暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2018年秋アニメ感想③【青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない】

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 電撃文庫から刊行されている人気ライトノベルのアニメ化作品。タイトルのバニーガール先輩は1話冒頭に数分しか出てきません。原作は『さくら荘のペットな彼女』の鴨志田一、イラストは同じく『さくら荘~』の溝口ケージ。私は著者の前作についてはアニオリでサムゲダンを出して炎上したことしか知らないのですが、スタッフが『サクラクエスト』の方々だったこと、放送前から劇場版が決定しているという謎のプッシュのされ方が気になり、視聴しました。

 

prtimes.jp

 

 視聴してみると、確かに中々面白かったです。少なくとも全話見るくらいには。本作のストーリーは、基本的に主人公の梓川咲太が章ごとに出てくる「思春期症候群」に罹患したヒロインたちを救う手助けをする、というもの。この思春期症候群について、視聴前は何が何やらさっぱりだったのですが、実際に見てみると、思春期によくある悩み(友達との関係とかいじめとか恋愛とか姉妹のコンプレックスとか)が超常的な形になって現れるというもので、形態としては西尾維新原作の『物語シリーズ』に近い作品でした。形態以外にも主人公には絶対的なヒロインがいる点も同じですね。

 

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 ただ、『物語シリーズ』とは違う点は、「主人公たちの外部」も描いている点。『物語シリーズ』は西尾維新先生が意図的に登場人物を絞っているため、基本的に主要人物以外の人は映らず、「彼らだけの世界」が構築されています。翻って、本作では寧ろその「外の視点」が結構生々しく描かれているのです。例えば、「桜島麻衣編」では、咲太が周囲の空気に抗う話でしたし、「双葉理央編」では周囲の男どもの視線とか、「かえで篇」ではいじめの話でした。そして、その時の心情の象徴として思春期症候群が発症するのです。

 

 こう考えると、本作は思春期の学生が直面する悩みを解決していくという普通の学園ものです。それにSF要素を加味してより見やすくしています。ただ、本作の良い点は、主人公が救うのではなく、その「問題」を解決するのがヒロインたち自身だということ。咲太は狂言回しに過ぎず、彼女たちが問題に向き合って答えを導くことでその問題を解決していくという展開は非常に誠実な描き方だなと思いました。また、その問題も完全に解決せず、自分の中で折り合いをつけることで一応の解決をみる、というのも良かったです。

 

 全体の構成的にも面白くて、最終章でかえでの存在が消えてしまって、これまでヒロインたちを「助けて」きた咲太が最後に救われる側になって、彼にとってかえでがどれほど大切な存在だったかが分かるという展開は、1クールの作品の締めとしていい落としどころだなぁと感じました。

 

 確かに初見の私でも「一気にまとめてるなぁ」と思うところが無いわけではないですが、文庫本5巻分ということも考えれば、程よくまとまっていて、楽しく見ることができました。