暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2019年冬アニメ感想②【ブギーポップは笑わない】

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 最近、電撃文庫が推し進めている、「過去の名作ラノベの再アニメ化プロジェクト(勝手に命名)」。2017年は「キノの旅」が再アニメ化され、次は同じく名作なのだけれど、メディアミックスがあまり上手くいかなかった「ブギーポップは笑わない」。この作品は今でこそ影が薄くなっていますが、発表当事はラノベ界に衝撃を与え、「ブギーポップ以前、以後」という境を作り出した作品で、後続の作家に多大な影響を与えました。代表的な人には西尾維新や、奈須きのこがいますが、彼らの活躍ぶりと与えた影響を考えれば、本作がどれほどの衝撃を持った作品だったのかが分かります。

 

 こんなにも多大な影響を与えた作品なもので、私も大変気になり、高校生の時に読みました。そして、その面白さに一時期はまり、「エンブリオ」2部作まで読んだ記憶があります。それ以降は他のラノベに興味が移っていたので、読んだのはそこで終わっています。

 

ブギーポップは笑わない (電撃文庫)
 

 

 そんな状態でも、アニメ化の発表があったときは驚きましたし、ちょっと嬉しくもありました。制作はマッドハウスだし、気になるスタッフも、「ワンパンマン」「ACCA13区監察課」のメンツだしで、KADOKAWAの気合いが伝わってきて、期待値は上がっていきました。まぁ、これで出来が良かったら「キノの旅」は何だったんだと言いたくなりますが、ここは堪えようと思い、視聴しました。

 

 視聴してみると、確かに原作に「忠実に」作ってあることはあるのですが、話をなぞっているだけのようにも思える作品で、私の懸念が現実になってしまうとともに、原作の良さを再確認してしまいました。

 

  本作は、原作のシリーズから、「ブギーポップは笑わない」「VSイマジネーター」「夜明けのブギーポップ」「歪曲王」篇をアニメ化したものです。ストーリーが進むにつれ、印象が変わっていったので、その印象を以下に書きたいと思います。

 

 まずは「笑わない」篇。ストーリーは原作と同じく、ブギーポップと竹田君の屋上での会話のみで進行するという、非常に斬新なもの。これはこのシリーズの根幹である「世界では、事件が気づかないうちに始まり、気づかないうちに終わる」事を端的に表した話です。なのでこれはこれで良いのですが、これを頭に持ってこれるのは小説という、気になったらすぐに読み進められる媒体だからこそできることであり、1話毎に時間が空く連続TVアニメとは相性が良くないです。スタッフもそこら辺は分かっていたようで、2話連続にしていました。

 

 ただ、これ以降の話はどうかというと、原作の内容を消化するだけに終わっていて、原作の良さをもて余している感が否めませんでした。原作は話毎にキャラの視点が変わり、パズルのピースがはまるように徐々に事件の全貌が分かるという構成をとっていて、その妙がとても面白いのです。しかし、このアニメ版にはその快感はあまりなく、ただ時系列をごちゃごちゃにしただけで、よく分からなくなっているという印象を受けました。これは次の「VSイマジネーター」篇でも言えることです。

 

 

 また、もう1つ大きな問題点として、この2つのパートには、原作の魅力の1つである「普通の世界に異物が入り、途端に日常が非日常になる」というセカイ系要素があまり感じられなかったことが挙げられます。登場人物がいる世界と、統和機構やMPLS等の異質な存在が地続きのものに感じられてしまったのです。

 

 パズルのピースがはまる快感もなく、セカイ系的な世界観の再限度も微妙という印象でしたが、「夜明けのブギーポップ」篇でこの印象が変わります。「夜明け」は素晴らしい出来で、上記の私の不満点全てを払拭したものだったのです。

 

 これには理由があると思っていて、時系列が「笑わない」「VSイマジネーター」ほど入り組んでいないことが大きいと思います。後、4話一挙放送したことも大きいかと。また、「日常」が侵食されていく話になっているため、ブギーポップの「日常が侵食されていく感じ」が上手く出たのかなぁと。

 

 さらに、ここで「夜明け」を挿入したことで、ここまで出てきたキャラや組織、用語が次々に明らかにされ、これまで無かった「パズルのピースがはまる快感」があり、同時に情報の整理にもなっているという作りになっています。この点でも、ここで「夜明け」を入れたスタッフには賛辞を送りたいです。

 

夜明けのブギーポップ (DENGEKI)

夜明けのブギーポップ (DENGEKI)

 

 

 さて、ここまでやったうえで最後を飾るのは「歪曲王」篇。これは刊行当初、「ブギーポップ」最終巻とされていたこともあり、内容も心の歪みを正し、人間の「進化」についての話になっており、まとまりは良いです。また、肝心の時系列的にも、これはそこまで複雑なものではないものなので、混乱はなく、スッキリと観られます。さらに、ラストの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は結構良い感じに使われていたし(ただ、ここで使うなら何故「笑わない」篇で使わなかったのかな?)、ラストの「日常」に人々が戻っていく様子や、最後を1話と対比させる演出も良かったです。最終話のエンディングで「日常」を見せたのも中々良い。最後の笑顔も、こっちの方が原作より自然だと思います。

 

 また、全編に亘って、原作が持つ抽象的な内容を映像化しようと、かなり苦慮した後も見受けられます。光と影や、キャラの立ち位置の変化で力関係を変化を描写したりしています。こういった画面演出がかなり計算して作られている作品でもあると思います。

 

 このように、かなり頑張ってアニメ化した本作ですが、正直言って、私の懸念が現実のものとなってしまった感があります。それは、「作品が時代と合っていなのでは」というものです。「ブギーポップ」シリーズは1998年に刊行されました。当時は世紀末で、「新世紀エヴァンゲリオン」などに端を発するセカイ系作品が時代とマッチしており、その中で本作は生まれました。この時代性と完璧にマッチしていたからこそ、「ブギーポップ」は当時の読者を心を直撃し、多大な影響を与えました。

 

 しかし、時代は移っています。「ブギーポップ」がもたらした影響で今は西尾維新が生まれ、奈須きのこが生まれ、そして彼らの作品は大ヒットし、ライトノベル、アニメ作品は次のステージへと移り、今流行っているのは異世界転生モノとかです。そんな中、本作は原作の90年代末的な内容を「忠実に」なぞっているのです。これでは若干の時代錯誤感は拭えません。この作品と視聴者(新規さん)の距離が、本作がそこまで話題に上がらなかった原因なのかなと思います。こう考えると、作品のメディアミックスを成功させるタイミングって、本当に大切ですね。

 

 以上のように、アニメ作品としては、原作の魅力を十分に再現できているとは思えませんでした。それは時代が変わったことと、やはりこのシリーズは「小説」という媒体をフルに使っていたからであり、アニメには置き換え辛かったのかなと思います。ただ、「夜明け」は良かったと思います。

 

 

 「名作復活プロジェクト」第1作。こっちも言いたいことがたくさんありました。

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 同じく電撃文庫の作品。最新の作品なので、こちらは面白かったです。

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