暇人の感想日記

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人間が恐竜に襲われるさまを面白可笑しく描いたブラックコメディ【ジュラシック・ワールド】感想

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78点

 

 2015年に公開され、世界的に大ヒットした『ジュラシック・パーク』シリーズの第4弾。実は私はジュラシック・パーク』を観たことがなく、今回がシリーズ初鑑賞です。名作の誉れ高い第1弾を観ても良かったのですが、新作に備えて直近の作品を観ておこうと思ったことと、「第1弾を観ずに本作を観る」というのはあまりできる経験ではないなと思ったので、過去3作をすっ飛ばして鑑賞しました。

 

 過去作については、CGによる恐竜の実在感が革新的だったこと、そして「人間が生命を操ることの傲慢さ」を描いたらしい、くらいしか知りません。なので、鑑賞前は制御が効かなくなった恐竜たちが客を襲うという一大パニック・ムービーだと思ってました。実際に観てみると、それは半分当たっていましたが、半分外れていました。まさか本作が「人間が恐竜に襲われるさまを面白可笑しく描いたブラックコメディ」だったとは。完全に予想外でした。まぁ、本作は1,2作目がスピルバーグだということを考えれば、これは正当な継承の形だと思いますが。

 

 本作に突っ込みだすとキリがないのですが、とにかく言いたいことは、「出てくる奴ら、みーんなバカ」だということ。やることなすこと全てが裏目に出ています。冒頭のインドミナス・レックスに逃げられるくだりも、体内にGPS仕込んでたならまずそれで確認してから中に入れよと思うし、あのCEOはヘリに乗って自爆したけど何がしたかったんだよと思うし(しかもちゃっかり被害を拡大させている)、部隊の統率はとれてないし、やることが行き当たりばったりだし、対応がグダグダすぎる。こんな奴らが運営する恐竜パークとか絶対行きたくねぇ・・・。

 

 また、パークの管理者以外でも、子供2人も問題でしたね。特に兄貴。中盤で「俺と一緒にいれば大丈夫だよ」とか言って弟にカッコつけてましたけど、お前が余計なことしたから弟が危険な目にあってるんだぞと。これを考えれば弟は聖人のような人間ですね。将来が楽しみだ。

 

 内容的にも言いたいことはあって、中盤のプテラノドン脱走からの大パニックシーンですが、あれは素晴らしかったのですが、尻すぼみで終わってたことが残念。また、移動が瞬時にできているため、島のスケールが分からなかったのも痛い。

 

 で、そんな中で一応ストーリーは展開していくのですが、人間側のドラマが希薄で、よく分からないんですね。しかし、描こうとしているテーマは伝わってきて、「人間が生命を弄ぶことの傲慢さ」なのかなぁと。オーウェンは最初からラプトルをリスペクトをしていますが、人間側で、成長することでこのテーマを体現していたのがクレアさん。最初こそ恐竜を道具としてしか見ていなかったのが、中盤の体験から恐竜の命を感じ取り、生き物として敬意を持って恐竜と接するようになります。最初は「ザ・キャリアウーマン」な格好だったのに、後半になるにつれて恰好がワイルドになるのがとてもいい。タンクトップ尊い。まぁ、彼女もアホな人間の一員で、オーウェンに「そんな恰好じゃ2分と持たない」と言われてやおら服を破き始めるも、最大の原因であるハイヒールを代えなかったのには爆笑させてもらいました。

 

 「人間側のドラマが希薄」と書きましたが、観ていくにつれて、だんだんと制作陣の意気込みが分かってきます。作ってる奴らは全員ボンクラですね、きっと。彼らは、人間を描きたいのではなく、恐竜を描きたいのですね。思えば、インドミナ・レックスの捕食シーンとか、残虐な個所をかなり工夫して描写していたり、ちょいちょい挟まれる古典的な恐怖演出とか、ラストの恐竜バトルとか、とにかく恐竜を描くときの力の入りっぷりが素晴らしい。ここで私は、大きな誤解をしていたことに気付きました。人間のドラマが希薄で当然なんだ、これは恐竜を愛でればいい映画なんだ、と。最後に管理室に残ったのが『ジュラシック・パーク』のTシャツを着ていたボンクラであることも制作陣の想いだったのかもね。

 

 ただ、上手い箇所も結構あって、1つ挙げると、冒頭「ジュラシック・ワールド」に入る下りを子ども視点でやることで、観客に「アトラクションに来た」と感じさせる演出とかですね。

 

 そして、次回作をぜひ劇場で観てみたいと思いました。というのも、本シリーズは、この世界に入り込まないと真に楽しめないと思ったからです。「現実では決して入れない世界に没入できる」この点で本作は、映画にしかできないことやっている映画です。それだけで存在価値があります。何だかんだ楽しめたし。