悔といった本作の全ての要素が繋がります。ここで私は舌を巻きました。素晴らしい回でした。そして、本作の方向性が『ローマの休日』的な「結ばれない2人の一生分の恋物語」だとようやく分かりました。遅すぎか。

 

 また、余談ですが、この回を見た後だと、ギャグ回だと思っていた第3話が結構重要な意味を持っているのではないかと思えてきます。ニャンコビッグはこう言っていました。「男と女は8秒目が合えば恋に落ちる」と。で、実際に第1話で2人があったときに何秒見つめ合っていたか数えてみました。そしたらちゃんと8秒程見つめ合っているのです。この2人。あれ伏線だったのか。

 

 ラルセンブルクへ行って互いに気持ちを伝えた2人。もうこれでそれぞれ別の人生を歩むのかと思っていたのですが、最後にくっつくんですよね。この2人。あそこはたしかにずっと(物理的に)距離があった2人がついにそれを0にするという感動的な場面でしたけど、私は上述のような話だと思っていたので、少しモヤモヤしました。でも多田くんの物語としてはこれでハッピーエンドな気がしなくもない。「いつも大事なものを離してしまう」彼がようやく掴んだ大事な存在ですし。

 

・おわりに

 このように、抜群の演出力で後半かなり評価が上がった作品でした。ただ、多田くんとテレサの話以外のキャラの恋模様って必要だったかなという疑問は残ります。多田くんの周りにいる、多田くんを大事に思ってくれる存在としてありなのかな。そう考えると優しい話だな。

 

 

 小説版こちらはテレサ視点なのかな。

 

 

 主題歌。作品と密接にリンクしたいいOPでした。

 

 エンディング。こちらも作品とのリンク率高し。

 

2018年春アニメ感想④【銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅】

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 日本アニメ史にその名を残す傑作『銀河英雄伝説(以後銀英伝)』。そのリメイク作品。先代があらゆる意味で偉大すぎるために放送開始前からネガティブな意見が散見されていました。

 

 私自身も『銀英伝』は、アニメシリーズはひどいと噂の『黄金の翼』以外は全て見ています。原作は未読。すまねぇ。いつか読みたい。なので、旧作を超えることはまずないだろうし、気楽に見てやるか、と半ば野次馬的な理由から見始めました。

 

 12話見終わってみると、「これはこれであり」だと思います。確かに旧作と比べれば展開は早いですし、それによって薄くなってしまった箇所はあります。しかし、随所に現代的な解釈が加えられていたり、旧作ファンにも楽しめるように工夫して作ってあると思いました。全体的には、本TVシリーズに「邂逅」というサブタイトルがつけられているように、これから始まる劇場公開作品のための布石といった印象が強いです。以下、順を追って感想を書いていきます。

 

 まず、第1,2話。旧作でも第1,2話だった「アスターテ会戦」の話です。ここで各話で帝国側、同盟側と分けて描くことで、それぞれの主人公がどのような立ち位置にいるのか、をしっかりと印象付けました。概ね文句なしですが、ラップの最期はもう少し描いてほしかったな。

 

 次に第3,4話。ラインハルトとヤンの過去。これで彼らの基本的なスタンスの違い(ルドルフという過去を否定し、未来へ進むラインハルト、過去を見て、未来を志向するヤン)を示していました。また、帝国と同盟を相互に描くことで対比され、双方の腐った体制が明らかになっていくのも面白い。さらに、個々は旧作には無かった点かと思いますが、ヤンの過去話において、これからの展開につながるであろう伏線が巧みに張られています。ヤン・タイロンの台詞は後のラインハルトとヤンの会談のときのヤンの台詞に通じるし、ヤンがジェシカに語ったことはジェシカの後の行動につながっていきます。

 

 ただ、薄くなった箇所もあったのも事実で、例えばアムリッツァ会戦の前哨戦時の食料不足から同盟軍が略奪者となって住民と戦闘になってしまう過程が新作では省略され、旧作にあったおぞましさが薄れてしまった気がしますし、カストロプ動乱時のキルヒアイスの描写もあっさり気味で「名将」感が薄れてしまった気もします。

 

 そして第13艦隊誕生、イゼルローン攻略、カストロプ動乱と続き、アムリッツァ前哨戦で終了します。そして最終話付近ででこれまであまり出てこなかったラインハルト陣営、ヤン陣営が総登場し幕引きしたのはこれからの戦いの期待を高めるのに役立っていましたね。

 

 また、目を見張るのは、やはりCGを駆使した戦闘シーン。旧作から年月が経ち、技術の進歩を一番感じました。非常にダイナミックな戦闘が繰り広げられたので、なるほどこれは映画館で観たいかもと思わせられます。

 

 このように、ストーリーの構成も結構考えられているし、旧作とは違った楽しみ方もできるので、旧作至上主義な人でもなければ普通に楽しめると思います。私は楽しめました。

 

 旧作の感想です。

inosuken.hatenablog.com

 

 

過去の劇場公開作品の感想です。

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